【インタビュー】海蔵亮太、新たな一面を見せたニューシングル

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『第 61 回輝く!日本レコード大賞』新人賞を受賞したシンガー・海蔵亮太。カラオケ世界大会(KWC)で2016 年、2017 年の2 年連続で世界チャンピオンに輝き、数々のカラオケ歌番組でも賞を獲得するという歌唱力の持ち主でもあり、2019年には病院を訪問しライヴを行い“ホスピタルプリンス”と呼ばれるなど、精力的な活動を続けている。

◆リリックビデオ ほか

そんな彼が6月10日にリリースした最新シングル「素敵な人よ」は、失恋がテーマの楽曲。どうやらこの曲には彼の消えない痛みが宿っているとのことだ。楽曲を通して垣間見られた彼の内面と歌への強いポリシー。シンガーとして、なによりも人として、彼がまだまだ羽ばたいていくことを予感させた。

  ◆  ◆  ◆

■30目前にしてこういうことに挑戦できて良かった

──緊急事態宣言が発令されていた時はどうなることかと思いましたが、予定通りシングルがリリースされてほっとしました。

海蔵亮太:本当に良かったです! 東京アラートが発令されたときはちょっとひやっとしましたけど、リリース日には配信ライヴやネットサイン会も開催できました。ほんと、今の時代はすごいですよね。インターネットはこんな事態になっても応援してくださるみなさんとつながりを持てる、すごいツールだなと肌で感じました。

──海蔵さんはもともとYouTubeに、自宅で撮影した動画をアップしてらっしゃったので、自粛期間中も引き続き発信ができたのも良かったのではないでしょうか?

海蔵:自粛期間中はいままでやれなかったことがいろいろできましたね。家にいる時間が長いぶん自炊もしたし、掃除洗濯もしっかりやれました。おっしゃっていただいたYouTubeもそうで、ひとりカラオケの動画もアップできましたね。

──YouTubeの動画は、もっと人となりを知ってもらいたいという想いからアップしてらっしゃるんですよね。

海蔵:僕自身、好きなアーティストさんの歌はもちろん、その人の価値観にも惹かれることが多くて。自分にないものを持っている人や、“素晴らしい考えを持っている人だな”と思う相手が魅力的に見えるんです。だからその人の歌を好きになる理由は、その人の人柄にあるなと感じていて。自分が歌を発信する立場になって、“人柄を知ってもらいたい”と思うことは自然な流れだったんです。

──それは自分のキャラクターや個性を大事にしたうえで、ということでしょうか。カラオケ世界大会(KWC)でも個性を生かした歌で日本代表を勝ち取ったとお聞きしましたが。

海蔵:“こういうふうに歌いたいな”というのが個性であり、“自分はこういう人間だ”という証明なのかな(笑)。KWCは各国のみなさんが僕以上に自分自身をさらけ出すというか……もう“わたしを見て!”“僕を見て!”って域の人たちばかりだったんです。僕も学生時代から人前に立って何かすることはまったく苦ではなかったし、学級委員や部活のキャプテンをやるタイプではあったので、KWCに参加したことで感化されたところはあるかもしれません。ありのままの自分を観ていただいて、それを応援していただけるなら、それが聴いてくださる方々にとっても僕にとってもいちばんいいんじゃないかなと思いますね。

──今回のシングル「素敵な人よ」は、海蔵さんの新たな面を見ることができる作品だと思います。

海蔵:いろんな音楽に挑戦していくなかで、「素敵な人よ」に出会いました。最初に聴いた時は不思議でもあり、その不思議さが心地よかったんです。その感覚が“これを歌ったらどうなるんだろう?”というわくわく感を呼び起こしたんですよね。そのあとに作曲家の方々が韓国のクリエイターさんだと知って、最初に感じた“不思議さが心地いい”は韓国のエッセンスとJ-POPのエッセンスの融合から来るものだったのかな、と思いました。



──歌詞で描かれているのは失恋ですよね。海蔵さんはこの楽曲の主人公に共鳴する部分も多いのでしょうか。

海蔵:実は作詞をしてくださったシンガーソングライターのKAB.さんが最初書いてくださった歌詞は、もっと男らしい主人公像だったんですよ。でも実際の僕は若干女々しいところがある。やっぱりこれから歌い続けていくものなので、今の自分に近い感覚の言葉を表現したい気持ちがあるんですよね。それでKAB.さんに女々しい成分を入れていただけないかお願いをしたら、自分の感覚に当てはまる言葉がたくさん入った歌詞が届いたんです。“これなら自分の感情を表現できる”とつらい過去を掘り返して(笑)、その当時の気持ちや感情を歌に落とし込みました。

──過去というと、どれくらいの時期でしょう?

