【インタビュー】HYDE、『ANTI WIRE』に知られざる物語「僕はそこに意味があってほしい」

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ソロ活動20周年の幕開けとして2020年末から年をまたぎ全国7都市11公演に渡って開催されたツアー<HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE>。ソロはもちろん、L'Arc-en-CielやVAMPS、また自身が手掛けた提供曲のカヴァーまでHYDEのキャリアを網羅した充実のセットリスト、さらにはそれらの楽曲たちに施された斬新かつ大胆なリアレンジが大きな話題を呼んだ今ツアーから、2021年1月31日、東京・国際フォーラム公演の模様が『HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE』として早くも映像作品化された。

◆HYDE 画像 / 動画

二度目の緊急事態宣言が10都府県に発出されるなか、徹底した新型コロナウイルス感染症対策のもと敢行された<HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE>は、コロナ禍という未曾有の危機に立ち向かわんとするHYDEの信念そのものであり、その成功は音楽を始め、エンターテインメントの世界に携わるすべての人々にとって大いなる希望の光となったに違いない。どれほどの覚悟と決意を持って彼がこのツアーに臨んだのか、その強固な意志は今作の映像からもつぶさに見て取れるだろう。こうした危機的状況下にあって今、できることは何かと冷静かつ真摯に見極めたうえでHYDEが選択したのは“声を出さずに騒げるアコースティックライヴ”という、既存のアコースティックの概念を見事に覆す画期的スタイルだった。今ツアーでしか味わうことのできない唯一無二のサウンド、アンサンブル、パフォーマンス。それらとともに固定観念に囚われず、また自身にとって本当に大切なもの、その本質を見失うことなく、敢然と突き進むHYDEの生き様をも今作にて存分に堪能してほしい。

BARKSインタビューでは映像作品『HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE』とツアー<HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE>、さらには2002年にリリースされた1stソロアルバム『ROENTGEN』を携えて6月25日よりスタートするオーケストラツアー<20th Orchestra Tour HYDE ROENTGEN 2021>について、HYDEにたっぷりと語ってもらった。

   ◆   ◆   ◆

■ここまでダイナミクスに幅がある
■コンサートはできないんじゃないかな

──これまでと比べて今回はライヴ映像作品化されるのがずいぶん早くないですか。

HYDE:言われてみればそうですね。レコード会社が儲けたいんじゃない(笑)?

──ツアーの熱量が消えないうちに出したい、とかでなく(笑)?

HYDE:もちろんそれはありますよ。もうすぐ<20th Orchestra Tour HYDE ROENTGEN 2021>もスタートするし、これまでのハードロックサウンドには一旦ここで区切りをつけておこうっていう意図もあって。<ROENTGEN>の世界観に切り替わろうとしているのにロックを引きずっていたらゴチャゴチャになっちゃうし、観ている人からも“何がしたいの?”って思われちゃうだろうから。

▲<HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE>2020.12.26@ぴあアリーナMM


──それだけやり切ったという手応えも大きかったのでしょうね。ホント、いろんな意味ですごいツアーでしたから、<ANTI WIRE>は。

HYDE:語弊があるかもしれないけど、コロナ禍という状況になってしまったからこそ実現したツアーだったという言い方もできるのかなって、今となっては思いますね。コロナ禍がなければアコースティックライヴでツアーをやろうという発想自体、出てこなかっただろうし……何もなければ普通に<HYDE LIVE 2019 ANTI FINAL>(2019年12月@千葉・幕張メッセ)の延長線、さらにその先を目指してライヴをやっていたはずで。でも、それができないとなって、だったら頭を切り替えてアコースティックにしよう、ステージのコンセプトも映画で言う“Episode.0”という設定にして、ここから“Episode.1”である<ANTI>の世界観につながる始まりの物語にしよう、とか。あと、音のダイナミクスっていうんですかね、これだけ小さな音からラウドでヘヴィな音まで出せるライヴって<ANTI WIRE>ぐらいだと思っていて。<ROENTGEN>のツアーでも、ここまでダイナミクスに幅があるコンサートはできないんじゃないかな。きっとハードロックなライヴに戻ったら戻ったでこんなに小さな音は出せないし。そう考えるとすごく画期的なツアーでした。面白いことをやったなって思いますね。

──実は今回、映像作品としての『ANTI WIRE』を拝見して、ようやくHYDEさんがおっしゃっていた“Episode.0”というコンセプトが腑に落ちました。実際の時系列としてはどうしたって<ANTI>が先ですし、<ANTI WIRE>を世界観のスタートとして考えるというのは正直、無理があるんじゃないかなと感じていたりもしたのですが。でも今作を観て“本当にちゃんと繋がってる!”ってものすごく感動したんです。HYDEさんは最初からこうなることを見越していたんだなって。

