【全曲レビュー】RED ORCA:1stアルバム『WILD TOKYO』

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金子ノブアキ、来門(ROS, SMORGAS)、PABLO(Pay money To my Pain, POLPO)、葛城京太郎、草間敬によるプロジェクト・RED ORCAが3月20日、1stアルバム『WILD TOKYO』をデジタルリリースした。本作の全曲レビューをお届けする。

  ◆  ◆  ◆

■M.1 ORCA FORCE
RED ORCAの記念すべき1stアルバム『WILD TOKYO』のオープニングを飾るのは、昨年11月に先行デジタル・リリースされていたこの楽曲。金子ノブアキの威勢のいいドラムに導き出されるように音楽の怪人たちが続々と登場してくるかのような図が浮かぶ幕開けには心躍らされるし、野生の咆哮を思わせるシャウトを境界線としながら雪崩れ込んでくる来門の切れ味のいい言葉の連射が刺激的だ。Orcaとはすなわちシャチだが、この赤鯱のテーマソングとも言えそうな曲のリリックにイルカとクジラが登場するのも面白い。いわゆるデジ・ロック的な音像でありつつも、独特な空気感の拡がりを伴っていて閉塞感とは無縁だ。ライヴハウスに“tell me, what a hell’s going on”の合唱が起きる日の到来も近い。



■M.2 beast test
最前線に躍り出た5人が一気にぐいぐいと攻め立ててくるアグレッシヴ・チューン。前傾姿勢で轟音を繰り出す葛城のベースをはじめ、自己主張の強い音が重なり合っているはずなのに衝突事故が起こることもなく、ヘヴィであるはずなのにある種の軽快さを失っていないのは、まさしく草間マジックのなせる業というべきか。途中に訪れる一瞬の静寂がもたらすコントラストの鮮やかさも見事というしかない。しかもどこかキャッチーで抜けが良く、英語主体のリリックのなかにあって“変幻自在”、“完全無欠”といった四字熟語がキャッチーに耳に残る。ライヴ映像のみで構成されたこの楽曲のミュージック・ビデオもすでに公開されているのでチェックしてみて欲しい。



■M.3 Night hawk
怒濤のようなドラミングが印象的なナンバー。いわゆるシューゲイザー系メタルにも通ずるような音の響きが物語性を演出し、脳内には星の光を頼りに夜空の闇を飛ぶ、黒い翼を広げた夜鷹の力強い雄姿が浮かんでくる。余談ながら夜鷹とは江戸の娼婦を指す言葉でもあるが、服用すると3日間眠くならない薬の名前でもあるらしい。そしてこの曲にも、睡魔や邪念を吹き飛ばすような強い刺激的作用が伴っている。英語のラップ・パートでは畳み掛けるように攻めてくる来門は、日本語パートでは物語の語り部になる。その表情のコントラストも見事だ。



■M.4 Phantom Skate
疾走感を抑えたテンポでの滑り出しからいきなり爆走モードに突入し、後半には宇宙的な広がりを見せながらお洒落なダンス・ミュージックへと転じていくという奇想天外な楽曲。金子から送られてきたこの曲のデモを耳にした際に来門が「めちゃくちゃだな、この人」と感じたというのにも頷ける。こうした展開は顔を突き合わせながらのセッションからしか生まれないわけではなく、同胞たちと音で会話するさまを脳内のスクリーンに思い浮かべることができる人たちには自然にできることなのだろう。そしてミラーボールの眩い空間が似合いそうなパートを経ながら最後はふたたび爆走モードに。やはりこの人たち、普通じゃない。

■M.5 Octopus
レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、ジェーンズ・アディクション、ナイン・インチ・ネイルズ。先駆者たちの名前が次々と浮かんでくる。しかしそうした特定の誰かの姿に自分たちの理想を重ねているわけではなく、ルーツを隠すことなく、それをしっかりと消化しながら、今現在の時制に相応しい形にアップデートしようとしているのがうかがえる。跳ねるリズムを伴っているはずなのに、曲のキャラクターを決定付けているのがアンビエント感だったりするのも興味深い。曲の後半で聴かれる葛城のベースは彼が猛々しいばかりの若者ではないことを実証しているし、PABLOのギターが描く宇宙も官能的で美しい。