海蔵:……聞きます?(笑)

──あははは。出来る範囲内で(笑)。
 
海蔵:いちばん“ああ、しんどい!”と思ったのが二十歳くらいの頃で。でも時を経たことで“こういう経験や想いをしたからこそ、次に進む時に大きく成長できる。だからこそ今の自分がある”という気持ちが強くなったんですよね。だから「素敵な人を」も“さようなら”ではなく“ありがとう”と締めくくるところにしっくりきて。

──失恋は愛しい人を失うだけでなく、自分の幼いところや欠点が浮き彫りになるのもヘビーですよね。“わがままだけの 僕を殴りたい”という歌詞もありますが。

海蔵:“100%自分が悪い”、“なんで自分はクズなんだ!”って気持ちになっちゃいますよね。そういう女々しさが、曲の雰囲気とも合ってるなと思います。サブタイトルがつくなら“女々しくて”ですね(笑)。この“ありがとう”は強がりのような気もしていて。まだ好きだから寄りを戻したいけど、どうにかしようと足掻いたところで悲しくなるのは自分だし。だから強がってでも“ありがとう”と言うことで前に進もうとする──そういうスタンスの女々しさですね(笑)。

──ここまで後悔と反省をしていて、まだ好きなのに、お別れした相手は“僕”のその気持ちを知らない。それを伝えないのも女々しさ故と……。

海蔵:ラブソングは好きなんですけど、「素敵な人よ」は自分のパーソナルな部分をさらけ出す曲なので、歌ううえでこんなに悩むんだなー……と。こういう気持ちに共感してくださる人もいらっしゃるんですけど、失恋の女々しさのなかでもピンポイントの部分が綴られているので、共感できない人はできないと思うんです。自分のそういう気持ちを、ひとりでも多くの人に届けるにはどうしたらいいんだろう? とすごく考えましたね。人に恋バナとかしないタイプなので、人にはなかなか言えなかった部分をさらけ出すような──丸裸になった気分なんです!(笑) 恋バナを飛び越えて過去の恋愛の悲しい赤裸々な部分を見せちゃってるなあ……。


──でも海蔵さんは男らしい主人公の「素敵な人よ」ではなく、ご自身に近い主人公像をお選びになった。

海蔵:そうなんですよね。最初に話したこととつながってきますけど、やっぱり歌を好きになって、最終的には僕という“人”を好きになってほしい。だから「素敵な人よ」では“あ、海蔵亮太にはこういう一面もあるんだ”と知っていただけたらうれしいですね。“つらいことも悲しいことも、最終的にはきっといい経験になる”とポジティブな方向に切り替えるクセがあるので、歌詞にはそういう面が表れてなくても、歌でそれが表現できていたら、世界観としてそのニュアンスが伝えられるのかな……と思いますね。

──そうですね。ポジティブな方向に舵を切る前に、ものすごく深く傷ついていらっしゃるんだろうな……というのも伝わってきます。

海蔵:あははは! 本当にそう! ダメージを食らいやすいんです(笑)。そういう面をあんまり知られたくないし、“全然平気だよ~!”と言ってみるんですけど、いろんな曲を出すごとにどんどん剥がれていって、“本当は弱いんだろうな、でもポジティブに生きようとしてるじゃん”とバレていってる感覚はあります(笑)。

──特に「素敵な人よ」は、音源で聴くと切ないというよりはポジティブな印象を受けたのですが、リリース日に開催された生配信ライヴで初披露なさった時はとっても切なく響いてきて。

海蔵:初めて人前で歌う場所が無観客生配信という経験は初めてだったので、観てる方々の空気感を感じられないぶん、より緊張が高まってしまったのもあるんですけど……自分の過去と対面している時間のような感覚があったんですよね。この曲を歌う時は、自分の弱い部分と向き合わなきゃいけない。だから“みなさんに聴いてもらう歌”ではなく“自分の叫び”になってしまったなー……これって歌なのかな? と落ち込んで。

──“これって歌なのかな?”というと?

