【インタビュー】hibiki(SABER TIGER)、理想を具現化した初のソロ・アルバムをリリース

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■無意識のうちにルーツが滲み出ていた
■チャレンジした甲斐があった


――3曲目の「Inside The Scream」は、以前からあった曲であると。

hibiki:そうですね。少なくとも2009年にはあった曲なんです、ファイルの日付を見ると。

――LIGHT BRINGERの頃ですね。でも、LIGHT BRINGERでは使わなそうな曲だと思います。

hibiki:やっぱわかりますよね。その頃は少しポップな方向に行きたいなと思ってたタイミングだったので、多分、これを形にしなかったんですよ。当時から今回収録したものとほぼ同じような形だったんですけど、この曲をやっている画があまり想像できなかったですし。実はSilexでもやろうと思ったことがあったんですけど、そのときもSilexっぽい形にならなかったんですね、きっと。

――でも、今回のギターを弾いてるのはSilexのMashaくんですよね(笑)。

hibiki:そう、ルーツ的にこの曲は絶対に彼だなと思ったんですね。これもやっぱ趣味の世界ですよね。今後、こういう音楽性のバンドをやりたいとか、入りたいとかそういうことはないんですけど、やっぱり、Mashaくんのギターが想定していたとおりハマってくれて、僕が聴きたいものができたなって(笑)。速いギターって、爽快感が気持ちいいじゃないですか。そういうギターを僕のアルバムに入れてもらえてよかったなと思いますね。曲は速くなくていいんですけどね。

――続く「Traveller In Space」は……。

hibiki:これはSilexでやってた曲ですね。当然、ギターはMashaくんが弾いてますね。ただ、以前はこの形ではなくて、使っていた部分としては、イントロと間奏部分、あとはAメロだけですね。3連でマイナー調の曲を作るにはわりと簡単なんですけど、そのときはメジャー・キーの曲を作りたいと思って作ったんですね。なおかつ、Silexっぽいもので。なんですけど、結局、ライヴでは演奏していたとはいえ、上手く形にできなかったなと思っていて、この機会にと思って作り直しちゃいました。Silexをやっていたときより、ちょっとシリアスというか、暗めな方向にはしたんですよね。あとは、ワウのかかったメロディのギターは、もともとMashaくんにも「いいね」って言われてたんですけど、Silexのときにはイントロでしか使ってなかったので、今回は曲中で何度も出すようにしましたね。彼はワウに命をかけているので、いいギターを入れてくれたなと思いますし。あとはAメロではラフというか、ロックらしいペンタ感みたいなのを出してますけど、BメロではちょっとTERRA ROSAみたいな様式美の感じで、さらにサビはその後に来る大サビみたいなものを活かすためにも温度を低くしてますね。間奏はユニゾンでベーシストの曲ですよって主張もしつつ、自然と思ったことを継ぎ足し、継ぎ足しでくっつけていって。そうそう、演奏も歌も乗せたあとにシンセを録ってたんですけど、「Traveller In Space」って曲なんで、スペース感を出そうとプシューってSEを足したりしました(笑)。やっぱ、そういう世界観ってリンクしていたほうがいいと思いますからね。


――次の「Observing Inner Space」はベース・ソロ的なインストゥルメンタルですね。

hibiki:そう。最初にも言いましたけど、7:3ぐらいの割合で構成しようという話だったので、ベースだけでインストを作りたいという意志みたいなのはあったんですよね。そこでちょっとミニマル・ミュージックっぽいことをやってみようと。作っている間は、かなり悩みながら、足して、引いてという実験をしてたんですね、自分のベースの音と向き合いながら。だから、ホントに曲のタイトルそのものの音になったんじゃないかなと思いますね。

――まさに自分の内なるものであるわけですね。すごく聴き応えがあります。

hibiki:ありがとうございます! こういうのはみんな退屈だなと思って聴き飛ばされちゃうのかなと思ってたんですけど、結構いろんな人が褒めてくださって。チャレンジした甲斐があったなと思いますね。

――ベーシストのソロ・アルバムとして、欲しい1曲ですよ。

hibiki:当時はスティーヴ・ライヒをよく聴いてましたね。でも、これ、ライヴでできないんですよね。21本ぐらいベースが入ってるんです。コードっぽく入ってくる音も、5本ぐらいを別々に録ってフェイド・インしてるんですね。そうじゃないとキレイに鳴らないというか。オクターブ違いでシーケンスで弾いているフレーズもありますし、メロディが出てきたらまた2本重なってたり。なので、これは聴く専用の曲だと思って作ってますけどね。