■M.6 LOBO〜howl in twilight〜
まるで謎のマシーンが動き出すかのような導入部分からスペイシーな広がりをみせると、来門のラップと葛城のベースが一気に雪崩れ込んでくる。まるで両者が声と楽器でデュエットしているかのような構図だ。そしてPABLOのギターは、その背後に哀愁味の漂う宇宙的空間を描くことに徹している。しかしその浮遊感を、必要以上に長くは味わわせてくれないのが彼らだ。曲は中盤に激化し、それを経ながらふたたび幕開けと同じ場面へと戻っていくが、物語はさらに深いところへと進んでいく。金子ノブアキが、緻密なばかりでなく激情型のドラマーであることも改めて実感させられる。挑むような表情で演奏している姿が、聴いているだけで浮かんでくる。

■M.7 ILLUSIONS
トライバルな躍動感を漂わせながら始まり、一気に速射砲のような来門のラップとそれに呼応するように唸るベースに両耳を奪われる。とにかく切れ味がいい。ピアノ演奏と日本語ラップによる中盤の印象度も抜群だ。ひとつひとつの要素を取り上げてみれば、情報量過多でけたたましいほどの音像になっていても当然であるはずなのに、何故か浮遊感が伴っているという不思議さ。これもいわば、RED ORCAの得意とするイリュージョンのひとつなのかもしれない。

■M.8 MANRIKI
隣の部屋で誰かが壊れたピアノを弾いている。そんなミステリアスな空気が漂うこの曲は、映画『MANRIKI』の主題歌として、昨年11月に「ORCA FORCE」とともに先行デジタル・リリースされていたもの。他の収録曲すべてはバンド名義での作曲クレジットとなっているが、この曲のみ金子ノブアキの個人名義となっている。とはいえ他の楽曲に比べてバンド感が薄いというわけでは決してなく、むしろ彼がRED ORCAについて描いた初期型の理想形とでもいうべきものが体現されたのがこの曲だといえるのではないか。全体を支配するのはうごめくベース。空気感を演出するのはピアノの音色。冷静に考えてみるとメタル・ヴォーカリストに匹敵するくらいとんでもないハイトーンで言葉を繰り出し続けている来門。そして終盤に顔を出すPABLOのギター・ソロには思わず「待ってました!」と声を上げたくなるような登場感がある。



■M.9 Saturn
宇宙船からの交信なのか、それとも未来からの警告なのか。来門の発する言葉が、砂の嵐のような画面を通じて届いてくるかのようなイメージだ。そして彼のまわりに広がる音世界は限りなく空白というか漆黒に近く、ビートとも呼べないような時間経過を区切る音と、かすかなノイズが聴こえてくるばかり。そこに絡んでくるピアノの音色はあくまで美しく、だからこそ果てのない闇のような奥深さを感じさせられる。この曲が聴こえている時、金子ノブアキの脳内にはどのような映像が浮かんでいるのだろうか? それを覗いてみたくなる。

■M.10 Rainbow
前曲からの流れの美しさも相まって、映画の幕切れを思わせるところのある象徴的なナンバー。あくまで穏やかに大きな起伏を描きながら進んでいくが、それに導かれて始まるのはアンビエントな空気をまとったファンキーな世界。来門は攻撃的に言葉をぶつけてくるばかりではなく、静寂のなかではウィスパーも効果的に聴かせる。ギター・リフ主導型の曲では全然ないのに、葛城のグルーヴィなベースに同調しながらPABLOがノリノリで弾いている姿が浮かんでくる。全員の音が同等に聴こえてくるのもバンドだが、具体的な音が聴こえてこない場面でも姿が見えてくるのはそれ以上にバンド然とした状態といえるのではないか。

文◎増田勇一

◆RED ORCA『WILD TOKYO』インタビューはこちら

▲RED ORCA/『WILD TOKYO』

1st Album『WILD TOKYO』

2020年3月20日(金)デジタルリリース
品番:ORCA-0320
配信URL:https://linkco.re/x4B7vvBP

[収録曲]
1.ORCA FORCE
2.beast test
3.Night hawk
4.Phantom Skate
5.Octopus
6.LOBO 〜howl in twilight〜
7.ILLUSIONS 〜Jump over dimension〜
8.MANRIKI
9.Saturn
10.Rainbow

<RED ORCA 2020 響-KYO->

2020年
4月16日(木)埼玉・HEAVEN’S ROCK さいたま新都心VJ-3
4月22日(水)大阪・OSAKA MUSE
4月23日(木)愛知・APOLLO BASE
4月30日(木)東京・SHIBUYA CLUB QUATTRO

前売り¥4,500 ドリンク代別
各プレイガイドにて一般販売中

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