【インタビュー】HYDE、『ANTI WIRE』に知られざる物語「僕はそこに意味があってほしい」

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■人を変えることは難しいけど
■自分を変えることはできる

──ちなみにジャケットのアートワークについてはいかがですか。『ANTI FINAL』では観客と対峙しているHYDEさんがジャケットとなっていましたが、今回は雨の夜、路地裏でひとり空を仰いでいるHYDEさんで。そこにも何か意味合いが?

HYDE:特にはないんですけどね。でも、ここでもスタート感がほしかったというか、ここから始まったっていう感じをジャケットでも出したいと思って。最初はひとりだった、っていう。

──すごいな、本当に全部がひとつのストーリーに紐づいているんですね。

HYDE:オタクですから(笑)。そうやってストーリーを考えるの好きなんですよ。グッズを作ったりとかもそう。これがメインの仕事になっちゃうとまた違うのかもしれないけど、今は音楽がメインだから、それ以外の仕事が新鮮で楽しいんです。それに意味のないものは出したくないしね。ライヴって基本、やることは変わらないじゃないですか。ニューアルバムを出して、ツアーをして、みたいな。披露する曲は違うけど、やってること自体はあんまり変わらない。でも、そうだとしても、僕はそこに意味があってほしいんです。そのときそのときの違う何かがあってほしい。だからこそ「じゃあ今回は暗い照明でいこう」とか、そういう変化をつけたくなるんですよね。

▲Blu-ray / DVD『HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE』


──ツアー全体を振り返って、今、どんなお気持ちですか。

HYDE:ステージ以外のことで言えば正直、つまらなかったですよ。仕方がないことだけど、地方に行ってもメンバーと飲みに行くこともできないし。でも誰かひとりでもコロナに感染してしまったらツアー自体がダメになるし、ファンの子もライヴの帰りとか打ち上げせずにまっすぐ帰ろうって、絶対に感染しちゃいけないっていう気持ちで参加してくれていたから、その気持ちを無下にしたくないし。

──いわゆるライヴの緊張感とはまったく別種の緊張感やストレスが常について回ったツアーだったんでしょうね。

HYDE:うん、本当に。ほぼ毎日、抗原検査してたしね。でも僕よりもバンドメンバーのほうが怖かったと思います。「もしもコロナ陽性になってしまったら、どれだけHYDEさんに迷惑がかかるんだ?ってずっと怖かった」って言ってましたから。

──“DISC 2”のドキュメンタリー映像で、ツアーファイナルの終演後、バックステージにスタッフの計らいでゴールテープが用意されている場面がありましたよね。バンドメンバーと全員で肩を組んでテープを切るっていう。あのシーンが今ツアーの大変さを物語っているようで、胸が熱くなってしまいました。

HYDE:スタッフは本当に大変だったと思う、僕ら以上に。でも、とにかくスタッフが万全に対策してくれて、バンドメンバーもお客さんも協力してくれて、ホントみんなの協力のおかげで完走することができたので。これを成功させたら世間のエンターテインメントに対する意識も少しは変わってくるはずだと思って、やってたところもあるんですよ。僕らぐらいしっかり対策すればエンターテインメントはもっと可能性を広げられるだろうなって。そういう意味では雛形を作ったと思ってるし、だからこそ僕自身も次ができる。次のライヴも全然不安はないですね。

▲<HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE>2021.3.7@大阪城ホール


──遡れば、無観客配信ライヴ<LIVE EX>(2020年7月:EX THEATER ROPPONGI)で感触を掴んで以降、<HYDE LIVE 2020 Jekyll & Hyde>(2020年9月:東京・Zepp Haneda [TOKYO]にて開催)のときから、ずっとそうした意識で続けてこられていますよね。

HYDE:去年9月頃はここまで感染拡大が続いてるとは思ってなかったですけど。こうやって成功例を作っていかなきゃいけないと思うんです。僕だって今の世の中を見ていて不条理だなとか理不尽だなとか、政府のやり方に疑問もいっぱいありますよ。でもルールはルールとして守らないといけない。ただし、それを過剰に捉えすぎるのはどうなのかなって。コロナさえ避ければ生活していけるのかって言ったら、また違う問題があるじゃないですか。そう考えると自分の身は自分で守らなければいけないって思うんですよ。一人ひとりが自分を守りながら、いかに生きていくか。人を変えることは難しいけど、自分を変えることはできるからね。「オマエ、マスクしろよ」とか言うとトラブルになるけど、自分がマスクをすることはできるじゃない? そうやって、みんなが自分をそれぞれに守りながら、やれることはやっていけたらいいんじゃないかなって。僕はルールに則ったうえで自分が信じたことをやって成功例を作るしかない、そう思ってこのツアーに臨んでいましたし、そういう意味でも“みんな無事に生き延びようね”って思いながらライヴをしていましたね。

──情報や上から言われたことをただ鵜呑みにして流されるのではなく、何が必要で大切なのかをしっかり自分の頭で考えて、どう動くべきか。その姿勢こそがHYDEさんの掲げるANTI=反抗精神の真髄だと思うんです。今作を観ていてもそうしたメッセージがひしひしと伝わってきますし。

HYDE:はい。

──ステージに立っている間は楽しめていたのでしょうか。

HYDE:今回はパフォーマンスより歌に集中することを心がけていたので、それはそれで楽しかったですね。喉の使い方の勉強にもなったし、今回みたいなやり方だとしっかり歪みも出せるしね。普通、アコースティックで声を歪ませて歌うなんて誰もやらないけど、僕が目指す音楽はやっぱりハードロックでもあるから、そういう意味でもスキルを上げるにはいい経験だったと思います。安定して歌うにはどうすればいいか、とかいろいろ考えさせられることもあったし。

▲<HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE>2021.3.7@大阪城ホール


──ここまで歌に特化して魅せるツアーというのもそうないと思います。

HYDE:うん。いわゆるライヴってパフォーマンス含めて、派手にしてなんぼのところもあると思うんですよ。でも<ANTI WIRE>はじっくり聴かせる要素とハードロック的な要素があって、それをお客さんが座って観るっていう。そういうライヴはなかなかないでしょうね。アレンジも素晴らしいし。既成概念の枠組みから外れているというか……“普通だったらこんなアレンジしないんじゃない?”とか“名曲をここまで崩す必要ある?”って勝手に枠を作ってしまいがちだけど、そんなの関係なくアレンジしましたからね。

──まさか「DEVIL SIDE」があんなおしゃれな曲に変身するとは。

HYDE:かわいいよね(笑)。今回のアレンジに関しては僕もここまで面白いことができるとは思ってなかった。表情を変えることは簡単だけど、そこからさらにカッコよくすることができるんだなって。リハーサルでバンドメンバーみんなで1からアレンジしていったので、リアルタイムでその作業を見ているわけだからね、音楽がグワーッて変化していく様子を。すごく新鮮だったし、面白い経験でした。

──アコースティックの概念を塗り替えてしまったのでは。

HYDE:“騒げるアコースティック”だしね。お客さんが声を出せないぶん、楽器を持ち込んでみんなで音を出したりするのも含めて、すごく画期的だったと思います。ヴォイスレコーダーに歓声を吹き込んでそれをライヴ会場で流すとか、今のこの状況でしかできない、すごく素敵なことだし、これなら飛沫も飛ばないからね。声が出せないからって静かに観てることはないんだっていうのをちゃんと実践できてよかった。これはもう、みんな真似していいよって(笑)。

──こういったツアーは今回限りになるんでしょうか。

HYDE:いつかまた、って感じですかね。しばらくはないかなって思ってます。

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