――確かに多重録音の面白さゆえですが、音源とまったく同じとはいかないまでも、形を変えてでもライヴで聴いてみたいですね。「Enter Eternity」はストックしてあったものとのことでしたが、部分的にはLUNA SEAを思い起こす人もいると思います。

hibiki:あぁ、なるほど。言われてみれば、ギターなんか完全にそうですもんね。これはバッキング・ギターを自分で弾いたんですよ。10年ぐらい前には存在していた曲なんですけど、バンドでやろうとしてたものではなくて、ボーカロイドが歌うように作ってたんですね。だから遊びで作ってみたようなところもあったんですけど、僕は歌詞が書けないことに気づいて(笑)、そのまま放置してあったんですよ。だから、人が歌うようにメロディも作ってなかったから、今となってみれば、音も変な動きをしてる感じなんですけど、それにハマる歌詞をフビトさんが書いてくれて、スーパー・ヴォーカリストの陽子さんが歌ってくれて。このチームだったからこそ形にできた曲かもしれないです。でも、LUNA SEAもいいですよね。あえて言うなら、これは完全に「BELIEVE」のパターンかもしれませんね。その昔にコピー・バンドでやったこともあるんですけど、クリーン・ギターの入り方とか、あの空気感、音の色合いとかが好きなんですよ。シンセですけど、弦っぽい音も入れてみたり。

――それはSUGIZOさんをイメージしますよね。

hibiki:あっ、そうか。意外と無意識のうちにルーツが滲み出てたんですね。「BELIEVE」にも弦が入ってますし。しかも、よく考えてみたら、この曲のベースはピック弾きなんですよ。完璧じゃないですか(笑)。

――無意識でJさんのプレイを……ということにしておきます(笑)。

hibiki:でも、これもこうやって日の目を見てよかったなと思いますね。たとえばミュージシャン同士の会話の中で、「こういうデモがあって」なんて聴かせたりすることもあるんですけど、この曲は「いいね」って言われることも多かったんですね。これはKyrieくんがギターを弾いてくれたんですけど、ソロのキルスイッチがいい味になってるなぁと思って。

――Kyrieくんも3曲で参加していますが、今、hibikiくんがNoGoDにサポート参加しているというつながりから実現した客演ですか?

hibiki:そうですね。僕がソロ・アルバムを作っていて、部分的にゲストにお願いするかもしれないけど、基本的には自分でギターも弾かなきゃいけないって話をしたときに、「自分でよければ弾くよ」って言ってくれたんです。「Sonic Divine」「Enter Eternity」、次の「Evoke/Emancipate」で弾いてもらったんですけど、僕の中でギターのイメージが宙ぶらりんだった曲なんですよ。でも、彼は音色の持ちネタが豊富というかカラフルなので、だいぶ助けられましたね。特に「Sonic Divine」と「Evoke/Emancipate」は、それが色濃く入ってますね。しかも、特に何もオーダーしていないんですよ。「Kyrie節でお願いします」と言ったらこうなった感じで。

――その「Evoke/Emancipate」はインストゥルメンタルですが、不協和音とは言いませんが……不気味なリフのアンサンブルで。

hibiki:そうですね。僕がやりそうなインストの曲ってこんな感じなのかなと思いながら作ったんですけど、どう思いますか?

――ええ。hibikiくんらしいと思いますよ。

hibiki:ですよね。ちょっと変な感じにしたくて、そういう音を選んで使ってる感じですね。出だしのピアノもカチカチした感じを出したかったから、打ち込みで、ベタッとした設定で鳴らしてますし。ただ、中間部とかは手弾きで生感を出したくて、使い分けてはいるんです。もしかすると散漫に感じる人もいるかもしれないけど、思いつくものを全部ぶち込んだらこうなったというのでいいんじゃないかなって思ってるんで。

――「Believe And Listen」はバラードといえるものですね。

hibiki:そう思って作ったんですけどね(笑)。これも趣味の世界と言えばそうなんですよ。こんなにストレートにバラードしてる曲って、やれてなかったので。だいたい、今までのどのバンドでも、バラードをやると、ちょっと変なセクションが入ってくるんですよね(笑)。この曲も何度かに時期が分かれてレコーディングが進む中で作った曲なんですけど、陽子さんの声で聴きたいところが聴けるようなレンジのメロディにした感じですね。どんな歌を歌っても巧いのはわかりきってるんで、だったらいろんなタイプの歌が聴きたいなと思って、バラードを書いたんです。でも最高だったな、この曲の歌は。

