【鼎談・後】鮎川誠(SHEENA & THE ROKKETS)×ジョニー・ダイアモンド&ナオ(首振りDolls)、生き様で示すロック礼讃

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鮎川:そうね。子供が出来て、そのタイミングでバンドが結成されて上京して。本当にドラマみたいだった。俺たちの頃は前例が無かったから、なんでもやれたからね。でも、あの頃の気持ちと今もロックに対する気持ちは何も変わっとらん。この取材に来る前まで、編集をしとったんやけど、さっきもちょろっと話したけど、今、友部と三宅と俺の3人で3KINGS(鮎川誠・友部正人・三宅伸治)っていうバンドをやっとるんよ。3KING RECORDSっていうのを作ってて。自分たちがやる前にも日本語のロックっちゅうのはあったと思うけど、アティチュードっていうのかな、自分らがブルースからもらったあのフィーリングっていうのは、高田渡から自分は教わったのかもしれんなって思う。はっぴいえんどの細野さんが作るウエスト・コーストミュージックやサザンビートを取り入れてロックを作るっていうのは、もうお手本があったからね。

ナオ:すごく分かります。私も生まれる前の日本のロックも大好きだし、フォークも歌謡曲も全部好きなんで、いろいろと自分なりに分析するんですけど、サンハウスって歌詞もサウンドもやっぱり最高なんですよね。独特というか、唯一無二というか。

ジョニー:僕もそう思います。サンハウスの1stアルバム『有頂天』の音こそがロックだと思っているんです! 日本のマーシャルとギブソンの音はこれだと勝手に思ってるんです!  死ぬほど聴きましたし、いつのまにか手癖になるくらい弾いたんです。鮎川さんのギターこそが、日本のロックだ! って。

ナオ:分かる! 夢中になったのは、きっと鮎川さんのギターだと思う! シーナ&ロケッツのギターもなんですけどね。

鮎川:ありがとう。そうかもね。よそのバンドよりもギターの役割は多いかもね。

ジョニー:本物だなって思います。本当に理想の音というか。その音を出したくて、あんな風に弾きたくて頑張ってる気がするんです。


鮎川:分かるよ、その気持ち。ギタリストとしてね。俺もピーター・グリーンみたいに聴こえる様に弾きたい! とかね、ロキシー・ミュージックも大好きだったから、フィル・マンザネラみたいな発想でギターを弾いてみたい! とか、そのときそのときで思うよね。なんていうかな、ロックと繋がっていたいんよね。曲を作るとき、こんなイントロで始まったらカッコイイとか、ここから歌い出したらカッコイイとか、終わりはこんな風に終わろうとか、最初は大きな設計図があるんよね。そこはみんながヴィジョンやイメージを共有してるから、それでいいんよ。それも含めて自分達しか出来ない、自慢すべきことなんよ。デヴィッド・ボウイやイギー・ポップみたいに新しい試みをしよる音楽からもたくさん影響を受けたけど、ギター1本のフレーズからロックは始まっとるというのは、長くブルースバンドをやって来たから分かるところなんやろなって思う。歌がカッコ良くないと。テンポで音楽を作るわけでもないし、コードで作るわけでもないし、人間の声やけさ、それがどうカッコ良く聴こえるかっていうところでギターを弾くんよ。ガーンって、歌い出したときに一緒に音を出して、ジャッだけ大きくして、あとはミュートするんよ。そうすると歌が抜けて来る。ギターを主張しようと思ったら、歌を消してしまう。それじゃダメだから。ロックのギターは、歌の為に弾くんやから。

ジョニー:(完全に対談であることを忘れて無言で聞き入るジョニー)

ナオ:シーナ&ロケッツの『ROKKET RIDE』を聴いたとき、アルバムを通して、こんなに激しい音色なのに、歌がすごく飛んで来るし、抜いてるところは抜いてるし、すごいなって思ったんです。音の在り方がすごい。

鮎川:そんなふうに聴いてくれたら嬉しいよ。“これがロックたい!”っていうのを、まだまだこれから見せ付けていこうと思ってるから。3KINGSの他にも、三宅伸治と2人でTWO TRAINSっていうバンドもやっているんだよ。

ナオ:なんですかそれ! めちゃくちゃカッコイイ名前じゃないですか!

ジョニー:どんなサウンドなんですか?

鮎川:TWO TRAINSには、忌野清志郎の血も入って来るんよ。「ロック・ミー・ベイビー」も演るし、「レモンティー」も演る。2人だけだからものすごいロックが出来るんよ。三宅が足でリズム取って、それをマイク付けてベーアンに繋いで音を出すんよ。それがカッコイイんよ。

ジョニー:カッコイイ! 見たいです!

