【インタビュー】布袋寅泰、活動40周年を語る「“自分を信じて戦え”と言うでしょうね、あの頃の僕に」

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布袋寅泰が6月30日、活動40周年のアニバーサリーリリース第1弾として、EP「Pegasus」と映像作品『40th ANNIVERSARY Live "Message From Budokan"』を同時リリースした。EP「Pegasus」には表題曲ほか、「10年前の今日のこと」、RIZINテーマ曲「D.O.F. (Death or fight)」、坂本九の名曲をインストゥルメンタルアレンジでカバーした「上を向いて歩こう」といった4曲を収録。映像作品『40th ANNIVERSARY Live "Message From Budokan"』には1月30日および31日に日本武道館で開催された40周年記念公演より全44曲を収録した。なお、EP「Pegasus」の初回生産限定盤には、このアニバーサリー公演から29曲を収録したライブCDが付属する。

◆布袋寅泰 画像 / 動画

大きく動き始めた。アーティスト活動40周年を迎えた布袋寅泰の身辺が、である。昨年後半、「40周年の僕のテーマは“届ける”」だと聞いていた。のちに無観客の武道館2DAYSを迎えることになった布袋。そのことで届けたいという想いは一層加速したのではないだろうか? 今回、一連のリリースを含め新たなニュースから伝わってきたのはそこだ。その内容について、6月30日のトークセッションのレポに続いて、インタビューをお届けしたい。

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■BOØWY時代を彷彿とさせる
■ギターリフと構成、展開ですよね

──いま、この時代の中で思い感じる40周年とは、どんなものなのでしょうか?

布袋:まさか自分の40周年を世界がパンデミックに襲われる中で迎えようとは思いもしませんでした。そもそも19歳でBOØWYの一員としてデビューした時、自分が40年後もギターを弾いていることすら想像もできなかったし、歳をとってまでロックすることはカッコ悪いと思っていましたからね。しかしこうしてこの大きな節目を迎えると、ここまで応援してくれたファンの皆さんや、ミュージシャン、スタッフ、家族、友人、そして僕の活動に関わってくれた全ての皆さんのおかげで今の自分があると思います。感謝、感謝の40周年です。

──40年前のご自身へ、今のご自身がアドバイスをするとすれば、どのような言葉をかけますか?

布袋:あの頃の自分が人のアドバイスに耳を傾けるとは思いませんが(笑)。紆余曲折ありましたが、この40年は変化とチャレンジの連続だったし、常に僕は僕らしく勇敢だったと思います。「自分を信じて戦え」と言うでしょうね。この言葉はそのまま今の自分にも通ずるもの。結局、自分は自分意外の誰にもなれないんだから。身をよじり、もがきながら成長するしかないんですよね。

──逆に、40年前のご自身は、40年後の将来をどのように思い描いていたのでしょう。今のご自身の活躍ぶりをどのように評価されると思いますか?

布袋:「すっげ────!」と感嘆の声を上げると思いますよ。デヴィッド・ボウイともロキシー・ミュージックともローリング・ストーンズとも共演したの? ジェフ・ベックやクラプトンと挨拶交わすの? タランティーノやテリー・ギリアムの映画に参加したの? 夢の中の夢のような現実を手にしたわけですから。キャリアを積んでも大御所の椅子に深々と落ち着かず、今もチャレンジ続けてるところも「カッケー!」と認めてくれると思いますよ。今、40年という長い道のりを振り返って、こうしてポジティヴに自分のキャリアを評価できることは我ながら凄いことだと思うし、僕は本当に幸せなギタリストだと思います。


──さて、EP「Pegasus」について聞かせてください。布袋ファンなら誰でも気づいたと思いますが、どの曲も、これまで聴いたことのないほどシンプルなアレンジになってますよね? だからこそより生な説得力が生まれている。この形はどんな想いから生まれたものなのでしょうか?

布袋:40周年のリリース第一弾ということで、ファンの期待を裏切るのではなく、応えた上で上回る作品でなければいけない、というプレッシャーはありましたが、プレッシャーを力に変える技を知るのも40年の経験あってのものかもしれません。コロナへのストレスも限界に近いこともあり、心が晴れない毎日です。ネットを見ていてもネガティヴなニュースや言動が生む負の連鎖に気が滅入ってしまいます。こんな時こそ、目に見えない呪縛から心を解放されるような音楽を届けたい。4曲ともスタイルも表情も違う楽曲ですが、それぞれがポジティヴなエネルギーを持った力強い作品に仕上がったと思います。

──ここのところ、何回となくご自宅から弾き語りで配信ライヴを行なっていた。そのことが今回のような表現に結びついた、といったようなことは?

布袋:そうですね。ロックダウンのロンドンで自宅に籠る生活が続く中、ギターを片手に自分の気持ちと向き合う時間が曲作りに影響したと思います。無観客の武道館ライブに向け、東京の部屋で夜景を眺めながら、なつかしい曲をアコギで歌ってみたりして、言葉と音がうまく今の気持ちと連動した感はありますね。

──コロナ禍で作られた前回のアルバム『Soul to Soul』は布袋史上初めての自宅録音と言ってもいい制作方法でした。そのへん、今回も同様だったのですか?

