【インタビュー】HYDE、新曲「LET IT OUT」が示すネクストレベル「苦しいものを全部出しちまえ」

ツイート

HYDEが11月25日、ニューシングル「LET IT OUT」をCDリリースした。表題曲は、閉塞感を蹴散らすようなパワフルでアグレッシヴなラウドチューン。ギター弦のたわみまで聴き取れるようなダウンチューニングによるリフが狂暴ですらある。しかし荒々しさ一辺倒ではなく、メロディーラインにはそこはかとなく憂いが漂う。激しさと繊維な美。この絶妙なバランスは、HYDEがこだわり抜いた匙加減によって実現している。

◆HYDE 画像 / 動画

新曲「LET IT OUT」制作秘話、配信ライヴに対する意識の変化などを掘り下げて尋ねていくうちに、HYDEの旺盛な表現欲求に圧倒されると同時に、音楽、芸術、エンターテインメント界全体への真摯な想いに胸打たれた。9月の有観客・配信のハイブリッドライヴ<HYDE LIVE 2020 Jekyll & Hyde>で得た手応えと新たなアイディアを携え、HYDEは年末のアコースティックツアー<HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE>に臨む。2021年はソロ活動20周年。コロナ禍に見舞われながらも、HYDEが前を向いて歩き続けていることが分かる前向きで力強い言葉に満ちたロングインタビューとなった。

   ◆   ◆   ◆

■ライヴ中は不死身だと思ってる節がある
■ホントに気を付けないといけない(笑)

──まず、<HYDE LIVE 2020 Jekyll & Hyde>全5公演は、感染者が確認されなかったということで(※公演から2週間経過した後、9月28日に公式報告)、おめでとうございました。

HYDE:ありがとうございます。

──「これはみんなで勝ち取った勝利!」とTwitterに投稿されていましたが、率直に今、どのようなお気持ちですか?

HYDE:ファンのみんなの協力がなければ難しかったと思いますね。ライヴが終わった後、本当だったら打ち上げしたいところを、真っ直ぐそれぞれの自宅に帰ってくれたこともやっぱり大きいと思う。いかに会場で万全な対策をして、ライヴでは感染しなかったとしても、帰りに寄った居酒屋で感染したら、それはやっぱり僕のせいと思われる。そうしないためにも、ファンの子たちが寄り道せずに帰ってくれたのはすごく大きいし、リスクを減らしてくれた。結果、成功に繋がったと思います。

──参加された皆さんの協力があってこそ、という想いがあるのですね。

HYDE:うん、僕らも感染対策に関しては最大限、出来る限りのことをやりましたし。

▲HYDE

──ライヴの内容も素晴らしかったです。まず<Acoustic Day>から振り返りますが、決して楽曲のスケールダウンではなく、ロックを感じるアレンジが印象的でした。

HYDE:普通アコースティックアレンジをすると、おっしゃるようにスケールダウンして静かに聴かせる、という感じになると思うんだけど、また違う形で面白いアレンジができましたね。曲の良さを別の形で引き出したり、音源よりも激しい雰囲気になったりすることも有り得たり、アコースティックの可能性が僕の中で広がったというかね。“アコースティックでも、ここまでロックなものができるんだ”という気持ちでやっていました。

──バンドメンバーのみなさんと一緒にアレンジを練り上げる過程も楽しまれていたようですね。HYDEさんお一人でアレンジされるのとはまた違って、刺激を受けて、新たなものが生まれたのでしょうか?

HYDE:もし僕一人だけだったらつまらないアコースティックライヴになったと思うんですよ。ジャカジャカとアコースティックギターを弾くだけになったと思う。だけど、メンバーそれぞれがプロデューサーのような、バンドのリーダーみたいな人たちが集まっているので。実際のアレンジは、まず最初に、「とりあえずやってみようか」で始まるんですよ。それだけでスルッと完成する場合もあるし、もしつまらなかったら、ひとつアイディアを出せば、またそれをもとにダーッと進んでいく。それでもまたつまらなかったら別のアイディア……って、アイディアが尽きることがなかった。

──アコースティックと一括りにできないほど多種多様でしたよね。L’Arc-en-Cielの「I’m so happy」にも引き込まれましたし、ニルヴァーナのカバーなど見どころ満載で。“死のコーナー”と呼ばれていたゾーンの深い表現にも感銘を受けました。セットリスト構成においても、ただ楽しいではないディープな場面もつくりたい、という想いがあったのですか?

