【インタビュー】マカロニえんぴつ、メジャーリリース第一弾で「原点回帰」

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■メンバーですら知らないことも

──ここで、それぞれの「俺の心のリード曲」を聞いてみたいと思います。まず田辺さん。

田辺:僕は「mother」がかなり好きです。歌録りの時にめちゃくちゃトリハダ立ちました。アルバムのタイトルでもあるんですけど、最後のセクションの“愛を知らずに魔法は使えない”というところが、めちゃくちゃエモーショナルだったんですよ。その印象が強くて、「mother」が一番好きですね。そこだけコーラスが一切入っていないところもまた良くて。

はっとり:いつもは大サビにコーラス入れるしね。でも一本で歌っているかっこよさがある。

田辺:そうそう。すごく説得力のあるフレーズだと思います。

──じゃあ田辺イチ押しは「mother」ということで。高野さんは?

高野:…「カーペット夜想曲」かな。外出自粛明けに最初に作った曲です。

はっとり:デヴィッド・ボウイみたいな、ニューウェーヴな曲を作ろうとして、仮タイトルが「NEW WAVE」だった。

高野:新しいジャンルというか、ドラムのサウンドもそうですし、ベースもシンセベースだし、スタジオで作っている時に何も弾かせてもらえなくて。

はっとり:「俺、どこで出てくるの?」ってずっと聞いてた(笑)。

田辺:それで、2Aでやっとスラップが出てくる(笑)。

高野:スラップのところは、時間があったのですごく考えました。気合入ってます。歌のメロディもすごく好きですね。特に“どうか会えるうちに会いたい人に!”のところ、あそこが好きで、ライブでお客さんと一緒に叫びたいなと思います。

──僕もあそこ、大好きです。この曲、サウンドはコミカルな印象もあるけれど、歌詞がすごくグッとくる。

はっとり:歌詞はいつも、歌う前のギリギリに書いちゃうんですけど、これは当日まで完成していなくて、部屋にこもって書きました。できてすぐ歌うという。

高野:あとは効果音。ダイちゃんのキーボードを駆使したり、味噌汁をすする音とか、犬の鳴き声とか。

はっとり:歌詞にリンクした音を入れたかったんですよ。“泣かないでお母さん お味噌汁をすすって”のところは、最初は水をすする音なら何でもいいかと思ったんだけど、やっぱり冷たい水だとダメで、熱いやつを冷ましながらすするのが味噌汁の音だと思ったから。

長谷川:俺がポットのお湯を汲んで、はっとりくんに渡した。

はっとり:熱い熱い!とか言いながら。いいすすり音を録るために、10テイクぐらいかけました。

高野:そのためにマイクも替えて。

──素晴らしいなあ。神は細部に宿る。いい効果出してますよ。

はっとり:あんなことしてる時間が、めっちゃ楽しいんですよね。

高野:アルバムの中で一番浮いている曲で、濃い曲だなと思います。

──みなさんぜひ聴き込んでください。そんなはっとりさんの、心のリード曲は?

はっとり:全部名曲ですよ。でも、ダイちゃんの曲はすごく好き。あとはやっぱり「カーペット夜想曲」かなあ。同級生のエンジニアの、高柳という奴なんですけど、そいつと「メジャー一発目は一緒にやろう」という約束を果たせた曲もであるし、録ってる時から胸熱だった。できるだけ一緒に過ごしたいから、わざと余計な音を録ってみたりして。

──いいなあ。すごい友情。

はっとり:本人もこれに賭けてくれていたみたいで、妥協一切なしでした。リファレンスでアヴィーチーとか聴きながら、「どうにかこういう洋楽サウンドにしたいな」って、特注品みたいなアナログ変換の機材を持ち込んで、「これは俺の武器だ」とか言って。ロー(低音域)の感覚がすさまじいんですよ。「写真を撮らせたくない」とか言って、蓋をして見せないようにしてたけど。

田辺:真似されたくねぇ、とか言ってたね。

はっとり:同級生を信用してねぇじゃんって(笑)。でもそのアナログ変換によって、パンの広がりも100から120ぐらいまで、後ろまで広がりました。サビでガッとテンションが上がるんですよ。一番やりたかった洋楽ライクな曲のテイストを、満足とまではいかないけど、一個納得のいくものができた気がして、うれしかったです。

──長谷川さん。心のリード曲を。

長谷川:僕はやっぱり「ルート16」ですね。自分で作ったということもあるし、今まで、はっとりくんが「こうしようああしよう」というアレンジが多かったんですけど、今回はなぜか知らないけど、僕がやりたいことをみんなが聞いてくれて、いい感じにしてくれたんですよね。