HYDE:アコースティックをやるとなってから、自分のなかに徐々に生まれてきたアイデアでしたけどね、“Episode.0”というのは。ステージセットを考えたりしていく過程で「じゃあ“Episode.0”って設定にしたほうが面白いね」となって、そこから演出を考えたり、曲も路地裏が似合う曲を選んだり、そういう雰囲気にアレンジしたりして“ゼロ”感を出していったんです。僕のなかでは<ANTI FINAL>はゲリラライヴのイメージなんですよ。NEO TOKYOを占拠した僕らがゲリラライヴをやっているっていう。そこに至る最初のスタートが<ANTI WIRE>だというところを今回のツアーで演出したかったんですよね。

▲<HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE>2020.12.26@ぴあアリーナMM


──“DISC 1”のラスト、ライヴ映像のあとに<ANTI FINAL>へ繋がることを示唆する雨のNEO TOKYOのシーンで締めくくられていますよね。映画のエンディングみたいでゾクゾクしたのですが、あの映像もHYDEさんのアイデアですか。

HYDE:あれはライヴ映像が完成したあとに思いついたんですよ、編集ももう終盤って頃に。ライヴが終わってエンドロールが流れたあと、最後はああいう感じになったらいいなと思って、速攻で監督に「今から作れないかな?」って(笑)。「時間はないだろうけど、この映像があったら絶対ハマるから、ぜひ作ってほしい。そんな難しいことは言わないから!」ってお願いして、すぐに絵コンテを描いて「こんな感じ」ってイメージを伝えて。監督も文句ひとつ言わずに取りかかってくれたんですよ。で、監督自ら街に出て撮ってきたものを「こんな感じですか?」って持ってきてくれて「違う!」みたいな(笑)。結局、3回ぐらいやり直してもらっちゃいました。

──「難しいことは言わない」って言ったのに(笑)。でも、そのおかげで作品全体がいっそう意味深いものになりましたね。

HYDE:そうなんですよ。よりいい感じで繋げることができました。じっくり観てもらうとわかるけど、ライヴの歓声から徐々に雨の音に変わっていくんですよ。それがまたすごく美しくて。

▲<HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE>2020.12.26@ぴあアリーナMM


──映像作品化も踏まえつつ、今回のライヴでHYDEさんがプロデューサーとしていちばんこだわったところは何でしたか。

HYDE:いつもっちゃいつもだけど、照明ですかね。もちろん音響に関してもですけど。例えばアコースティックだからと言ってロー(重低音)感を失くさない、とか。アコースティックであっても根本はやっぱりロックであってほしいから、そこはスタッフにも誤解のないようにしっかり伝えて音作りをしていきました。でも、いちばんこだわったのは照明で。今回は路地裏感のある照明にしたかったんですよ。照明ってついつい派手になりがちというか、演奏に合わせてバンッて一気に明るくなったりするじゃないですか。きっとそういう技を習ってきてるんでしょうね、照明スタッフはよかれと思ってそうしてくれるんだと思うんですけど、僕のイメージでは極論、照明がなくてもいいぐらいだったんです、今回は。演奏に合わせた照明は必要ないっていう。そういう照明じゃなくて、それこそバーのライティングみたいな。

──薄暗いなか、ほのかに灯っているぐらいの。

HYDE:そうそう。できるだけ派手さをセーブしたり、バーのライティングみたいな照明を意識してましたね。あとは映像のコントラストなんかも今回、特に気にしたかな。

──それもやっぱり綺麗にしすぎないという? ロック的な、ザラッとしたニュアンスにしたい、とか。

HYDE:派手にしすぎない、かな。派手にしちゃうと路地裏感が出ないし、“Episode.1”との差がなくなってしまうので。やっぱりパン!とはじけるのは“Episode.1”であってほしいというか、そのコントラストは大事にしたかったんですよね。はじける手前の良さってあるじゃないですか、地味な良さっていうのかな。『バットマン』は面白いけど、『ジョーカー』は『ジョーカー』でまた面白い、みたいな。『バットマン』ほど派手なエンターテインメントじゃないけど、『ジョーカー』には『ジョーカー』の味わい深さがあるというかね。“Episode.0”は路地裏に転がるドラム缶や、寂れた街灯が似合うものにしたかったんです。

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