HYDE:うーん……曲を選んでいくとどうしてもそういう展開にしたくなるんですよ。最終的に「SET IN STONE」みたいなヘヴィな曲をさらにヘヴィにやって、アラビア音階みたいなのとかすごく楽しく変化していって。結果的にダークで凄い谷ができて、セットリストの起承転結を生むことに繋がったかなとは思います。

▲HYDE

──そして<Rock Day>では、配信ライヴの進化形にして、思いもよらぬ最高の形を提示されました。世界観を構築し、その上での見せ方というものを熟知したHYDEさんならではだと圧倒されましたが、今どう振り返っておられますか?

HYDE:配信ライヴについては最初、その可能性が全然分かってなかったんです。でも実際にやってみて(無観客配信ライヴ<LIVE EX>/7月24日)……これはビッグマウスになるけど、「俺なら誰よりも面白くできる」って思ったんですよ。僕が想像する配信ライヴというのは、例えば、韓国のアーティストがやっているCGが入るような形であったり、メンバー個別にひとりだけを観られるマルチアングルな形であったり、そういうのは面白いとは思うんです。ただ、普通にロックバンドがそれをやっても、“へ~……で?”ってなると思う。そういうアイドル的な演出をしても、バンドとして収まりが悪いから、普通のアイディアだとたぶん上手くいかない。となると、ただリアルタイムでDVDのライヴ映像を観ている感じの配信以外に考えようがなかったんですよね。

──なるほど。前回のBARKSインタビューでも、配信ライヴにはあまり興味をお持ちではなかったですものね。もうこのまま年内はライヴしないのかなと思いましたから。

HYDE:ははははは!そうだったよね。自分でもそう思ってた(笑)。

──ところが、『Mステ』と連動して行なった<LIVE EX>で大きな手応えを得たわけですね。

HYDE:そう。「俺ならできる!」と思ったんだよね。っていうのは、配信ライヴって、アイドルとかコミックバンドにはうまく作用するような気がしていて。僕自身はロックでありながらコミックバンドやアイドルがするようなこともできるキャラクターだからこそ、結果、今回のようなクレイジーなライヴができたんだと思う。同じ演出を「じゃあ誰か他の人でやってみましょう」となったとしても、たぶんできる人がいないというか、僕じゃなかったらやれないんじゃないかな? だから、「これは面白いな。きっとこれを超えるのは難しいだろうな」という域まで、どんどん演出を考えていきました。

▲HYDE

──血まみれになる演出が衝撃的でしたが、これはメンバーのみなさんに対してもサプライズだったとか。

HYDE:いや、サプライズというか、メンバーは普通に演奏してくれればいいから、演出のひとつひとつを説明するつもりもなかったというか。あまり気にしてなかったんですよ。血まみれになった僕を観て、「え!? HYDEさん血だらけ?……うわ~ヤバいことになってる!」と思いながら演奏してたらしいですよ(笑)。演奏後にワナワナしながらメンバーが集まってきて、「大丈夫~?!」って。

──知らなかったらびっくりしますよね(笑)。実際、HYDEさんがライヴで脚立から落ちた事件もありましたし。

HYDE:そうそう、あるんですよね。ライヴ中は不死身だと思ってる節があるから自分でも怖い。ホントに気を付けないといけない(笑)。

──視聴されていた方々も、あまりにショッキングな演出だったために、その後の“元気なHYDEさんの姿を見るまでは安心できなかった”というコメントがありました。つまり、それほどまでに迫真の表現をなさったということだと思います。

HYDE:うん。せっかく配信なんだから、普通のライヴじゃない始まり方だったり終わり方だったり演出だったりをしたかったんです。ただ、会場にいる人だけは、そのスタートを観られたりするというスペシャルもある。配信はある意味何でもできるでしょ。例えば、実際のライヴだと、絶対にステージ横から現れないとスタートできないですよね? 幕が開かないと始まらないとか。だいたいもう決まってるじゃないですか?

──たしかに、それが始まり方としては当たり前だという固定観念がありました。

HYDE:それ以外に、もうやりようがないんですよ。でも配信ライヴであれば、始まり方のアイディアが僕にはまだまだあるって。そう気付いたんですよね。

◆インタビュー【2】へ
この記事をツイート

この記事の関連情報