【インタビュー】hibiki(SABER TIGER)、理想を具現化した初のソロ・アルバムをリリース

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SABER TIGERのベーシストとして国内外で活動しているhibikiが、初のソロ・アルバム『HANDS OF PROVIDENCE』を3月25日にリリースした。ゲスト・シンガーには、過去にはPROVIDENCEやSABER TIGERに在籍していた久保田陽子(PUNISH)を迎え、さらにギターはKyrie(NoGoD)とMasha(Silex)、ドラムは上原晃という敏腕が客演。特にハード・ロック/ヘヴィ・メタル、プログレッシヴ・ロックに造詣の深いhibikiの個性が、ヴァリエーション豊かな楽曲群で表現されている。もちろん、定評のある高いプレイアビリティも堪能できる作品だ。本作はいかにして完成したのか。hibikiがじっくりと語ってくれた。

■レコーディングの初日にスピーカーから
■あの声が出てきたときの感動といったら……


――今回、なぜ初のソロ・アルバムを制作することになったんですか?

hibiki:もともとのキッカケは、SABER TIGERのプロデューサーでもある遠藤フビトさんから、SABER TIGERの活動の一環として、ソロ・アルバムを作ってくれないかというアイディアを出していただいたんです。それが去年の6月ぐらいの時期ですね。

――自分自身ではソロ・アルバムを作りたい思いはなかったんですか?

hibiki:まぁ、いつかは作ることになるだろうなぁとは思ってたんですけどね、周りからも作ったらどうかと言われたりもしてたんで。なんですけど、ソロ・アルバムって自信がないと作れなくないですか? だからまだ先だなと思ってたんですよ。その意味では、キッカケをもらえたのは、むしろラッキーだったかもしれないですね。自分だけだったら永久に「作ります」なんて言わなかったと思うので。


――期せずして環境が整ったと。いざ、制作に取り掛かるとなったときに、どんなアルバムにしようと考えたんですか? いろんな選択肢があったと思うんです。

hibiki:はい。それはやっぱ悩みますよね。ただ、アルバムの形として、歌ものとインスト(インストゥルメンタル)を7:3ぐらいの割合で構成するのはどうかという提案も受けていたんですよ。そう考えたときに、歌ものがあるということは、僕が今までやってきたようなヴォーカルが乗った楽曲があるべきなんだろうなというのはちょっと思いましたね。あとはベースが主体のインストがあればみたいな。なので、それに合わせて、自分から自然に出てくる音楽性を上手くまとめられればいいかなと思ってました。

――歌ものということで言うと、メイン・コンポーザーであったLIGHT BRINGERはもちろんですが、Silex、Mardelas、ALHAMBRA、SABER TIGER等、これまで在籍してきたバンドでも、hibiki作曲のマテリアルは聴くことができます。それらはいずれもヴォーカリストが誰であるか、決まっている時点で曲を書いていましたよね。

hibiki:今回も基本的にはそうなんですよ。アルバム制作が決まった後で、シンガーをどうするかという話をしていたときに、いろんな人の名前が出たりはしたんです。その中で英詞でいくというのも前提にあって。そこでフビトさんから提案されたのが、久保田陽子さんだったんです。今回はSABER TIGERのベーシストとしてのアルバムですし、縁のあるシンガーであり、なおかつ英語でも歌える。もちろん、僕としては「やっていただけるならぜひ!」という感じですよね。そうなってからは、こういう音を作ってもいいなとか、またいろいろとアイディアが出てきた。「Inside The Scream」と「Traveller In Space」と「Enter Eternity」は世に出す機会がなくてストックしてあったものなんですが、それらも陽子さんが歌うことを考えてチューン・アップしてますね。

