【インタビュー】清春、新たな選択肢としての配信 “今こそ考えたい、選ばれる理由の大切さ”

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■当初は代替手段だったはずでも
■もはや、そのままの次元では済まされない

──清春さんが配信でやっていることって、すごくこれまでと繋がっているんですよ。プラグレスという表現形態も、こうした状況とは関係なく始まったものだったわけで。しかもそこでの選曲のあり方、歌詞ひとつにも意味が出てくる。ことに清春さんの場合、本来の歌詞のまま歌わないケースというのもあるじゃないですか。

清春:そうですね。メロも歌詞も、その時に浮かんだことを歌う。それはわかりやすいフェイクとかとは違うもので、そこで自分にできる精一杯を瞬間的にセレクトして、その時に出せる声というのを自分でも味わってる。もちろん最初の1~2回のうちは味わいようがなかったんだけど、こうして何回もやってきたなかで、そういったホントの核心の部分に触れられたというか。手法とか形態のことは置いといて、場所はともかく、そこで何をやってるのか、今そこで僕らに何ができるのかっていうところに行き着く気がするんですよ。

──最初はテストとして試していたことがどんどん確信に近付いてきて、まさしく新しい自分だけのテリトリーを作れたという実感があるからこそ続けている、ということなんですね?

清春:うん。なんかね、ちょっと配信ってもの自体に飽きてた時もあったんですよ。こんなのやり過ぎでしょ、と思ってた時もあった。でも、今は、次はもっと良く歌えるんじゃないか、と思えてるんです。本当にライヴ配信ってものに対する解釈が、いつまで経ってもライヴの代わりという考え方のままじゃマズい気がするんです。

▲清春

──ライヴの代替品としてではない、配信ならではの価値のあるものにしていく、ということでしょうか?

清春:です。いちばん食べたいのはカレーライスなんだけど、ラーメン以外に食べものがなかったらそれを食べるしかないじゃないですか。だけどそれはカレーの代わりではないわけで。

──もっとリアルな話をすれば、評判のラーメン屋さんが残念ながら今は営業していないけども、営業再開まではそのお店が監修したカップ麺で我慢、みたいな現実もあるはずですよね。

清春:そういうことですよね。みんなやっぱりリアルラーメンを食べたいはずだし。ただ、去年の3月だったら“しょうがないな。少しの間カップラーメンで我慢しよう”ということにならざるを得なかったかもしれないけど、もう実際あれから1年経っているわけで、いつまでも代わりの何かでは我慢していられなくなってくるわけですよね。実際、僕も後輩とかから「困ってます」って相談を受けてましたけど、1年前ならともかく“困ってます”っていう考えはもう終わってなきゃいけないはずで。もちろん相変わらずこの状況は続いてるんだけど、僕らは困ってる人たちを音楽でちょっと元気づけたり、シンプルな感動を提供しなきゃいけない側に居るわけだからね。なのに、そんな立場の人間がいちばん困ってしまってるようでは……。もちろんみんなと同じ気持ちになれてる、というのは大事なことではあるけども“そんなに困ってる人の音楽、聴きたいですか?”ということになってくると思うんです。僕の場合なら、この1年間、定期的に、定点撮影のような感じで僕の歌を追うというような形で配信を続けて。

──ほぼ定期的に、それを通じて清春さんに会いに行けるというか、部屋を覗きに行けるというか。

清春:そうそう。それを観たい人は、お金を払ってそこに集まってくれる。ライヴとは違うんですけどね。ライヴというのはその場所に行く楽しみとか、グッズを買うこととか、終演後に段の人同士で語り合えるとか、そういったいろんなことを含めての楽しみがある。だけどそれは配信では絶対再現できない。でもそこで“できないから、や~めた”ではなくて、“だったら逆にライヴじゃできないことはないか?”と考えて、それを突き詰めながら1年やって……。僕自身、こうして活動が長くなってきてる中で気付かされるのは、“今日は歌が上手く歌えたな”とか、“何かが降りてきて伝わったな”みたいなことを直感できるようになったこと。昔はそんなこと、思ってなかったんです。やっぱり自分の職業は歌手、ロック歌手、音楽の作り手なので、その本職の部分をちゃんと突き詰めようとしてないと、ライヴをやろうとアルバムを出そうと、音楽ビデオを作ったり配信をやったとしても、結局そこでどう歌えるのかっていう話になってくる。何もそこに道具がない時にフリーハンドでどう描けるか、みたいな部分ですよね。それがある程度うまくできる、しかも今日はちょっと変わった感じに描けるよ、というのがないと結局アーティスト、ミュージシャンとしては成立してないんじゃないかな。この1年間というのは、コロナ感染防止のためにみんないろいろやってるじゃないですか。すごくしっかり対応してる人もいれば、あんまり危機感が強くなさそうな人もいる。なんかホントにそこで……考えの差が出るというか。

──スタンスの違い、方針の違い、深刻さの度合いの違い。いろいろ見透かされてしまうようなところもあるわけですよね。ただ、そこで何かひとつだけが正しいというわけでもない。

清春:そう。正しいことなんてないんですよ。

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