【インタビュー】HYDE、新曲「LET IT OUT」が示すネクストレベル「苦しいものを全部出しちまえ」

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■コロナ禍が明けて日常に戻った時
■さらにエモーショナルな印象に変わる曲

──7月頃の段階では、ためらわれていた配信というスタイルが、今は芸術の新しい形として大きな可能性を感じていらっしゃるという?

HYDE:ひょっとしたら、僕にはすごく合ってるのかもしれない。最初は全然興味なかったけど、“これ、僕だから面白いんじゃない?”って気が付いてからは意識が全然変わりましたね。あとは、配信を観ているお客さんの姿を映すLEDスクリーンも僕の中ではすごく心強かったし。

──無観客配信ライヴ<LIVE EX>でも設置されていたLEDパネルですが、よりパワーアップしていましたね。

HYDE:そう。やっぱりカメラだけじゃなく、ちゃんとその向こうにお客さんがいることを観られるというのは自分の中では感動的だったし、素敵な演出のきっかけにもなりました。あれは最高でしたね。

──疑似的にではあっても、お客さんに観てもらっているという眼差しを感じるのは大きなことなのですね。

HYDE:ホントに大きいですね。カメラだけだとちょっと寂しいな。

▲HYDE

──そんな画期的なライヴの中で初披露された新曲「LET IT OUT」について、詳しく伺っていきます。非常にアグレッシヴな、危機感が伝わってくるカッコいい曲だと感じました。

HYDE:ありがとうございます。元TOTALFATのKubotyに原案となる曲をプレゼンしてもらって。“これはいいものになりそうだな”と思ったので、まずは構成から手を付けてメロディをのせました。最初はもう少しゴシックなメロディーだったんですけど、“今やりたいのはゴシックじゃないな”と思って、もっとストリート感があってスピード感があって、というふうにアレンジしてつくりあげていった感じです。

──ストリート感はミュージックビデオにも色濃く出ていますね。覆面ギャングが街に出ていろいろなものを破壊するというか。部屋に閉じこもって欝々としているのではなく外へというエネルギーを感じます。そういった外向きのベクトルが、今HYDEさんの中にあるのでしょうか?

HYDE:いやいや、ミュージックビデオではマスクをかぶったあのバンドメンバーたちが、いかに悪い奴らかを表現したかっただけです。アイツらは本当に悪い奴らでね(笑)。

──そうなんですね(笑)。ラウドでヘヴィなハードロックナンバーでありメタル感もある曲調はやはり、アメリカのフェス出演を想定したものなのでしょうか?

HYDE:そうですね。ただ、この曲をライヴで披露したら、僕のファンはすごく盛り上がってくれるのが想像できます。かといって日本で売れるかというと、どうかな?と……レコード会社には申し訳ないけど(笑)。やっぱり海外でどう評価されるかが一番気になるし、それを目指してつくりました。

──そこは揺るぎないんですね。歌詞からは、既成概念などあらゆる枠を取り払って自分をさらけ出せ、というメッセージを感じ取りました。

HYDE:アルバム『ANTI』以降、シングル「BELIEVING IN MYSELF / INTERPLAY」をリリースしてはいるんですけど、僕の中では「LET IT OUT」が、『ANTI』の次を示した一発目のような気持ち。アルバムがこの後に出るとしたら、これが1曲目だろうなという代表曲のイメージなので、それこそ“目覚めろ (Wake it up)”という一節から始まる曲にしたかった。目覚めて、こんな苦しい状況だけど叫ぼうぜ!って。叫べば次のところへ行けるんじゃないか?と。だから“吐き出せ (let it out)”と言ってるんです。この曲調を聴いているとファンの子たちがライヴですごくクレイジーになってくれる姿を想像するし、自分の中でも“みんなで叫びたいな”という気持ちで歌っています。もうサビとかは僕が歌わなくてもいいぐらい、ずっと合唱でいいんじゃない?みたいな感じですね。


──シンガロングが起きる情景が浮かんでくるサウンドでしたし、ライヴ映えするのは確実です。『ANTI』ではタイトル通り、何かに反抗/反逆するというテーマがあったと思うのですが、この曲の場合は外にある何かに対抗心を持つ──破壊するではなくて、内なる自分をエンパワーメントするというか。個の解放を重視しているように感じましたが、いかがでしょうか?

