【コラム】aikoのメロディと、aikoのライヴ

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aikoが3月3日にリリースしたニューアルバム『どうしたって伝えられないから』を一言で表すとするならば、“純度100%のaiko節”といったところではないだろうか。

レビュー第1弾では、ニューアルバム『どうしたって伝えられないから』の楽曲達の歌詞を中心にaikoの唄う歌詞を探ってみたのだが、今回のレビュー第2弾では、そんな言葉達が載る、一言では表すことの出来ない“aikoというメロディ”と“aikoにしか表現することが出来ない体温の通ったライヴ”について書いていけたらと思う。

“aikoというメロディ”は、今回のアルバムに限らず常に“純度100%のaiko節”なのだが、その個性は当たり前ではない。以前、そんなaiko節について「J-POP、J-ROCK、スウィング、ジャズ、ソウル、ブルース、ワルツ、コサック、フォーク、モータウンサウンド。その全てを網羅しているのが“aikoというジャンル”なのではないかとすら思う」と称したのだが、その簡単ではない難解で独特なメロディを、とても心地良い聴き感触に仕上げるのが、“aiko”であり“aikoというジャンル”なのである。それは切なくもあり、不思議なことに心踊る楽しさもある。

切なさと楽しさ。両極端であるこの感情を、aikoは歌詞と曲で見事なまでに1曲の楽曲の中でシンクロさせる。


▲『どうしたって伝えられないから』初回限定仕様盤

アルバムのオープニングを飾る1曲目の「ばいばーーい」は、痛くて、悲しくて、苦しくて、何よりも愛しかった場所が一番目を背けたくなる場所になり、それがやがて過去になっていく主人公が歩んだ時間が、日常の風景と心情とを重ねた状態で赤裸々に描かれている1曲だ。かつて愛した彼に語りかけるように歌われていくその唄の始まりの一音はとてつもなく切ない。

アンプラグドで歌われるマイナーコードのメロディは、別れによって傷ついた心の痛みを悲しく響かせる。Aメロと呼ばれるこの部分の雰囲気のまま、ずっと最後まで歌われていくのだとしたら、きっとこの曲は切なく悲しいだけの曲となるはずだ。しかしaikoはそこで少しのブレイクを挟み、Bメロから一気にポップに仕掛けてくる。スタンダードなバンドサウンドにフィドルを重ね、ステップを踏みたくなる様な跳ね感のあるリズムを加えることで、より柔らかな聴き心地に仕上げる。細かく頻繁に上がり下がりを繰り返す歌メロと滑らかなサウンドが絶妙なバランスで、いつの間にか悲しく落ち込んでいた気持ちを前向きな想いに切り替えてくれる。

切なさと楽しさ。aikoはその両極端を独自の歌詞世界とサウンド感で、見事に同居させるのだ。aikoが歌詞にかける言葉の魔法と、特徴的なロングトーンと細かく頻繁に上がり下がりを繰り返す歌メロとの合致は、聴き手の心に深く入り込んで気持ちを和らげ、手放しで楽しめる更なる魔法をかけていく。

アルバムのリード曲「磁石」もそう。イントロとして用いられる、感情をぶつけたかの様な明るくはないピアノの音色を始まりとし、ループするギターのリフがリードするバンドサウンドの中で、ステップモードのリズムが跳ねる。サウンドだけを切り取って聴いたら、誰もがきっとハッピーな心情の歌詞が乗った作品だと思うだろう。しかしそこに乗る歌詞は、惹かれ合っていた磁石が“反発しあってもうくっつかない磁石”となり、従来の役割をも失ってしまった、冷え切った愛を描いた哀しい関係性が描かれているのである。



他の作品ももちろんのこと、「磁石」の歌詞はとにかく心情と情景の描写が素晴らしく、時が残酷に流れていった様子が痛いほどに伝わってくる。もしもこの歌詞がずっとマイナーコードで表現されていったら、ただただ悲しい時間しか残らないのではないか?と思う。そここそが、まさにaikoの不思議なのだが、メロディとサウンドのポップさによって歌詞に吐き出された悲しい時間達が、悲しく響かないのである。

歌詞を目で追いながら、そこに記された心情をしっかりと自らの胸に送り込みながら聴くときと、日々の生活の中で“音楽を楽しむ”という観点でサウンドを中心に聴くときと、ライヴでaiko本人による生の歌声をパフォーマンスありきで浴びるときとでは、同じ楽曲でも受け取り方や楽しみ方が変わってくるのだ。

「メロンソーダ」の様に、ホーンをたっぷりとサウンドに注ぎ込んだ音作りも実にaikoっぽいし、「シャワーとコンセント」のような滑らかなメロディと独特なトメ感、アンニュイな空気感の「愛で僕は」や、しっとりと聴かせる「しらふの夢」や「片想い」もまたaikoっぽいし、ゆったりとした力の抜けたステップ感が最高に心地よい「一人暮らし」も、またまたaikoっぽい。

全力で花道を走りきり、キラキラした音の中で膝っこぞうを覗かせた膝丈のスカートを翻し、くるくると回りながら歌うaiko。屈託無く全身で楽しんでいるのが伝わってくるaikoのライヴパフォーマンスは、なんともなんとも愛しいのである。その姿をライヴで観るだけで元気になれるというのも、aikoマジックなのである。


