【インタビュー】リンキン・パーク、20周年記念盤『ハイブリッド・セオリー』を語る「これまでの旅路やサプライズの数々に感謝している」

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■マイクとチェスターの二人は凄い
■マジカルな瞬間がどんどん曲に表れてきた

──チェスターとの初リハーサルで、何か特別なものを感じた瞬間があったと思いますが、そのときのことについて話していただけますか?

マイク:僕達にはバンドのアイデンティティーとかやりたいこと、今後フォーカスしていきたいヴィジョンがあって。でも、まだそのときにはそれが存在してなくて、ヴィジョンを固めたかったんだ。だからチェスターが入ってきた時、彼がどんなに才能に溢れているか、どんなに凄い歌声を持ってるかを全員でずっと話したんだよね。長年言ってることだけど、僕達がデモを作ってる間、チェスターもまた、どんなヴォーカリストになりたいかを見つけようとしていた最中で。彼は本当に独自のユニークな表現ができたけど、このスタイルの音楽には何が合うか、バンドにとって何がベストか、その両方を同時に歌いながら探っていたんだ。レコーディングしながら彼がやることに僕達が反応して、そしてそれが、バンドのアイデンティティーにゆっくりと発展していった。だから、彼が何かを歌って“これだ!”と興奮する瞬間があったというより、小さなステップを重ねて行く作業だったんだ。ボックスセットに「シー・クドゥント」っていう未発表曲が入っているよね。当時は気づいてなかったけど、これは凄くクールな曲でね。歌詞に「君は一人じゃない」っていう一節があって、チェスターは曲中で叫んでないし、ヘヴィなディストーションギターも入ってない、リズムトラック全体がほぼサンプルなんだけど、僕達とチェスターの関係の初期に、「この曲はずっと後に、僕達のアイデンティティーの一部になる」って感じてたんだ。2007年とか2010年ぐらいの僕達の音楽の方向性を示唆していたんだよ。全てはすでにこのデモの中に入っていて、僕達はただそれを発見する必要があっただけなんだ。


──チェスターのヴォーカルが入った未発表曲の数々は編集するのが大変でしたか? それともセラピーのような感じになりましたか?

マイク:「シー・クドゥント」を聴いた人から、「現代的にアップデートされていて、モダンに聴こえる。クールだね」っていう感想をもらったんだけど、実際僕達は何もしてないくて、デモをそのまま使ったんだ。これらの曲はマスタリングはしたけど、ミックスしなかったし、サウンドも変えなかった。だから、モダンに聴こえるというのは僕にとっては褒め言葉でね。で、ヴォーカルを聴き返したことについては、古いアルバムを見るような感じで、すごくノスタルジックな気分になったし、僕達が経験してきた旅に感謝の気持ちが溢れた。「シー・クドゥント」や「ピクチャー・ボード」といった初期のデモは、チェスターが加入する以前のXero (ハイブリッド・セオリーの前のバンド名)時代のものなんだ。当時の僕達はただのキッズで、全く関連性がないさまざまで大好きな音楽を融合して、シームレスに感じられるものに仕上げる方法を見出そうとしてたんだ。

──『ハイブリッド・セオリー』の中で一番好きな曲は何ですか? そして、同じワーナー・ミュージック所属の偉大なバンドとして答えていただきたいのですが、ヴァン・ヘイレンのベストシンガーは?

マイク:最初の質問は楽に答えられるよ。僕にとっては「ペイパーカット」が一番だよ。ロックという点において最高の僕達が出てるし、僕達が作ろうと励んでいたタイプの曲だった。バックビートが僕達がやってたエレクトロニックミュージックの集結になってて、当時起こってたダブルタイムのドラムビートが入ってて、サンプルをループしてて、ラップはチェスターがやったラップコーラスの中で唯一「僕じゃなくて彼がリードを取るべきだよ、凄くいいから」って言ったものなんだ。そして曲の終わりはすごくメロディアスになっている最高のエンディング。このアルバムから一曲だけ聴くとしたら、僕にとってはこの曲だね。ヴァン・ヘイレンの質問はパスする。


ブラッド:マイクの答えが気に入ったよ。考えたことなかったけど、「ペイパーカット」は実にクールだね。全ての影響をシームレスに封じ込めてる。俺自身、好きな曲は頻繁に変わるんだ、素晴らしい曲がたくさんあるからね。だからこのアルバムはまとまりがあるんだと思う。全ての曲が重要な役割を果たしてる。それに、このアルバムには多様性もある。

ジョー・ハーン(DJ):実は長い間、「ワン・ステップ・クローサー」が好きじゃなかったんだ。四六時中かかってて、毎回プレイを望まれるから、嫌気が差しててね。もちろん曲が嫌いだったんじゃない。今でもショウの凄くいいラスト曲になってる。だから、その後は嫌じゃなくなって、今は僕が一番好きな曲のひとつだよ。



フェニックス:ジョーは「キュアー・フォー・ザ・イッチ」って言うべきだよ。アルバムでDJのショーケースの瞬間になってるからね。

ジョー:あ、答え変えていい(笑)?