HYDE:どうだろうね? “とりあえず叫べ”って感じじゃない(笑)? コロナとか、こういう状況はあるけど、“とりあえず叫ぼう! 中にある汚いもの、苦しいものを全部出しちまえ!”っていう。そういう気持ちと、あとはいかにバンドメンバーが悪い奴らか。

──はははは。

HYDE:そこを表現したかった曲です(笑)。

──ちなみに、バンドメンバーのみなさんはどんな悪事を働いているんですか?

HYDE:いやぁ、車壊したりホントひどいですよね~(※MVでの演出)。信じられない。

──HYDEさんもライヴでパトカーを壊してましたけどね。HYDEさんに対しては優しいんですか?

HYDE:いや、僕にも普段から怖いですよ、喧嘩しまくりです。

──そうなんですか(笑)。激しい印象がある一方で、サビのメロディーラインからは悲しみややるせなさ、割り切れない想いも伝わってきます。そこがHYDEさんらしいなと感じたんですが、どうでしょうか?

HYDE:そう、メロディアスさは大事にしたいなと思っていて。「日本のシーンは気にしない」と思いながらも、メロディーさえキッチリしていれば日本では好きな人がきっといると思うんです。だから、そこだけは最低限、どんなにハードなサウンドになっても意識したいんですよね。ただ、それでもやっぱりメロディーはストリート寄りにどんどん変えていったんですよ。最初はもっとわかりやすくメロディアスだったんだけど、自分の世界観は、ストリート寄りのほうが、今やりたい音に近い。だから、決して“メロディアスだったらいい”だけではなかったんです。メロディアスでもイメージに合わないと嫌だなと。だって、こんなマスクマンがいて、口にベーッてはみ出した赤いリップを塗ってる奴が、綺麗な曲ばっかり歌っても変じゃない(笑)?

▲HYDE

──なるほど。それでもやはり、美しさはあるんですよね。整ったものという意味ではないんですけども、荒々しいだけではないというか、情緒を感じましたので。削っても削ってもそれは残るものということですかね?

HYDE:まぁ、根が美しいですからね(笑)。

──隠し切れないというか、消し去ることはできませんよね(笑)。

HYDE:そうなんです(笑)。

──「日本でも好んで聴いてもらえるように」という意図以外に、例えば激情の奥にある悲しみが映し出されているですとか、哀愁を帯びたメロディーに込めた想いはなかったのでしょうか?

HYDE:うん、多少はありますね。みんなで合唱するような曲にしたかったというのがひとつと、かつ、その中にちょっと切なさがあるとすごくエモーショナルなサビになるとは思ったので、それは意識しました。特にこのコロナ禍が明けて日常に戻った時にはさらにエモーショナルな印象に変わると思います。でも、やっぱり基本は暴れてほしい曲です。早くライヴでやりたいなぁと思ってます。

──HYDEさんのメロディーラインの美しさ、日本的な部分は、アメリカにおいてもきっと強みになる部分なのですよね?

HYDE:そう思ってます。アメリカナイズしても、アメリカ人がつくったメロディーとはやっぱりどうしても違うんですよね、僕とは。向こうの人が嫌がるようなメロディーはつくりたくないんですけど、やっぱりどうしても日本人の個性が出ちゃうから。それがいい塩梅で出ていると思うといいんだけどな。それを狙ってます。

──匙加減が難しくないですか?

HYDE:難しいと思いますよ。“あ、ちょっと日本寄りかな?”っていうメロディーも他の曲にはあったりしますけど。でも多少は、そういう部分があるほうが個性になるし、完全にアメリカナイズするのも違う。いいところは残そう、みたいな。

──そういった匙加減のジャッジはHYDEさんがお一人でされるんですか? 他の誰かの意見も聞かれるのでしょうか?

HYDE:全部僕がやりますね。理想にならなかったらディレクター陣に相談するけど。それも最終的に僕の好みかどうか。僕の判断で、「これはやり過ぎだから変えよう」とか「このコード進行は嫌だから変えよう」とか。アルバムに向けて1曲1曲、今回は本当に自分の好みだけでつくっています。

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