鮎川:シーナ&ロケッツももちろん、メンバーは奈良と川嶋だし、誇りを持ってるからね。みんなに聴いて欲しい。70年代のウッドストックみたいな感動をもう一度再現したい。まだ夢見てるよ。みんながそれぞれ違う考え、違う個性を持っていて、喋る言葉がなまっているとか、余計なことを言われる様なことがない、“お前が最高たい!”ち言いよる音楽がロックなんよ。“お前、最高に生きろよ”って言うてくれるのがロックやけん。そんな音楽を叫びたい。ロックが俺を育ててくれたし、生かしてくれとおし、まだやれるけ頑張りって言ってくれとる。俺が生きとるのはロックとシーナのおかげ。みんなに出逢わせてくれたんは、本当にシーナのおかげやと思っとる。シーナのボーカルでギターを弾けたことで、どんだけイイカッコさせてもろたか分からんと思うよ。

ジョニー:はぁ〜(完全に対談であることを忘れて無言で聞き入り、感動するジョニー)。

鮎川:シーナとは、36年一緒にやってきたけど、どんどん上手になってったわけではなかったんよ。そのときからいつもフルスロットルやった。コステロのオープニングアクトやったときも、“こんな若造に負けてたまるか! ちょっとメガネが似とるくらいで、絶対に負けん!”って思いながらステージに立ったからね。でも、コステロも、シーナが楽屋に遊びに行って、シーナが英語の歌詞カードを見て写した、自分用の歌詞ノートにキンクスの歌詞が書いてあったのを見て、ものすごく喜んで、“あ、ここは違う違う”とか言って、ペンを持って来て直してくれたりしよって。

ジョニー:すげぇ(感動)。

ナオ:もう話のレベルが違いすぎて、“すげぇ”しか言えんよね(笑)。でも、みんなロックに魅せられる感じは同じなんだなぁ〜。

鮎川:本当にそう。みんな憧れてるんよね、ロックに。ロックに生かされとるんよ。

──2月14日にリリースされた、シーナさんのラストレコーディング7曲も収録された“ライフタイムカバーアルバム”『LIVE FOR TODAY ! -SHEENA LAST RECORDING & UNISSUED TRACKS-』には、そんな憧れが詰め込まれていますよね。聴かせて頂きました。

鮎川:おぉ、ありがとう。

ジョニー:僕も聴かせてもらったんですけど、本当にめちゃくちゃよかったです! 本当に。すごくカッコ良かったです!

鮎川:最高たい。本当に最高のアルバムやと思っとるけ。あんな形でアルバムが出せたことが本当に嬉しい。

──キャリア初のカヴァーアルバムですもんね。こんなにも音楽を続けてらして、キャリア初というのがすごいです。今までもカヴァーはしてきていらっしゃいますけど、なぜ、今まで“カヴァーアルバム”としてはリリースされていなかったんですか?

鮎川:カヴァーっていうのは、バンドの腕の見せ所やと思っとったし、そのバンドの素姓が何処から来とるかっちゅうのが分かるとこでもあると思うから、そこをファンの人に知ってもらえるのはとても楽しいことやし、ファンも嬉しいだろうから、これまでもちょくちょくは作品の中に入れて来たんやけど、カヴァー曲ばかりでアルバムを作るというのは、昔はちょっと自分たちのプライドもあったというか。自分たちでも曲を作って歌っているから、それを1曲も入れんとカヴァーだけでアルバムを作ったら、曲が出来ないからカヴァーアルバムで誤魔化してるんじゃないか? って思われるのが嫌っていう思いがあったからね。

ジョニー:なるほど。でも、本当に、カヴァーってバンドの腕の見せ所だし、そのバンドの素姓が何処から来てるかが分かるから楽しいですよね。すごく分かります、それ。

鮎川:カヴァーってやるのも楽しいからね。俺たちはスタジオに入るとき、いつもカセットテープにリハの音を録音していたんだけど、毎回思い付いたカヴァーをしてみたりしてたんやけど、今もそのカセットテープは取ってある。

ナオ:宝物ですね。

鮎川:そう。俺だけの宝物。

──素敵な宝物ですね。本当に世界に1つしかない宝物。今回、『LIVE FOR TODAY ! -SHEENA LAST RECORDING & UNISSUED TRACKS-』の中で個人的にめちゃくちゃ好きだったのは「KISS KISS KISS」のピッキング。最高でした!

