【取扱説明書】Mrs. GREEN APPLE ベストアルバム『5』、発売直前にその魅力と軌跡を徹底解説

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Mrs. GREEN APPLEが2020年、メジャーデビュー5周年を迎える。これを記念して7月8日にリリースされるベストアルバム『5』は、彼らの“フェーズ1完結”を意味するものだ。

◆Mrs. GREEN APPLE 画像 / 動画

“ミセス”の愛称で親しまれる彼らだが、プロデューサーが存在せず、すべてを自らの手で築き上げてきたバンドのリアルはあまり知られていない。作品を発表するごとに大胆な変貌を遂げ、新時代の可能性をあらゆる角度から体現してきたミセスの魅力を徹底解剖すべく、そのキャリアを紐解く“『5』取扱説明書”をお届けしたい。


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【chapter 1】変幻自在な音楽性と多種多様な代表曲

■音楽的振り幅の広さこそ
■Mrs. GREEN APPLEの真骨頂

Mrs. GREEN APPLEがどんなバンドなのか、それをひと言で説明するのは、とても難しい。ポップでキャッチーな歌もあれば、ゴリゴリのダンスチューンや、ビックバンドテイストの楽曲もある。そうかと思えば、アコースティック色の強いバラードで聴き手を唸らせると、一転して、アグレッシブなロックを轟かせる。実に変幻自在で、掴みどころがないのだ。

そのため、彼らのコアファンに“Mrs. GREEN APPLEの代表曲は?”と訊ねたとしても、回答はきっと、十人十色だろう。裏を返せば、代表曲を絞り込めない音楽的振り幅の広さこそが、Mrs. GREEN APPLEの真骨頂なのだ。

事実、日本レコード協会が発表している主要ストリーミングサービスの再生回数において、ゴールド認定 (累計5千万ストリーム以上)には「青と夏」「インフェルノ」「WanteD! WanteD!」の3曲、シルバー認定 (累計3千万ストリーム以上)でも「点描の唄(feat. 井上苑子)」「僕のこと」「ロマンチシズム」の3曲がランクイン。非公式ながら、独自にこれらの認定数を単純計算すると、Official髭男dism、あいみょん、King Gunに次ぐトータルストリーミング数に位置しており、ストリーミングサービスにおいても、彼らの人気曲は、1点集中ではなく、幅広く、しかも高いレベルで人気を集めていることが分かる。

そうした結果を踏まえて生まれたのが、“15曲の代表曲”に再録曲、新曲を加えた、このベスト盤『5』だと言えるのではないだろうか。では一体、これらの代表曲はどのような歩みの中で生まれてきたのだろうか。その原点を探ってみよう。


▲大森元貴 (Vo / G)

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【chapter 2】驚くべき原点と早すぎる才能の開花

■大森少年、小6でバンド結成
■当時からオリジナル曲制作も

全楽曲の作詞/作曲/編曲、さらには作品のアートワークおよびミュージックビデオのアイディアまで、楽曲に関するすべての要素を担当しているのが、大森元貴 (Vo / G)。彼は小学6年生でバンドを結成し、卒業式の謝恩会で、既に自ら作ったオリジナル曲を、ベースを弾きながら歌っている。

中学生になるとベースをギターに持ち代え、アップル社“GarageBand”を駆使し、パソコンを使ったDTMによって、オリジナル曲の完成度をより向上させていく。しかも、すべて独学で。

驚くべきことに大森は、この段階で音楽の道で生きていくことを決意し、そのことを自分に課すために、高校は通信制を選択。すべての時間を音楽に捧げ、自宅で楽曲制作に没頭する日々を過ごしていたという。そして高校1年生の終わりに、中学時代の同級生であった若井滉斗 (G)に声をかけ、Mrs. GREEN APPLE結成へとつながっていく。大森と若井、16歳の時である。当時のバンド構想は、大森が某ラジオ番組で語ったところによると、以下のようだったという。

・キーボードがキャラの立つ派手な人
・メンバーに女の子がいる
・年齢はバラバラ

さらに演奏力よりも“人柄”を重視し、藤澤涼架 (Key)と山中綾華 (Dr)に声をかけ、Mrs. GREEN APPLEが結成された(現リーダーの高野清宗(B)は、後にオーディションにより加入する)。つまり彼らは、友達としてのつながりが基軸にあったわけではなく、明確にデビューを目的として集合した、十代にして大いなる野心とプロ意識を持ったバンドだったのだ。

なお、Mrs. GREEN APPLEというセンスが光るネーミングは、誰もがイメージを浮かべやすい抽象的な言葉として、爽やかで、赤く熟す前の未熟さも内包した“GREEN APPLE”に、言葉の響きがよい“Mrs.”を付けて生まれたものだという。バンド名に大げさな意味を込めずに、ある種、意味のない名前に対して、その後の自身の活動によって意味を持たせていくということこそが、その後の大森の使命だったのかもしれない。


▲高野清宗 (B) ※“高”の正式表記は“はしごだか”

■自主制作〜メジャー初期
■ハイトーンの質感とシニカルな歌詞

そして2014年、今回のベスト盤で新たに録音し直された「スターダム」などシークレット曲を含む計6曲を収録した自主制作ミニアルバム『Introduction』を制作すると、翌2015年には、初の全国流通盤となったミニアルバム『Progressive』を発売。この作品には、ベスト盤と同時リリースされるライブ映像作品『EDEN no SONO Live at YOKOHAMA ARENA 2019.12.08 』でもラストを飾っている彼らの人気曲「我逢人」が、既に完成形として収録されている。この才能の開花具合は、正直、驚きに値する。

そして同年、バンド結成からわずか2年後という速さでメジャーデビューを果たした。その幕開けが、ミニアルバム『Variety』の1曲目に収録された「StaRt」に他ならない。軽快なビートとポップ感を醸し出すギター&シンセのフレーズ。キャッチーなメロディを表現力豊かに歌う大森の声色。この時点で、現在に続くMrs. GREEN APPLEサウンドは確立されており、意志の強さに加え、色気までを持ち合わせた大森のハイトーンボイスの質感とは対照的なシニカルな歌詞も、既に大森の独壇場となっていた。

2015年12月に1stシングル「Speaking」を発売し、翌年1月にリリースした1stフルアルバム『TWELVE』には、大森が高校2年生の時に“人”というものの概念を歌った「パブリック」を収録。アルバムは、オリコン10位を記録した。




■同業アーティストからも愛される
■全世代に彼らの音楽が響く理由

そんなMrs. GREEN APPLEの歌は、彼らと同世代の20代男女を中心に、中高生から小学生、さらにはその親世代にまで広く届いている。ファン層の幅広さは、同業者であるアーティストにおいても同様だ。ベスト盤の公式特設サイトには、いしわたり淳治、大家志津香(AKB48)、亀田誠治、かれん(Little Glee Monster)、キヨサク(MONGOL800)、私立恵比寿中学、高橋みなみ、武部聡志、蔦谷好位置、mabanua、MAMI(SCANDAL)、水野良樹(いきものがかり)といった、実に多種多彩のアーティストがコメントを寄せている。

加えて、二宮和也(嵐)やタレントの滝沢カレンもファンであることを公言し、フィギュアスケート金メダリストの羽生結弦選手も、かつて“前向きになれる曲”として「StaRt」を挙げている。さらには、ベテランミュージシャン吉田拓郎も5人の実力を絶賛するなど、Mrs. GREEN APPLEが生み出す音楽は、世代やジャンルの垣根を超えて支持を集めていった。

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