布袋:そうです。「Pegasus」と「D.O.F. (Death or fight)」のドラムはリモートレコーデイングでファイルのやりとりを行いましたが、他は全て宅録です。アコギのマイキングから、歌録り、ピアノ、シンセ、全て僕が行いました。それは孤独な作業でした。いいテイクが録れても誰も反応してくれないわけだから。しかし、独りだからこそ、よりパーソナルな音や言葉を紡げた部分もあると思います。さすがに独りレコーディングにはもう疲れましたが。演奏するよりデータを管理する時間のほうが長くかかってしまったり。スタジオではアシスタント・エンジニアに任せる作業ですからね。

──見事にテイストの異なる4つの収録曲それぞれについて、それぞれの生まれ方や逸話などをおねがいします。まずはタイトル曲「Pegasus」から。

布袋:昔ながらのファンにとってはBOØWY時代を彷彿とさせるギターリフと構成、展開ですよね。ギタリスト諸君にはたまらなくコピーしたくなるフレーズだと思います。しかし、そう簡単にはコピーできないようにトリックを仕掛けてあります(笑)。ソロからエンディングにかけてのドラマチックな展開は、聴き終えたあと爽快な気持ちを味わってもらえるでしょう。こうして自分のスタイルを貫きながら、懐かしくも新しいサウンドを創るのは容易いことではありません。歌詞はインターネットやSNSに蔓延るダークサイドから広がるネガティヴな連鎖、そんな見えない呪縛から自己を解き放て、というメッセージを込めたものです。ペガサスの翼は誰もが心に持っている自由の象徴です。広がりのあるサウンドに身を委ね、思いっきり翼を広げてほしいと思います。“1パーセントは無限大のはじまり”というフレーズがとても気に入っています。



──では、2曲目の「10年前の今日のこと」について。

布袋:この曲は僕の新たな代表曲となるような気がします。かつてデヴィッド・ボウイが「Five Years」という曲で世紀末を歌ったように「Ten Years」というテーマで自分と世界に起こったことを描いてみよう、と思ったのがきっかけです。東日本大震災から10年が経ちました。早いような、長いような10年です。コロナで時間が一時停止した中で40周年を迎え、自分の辿った時間を振り返りながら、今の自分を、またこれから先のこと、人生という一度きりの旅を、静かな目線で見つめ直すきっかけになればいいな、と思い、自宅にマイクを立て、全てホームレコーディングし、手作りの温もりがこもった音像に仕上がりました。ロンドンの空気感が詰まったポール・マッカートニーの『マッカートニー』というアルバムのようなイメージです。

──続いて、坂本九さんのカバーで「上を向いて歩こう(Instrumental)」。

布袋:この曲は世界で一番有名な日本の曲でしょうね。僕の『キルビル』のテーマ(「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY」)もそれに続くかもしれません(笑)。坂本九さんのオリジナルがリリースされたのは僕の生まれる一年前の1961年だったとのこと。60年前の曲を来年還暦を迎える僕がカバーしたのも、何かの運命かもしれませんね。ロンドンでのロックダウン中、家で無心でポロリとギターを爪弾く時間が増えました。ある日、無意識にこの曲を弾いた時「ああ、これは絶対誰かの胸に届くな」と確信しました。“どんな時も俯かず、上を向いて、前を向いて歩き続けよう”という、明るく優しいけど力強いメッセージは、いつの時代も聴く人の心を支え続けてきました。しかしこの完璧なメロディと歌詞を指先に委ねるのは簡単ではありませんでした。結局70テイクくらい弾いたかな? 聴いてくれる人の心に青空が広がりますように、と祈るような気持ちで、一音一音大切に弾きました。

──そして、ラストの「D.O.F. (Death or fight)」は、格闘技イベント『RIZIN』のテーマ曲。

布袋:RIZINからのオファーを受けて作ったこのテーマソングは、RIZINファン、格闘技ファン、そして、リングに賭ける選手たちに皆さんのエネルギーが奮い立つような曲を目指し、久しぶりにギターを剣に見立てて気合いを入れて作りました。映画音楽もそうですが、自分を表現するのとは違って、プロジェクトに明確な目的がある仕事は、全く違う発想から曲を描きます。戦う男たちをテーマにした音楽は僕の得意な分野だと思います。


──EP「Pegasus」の表題曲ミュージックビデオは、映像ディレクターの大澤健太郎が監督、俳優の笠松将が主演を務めています。全編モノトーンのスピード感ある映像に仕上がっていますが、制作はどのように?

布袋:曲ができたときから“少年が飛び立つ映像”が目に浮かんだんです。そして今回、監督と初めてストーリーの打ち合わせをzoomで行った時、監督も同じことを考えていて、そこに笠松将さんという存在感のある俳優が参加してくれて、曲の持つダークながらもシャープなイメージを見事に演じてくれました。僕のシーンはロンドンで別撮りです。スモークマシーンを購入して、こちらもかなり手作りに近い作業でしたが、編集で合体させた時びっくりするくらい一体化したので嬉しかったです。ジャケット写真の少年、僕、笠松さん、それぞれが片手をかざす瞬間繋がるというシュールな表現が好きです。

◆インタビュー【2】へ
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