――久保田陽子さんは長渕剛、矢沢永吉、MISHAなどの公演でのコーラスを担当したり、アニメの挿入歌やCMでの歌唱も数多く手掛けていますが、バンドということで言えば、1990年代にはSABER TIGERで歌っていた実力派であるのはもちろん、それ以前にはPROVIDENCE、FAST DRAWでの活動もあります。ただ、今回の『HANDS OF PROVIDENCE』は、これまでの彼女のキャリアとは、ポジティヴな意味でまた違った印象を受けるリスナーも少なくないと思うんです。そこがまた面白いですよね。

hibiki:ありがとうございます。陽子さんが活動していたバンドのメンバーより僕は後の世代なので、当然、聴いてきた音楽も違いますし、出てくるものも全然変わりますよね。それに過去を意識しても、先輩方のような曲を書けるわけではないですから。たとえば、PROVIDENCEみたいな曲にしようと思っても、要素を吸収するためには時間もかかるし、今は自分がSABER TIGERのメンバーとはいえ、SABER TIGERの曲はギターをかなり弾けないと作れないですからね。だから、なんだかんだ僕が自然に演奏できる、作れる、まとめられる音楽性になったということですよね。とはいえ、僕が素敵だなと思っていた陽子さんの歌を、それぞれの曲で出していただいた感じですね。

――初めて久保田陽子の歌を聴いたのは、どのような経緯だったんですか?

hibiki:僕は17歳とかそのぐらいの頃だったと思うんですけど、大阪でイベントをやっている人が、「このアルバムを聴いて勉強しろ」ということで、(SABER TIGERの)『TIMYSTERY』を推してきたんです。そこで衝撃を受けて、当時は朝の目覚まし代わりにするぐらい聴きまくってましたね。そこから遡っていって、他のSABER TIGERやPROVIDENCEのアルバムを聴きました。

――彼女のシンガーとしての魅力はどんなところに感じますか?

hibiki:まず人としてパワフルですよね。音楽的には……いろんな要素がある気がしますね。声がいいし、その声の使い方で、どんな空気も作り出せる。強いだけじゃないし、優しいし、美しいところもたくさんある。当然、経験値もものすごく高い方ですから、どんな曲でも、音楽的にいいポイントを見つけてのせてくれる。英語も上手いですしね。それにリズム感がまたすごくいいんですよ。だから、たとえばコーラス録りでも、2本だろうが3本だろうが4本だろうが、全部ぴったり当ててくる。声のコントロールが巧すぎますね。とにかくいいところしかないんですよ。レコーディングの初日で声出しをして、スピーカーからあの声が出てきたときの感動といったら……「キッズの頃に家で聴いてたあの声だ!」っていう。すいません、熱くなっちゃいました(笑)。

――今までライヴで彼女の歌を聴いたときとは違う感覚ですか?

hibiki:もちろん、ライヴのときはそれはそれでワクワクしてたんですけど、その声を、今、この瞬間は独占しているという気持ちですよね。スタジオで今から僕が作った音楽に声を入れてもらえるという昂揚感がある中で、スピーカーからその声が聞こえてくる。自分の音楽のためにこの声を使っていただけるんだなって。だから、より興奮しますよね。

■象徴的な「Children Of The Sun」
■歌詞にも表現されたhibikiの作品性


――陽子さんを起用することになって、最初に完成させた曲はどれになるんですか?

hibiki:今回のソロ・アルバム用にまるっと書き下ろしたのは「Children Of The Sun」ですね。

――これはむしろ最後に書いたのかと思ってました。

hibiki:歌録りの初日もこの曲でしたね。「Children Of The Sun」に関しては、今までの僕の音楽性の延長にある感じのアルバムになるだろうと思っていて、さっき言った「Inside The Scream」「Traveller In Space」「Enter Eternity」になる曲を使うことにもしていたので、速い曲がないからまず一つと思ったんですよね。速いというより、アップ・テンポに感じるもの。なおかつ、それなりにスケール感もある強い力のある曲を書きたいなと思って書いた感じですね。こういった曲の場合、今までは結構、もっと凝った作りにしてたところもあったんですけど、インスト部分もシンプルな作りなんですね。とにかく歌がいいので、その歌の感じや曲全体の色というか特徴みたいなものがわかりやすくなるように、速くて、しっかりとメロディが出てくるような曲になればいいなと思ってましたね。

