【インタビュー】HELL FREEZES OVER、1stアルバム『HELLRAISER』に詰まった“こだわり”の正体とは?

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■はじかれた人たちのための音楽
■みたいな自覚があるんです

──初期レイヴンかもしれませんね(笑)。でも、よくわかります。HELL FREEZES OVERの音楽は飲んだくれメタルでもないし、様式的なムードとか重厚な大御所感でもなく、少なくとも今はストリート感が似合うはず。なんだかこうして話を聞いていると、バンドとしていつかやりたかったことが今作で一度に実践できたようなところがあるんだな、と思わされます。

GAINER:そうですね。だいぶ無理矢理なところもありましたけど(笑)。

RYOTO:確かに。しかも今回、レコーディング費にしろ何にしろすべて自己負担という形をとってるんです。今回、レーベルとはライセンス契約という形にさせてもらっていて、これから海外のレーベルとの話も進めていこうとしてるところで。だからまあ、だいぶ初期投資をしてるんですけど、このコロナの影響で……

GAINER:活動がままならないために、本来回収できるはずだったものも回収できず(笑)。

RYOTO:結構なダメージを喰らってるのは確かです(笑)。

──だからこそこのアルバムを広めていかないと。ところで今現在、コロナ禍が続く中でなかなかこの先々の活動について具体的な話を聞きにくい状況にはあるわけですが、あくまで願望というか理想としては、どんな活動ができるようでありたいですか?

RYOTO:やっぱりまずはライヴが自由にできる環境が欲しいですよね。国内ツアーもしっかり回りたいし、今回行けなかった海外にももちろんガンガン行きたいし。ちゃんと向こうの会社と契約して、しっかりとツアーを組めるようにしたいし、フェスとかにもいっぱい出たい。ただ、とにかくまだ俺たち、広く知られてなさすぎるので。とにかく足を使って、もっと動き回りたいですね。

──今、動けないわけですもんね。

RYOTO:だからこそ、なおさらそう感じるんでしょうね。でも同時に、こういう状況が続いてる間に2ndアルバムに向けての準備もがっちり固めていきたいな、と思っていて。今、すでに4~5曲ぐらいはだいたいの形ができてるんです。だからこの動けない時間も無駄にはなってないですね(笑)。

GAINER:僕はもはや、さっさと次のアルバムを録りたいぐらいの気持ちがあるんです。曲作りのスピードとかまわりの状況とかとの兼ね合いもあるとは思いますけど。今の時点で、ただでさえ活動が失速してるのに、次の音源までそれを引きずるっていうの最悪だと思ってるんで。だからこそ今のうちから次のアルバムの準備をしておいたほうがいいってことは、今回のレコーディングをしてた頃から言ってたんです。それが今の僕らが何よりやるべきことじゃないかなって。とにかくバンドとして次のステップに向かっていかないといけないし、来年ちゃんと動けるようになったらなったで、そこでまたやるべきことが出てくるわけだから、今のうちにできることはやっておかないと。

──費用のことばかり言うわけじゃないですけど、この1枚だけですべて回収しようと思ってるわけじゃないんだな、ということがよくわかります。

RYOTO:そうですね。当然、長いスパンでは見てはいます。このアルバムが俺たちのすべてではないし、これからも続いていくし、これで完全に満足ということではないんで。ただ、今回挑戦したいろいろなことについては、どれもやるべき必要があったんだと確信していて。俺、これまでの人生で、やらなきゃ良かった、という後悔はしたことがないんですよ。もちろんやってみて駄目な場合もあるけど、そこで反省はしても、後悔はしないというか。今回もやっぱ、やって良かったなと思いますし。

──反省はしても後悔はしない。その姿勢は大事ですよね。ところで「ヘヴィ・メタル」と言った時に連想される音楽像、バンド像というのも結構さまざまだと思うんです。たとえばクラシック・ロックに近いものをその王道と見る人たちもいる一方で、エクストリームなものが最初から普通にあった世代というのもいるわけで。