フェニックス:ははは。ベーストラックが数曲あって、そのひとつが「キュアー・フォー・ザ・イッチ」。もうひとつが、何て名前だっけ?

マイク:「ベリー・ベーシック」だよ。最高にベーシックな曲。

フェニックス:そのベーシックな曲が、CDになったら入ってなくてね。あれが僕が一番好きな曲になるはずだった。

ブラッド:2番目の質問は、デイヴィッド・リー・ロスだよ。当然。


──香港人でありアジア人として、リンキン・パークは特に私達が親近感や結束感を感じる存在です。マイクとジョーがアジア人の血を引いていますから。あなた方も信じていると思うのですが、音楽は世界共通の言語ですよね。『ハイブリッド・セオリー』が世界中で大きな共感を呼んだことについてどう思いますか?

ブラッド:活動を始めた時、俺達はどこに行ってもローカルバンドになれるだろうと思ってた。そして、俺達は世界のどこでも深い繋がりを築いてきた。アジアはメンバーの大半が初めて行ったんだけど、英語が第一言語ではない場所で観客が俺達の曲を大声で歌い返してくれるのを聴いた時、感激したんだ。君が「共感」と言ったように、俺達の歌詞にもサウンドにも感情が込められていてて、世界中の人達が共感できるものだった。アジアでは特に俺達、ローカルバンドの気分だったよ。

ジョー:ブラッドと同意見だよ。それに加えて言えば、マイクとチェスターのコラボレーションには自然なダイナミズムがあって、二人のフロントマンがいることが、時には挑戦になったと同時に、僕達をユニークにしていたと思う。歌詞もハーモニーもね。彼らは凄くパーソナルな出来事を曲にしていたんだけど、ふたつの視点から書かれているわけだから、それらの合致する場所を見出す必要があったんだ。でも、彼らは共通の土台を見つけて、それが凄く普遍的な感情に翻訳された。彼らは最高にパーソナルであると同時に、最高に共鳴できる曲を作ることによって、人々の共感を呼んだ。二人は凄いよ。作曲する度に上手くいってたわけじゃないから、大変でもあったと思うけど、時間をかけていく間に、そのマジカルな瞬間がどんどん曲に表れてきたんだ。

──『ハイブリッド・セオリー』は、あなた方にとって巨大な恩恵となりましたが、同時に呪縛のような側面もあったかと思います。あまりにも素晴らしい作品だったために、新作を出す度に多くのファンは『ハイブリッド・セオリー』と比べていましたから。このアルバムの持つふたつの側面が、どのようにあなた方のキャリアに影響してきたと思いますか?

ジョー:その質問に答えるには、いい時期だね。過去20年の間、その時々でこのアルバムに対する気持ちは変化したけど、僕達は『ハイブリッド・セオリー』に匹敵する作品を作ろうと思うと同時に、進化した別バージョンの『ハイブリッド・セオリー』を出していこうっていうやる気を持っていた。今でも、音楽を作る時はそれを目指して努力してるよ。このアルバムに少し引き止められてるような気がした時もあったし、何かを決断する時にも影響していた。でも、バンドのことをよく知らないプロデューサーがビッグなサマーソングとかを作りたがった時、僕達はみんながどんな音楽を期待をしてるのかを分かってた。だから、このアルバムからはそういうことを学んだんだ。一方で全般的に言えば、このアルバムは僕達に偉大な機会をもたらしてくれたと思う。ファンはこのアルバムが大好きで、それは何も悪いことじゃない。ファンが僕に声をかけてくれる時、このアルバムに対して感謝されることが一番多いんだよ。このアルバムがどんな風に辛い時期の助けになったとか、このアルバムはアガるから聴きながらエクササイズするのが大好きだとかね(笑)。

ブラッド:このアルバムは、まさしく恩恵だったと思う。それ以外の何物でもない。当時は何が起こってるのかを理解するのが大変だったけど、それでも、今でも恩恵になってる。このボックスセットに収録されてる本に、『ハイブリッド・セオリー』のロゴをタトゥーで入れてる人の写真があるんだけど、「この音楽が大好きなんだ。タトゥーを入れたんだ」って見せてくれた人に数え切れないほど会ったよ。僕達はアーティストだから、そんなことまでしてくれて本当に素晴らしいっていつも思ってた。それに、彼らにコミュニティーの一員みたいな体験を提供していたとも思うんだ。進化を遂げた俺達のキャリアを通して、彼らはずっと僕達の音楽に献身してくれた。『ハイブリッド・セオリー』はその全てをスタートさせたアルバム。だから、このアルバムは恩恵だと思う。

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