――特にイントロなどはLIGHT BRINGERを思い起こしますね。

hibiki:あぁ。でも、昔はそういうのは外したいと思うほうだったんですけど、今はみんなが聴きたい、こういう曲があって嬉しいですと言ってくれる人がいたら、僕も嬉しいですし、みんなハッピーになると思うんですよね。

――これは結果的にアルバムの最後に置くことになったんですか?

hibiki:いや、これは最初から最後にするということで作ってましたね。僕はアルバムを作るとなったとき、どこに配置するのかというのはわりと決めて作るんですね。

――歌詞は近年のSABER TIGERの作品同様に、すべて遠藤フビトさんが手掛けたそうですが、それぞれの曲に対して、リクエストなども出したんですか?

hibiki:まったくないです。僕は作詞をしたことも、したいと思ったこともないですし、何かテーマを出すことは、歌詞を書く人の世界を狭めちゃうような気がするんですよ。もちろん、具体的なイメージを持って書いてた曲は今までもありましたけど、それも作詞を担当する人が曲を聴いて感じたように書いたほうが、しっくりくる、筋が通る歌詞になると思うんですよ。まぁ、実際に曲を聴けば、詞を書く人には狙っているところは伝わると思いますしね。

――「Children Of The Sun」の歌詞を見たときはどう感じました?

hibiki:ばっちりだと思いましたね。この曲に限らずなんですけど、フビトさんは音楽的な載せ方をすごくよくわかって書いてくれる方なので。もとのメロも崩さないですし、すごくキレイな流れで英語の言葉と音程、リズムをはめてくれるので、気持ちよく聴けるんですよ。ただ、SABER TIGERほどシリアスではなく、もっと大きいものを歌ってくれている印象ですかね。

――実際に言葉遣いも含めて、シンプルだと思います。ご本人曰く「hibikiはポジティヴなオーラを持っていて、それが彼の美しいところだから、ポジティヴな作品を作りたかった」とのことですが、随所に久保田陽子さんにちなんだフレーズが出てきたりするのも、彼ならではでしょうね。「Children Of The Sun」は曲名からして太陽の子、つまり“陽子”ですから。

hibiki:ニヤッとしますよね。「Inside The Scream」に出てくる<Thunder and Light>とか、「The Wavering Night」に入っているこのアルバム・タイトルのくだりとか。これはフビトさん自身も“SABER KIDS”(SABER TIGERのファンの通称)だから為せる技だと思います。「Enter Eternity」の<Time is mystery>っていうフレーズもいいんですよね。しかも、ちょうど声が色っぽいところで。僕はここから始まったようなものですからね。

■ソロ・アルバムっていいですよね
■自分の趣味みたいなものを入れられるんで(笑)


――アルバムの中で曲がどの位置に来るのかを想定して曲作りをするという話もありましたが、1曲目でどのような幕開けにするかは、非常に重要だと思うんですね。

hibiki:ホントにそうですね。だから、いつも怖い思いをしながらですけど、1曲目ってあまり書きたくないんですよね(笑)。

――だからこそ(笑)、この「Sonic Divine」でどう幕を開けるのかは、よく考えたのでしょうね。

hibiki:そうですね。でも、やっぱり自然に出てくるものしか出てこないので、どう感じていただくかは聴く方にお任せしちゃうんですけど、一応、ベーシストのアルバムなので、ベースの音から始まっておこうかなという意識はありましたね。いきなりオーケストラばりばりのSEみたいなので始まっても……それはそれでカッコいいですけどね。この曲そのものは、今回は主にハード・ロック/ヘヴィ・メタルを扱っているレーベルからのリリースだったり、僕自身もメタルがルーツというか、ずっとそういったシーンで活動していたわけなので、僕がやってきたようなパワー・メタルっぽい曲を最初に持ってくるかと思って作ってみた感じですね。「Children Of The Sun」はすごく開けた感じのサウンドを狙っているのに対して、こっちはよりストレートというか、もっと強いところを出したり。ただ、僕の中では、いきなり1曲目で沸騰するような熱量もどうなんだろうと、アルバムを構成するときはいつも思うんですよ。なので、100℃の曲ではないけど、徐々にスケールが大きくなっていくような感じに仕上がればなぁと思ってましたね。