■アルバム発売記念ライヴは6月に
■気になるセットリストも熟考中


――アルバム・タイトルは「The Wavering Night」の歌詞に登場する“HANDS OF PROVIDENCE”となりましたが、陽子さんが在籍していたPROVIDENCEにも掛かっているのは明らかですよね。

hibiki:連想しますよね。意味合い的にも、歌詞もファンタジックな感じだし、アルバムのアートワークの雰囲気にも合ってるかなと。

――さて、6月13日には東京・原宿RENONでの発売記念ライヴが決定していますが、今回のレコーディング・メンバーで行われるんですよね。

hibiki:そうです。ギタリストの二人はそれぞれ担当している曲を弾いてもらいつつ、僕が弾いた曲もそれぞれやってもらって。

――ドラムの上原晃くんについては、hibikiくんのこれまでの活動において、直接のつながりはなかったと思いますが、どのような関係性なのでしょう?

hibiki:地元の知り合いです。僕がフラフラしていた頃に、たまたま上原さんが叩いてたスタジオで音を聴く機会があって、「超上手い!」と思って、存在は知ってたんですね。ずっと一緒にやる機会はなかったんですけど、数年前、Mardelasで活動していたときに、対バンにいたFURY OF FEARで上原さんがサポート参加してたんですよ。そのときに何かあったら一緒にやりましょうと連絡先を交換したんです。今回、アルバムを作るに当たって、僕の周りにはスーパー・ドラマーがいっぱいいるんですけど、どうせなら今までやったことのない、結果が想像できない人とやりたいなと思ったんですよ。それなら彼がぴったりだなと。時間もない中、いろんな要望に応えてもらえましたし、すごく音楽的にドラムを録ってくれて、ホントによかったなと思います。マキシマム ザ ホルモンの上ちゃんの弟さんなんですよね。普段はスパイダーマンの格好をして、テクニカルなドラムの動画をネットに上げてるんですよ。

――ライヴでは『HANDS OF PROVIDENCE』に収録された楽曲は当然やるにしても、カヴァーを含めて、他にも何が演奏されるのか楽しみですね。

hibiki:そうですね。何かいいアイディアはありますか? みなさんに聞いているんですけど(笑)。「Traveller In Space」ではない、Silexで僕が書いていたもう一つの曲はやる予定なんですよ。でも、新たに書き下ろすという手もありますね。まだ日の目を見ずに途中まで作ったままの曲もありますから。どんなふうになるかなぁ……今までバンドに曲を持っていったときに、一番気分がアガるのって、最初にスタジオでみんなで演奏したときなんですよね。そこで予想を遥かに上回るものになったりしてニヤニヤするんです。今回は先に録っているので、その感覚がない状態ですから、まずリハーサルが楽しみですね。何かドキドキするなぁ(笑)。

取材・文●土屋京輔


リリース情報

1stソロ・アルバム『HANDS OF PROVIDENCE』
2020年3月25日(水)発売
Walkure Records
【Deluxe Edition】CD+DVD WLKR-0044 ¥3,800+TAX
【通常版】CD WLKR-0045 ¥3,000+TAX
収録曲(共通)
01. Sonic Divine
02. The Wavering Night
03. Inside The Scream
04. Traveller In Space
05. Observing Inner Space
06. Enter Eternity
07. Evoke/Emancipate
08. Believe And Listen
09. Children Of The Sun
※<Deluxe Edition>に付属のDVDには、hibikiのインタビュー、ベース・テクニック解説、「Evoke/Emancipat」のスペシャル・パフォーマンスを収録。

参加ミュージシャン
久保田陽子(vo/PUNISH)
Kyrie(g/NoGoD)
Masha(g/Silex)
上原晃(ds)

ライブ・イベント情報

hibiki First Solo Live - THE WAVERING NIGHT

2020年6月13日(土) 原宿 RENON
開場 17:00 / 開演 17:30
前売 4,500円 / 当日 5,000円(税込/オールスタンディング/1ドリンク別)
[ 出演 ]
hibiki - Bass
久保田陽子 - Vocal
Kyrie (NoGoD) - Guitar
Masha (Silex) - Guitar
上原晃 - Drums
[ チケット情報 ]
一般発売日 2020年4月26日(日) 10:00~
チケットぴあ
ローチケ(ローソンチケット)
eplus(イープラス)
[ 問い合わせ ]
ネクストロード 03-5114-7444

『HANDS OF PROVIDENCE』発売記念店頭イベント
2020年5月31日(日)=東京・dues新宿
開場18:00 開演18:30
※ソロ・パフォーマンス、トーク、私物サイン会

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