【インタビュー】秦 基博、配信ライブ<コペルニクス>を語る「無観客をプラスに捉えて」

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■音楽に触れると癒やされたり
■心が落ち着いたりする感覚がある

──今回のライブは、トオミヨウさん(キーボード)、鈴木正人さん(ベース)、朝倉真司さん(ドラム)、シンリズムさん(ギター)、そしてストリングスのカルテットというメンバーでしたが、この編成、メンバーも当初の予定どおりに?

秦 基博:そうですね。まず、トオミさんは今回のアルバムの共同プロデューサーでもあるので、ツアーにもキーマンとしていてほしいというところから始まりました。トオミさんとは「仰げば青空」という曲が最初でしたが、出会ってすぐに自然にコミュニケーションが取れていましたね。同い年で、トオミさんも横浜出身ということで、環境も似ていて感覚も近いものがあったのかもしれません。普段はひとりでプロデュースされていて、今回、共同でやるのは僕とが初だとおっしゃっていたので、ふたりであーだこーだ言いながらやってました。

──リズム隊の鈴木さんと朝倉さんは安定感、安心感のあるミュージシャンですよね。

秦 基博:ドラムとベースは楽曲の基盤になるので、歌うということに対してものすごく重要なポイントなんです。正人さんと朝倉さんは僕にとって安心感のある二人です。朝倉さんのドッシリとしたリズムは歌心があるんです。ドラムは音程のない楽器ですけど、歌っているかのような感じが好きです。正人さんはめちゃくちゃ上手いんですけど、それだけじゃなくて、その場のものを受け取ってプレイに反映してくれます。ミュージシャンシップに溢れた、一番ミュージシャンらしい人じゃないかと思います。


──ギターのシンリズムさんは他のバンドメンバーとは違う世代の方ですが。

秦 基博:はい、ここも大きなポイントですね。今回のアルバムは“エレキギターレス”なんです。新作の曲にはエレキギターが一切入ってないんですけど、既存の曲にはエレキギターが入っていますし、曲によってはシンセやガットギターも入ってきたりするので、オールマイティなプレイヤーが必要だなと思いました。コーラスも必要ですし。レコーディングだったら1曲ずつ、その曲に合ったミュージシャンの方にオファーして、演奏に参加してもらうことが可能ですけど、ライブだと全曲通して、いろんなジャンルだったりアプローチの楽曲に対応してもらわないといけなくて。特に僕はいろんなタイプの楽曲をひとつのライブの中でやっていくので、ミュージシャンの方は大変だと思うんですけど(笑)。コーラスができて、ギターが弾けて、シンセも弾けて、という人が必要ということで、「そんな人、いるのかな?」っていうところからスタートしたんですけど、朝倉さんがシンリズムくんを紹介してくれたんです。彼自身、ソロアーティストとして活躍されていますけど、バックバンドとして参加してほしいとオファーしたところ、喜んで受けてくれたので、今回いろんなことをやってもらいました(笑)。23歳とすごく若くて、自分が23歳の時にこんな仕事が来たら出来ないなっていうくらいの仕事量だったんですけど、想像以上の活躍だったので、本当にすごいと思いました。

──バンドの雰囲気にも馴染んでいるように感じました。

秦 基博:百戦錬磨のミュージシャンの方たちの中にひとり入って、当然のように、普通な感じで演奏していたので、ここでも改めてすごいなと思いました。本来なら、ツアーでライブの回数も重ねて行けたと思うので、それが出来なかったのは残念でした。

──そしてストリングスのカルテットも参加。

秦 基博:アルバム『コペルニクス』の中で、ストリングスが重要な役割を果たしているので、やっぱりツアーもストリングス隊と一緒に回りたいと思って参加してもらいました。「LOVE LETTER」は音源にはストリングスが入っていませんが、カルテットがいるので、トウミさんに弦のアレンジを改めて書き下ろしてもらったんです。アンコールの最初のオーバーチュアから「地動説」に繋がって「LOVE LETTER」へという流れは、ストリングスで繋いでいったので、ライブならではの流れになっています。


──配信ライブを実際に行なってみて、手応えを感じたんじゃないですか?

秦 基博:そうですね。この配信ライブ自体すごく評判がよくて、そういう意味でも手応えを強く感じています。監督を務めてもらった番場秀一さんとか、映像で林響太朗さんにも入ってもらったので、映像的なアプローチも含めて、自分としてもすごくいいライブだったと思いました。

──映像で観た感想はどんな感じでしょうか。

秦 基博:すごく臨場感がありました。普段のライブだと客席から見えないディテールが、例えば、ミュージシャンの指さばきとか細かいところが映像だとしっかり見ることができますし、今回、なんでもできるミュージシャンの方が揃ったので、細かく楽器を替えていたり、同時にいろんなことをやっていたり、そういうところも見て楽しめますね。

──“配信ライブ”によって発信の仕方の選択肢が増えたとも言えますね。

秦 基博:この先、どうなるのか分からないですけど、以前のようにライブをすることができたり、直接皆さんと会う機会が増えていったとしても、この期間で芽生えたことは生かされていけばいいなと思います。配信ライブも、例えば、ライブに行きづらい場所にいる方とか、行きづらい環境にいる方も配信によってライブに触れる機会が増えたりすると思いますし、このタイミングで配信を見る環境を整えた方もいると思うんです。そう考えると、今後、配信ライブや普通のライブとのハイブリットなどが選択肢の一つになってより多くの方がライブや音楽に触れる機会が得られたらいいなと思います。


──配信ライブを開催するキッカケとなったのが新型コロナウイルスですが、今回のライブまでの期間、どんなふうに過ごしていましたか?

秦 基博:後々、皆さんの話を聞くと、いろんなことを始めていたりするんですよね。でも、「何か始めておけば良かったな」と思ったぐらい何もしてなかったです(笑)。ぼんやり過ごしちゃいましたね。今思えば、もうちょっと有意義に時間を使えば良かったなって。

──例えば、ある一日の行動をもう少し具体的に話すと?

秦 基博:歩くとちょっと遠い場所に作業場があるんですけど、時間があるので歩いて行って、すぐに音楽を作るということでもなく、映画を観たり、漫画を読んだり、なんでもない時間を過ごして、気が向いたら歌詞を書いたりしましたけど、それもほとんどやってないようなもので、本当にボーッとしてるという感覚でした(笑)。作業場に行く日でもそんな感じでしたね。具体的に行動に結びついてはいないんですけど、すごくモヤモヤしていたような気がします。煮え切らない感覚があって、何かを見たり、読んだり、聴いたりすることで発散していたんだと思います。

──そういう時期での“音楽”の存在は?

秦 基博:こういう状況になるたびに「音楽にできることは?」と考えますけど、今回に関しては“癒やし”だったのかなって。僕自身そうでしたけど、自分でも気づかないうちに少しづつ心が塞いでいく時期だったと思うんです。そういう時に音楽に触れると癒やされたり、心が落ち着いたりする感覚があるなと思ったので、僕の音楽もそういう存在だといいなと思いました。

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