▲『どうしたって伝えられないから』通常盤

これは、個人的な感覚かもしれないのだが、私の場合、そんなaikoを目の前で感じると、確実に“楽しい!”が脳内を占領する。むしろ、そこに切なさは、全く感じないほどである。きっと、aikoのライヴを初めて観るという人がいたならば、その後味は絶対に“楽しかった! また絶対に来たい!”に違いない。

が、しかし、その人が後に深くaikoの歌詞を読み起こしたとき、そこに在る歌詞世界の切なさと、手放しに楽しかったライヴのギャップに驚きを隠せないのではないかとすら思う。一方、毎度ご贔屓のaikoのコアファン達は、歌詞世界の切なさがしっかりと胸に焼き付いた状態でライヴを楽しんでいるからこそ、より深い感動が胸を締め付けているのだ。
 
普段から奢ることなく、人を選ぶことなく、誰にでも気さくに話しかけ、常に相手を思いやり、楽しませることを第一に考えるaikoの人柄はライヴでそのまま表現されており、MCでは本当に素のままで客席と対話する。

例えば。「元気やった? みんな何してたん? あんな、私な、昨日洗濯してん。ほんでな、」などと、問いかけるのだ。本当に素のまま。そして、そのaikoの言葉に客席もまた、普通に応える。なんともあったかい関係。この関係性、この会話を聞くのも、aikoのライヴの楽しみの一つだったりする。

aikoは今作『どうしたって伝えられないから』を、いったいどんな形で私たちを楽しませてくれるのだろう? コロナという世の中をすっかり変えてしまった大敵によってなかなかライヴが出来ない状況下ではあるが、aikoはきっと、この会えない時間を、また会えたときにみんなを楽しませることができる様にと日々いろいろと作戦を練っているに違いない。

とにかく、誰かが真似しようとして真似できるフレーズやメロディではない、聴き手の心を掴んで離さない“aikoというジャンル”は不滅。1日も早く昔のように、いっぱいのオーディエンスに包まれて思いっきり歌うaikoを、思いっきり走るaikoを直に感じたい。

文◎武市尚子

14th Album『どうしたって伝えられないから』

2021年3月3日(水)発売
CD購入:https://aiko.lnk.to/14thAL

■初回限定仕様盤A(CD+LIVE Blu-ray)
品番:PCCA-15003
価格:¥4,200+税

■初回限定仕様盤B(CD+LIVE DVD)
品番:PCCA-15004
価格:¥4,200+税

■通常仕様盤(CD Only)
品番:PCCA-15014
価格:¥2,913+税
※初回限定仕様盤A、初回限定仕様盤B:カラートレイ&三方背ケース仕様

■CD収録内容
01.ばいばーーい 編曲:トオミヨウ
02.メロンソーダ 編曲:トオミヨウ
03.シャワーとコンセント 編曲:OSTER project
04.愛で僕は 編曲:島田昌典
05.ハニーメモリー 編曲:OSTER project
06.青空 編曲:トオミヨウ
07.磁石 編曲:トオミヨウ
08.しらふの夢 編曲:島田昌典
09.片想い 編曲:トオミヨウ
10.No.7 編曲:島田昌典
11.一人暮らし 編曲:トオミヨウ
12.Last 編曲:島田昌典
13.いつもいる 編曲:島田昌典

■DVD/Blu-ray収録内容
aiko online live「Love Like Rock vol.9〜別枠ちゃん〜」
01.恋をしたのは
02.あたしの向こう
03.二人
04.メロンソーダ
05.オレンジな満月
06.カブトムシ
07.青空
08.ストロー
09.beat
10.赤いランプ
11.Loveletter
12.さよなランド

■CDショップ 予約購入先着特典
TOWER RECORDS全店(オンライン含む):「伝えるノート+ピリ辛ステッカー」(TOWER RECORDS ver.)
HMV全店(HMV&BOOKS online含む):「伝えるノート+ピリ辛ステッカー」(HMV ver.)
TSUTAYA RECORDS(TSUTAYAオンライン予約分含む):「伝えるノート+ピリ辛ステッカー」(TSUTAYA ver.)
Amazon:「伝えるノート+ピリ辛ステッカー」(Amazon ver.)
楽天ブックス:「伝えるノート+ピリ辛ステッカー」(楽天ブックスver.)
その他法人+aiko online store:「伝えるノート+ピリ辛ステッカー」(応援店ver.)

※全国のCDショップにて2021年3月3日(水)発売『どうしたって伝えられないから』をご予約・ご購入のお客様に、先着で上記オリジナル特典をプレゼント。
オリジナル・ノートとステッカーがセットになった豪華先着特典となります。
各店舗でご用意している特典数量には限りがございますので、お早目のご予約をおすすめいたします。
※特典は数に限りがございますので、発売前でも特典プレゼントを終了する可能性がございます。
※一部取り扱いの無い店舗やウェブサイトがございます。ご予約・ご購入の際には、各店舗の店頭または各サイトの告知にて、特典の有無をご確認ください。
※aiko online storeは その他法人ver.の特典付で現在予約受付中です。

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