海蔵:もっと余裕をもって丁寧に自分の気持ちを伝える歌は、聴いてくださる方々の気持ちが入れられる隙間を作れると思うんです。でも「素敵な人よ」は今まで人に見せたことがない部分を見せているし、自分の気持ちが強すぎるぶん歌が荒れる! 初めて人前で歌ってみて気付いてめちゃくちゃ反省しました。YouTubeにその時の映像をアップしたのは戒めの意味もありますね(笑)。


──(笑)。歌に入り込む海蔵さんの姿、目を見張るものがありました。きっとまだその失恋の傷は消えてないんでしょうね。

海蔵:この気持ちはずっと消せないんだろうなと思います。年月を経るごとにどんどん輪郭はぼやけていくんだろうけど、墓場まで持っていくんだろうなー……。

──曲になったということは、歌うたびにその時の気持ちが蘇ってくるということでしょうし。

海蔵:そうなんですよ! 罪な曲ですよね(笑)。過去の事実はもう変わらないし、今の僕にとって「素敵な人よ」はまだ“センシティブで見られたくない恥ずかしい部分”。だけど前に進んでいく自分の価値観や思考は変わっていくので、きっと「素敵な人よ」の捉え方も変わっていくと思うんです。「愛のカタチ」も歌詞に綴られている出来事が実際に自分の身の回りで起きたことで、それまでの歌とは違う表現になっていったので、きっと「素敵な人よ」でも時が流れていくにつれて、また違う「素敵な人よ」が生まれてくるんだろうなと感じています。

──そうですね。“人となりを知ってほしい”とおっしゃるなら、こういう曲はやはり必要なんだろうなと。

海蔵:たしかに、30目前にしてこういうことに挑戦できて良かったのかもしれない。曲は子どものような存在なので、「素敵な人よ」とも成長し合える関係になっていけたらいいなと思いますね。


──カップリングの「紫陽花」は美しくて個性的なメロディラインが特徴的なミッドナンバー。歌ううえでかなり難易度の高い曲だとお見受けしますが。

海蔵:おっしゃっていただいたとおり、僕も最初聴いた時すごくメロディが素敵だなと思ったんです。歌うの大変そうだなとは思いつつも、その美しさにどうしても歌いたい、歌いこなしてみたいという好奇心のほうが強くなりました。

──歌詞は具体的なようでいて、抽象性が強いですよね。

海蔵:そうですね。だから“紫陽花”も“花”としてではなく“人”っぽく捉えて歌ってみました。この曲もちょっと悲しいような、果敢無いような印象を持っています。今回のシングルはそういう曲が多いですね(笑)。

──(笑)。Type-Aにはbutajiさんの「抱きしめて」カヴァー、Type-Bにはコブクロの「風」のカヴァーが収録されていて、この2曲も海蔵さんの新しい扉を開く曲になったのではないでしょうか。

海蔵:まず「抱きしめて」は制作をサポートしてくださっている方から教えていただいて、“この曲、海蔵に合うよ”と言ってもらったんですけど、僕は最初“絶対合わないな”と思ったんです(笑)。自分が今まで聴いてきた音楽ジャンルでもないし、世界観も不思議だったので、歌えるのか不安だったんですけど、実際練習してレコーディングしたらすっごく楽しかったんですよね。今までは言葉を丁寧に伝えることに重点を置いてきたんですけど、「抱きしめて」は曲の世界観を引き立たせる表現ができた。そういう表現がしたい自分がいるんだ!という気付きにもなりましたね。

──「抱きしめて」は原曲も楽曲のムードや声の質感が重要な楽曲ですものね。それが海蔵さんの爽やかさと包容力で昇華されている印象がありました。

海蔵:わ、嬉しい。こういうR&Bテイストの楽曲はこれまでちゃんと歌いこんだことがなかったので面白かったし、大人だな!って感じがしましたね。コブクロさんの「風」は小学生くらいの時に出会った曲で、“薄手のシャツじゃまだ 少し寒い春の”という歌詞になにそれ!? って思ったんです。シャツに薄手も厚手もないだろ!? って。

