【インタビュー】藤あや子、ミュージシャンとして新曲、ギター、ハードロックを語る「音楽はいちばん好きな遊び道具」

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■ヒゲダンの大輔さんに楽器店で
■ギターをたくさん試し弾きしてもらったんです

──そしてカップリングは、2000年にリリースされたオリジナルアルバム『愛しい人へ』収録曲をリアレンジした「閉ざされた恋」です。この曲は藤あや子さん(ペンネーム:小野 彩)の作詞作曲によるものですが、今作に収録することになった経緯について教えてください。

藤:最初はカップリング候補が5曲ぐらいあったんですが、そのセレクトにも奇跡のようなことが起こったんですよ。「閉ざされた恋」を編曲してくださった榊原 大さんが私のインスタに「お元気ですか? あや子さんのインスタを見つけたので懐かしくて」ってDMを送ってくださったんです、たぶん連絡を取り合ったのは10年ぶりくらい。カップリング候補曲の中には「閉ざされた恋」も入っていたので、“この曲をカップリングにしなさいっていうことかもしれない”と思ったんです。

──ご縁があったんですね。原曲はどうやって作られたんですか?

藤:頭の中にあるイメージをレコーダーに吹き込んでいくんです。譜面とかに起こさず、鼻歌とも違うんですけどね。サビから出来たら次にAメロやBメロを考えようとか。小椋佳さんも同じ手法だってお聞きして安心したんですけど、譜面にすると不思議なコード展開になるようで(笑)。

▲藤あや子

──「閉ざされた恋」は“遠く煙る霧のように 愛は静かに消えてゆく” “いつかは別れの日が来る”という歌詞が印象的でした。ご自身の恋愛観も含まれていますか?

藤:無意識の内に含まれているんでしょうね。多分、これまで経験したことはたくさん詰まっているんでしょうけれど、嫌なことはすぐに忘れるタイプなんですよ。辛かったことってあまり思い出せないんですね。誰かに「あんなことがあったね」って言われて「そういえばあったね」って思い出すくらいで……忘れる才能があるんだと思います(笑)。

──常に更新されていくという。

藤:リセットされるんです(笑)。歌詞を書くと自然に過去の思い出が出てくるんでしょうね。そもそも私、計算して動いたことが一度もないんです。本能のまま。「夢のまにまに」ですよ(笑)。失敗を乗り越えて今があるし、ほとんどひきずらないんですよ。だから楽なんです。

──思うがままに生きていらっしゃると。クヨクヨ考えて眠れないなんてことは?

藤:全くないですね。お酒も飲んでないのに朝起きて、“あれ? いつ寝たっけ?”って思うぐらい爆睡します(笑)。だから元気なんですよ。

──しかもお若いし、美しい。

藤:そうやって生きましょう(笑)。

──「閉ざされた恋」のアレンジは原曲とどう変化させようと?

藤:アレンジは榊原さんにお任せしました。イントロの音色は遠くにぼやけた景色がふわーっと見えるようで繊細ですよね。美しさって大事だと思うんですよ。お料理もいくら美味しく作っても盛り付けが綺麗じゃないと台無しじゃないですか? 音楽も見せ方、聴かせ方は大事だと思うんです。

──景色が立ち上がるという意味では「夢のまにまに」と共通項がありますよね。歌い方も透んだ声で、こぶしを回すような演歌の歌唱法とは全然違いますね。

藤:私、演歌や民謡を歌う前はこぶしをつくったことがなくて、ソプラノのストレートな歌い方でしたからね。こぶしは演歌や民謡を歌うためにつくったんです。


──そうだったんですね。先ほど、楽曲は「頭の中にあるイメージを譜面に起こさずに作っていく」というお話がありましたが、今年5月10日の還暦のお誕生日にギターを始められたそうですね。作曲にも活用できそうですが、ギターには以前からご興味が?

