【インタビュー】大久保伸隆、Something ELseでのデビューから25年。ソロ4thアルバムを語る「考えたのは“時間”」

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■“切ない”というものを
■いい形で表現できるような気がしていて

──ソロでは4作目となるアルバム『Time』が、5月16日にリリースされます。

大久保:アルバムを出すことが決まったのが2019年なんですけど、制作を始めたら雲行きがあやしくなってきて……気がついたらみんなマスクをして、ソーシャルディスタンスで、緊急事態宣言で。本来だったら去年の秋冬にリリースする予定だったんですけど、予定が変わってしまったのと、スタジオでのレコーディングの日数を少なくするために、10曲の予定を7曲に減らして、一気に集中して録って早く上がろうという感じでした。

──本当に、大変な時期だったと思います。

大久保:今まで遣ったことのない気を遣いながら、そこは精神的につらかったですね。ただ、出さないよりは出したほうがいいという前向きな考え方で、土台になるテイクも、本当に短い時間でいいテイクが録れたので、良かったかなとは思いますね。

▲大久保伸隆

──曲そのものは、2019年までにある程度作ってあった。

大久保:そうです。ライブの中で新曲として歌ったものが増えてきて、今回はその中からピックアップしたので、前からある作品も入っています。選曲は、“この曲が人気あるんじゃないかな”みたいな、ライブに来てくれた人の声も意識して選びました。

──「歌うたいのバラッド」以外は、ライブ感のある、リズミックな曲が多いと感じましたね。あと、ストリングスの音色がすごく映えている。あれはキーボードで?

大久保:そうです。ストリングスのラインの部分は僕とキーボードの子と一緒に作って、最終的な音色やニュアンスは自分が細かくお願いしています。確かに、今回入っている曲はストリングスがポイントになっている曲が多いですね。それが曲を引き立たせている部分があるので。

──歌詞を聴いてまず思うのは、大久保さんの歌詞って、だいたい情景描写からはじまるんですね。景色であったり、季節であったり、視覚的なものだったり。

大久保:ああ、そうですね。

──そこ、こだわりはありますか。

大久保:あります。自分の中のルール、までは行かないけど、法則みたいなものがあって、まずみんなにイメージしてほしいものがあるんです。とらえ方は十人十色でいいんですけど、一つのイメージがあって、そこからいろんなところに広げてほしいな、というのがあるんですね。Aメロから順番に書いていくわけではなく、サビから書くこともあるんですけど、その場合も“Aメロは情景描写にしよう”ということを意識して、サビを書いたりします。聴いてくれる人がイメージしやすいように、ということはいつも思っています。

▲大久保伸隆

──たとえば1曲目「恋の速度」は、“歩道橋から見下ろした 駅に続く傘の道”から始まります。

大久保:メロディが先にあると、アレンジもある程度頭の中に出来て、そこに当てはまるワードを探して、流れがいいものを当てはめていく。そこからまた広げていく、という作り方です。そこでしっくりこなかったら、別の言葉に切り替えたりとか、そんな感じでやっていきます。

──「恋の速度」は、とても幸せな情景ですよね。アルバムの中で唯一、陰りのあるワードを使わない曲というか。

大久保:そうですね(笑)。僕はそういう曲をあまり書かないんですよ。書こうとしないというか。

──何か過去にあったんですか(笑)。

大久保:これといって何もないんですけど(笑)。でもこの曲だけは、メロディもすごく明るくて華やかな感じがして、そこに沿ったことを書きたいと思って、陰りのない言葉がいいだろうということですね。

──桜が舞って、二人の距離が近づいて、恋の速度が速まってゆく。優しい春の風景が浮かびます。

大久保:そういう曲も、あってもいいかなと。「恋の速度」は、前からあった楽曲ではあるんですけど、お客さんの中では人気のある曲ですね。

──2曲目「ジグソーパズル」にも、春風が出てきます。

大久保:「ジグソーパズル」も前からあった曲で、メロディのゆったりとした感じから、そのワードを当てはめました。この曲も、聴いてくれた人が楽しい気持ちになるみたいで、自分のイメージ通りのものができたかな?と思っています。


──そして3曲目「光景」から、だんだんと切ない情景が増えてゆくという。

大久保:そうですね(笑)。僕はそういうものを書くことが多いです。狙ってるわけではないんですけど、すぐに出てくるのは、そういう世界観やテーマなんですよね。

──何なんでしょうね?

大久保:自分の声を客観的に聴くと、歌い方もあるんでしょうけど、“切ない”というものをいい形で表現できるような気がしていて、そこはたぶん意識していますね。ハッピーな曲もいいんですけど、どこか考えさせられるテーマだったり、恋愛ものだとしても、片思いだったり、切なくなるような、そういうもののほうが僕に合ってるのかもしれないなって、どこかで思っているので。

──まったく同感ですね。大久保さんの声は、悲しみ、切なさ、儚さを表現していると、今回あらためて思います。

大久保:歌い方も含めて、そういうものを生かしていきたい気持ちもありますね。

──5曲目「帰り道」は、特に切ないですよ。本当にいい曲。

大久保:ありがとうございます。その曲にはエピソードがあって、元々メロディがあったんですけど、1年ぐらいなかなか詞がつかなかったんですよ。そんなことは初めてなんですけど、5回ぐらい書き直してるんです。最初は“ドライブに合うような曲”ということで、たまには違ったアプローチをやってみようと思ったんですけど、全然ダメで(笑)。いつもと同じような気持ちで書こうと思ったら、すぐできました(笑)。

──曲調は軽やかにスウィングする感じで、ドライブっぽさもある気がします。

大久保:歌詞が切ない感じなので、サウンドもそっちに寄せようと思いながら。ブラス(管楽器)を入れているんですけど、そこで哀愁をにじませようと思って作っていました。

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