RYOTO:そうですね。そう考えると、その中間で宙ぶらりんかもしれない、俺たち(笑)。なんかすごくアバウトな言い方かもしれないですけど、“はじかれた人たちのための音楽”みたいな自覚があるんです。日本って、なんかすごく“型”みたいなものを大事にしてるところがあるじゃないですか。ただ、結局みんなその“型”のなかに入ってはいるんだけど、そこにほとんど心は残ってないというか。そこで、いろんな人がはじかれてると思うんです。どこに行っても馴染めない人というのが結構いる。自分の場合も、やっぱり居場所がなかったんでこのバンドを作って、このアルバムを作ってきたんで。そういう同じ気持ち……アウトサイダーとか言うとちょっとカッコ良さげになりますけど(笑)、既存のものに馴染めない人、こだわりがある代わりにもどかしさを抱えて生きてる人……そういう人たちにはドンピシャな音楽なんじゃないかなと思う。

GAINER:僕の場合、音楽って、もう単純に感覚的にいいと思ったらそれでいい、というか。正直、そう思うんです。ただ、敢えて言っちゃうと……やっぱり飽和してるわけですよね。たとえば世間でポップだと言われてるようなバンドの音楽でも、実際に聴いてみると意外と複雑だったり、結構わけわかんないことやってたりするわけですよ。それって結局、世の中が飽和してて、ニーズがそういうところにあるから流行ったりするわけです。実際、今の人たち、特に若い世代には、複雑な音楽が好きな人って結構多いはずだと思うんですね。ちょっと難しいもの、わかりにくいものを受け入れてることで満足できてる人たちが。そういう人たちにも、僕たちの音楽は結構合うんじゃないかなと思っていて。歌詞も英語だし、曲も激しいし、展開もわりとあって、単純な“Aメロ、Bメロ、サビ”っていう曲じゃないし。ちょっと凝った音楽を好んで選んでるような若い世代にも、実は受け入れてもらえる音楽なんじゃないかと思う。

──今、メタルというとヴォーカルが“歌らしい歌”ではない場合も多いし、それがむしろ普通のことと認識されてもいますよね。そんななか、このバンドの特色のひとつと言ってもいいはずだと思えるのが、歌がちゃんとあることだと思うんです。

RYOTO:うん。そうだと思う。そこはこだわりたいと思いますね、少なくとも今は。うちのGAINERはちゃんと歌えるヴォーカルだし、曲にはメロディが必要だと思ってるんで。今は、そこはこだわりのひとつですね。いつかその要素がなくなるかもしれないけど。

GAINER:そうなったらちょっと僕には歌えないかもね(笑)。

──メロディはむしろギターなどに任せて、声を楽器のように使ったり、いろいろな種類の声を持っていることをアイデンティティとするようなヴォーカリストも少なくありません。

GAINER:そうですね。ただ……僕は今日、たまたまディオのTシャツを着てますけど、彼はそんなことをしてなかったと思う。たとえば亡くなってしまったチェスター・ベニントン (リンキン・パーク)にしてもいろんな声を持ってたけども、それ以前に“普通に歌ってて上手い”というのがあったわけだし。実際、いろんな声を使い分けてる人たちをすごいなと思って、自分でもちょっとやろうとしたことがあったんですよ、そういうことを。だけどやっぱり自分はそっちじゃないな、と思って。それで結局はロニー・ジェイムズ・ディオとか、ジャニス・ジョプリンとか、フレディ・マーキュリーとかに傾倒していって。スタンダードな歌い方をしてる中にも華がある、というか。そういうのが好きというか、ある意味、普通が一番だと思ってるんで。

──普通という言い方は誤解を招くかもしれないけども、ちゃんと真ん中に太い幹があるからこそ、枝や葉が出てくるし、花も咲くことになるわけですもんね。

GAINER:そういうことだと思うんです。自分のヴォーカルについてもそうだし、このバンドの音楽についても同じことが言えるはずだと思ってるんで。

取材・文◎増田勇一


■1stアルバム『HELLRAISER』

2020年8月26日(水)発売
CNBT-1007 ¥2,500+税
01. Hellraiser
02. Roadkill
03. End The Breath Of The Night
04. Grant You Metal
05. Burn Your Life
06. The Last Frontier
07. Phantom Helicopter Attack
08. Hawkeye
09. Overwhelm
10. Eternal March Of Valor
Produced by Ryoto
Mixed and Mastered by Kondoh @Gok Sound Studio,Japan
Artworks by NNGAPOKO



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