藤:「ギターを弾きたい」ってずっと言っていたんです。コロナ禍でおうち時間が増えたので始めようと思ったんですけど、SNSをスタートしたら、そっちも忙しくなって。絵を描いたり、詞を書いたりしている内になかなか手を出せなくなってしまったので、「始めるなら誕生日しかないな」と。で、まずはギターを買いに行こうと思って、猫友でもあるヒゲダン(Official髭男dism)の小笹大輔さんに「どんなギターがいいか教えてください」ってメールを送ったら「大歓迎です」って返信がきて。知り合いの方のギターショップに連れて行ってくださったんですよ。たくさんのギターを大輔さんに試し弾きしてもらって。あの大輔さんに、ですよ。

──贅沢です(笑)。藤あや子さんとのツーショットが楽器店で見られるっていうのもすごい光景ですが。

藤:そうですね(笑)。

──小笹大輔さんがたくさん試し弾きをした中から、どうやって選んだんですか?

藤:ボディ(サイドバック)が赤くて、(ピックガードに)鳥の絵が細工してあるギターにときめいたんですよ、私、形から入るタイプなので(笑)。ギブソンのハミングバードがいいなって。

──結果、入手したギターはギブソンのダブ。ハミングバードの上位モデルですね。しかも1968年のヴィンテージというかなり高価なギターです。

藤:ゆくゆくはステージで弾きたいという目標がありますから、みなさんに見ていただくためにも、奮発しました(笑)。

──素晴らしい。「閉ざされた恋」はギターを弾きながら歌うのに似合う曲です。

藤:そんな日が来たら泣いちゃいますね(笑)。今は大輔さんの師匠のところに週一で通って練習しているんですよ。エアーで指を開く練習をしたり。「弦は肉球を押すようにね」って言われて、「先生、この指がつります!」みたいな(笑)。でも、ギターのために手の爪も切ったりして、かなり本気です。

──指先も硬くなったんじゃないですか?

藤:いや、まだフニャフニャ(笑)。今はギターで一生懸命コードの勉強をしていて、Cは弾けるけどFが難しい(笑)。

──アコギでFのコードが押さえられるようになったら、エレキギターはもっと簡単に弾けると思います。

藤:ホントはエレキギターがいちばん好きなんですよ! もともとエアロスミスが大好きなので。

▲シングルCASSETTE「夢のまにまに」

──エアロスミスとは!ハードロック好きなんですね。最初に聴かれたのはいつ頃ですか?

藤:17歳のときです。ちょうど洋楽に目覚めた頃で、最初はベイシティローラーズが好きでKISSとか、いろいろ聴いていたんですけど、“なんかいい洋楽ないかな”ってレコード屋さんに行ったら『Draw The Line』(1977年発表)のイラストのジャケットが目に飛び込んできたんですよ。”これ、おしゃれ!”と思って買って聴いたら、衝撃を受けたんです。ギターリフがカッコいいですよね、“♪ダラララ ラララ〜”って。

──まさにギターでコピーしたいリフです。クイーンは煌びやかだったり、KISSはエンターテイメントなイメージでしたけど、エアロスミスは骨太なロックですよね。

藤:当時、クイーンは女子ウケしてましたよね。あと、私、声フェチなので、エアロのスティーヴン・タイラーやボン・ジョヴィのジョン・ボン・ジョヴィのちょっとハスキーでハイトーンなボーカルが好きなんです。

──ライブにも行かれたり?

藤:ずーっと行ってますよ。レコード会社のスタッフが後ろにいるのを知らなくて、後で「ずっとジャンプしてましたね」って言われました(笑)。ライブが終わるといつも足がむくむんですよ、休みなく跳ねて歌っているから(笑)。スティーヴン・タイラーのソロ公演(2017年)も観に行きましたけど、ピアノの上に乗ったり、すごくパワフルでした。それに昔、エアロスミスと対談したことがあるんですよ。私のデビュー5周年(1994年)のときだったんですが、忘れもしない椿山荘で、着物を着て花束持ってドキドキしながら。

──17歳からファンだったら夢心地ですよね。

藤:大ファンですからね。いろいろ質問させていただいたんですけど、最後にスティーヴンに「生まれ変わったら何になりたいですか?」って聞いたら、「もちろんエアロだよ!」って答えてくれて、鳥肌でした。カッコいいでしょ。その言葉は家宝みたいなものです(笑)。

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