【インタビュー】AK-69、『The Race』に勝利と孤高「最高にカッコいい終わり方が自分の中で見えてる」

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■新しいアプローチで新しいお客さんに
■届けたいということでもある

──6組の豪華フィーチャリングゲストについて、コメントをください。今、話に出たANARCHYはもう何度目のコラボか忘れるぐらいですけど、相変わらず絶妙のコンビネーションです。

AK-69:でも実際客演でやるのは、8年、9年振り? 俺が昔ガソリンスタンドで働いてる頃に京都から遊びに来てくれたり、それぐらい若い時から深い関係ではあって。その後はちょっと距離があいた時期もあったけど、何があったわけじゃなくて、各々の道を行っていたみたいな時期があって。それがひょんなことで、スペースシャワーTVの『BLACK FILE』という番組で俺がANARCHYにインタビューする企画(2019年4月)があったんですよ。それをやった時に昔の空気を思い出して、ANARCHYから「またメシ喰いに行きましょう。遊びましょう」となって今に至るんですけど。二人の空気感は変わらないし、久しぶりに会ったけど久しぶりな感じはしなかったです。

──聴いてるほうもまさにそうです。あと、さっき話してくれた「一周先を走ってる感覚」も、彼なら共有できてるだろうし。

AK-69:あいつもそうですよね。二人にしか出せない世界になったかなと思います。


──「Racin’ feat.ちゃんみな」、どうですか。

AK-69:彼女は本当に一流になりましたよね。ブランディング的にも立派だと思います。ちゃんみなが中学生の時に、自転車にラジカセ積んで、俺の曲を爆音で流しながら練馬あたりを走ってたらしいんですけど(笑)。彼女は基本客演のオファーは受けないんですよ。だけどやってくれて、しかもそこで派手な曲を作るんじゃなくて、ああいうドープな曲をやるというのが俺が描いてた構想。それに彼女もワクワクして乗ってくれた。お互いに世話になってるプロデューサーが一緒で、その人と一緒にセッションしたんですけど、もう素晴らしかったですね、彼女のスピットは。この曲はレース中のデッドヒートのシーンなんですけど、ちゃんみなのリリックも強気だし、俺にあんなこと言ってくるアーティスト、なかなかいないですよ。ほんと、強いですね。いろんな意味でたくましい、素晴らしいアーティストになったのを感じます。『高校生RAP選手権』で出てきた姿を知ってるので、そこからすると“抜けたな”って感じがしますね。

──「Thirsty feat.RIEHATA」のRIEHATAさんは、ダンサーですよね。

AK-69:そう、彼女はダンサーとして世界的に有名ですけど、SALUの客演で歌を歌ってるのを初めて聴いて、マジで衝撃を受けて、そのへんのシンガーより全然いいじゃんというぐらいうまかったから。ラップもやってて、聴かせてもらったらエグかっこよくてね。それで俺の曲でもラップしてほしいなと思って、スタジオに呼んで「一番踊りたくなる曲はどれ?」って聴かせたら、彼女が選んだのがこのトラックだった。その場でラップを書いて乗せて、すごいですよ。バケモンです。才能のかたまり。ラッパー形無しですよ。

──そして「I’m the shit feat.¥ellow Bucks」。TOKONA X「They Want T-X –Intro-」のビートをリメイクしたこの曲、まごうかたなきビッグチューン。

AK-69:俺とDJ RYOWと¥ellow Bucksと、東海のメンツじゃないとできない曲ですね。「BUSSIN’ feat.¥ellow Bucks」(前アルバム『LIVE:live』収録)に続くこの文脈は、俺たちにしかできないし、トコナメ(TOKONA-X)の曲をネタにして現代に蘇らすというのは、俺たちにしかできない特権なんで、それをふんだんに出した曲ですね。¥ellow Bucksも曲を追うごとにスキルが上がっていくし、自信もついていってるんで、最近では貫禄すら出てきましたね。若い時、『THE RED MAGIC』(2011年1月発表)の時の俺を見てるような感じです。東海エリアからこういう奴が出てくるのはうれしいですよね。“俺たち、息合うな”と思うし、¥ellow Bucksも「韻の踏み方やスタイルをAK-69に習った」と言ってるだけあって、細部は違うけど随所に名古屋魂みたいなものを感じるんですよ。似てないんだけど似てるみたいな、そこが絶妙に噛み合う要因なのかなと思います。だから、可愛いですよ。こんなこと言うとあいつは嫌かもしれないけど。