――キャッチーなプログレッシヴ・メタルといった印象がありますね。

hibiki:だいぶストレートにはしてますけど、音の入れ方とかは、やっぱりSTRATOVARIUSとかにも影響を受けてますからね。だけど、それは僕が一人で曲をちまちま作っているときだけで、他の人たちの音が載ってきたときにどういう形になるか、自分自身もワクワクしながら仕上げていくんですよ。だから、結果的に最初にイメージしたものと変わっていっても、それはそれでいいじゃんと思いますけどね。

――hibikiくんはプログレッシヴ・メタル系バンドのアルバムを常に聴き漁っているほうでもないですよね?

hibiki:時期にもよりますよね。傾倒する時期はすごく聴くし。このアルバムを作るちょっと前は、やっぱりジェントのアーティストを聴いてましたけどね。だけど、頑張ってもあんな凄いのは僕はできないので(笑)。でも、それこそ一昨年の話になりますけど、SABER TIGERの『OBSCURE DIVERSITY』で僕が書いた「Distant Signals」はジェント系のアーティストの音を参考に作った曲なんですよ。いわゆるプログレッシヴ・メタルで言えば、DREAM THEATERとかは今でも大好きですし。『OBSCURE DIVERSITY』を作っていた頃は、(SABER TIGERのリーダーである)木下(昭仁)さんとPAGAN’S MINDを聴いて盛り上がってましたね。

――やはりそうですか。「Sonic Divine」を聴いて、PAGAN’S MINDやVANDEN PLASなどのアプローチをすごく思い起こしたんですよ。

hibiki:いいところを突いてますね(笑)。でも、そう言ってもらえたほうがむしろ嬉しいですね。僕はそういったアーティストに憧れてますから。最終的には『PROGPOWER USA』とかにも出演したいと思っているぐらいですし。何か独特なんですよね、プログメタル系の人たちって。色合いがやっぱ他のメタルとはちょっと違っていて。

――エンディングのコーラス部分はSABER TIGERっぽいなと思いました(笑)。

hibiki:この曲はどうしても、男声コーラスが欲しかったので、フビトさんに歌ってもらったんですよ。すごくいろんな声を入れてくれて、いいレンジのところを埋めてもらいましたね。パワー・メタルとかを作りたいときに、そういうコーラスって絶対に必要な気がするんですよ。

――続く「The Wavering Night」は、イントロでポップな印象を受けますが、曲中はもうちょっとダークな印象ですね。この流れも面白く聴きました。

hibiki:ありがとうございます。さっきのプログレッシヴ・ロック系の話が出たので言っちゃいますけど、これはIT BITESを目指しましたね(笑)。こういう曲って、ソロ・アルバムじゃないとできないじゃないですか。その意味では、ソロ・アルバムっていいですよね。自分の趣味みたいなものを入れられるんで(笑)。これはレコーディングを進めていく中で、陽子さんのこういうレンジや温度感の歌い方が聴きたいと思って、ちょっと低めの温度みたいな感じの曲が欲しかったので作りました。テンポ感的にも他にはないですしね。普段のバンドにいる中で曲を作っていたら、こういう曲が2曲目に出てくるのはちょっと早いかなと思うんですけど、流れ的には自然かなと思ったので、こういう形にしました。好きな並びです。歌で言うと、サビの終わりの<Good night>って消えていくようなフレーズが優しくていいんですよね。

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