──あははは。小学生にはシャツの厚さの概念がなかった(笑)。

海蔵:歌詞に衝撃を受けてからずっと気に入って聴いている曲で、今回カヴァーさせていただけることになってものすごく嬉しかったです。でもレコーディングがヴォーカルとピアノの同時録音だったんですよね。僕がもし歌をミスったら、ピアノを弾いてくださるトオミ(ヨウ)さんにまたやり直しをさせてしまうことになるので、最初の“やった~! カヴァーできる!”という気持ちとは逆に、レコーディングは“失敗したらどうしよう!”とものすごく緊張しました(笑)。これまで歌い続けてきた軌跡だけでなく、そういう緊張感も封じ込められていますね。

──ピアノ伴奏と歌のみなので、歌詞と歌に集中できるアレンジだと思います。特にピアノの音が抜けてアカペラになる部分、とても印象的なセクションで。胸がきゅっとなるような感覚がありました。

海蔵:あそこは“歌うことに集中しなきゃ!”と“失敗したらどうしよう~!”の葛藤がありましたね(笑)。それがいい方向に転がって、叫びのような歌になりました。本当に歌詞が秀逸な曲だと思いますし、自分らしく歌えたと思います。


──いろいろお話を伺って、歌には歩んできた人生が表れるんだろうなと思いました。海蔵さんが“歌にはリスナーさんの気持ちが入れられる隙間がないと”と考えるのは、歌手デビュー前に接客業をやってらっしゃったことも影響しているのではないかと。

海蔵:ああ、そうかもしれない。社会に出て接客業をして“本当にいろんな価値観を持った人がいるんだな”とつくづく感じたんですよね。それぞれにそれぞれ違ういいところがあって、毎日違う価値観を持った人が集まって──そういうのを見ていてすごく面白いなと思ったんです。やっぱり、僕は人が好きなんですよね。人が好きだからこそ相手のことを知りたいと思うし、僕のことも知ってほしいなと思う。今の僕にとってその方法のひとつが“歌”なんだと思います。聴いてくださるみなさんと仲良くなりたい。歌を歌わせてもらう前と今も、考え方はあまり変わってないのかもしれないですね。

──もっと仲良くなるためにも、無事に秋のツアーが開催できるといいですね。

海蔵:そうですね。ライヴ自粛でなかなかみなさんと会えない日が続いているので、ツアーではみなさんがいるからこそ表現できる歌を届けていきたいです!

取材・文◎沖さやこ

「素敵な人よ」

2020年6月10日発売

Type-A (CD+DVD)CRCP-10447 ¥1,818+税


Type-B(CD)CRCP-10448 ¥1,091+税


Type-A収録内容
[DISC1(CD)]
1. 素敵な人よ
2. 紫陽花
3. 抱きしめて
4. 素敵な人よ(Instrumental)
[DISC2(DVD)]
LIVE DAM STADIUM presents
海蔵亮太 LIVE 2019『Communication Vol.2』
東京公演 @ duo MUSIC EXCHANGE (2019.09.07)より
・たいせつなひと
・LOVE LETTER
・ぬくもりを残して
・愛のカタチ
・Stripes
・イッショケンメイ
・コーヒーカップ

Type-B(CD)収録内容
1. 素敵な人よ
2. 紫陽花
3. 風
4. 素敵な人よ(Instrumental)

ネットサイン会

2020年6月19日(金)20:00〜

詳細・購入はこちら:https://muvus.jp/muvus/cmdtyList.php?cat=pvTyJmSVhAGU
※購入は同日15:00まで

<LIVE DAM Ai presents 海蔵亮太 LIVE 2020>

2020年9月12日(土)仙台公演 会場:誰も知らない劇場
2020年9月18日(金)名古屋公演 会場:ダイアモンドホール
2020年9月20日(日) 福岡公演 会場:スカラエスパシオ
2020年9月21日(月・祝) 大阪公演 会場:大阪ビジネスパーク円形ホール
2020年9月26日(土)横浜公演 会場:横浜ランドマークホール

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