──そして「Next to you feat.Bleecker Chrome」の、Bleecker Chromeはさらに若い。20歳ぐらいでしたっけ。

AK-69:ケンヤくんは19歳です。シンくんは21歳かな。とあるフェスで紹介されて、その後、交流はなかったんですけど、ひょんなタイミングでスタジオに遊びに来た時に、「ちょっと歌ってみていいですか?」「おお、歌ってみゃあ」ってなって。歌わせたら、クオリティがすごいんですよ。「ジャスティン・ビーバーですか?」みたいな、一発ですごいメロディを出してくる。これはすげぇと思って、このアルバムを作る時に「一緒にやろうか」と声をかけて。スタジオに呼んで、良さそうなトラックを聴かせたら、しばらく聴いてから「歌ってみていいですか?」って、出したのがあのメロディ。二人とも1、2テイクでほぼあの形になってます。

──それはすごい。

AK-69:リリックはあとから乗せましたけど、メロディは1,2テイクで出来上がってますからね。才能が恐ろしいですよ。今のところ無名に近いというか。無名と言ったら失礼だけど、そんなの関係なく、これからもっと知られるであろう存在だと思います。この曲は、単純に俺にとってカッコいい楽曲ができるという喜びと楽しさと、こういう才能を世の中に知ってほしいなというその二つですね。

──これってさっき言った”客演モードのAK-69“の典型で、フックまで二人に任せちゃってるじゃないですか。

AK-69:“これカニエ(・ウエスト)の名義だけど、ビッグ・ショーンがほとんど歌ってるよね”というのと同じで、最後にカニエがちょっとヴァースを歌って終わりみたいな(笑)。

──でも決して手を抜いてるわけじゃない(笑)。

AK-69:この楽曲の最善の道がこれだったということです。俺のパートを増やすことは全然できるんですけど、楽曲として聴いた時にベストであるということを吟味して、「俺はこれだけでいい」と。二人がメインの曲なので、俺のラップはイージーリスニングでOKです(笑)。

──そしてアルバムのラストを締めるのが、「Victory Lap feat.SALU」。

AK-69:彼も一流アーティストの仲間入りしてるんで、メッチャ忙しいし、アルバム制作の時系列的にも一番最後に頼んだんですよ。どうしてもSALUにやってほしくて、そんなスケジュールで言ってくんなよっていう失礼を承知でお願いしたんですけど、「予定をどけてでもやります」と言ってくれて。気持ち的にもナイスな奴です。スキルも十二分ですけど、“こいつに頼んで良かったな”って思える人間性まで見せてくれて、良かったなと思いますね。さっきも言いましたけど、アルバムを締める意味のある曲を、“結局、敵は自分だった”という部分を客演でやってもらうには、これだけのスキルと説得力がある奴じゃないとつとまらない。あいつも家族ができたりして、出始めの頃とは状況が違うし。アーティスト性も人間味も増した彼と、こういう意味のある曲を一緒にできて良かったなと思いますね。

▲アルバム『The Race』通常盤

──全員が適材適所だと思います。

AK-69:客演のバランスはめっちゃ良かったと思います。

──10曲中6曲が客演で、フックまで任せちゃう曲もあって、AK-69少なくねぇか?と思う人もいるかもしれないけれど。

AK-69:それでいいと思うんですよ。今、俺がやってることは、もちろん自分の自信もあるんですけど、その一方で新しいアプローチで新しいお客さんに届けたいということでもあるので。俺に常に新しいファンがついてきてくれてるのは、そういうことが要因なのかな?と思いますね。若いアーティストやジャンルが違うアーティストといい音楽を作って、普段聴いてるリスナーとは違うところに飛んでいって、そこで良さをわかってもらうことが、今回もできてるのかなと思います。だから今後、たとえばRIEHATAとやったことでダンサー界にこの曲「Thirsty feat.RIEHATA」が広がるだろうし、彼女も「あの曲は一生踊ってく」と言ってくれていて、弟子たちがもう覚えてくれてるらしいし。彼女はちょっとフリーで“踊ってみた”映像を発信するだけですごい話題になる人だから、そういうところでも広がっていくだろうし。ちゃんみなのお客さんは俺のお客さんとかぶってないと思うけど、あの曲を聴いて“AK-69いいじゃん”と思ってくれたら、そっちでもチャンスが増えるだろうし。Bleecker Chromeも、あの子たちの歌のアプローチがあるからこそ入ってきてくれる層もあると思うんで、そういうところで広がっていったりとか、いろんなことを踏まえて“いいアルバムができたな”と思いますね。

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