【音楽ギョーカイ片隅コラム】Vo.124「ケロポンズの歌う「にじ」に包まれよう」
新型コロナウイルスの蔓延によって、かつて経験したことのない急激な暮らしの変化がもたらされ、いつもならその美しさで人々を魅了する満開の桜の花ですらもまったく歯が立たないほど大きな不安が日本列島を占拠し、新緑の季節を迎えてもなお状況の好転は見られずに気がつけばゴールデンウィークに突入。暦の上ではまもなく5月になりますが、今も見えないウイルスへの感染への恐れと将来を見通せない2つの不安は消えないどころか増長し、地震や大雨が起きるたびに不安はさらに膨らむばかり。これでは心が病んでしまいますよね。そんなときに頼れるのはやはり音楽の持つ力で、誰もが大なり小なり影響を受け、問題を抱えたこの春に筆者が最も聴いている楽曲が、ケロポンズの歌う「にじ」です。
この作品とケロポンズに出逢ったのは<フジロック>がきっかけでした。ケロポンズといえば、動画再生回数6800万回を超える「エビカニクス」などの楽しい体操曲の数々で保育界を中心に広く知られるスーパー・ユニット。ですが、<フジロック>のキッズランドに広がる森の中にある小さなステージと、過去にはパティ・スミスや星野源などの大物ミュージシャンが出演したジプシー・アヴァロンに2013年から7年連続で出演し、こどもフジロック的ヘッドライナーとして子連れをはじめとする多くのフジロッカーを虜にし続けているアーティストでもあり、森のステージではプレイリーダーやスタッフ、そして来場したこどもたちをステージ上に呼び込み、その場にいる全員と共にキッズランドのテーマソング「にじ」を歌うのが恒例となっています。
そんな背景や歴史を知らずにその場面に遭遇した筆者は目の前に広がった美しい光景にいたく感動し、一人、シクシクと泣きました。こどもと一緒に<フジロック>へ行くようになってから今年で5年目になりますが、今ではケロポンズが歌う「にじ」をあの森の中で聴くことが<フジロック>に参加する最大のモチベーションになっています。シンプルに楽曲が素晴らしいことに加えて、大自然と音楽に包まれた環境に存在するこどもも大人も関係のないエネルギーに満ち満ちた一体感、そして森の中に響きわたるケロポンズとこどもたちの美しい歌声はこれ以上ない最高の癒やしです。
それから、思い起こせば10数年前のこと。当時、THE HIGH-LOWSとしてグリーン・ステージに立っていた甲本ヒロトさんが「ロックを好きなのは僕だけだと、ずっと長いこと思っていた。けれど、ロックを好きな人が自分以外にもこんなにもいっぱいいたと知れて嬉しい。ありがとう、フジロック」といった内容の言葉を集まった超満員のオーディエンスに向かって語りかけた場面があったのですが、<フジロック>で号泣したのはこの時以来のことでした。
これらの忘れられない2つのシーンに共通していたのは音楽が与えてくれる力のひとつである「肯定感」で、ヒロトさんの言葉はロック好きな自分を肯定してくれ、ケロポンズが見せてくれた景色はこどもを抱えて苦労して辿り着いた人だけが見ることのできるご褒美のようでしたし、迷いの多かった当時の自分を丸ごと包み込んでくれました。しんどい時もそうではない時も、自分を肯定してくれる人や言葉、音楽などの拠り所がありさえすれば、心を強く持つことができますし、音楽やアーティストたちは様々な気づきを与えてくれますよね。この有事において、乱れた心を落ち着かせてくれたのはケロポンズの歌う「にじ」でした。
これは筆者の「にじ」物語ですが、この作品が生まれ歌い継がれてきた30年の間には多くの異なるストーリーが生まれてきたことでしょう。この作品をご存じの方も、初めて聴く方も、先日公開されたMVをぜひご覧になられて、いっときでも音楽の優しさに包まれてほしいです。
最後に、ケロポンズからのメッセージをご紹介します。
「今はみんなとっても大変な時だけど、そんな今だからこそ、普段私たちが当たり前と思ってる日々の尊さに気づかされます。みんなで過ごすこと、行きたいところにいけること、何よりも安心して空を見上げることができること。
でも、ずっと雨の日が続くわけないよね。きっといつか光がさして虹が見えるはず。そう信じてる。だから、今の中でそれぞれ楽しみを見つけてやってみよう。大変な時は、大切なことに気づく時、なんじゃないかな。
みなさんご存知の「にじ」(詞:新沢としひこさん、曲:中川ひろたかさん)がアニメーションになりました! なんと今をときめくイラストレーターの多田玲子さん&下平晃道さんご夫妻、アニメーション作家のせきやすこさんによる素敵なアニメです。編曲はEテレ「0655」や「2355」でもおなじみの近藤研二さん。歌はケロポンズ。
朝に昼に夜に、ぜひご覧ください。うれしい時、しんどい時、ぜひ一緒に歌ってください。
大変な中でもみなさんの日々に光がすこしでも差しますよう願っています」
文・撮影◎早乙女‘dorami’ゆうこ
◆早乙女“ドラミ”ゆうこの【音楽ギョーカイ片隅コラム】
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