鮎川:良いよね! あのピッキング! そうなんよ。あれにもストーリーがあってね。オノ・ヨーコがスタジオに来てくれるんよ。せっかくヨーコさんが来てくれるなら、ジョンの曲かヨーコさんの曲をやりたいね! って言うて。ニューヨークでの話なんだけどね。それで、シーナが「KISS KISS KISS」を歌いたいって言ったから、じゃあそれにしようって決めて。みんな“ヨーコさんに聴いてもらえるかもしれないから!”っていう想いで演ったから、ものすごい力が発揮されて(笑)。あれは1発録り。俺たちからのラブレター。下手な字で書いたラブレターで良い。ヨーコさんとても喜んでくれて、家にも招待してくれたんよ。

──カヴァーって、またオリジナル曲とは違った思い入れがありますからね。そこも含め、愛しさがサウンドに詰め込まれてる気がします。

鮎川:そうね。本当に。好きなアーティストの曲ばっかり集めて入れてあるからね、今回も。ただ、最初はシーナのラストレコーディングの7曲だけを出したかっただけだったんよ。本当は、『ROKKET RIDE』を作ったときに1日余ったけ、次のアルバム用にちょっとスケッチしようかって、“んじゃあ1曲目何にしようか「Loudmouth」やってみよか!”って。イントロかき鳴らしたら、シーナが隣で“You're loudmouth baby!”って叫びよって。

ジョニー&ナオ:おぉ〜〜〜〜! いいですね!

ナオ:テンション上がりますよね! 

鮎川:そう。でも、「Loudmouth」弾いてたとき、途中で弦が切れたんよ。肝心なとこでね。始まってすぐのとこ。

ジョニー:え〜〜~っ!? で、どうしたんですか?

鮎川:辞めたらカッコ悪くなると思って、最後まで弾き続けた。ちょっと変な音になっちゃうけど、なんとかなるから! 

ジョニー:すごい。でも、それこそロックですよね!

鮎川:そうやね。

ナオ:カヴァーがバンドの腕の見せ所というところなんですけど、私が初めて「You Really Got Me」って曲を知ったのは、初めてこの曲を聴いたのは、シーナ&ロケッツだったんです。1番最初に聴いた「You Really Got Me」は、シーナさんの歌声なんです! だから、自分の中での「You Really Got Me」って、シーナ&ロケッツなんですよね〜。その後に聴いたのが、ヴァン・ヘイレンの「You Really Got Me」でした!

──あ、私の最初の「You Really Got Me」はヴァン・ヘイレンだったなぁ(笑)。

ナオ:私はさらに、ヴァン・ヘイレンから、大元のキンクスに辿り着いたんです(笑)!

ジョニー:ロックってそういうもんですよね!

鮎川:そう。ロックってそういうもん。「You Really Got Me」の歌い出しは、“Girl, you really got me〜”なのに、シーナは最初からBoyって歌っているからね(笑)。ロックっていうのはそういうもんたい。やらされたロックじゃない。自分がロックで遊んどるんよ。自分たち流になっとるというか、せんといかんのよ。

ジョニー:すげぇ。やっぱカッコイイ!

ナオ:でも、本当にそうだもんなぁ。俺の中で「You Really Got Me」は、Sシーナ&ロケッツの曲なんやもん。

ジョニー:そうなったら勝ちよね。

ナオ:うん。そうよね。シーナ&ロケッツの音楽は、我が家では私が生まれた頃から既にそこにあったものだったんです。

ジョニー:そう。普通にもう実家にあったよね。

ナオ:そう。生まれる前からあった。

鮎川:ね〜。そう思うとすごいことだよね。幸せなことだよ。こんなに歳の離れたロック友達が出来るなんて。ものすごく嬉しい。

ジョニー:友達だなんて! そんなふうに言ってもらえてこっちこそめちゃくちゃ幸せです!

ナオ:高塔山ジャムで対バンさせて頂いたときの打ち上げで乾杯の後、鮎川さんとお喋りさせて頂いたんですけど、そのとき鮎川さんが、“もう俺たちはロックファミリーやけ”って言ってくれたんです。俺、その言葉が嬉しすぎて忘れられないんです! めちゃくちゃ家族に自慢しましたもん!


鮎川:今もその気持ちに変わりはないよ。俺たちはロックファミリーやけ。

ジョニー:僕は、そのとき、シーナさんと写真撮ってもらったんですよ。でも、やっぱり緊張して、ちょっと離れて隣に立たせてもらったら、シーナさんが、“もっと近付きなさいよ!”って、ギュッと肩を引き寄せてくれて。すごく嬉しかったんです!

鮎川:おー、本当? そんなことがあったとね? きっとシーナも嬉しかったろ。

ナオ:“可愛いね”って言ってもらったのすごく嬉しかったんです!

鮎川:シーナ、ナオのこと好きやったけね。

ナオ:わぁ〜! 鮎川さんに自分の名前を呼んでもらえるのだけでも嬉しいのに、そんなこと言ってもらえて光栄です! 嬉しいです! 純粋に!

◆(続き)「首振りDollsっていいやん、ニューヨーク・ドールズみたいで」
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