田辺:なぜか知らないけれど(笑)。

はっとり:いつもは聞いてないみたいだな。

長谷川:この曲は、1Aのメロディとか、途中でギターの音が入るのが「どうかな?」と思っていたんだけど。

はっとり:デモ音源の時ね。

長谷川:それを「良かった」と言ってくれて、素直に弾いてくれた。

はっとり:彼はギタリストじゃないから、フレーズが何か変なんですけど、そのままコピーして。和音を弾く時に、アルペジオっぽく音が混ざっちゃうフレーズだったんだけど、「単音ずつ混ぜないように弾いてくれ」という要望があって、何かぎこちないんだけど、すごく面白いものになったよね。

田辺:俺らじゃたぶん考え付かない。ギター弾かない人だからこそ、という感じはあります。

長谷川:そうなんだ。コーラスははっとりくんが全部考えたので、聴いてなかったんですよ。で、できあがって聴かせてもらったら、めっちゃ良かった。

はっとり:コーラスは歌録りが終わってから追加していくんですけど、それでガラッと雰囲気が変わるよね。

長谷川:うん。すごい表情が変わった。エンディングもめっちゃいいし。

はっとり:♪ラーラーラララ、って。あれは最後の最後の思いつき。もうこれで終わり、「おつかれさまでした」って言ってプレイバックしている時に、「やっぱりアウトロにもう一個必要だな」と思って、急いで戻って入れたんだけど、あれが一番大事だったという。雰囲気を変えるために、ウィスパーめで歌いました。

田辺:俺は大サビの“ジャイアンコーラス”も好きだけどね。

はっとり:セルフ・ディレイをやっているところね。♪二人で行こう、深い海の彼方、のところ、よく聴くとディレイがかかっている。あれ、自分でやっているんですよ。

長谷川:そうなんだ。ディレイをかけていると思った。すごい!

はっとり:そこ、自慢です。

──本当に1曲1曲、細部にまで手間とアイディアが詰まった6曲だと思います。

長谷川:メンバーですら知らないこともありますからね。



──そして、アニメ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』オープニング主題歌「生きるをする」と、エンディング主題歌「mother」と、セブンティーンアイスWeb CMタイアップソング「溶けない」の3曲が、広く世の中へ向けてのリード曲でもある。

はっとり:もちろん、「生きるをする」と「mother」が、このアルバムを引っ張っていると思います。しっかりと独立して立っている曲が2曲あるからこそ、ほかで遊べたところがあると思うんです。「生きるをする」も、相当遊んでますけどね。でも歌詞はアニメの世界観を考えて、大冒険=旅だから、生きることは旅だと思っているので、そこにリンクさせてメッセージを考えたし、いいメッセージソングになったなと思います。「mother」もしかり。

──近い将来、マカロニえんぴつが大ヒットを飛ばす時に、このアルバムの中のギターロック系の曲なのか、ダンスミュージック系なのか、どっちかな?とか思って、すごい楽しみにしています。

はっとり:まあでも、シングルで勝負するようなバンドじゃないと思うんですよね。

──ああー。でもそれもまた、マカロニえんぴつらしいと思います。

はっとり:これからも、アルバムを作りたいんですよ。少なくとも今回みたいに、6曲はほしいかな。尾崎(世界観)さんにも言われたんですよ、「マカロニえんぴつはアルバムで聴きたいバンドだ」って。確かに、言われてそう思った。

長谷川:そんな気はするね。

はっとり:器用貧乏が名刺だから。

──あはは。そうは思わないですけどね。

はっとり:でもそうですよ。逆に、いろいろやれるのが僕らの強みかなと思いますね。

取材・文◎宮本英夫

Major 1st E.P.『愛を知らずに魔法は使えない』

2020年11月4日(水)発売
■初回限定盤(CD+DVD)
TFCC-86727 / ¥2,727+税
■通常盤(CD)
TFCC-86728 / ¥1,636+税

[CD]
1. 生きるをする
2. ノンシュガー
3. 溶けない
4. カーペット夜想曲
5. ルート 16
6. mother

[DVD]
<マカロックONLINEワンマン〜豊洲から愛を込めて〜>
2020年9月3日(木)開催
※無観客生配信ライブ
1. hope
2. 遠心
3. トリコになれ
4. girl my friend
5. ワンルームデイト
6. 溶けない
7. ブルーベリー・ナイツ
8. 恋人ごっこ
9. 春の嵐
10. ハートロッカー
11. 愛のレンタル
12. 洗濯機と君とラヂオ
13. ヤングアダルト
-アンコール-
14. OKKAKE

追加特別ライブ映像
15.嘘なき
16.ミスター・ブルースカイ

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