【インタビュー】YURAサマ、多芸多才な4バンド兼任と2年ぶりソロ始動「自分のこと疑ってないんです」

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Psycho le CémuのYURAサマが8月21日、2年ぶりのソロ作品となるマキシシングル「I need」をリリースする。二度目の緊急事態宣言発出が確実視された今年1月中旬、世の中の停滞ムードと逆行するようにアナウンスされたのが、このソロ作リリースとソロライブ開催だ。“明るい未来を想像しよう”というテーマのもとに、キラキラなポジティヴオーラ全開で鬱憤を蹴散らすべく発足したプロジェクト『I make』が、この夏、遂に花開く。

◆YURAサマ (Psycho le Cému) 画像 / 動画

Psycho le Cémuのプロフィールでは、“ダンス” “ボーカル” “ドラム”がYURAサマの担当パートとなる。踊れて歌えるドラマーなのか、歌えて叩けるダンサーなのか、はたまた叩けて踊れるボーカリストなのか、的を絞らせない。また、Psycho le Cémuほか、Dacco、THE BEETHOVEN、Brotherといった4つのバンドを同時進行で掛け持つという意味では、二刀流を遙かに超越して、まるで千手観音。音楽活動以外に目を向ければ、AFAA(現JWI)公認エアロビクスインストラクターライセンスを保有し、多目的スペースNakano Space Qをはじめとする事業を合同会社アットワークスプロジェクトで運営するなど、実に多芸多才なマルチぶりを発揮している。

もはや理解不能。謎が謎を呼ぶYURAサマとは一体何者か。その正体を紐解くべく、20数年前のローディー時代にまで話は遡ったが、それを押し退けるような新アイデアが次々とトークに溢れ出して際限がない。生粋のエンターティナーに迫る10000字越えのロングインタビューをお届けしたい。

   ◆   ◆   ◆

■いわゆるドラマーの人たちとは気質が違う
■という違和感はずっと感じてました

──YURAサマがソロ活動を始めたのは2019年、40歳を迎えた頃でしたね。

YURAサマ:“ソロデビューしたい”と一番強く思ってたのは20代前半なんです。20代前半でドーンとバンド(Psycho le Cému)が売れて、日本中のみんなが僕という存在を認知した後、満を持してソロデビューっていう流れがイメージとして自分の中にあったんですよ。ところがまぁ、そんなふうにいくはずもなく(笑)。

──ソロ展開は20年前から考えていたと?

YURAサマ:もっと言えば、バンド活動を始めた頃から心の片隅にはありましたね。“僕が目立ってなんぼでしょ”と思ってるタイプなので(笑)。それこそPsycho le Cémuを始める時も、「前に出る機会をもらえないんだったら、一緒にやれないですよ?」みたいな話を最初にしてますから。“普通にバンドやっていれば、そのうちソロ活動するだろうな”と思ってました。

──“前に出るタイプ”だと思っていたのに、どうしてボーカルじゃなくてドラムだったんですか?

YURAサマ:おっしゃるとおりです。“なんでドラマーなんだろ?”って自分で思ってるので(笑)。だいたい、ドラマーとして初めてライブをやった高校生の時、アルバイトで貯めたお金で衣装を買って、髪の毛を立ててメイクまでしたのに、ライブ後のアンケートを見たら、そのほとんどに「ドラムが見えませんでした」って書かれてたんですよ。“もうドラムやめよ! あれだけ頑張ってバイトも準備もしたのに「見えてない」ってなに!? やる意味ある?”と思ったんです。でも、僕は根っから前向きなので、“だったら「前に出るドラマー」っていうポジションを確立すれば、ひとり勝ちじゃね?”と考えて。と言うのも、どちらかというと自分は見た目が良いほうだから。

──あ、そういう自覚は当初からあったんですね(笑)。

YURAサマ:はい(笑)。ボーカルって目立つポジションだから見た目が良い人が多いじゃないですか。でも、見た目が良いドラマーって少数だっていう思い込みもあって。ドラマーでいるほうが自分が得することが多いだろうなと。


──今もPsycho le Cémuでは「前に出るドラマー」を貫いてますよね。先日のDAISHIさんとseekさんのインタビューでは、2人とも無観客配信ライブでのYURAサマのパフォーマンスを絶賛してましたから。「カメラの向こうのファンにすごくアピールするんですよ。普通のライブなら出しゃばり過ぎですけど、オンラインライブだとちょうどいい(笑)。結構なベテランなのに、あんなにカメラに向かってしゃべる人はいない」って。バンドマンのほとんどが躊躇していた無観客配信のカメラの前で、むしろYURAサマだけは水を得た魚のようだったと(笑)。

YURAサマ:さっきの高校時代の話につながりますけど、こんなに汗水垂らしてがんばってるのに、客席から見えないなんて、ドラマーは本当に一番損な存在なんですよ。目の前にはボーカルがおるし、タイコやシンバルに囲まれてるし、客席から最も距離が離れてる。ところが配信ライブでは自分専用のカメラがあるんですよ。“僕しか映らないカメラって、こんなありがたいことある!? これでみんな平等やで。最高!”と思ってました(笑)。

──目立ちたがり屋というより、元来のスター性が溢れ出ちゃってます。YURAサマのキャリアは姫路時代のTRANSTIC NERVE(defspiralの前身バンド)のローディーから始まってますが、その頃からの気質ですか?

YURAサマ:どうなんでしょうね? ただ、いわゆるドラマーの人たちとは気質が違うなという違和感はずっと感じてました。

──リズムキープを極めたいとか、8ビートを極めたいみたいな職人気質ではなかったと。

YURAサマ:周りのドラマーには「ドラムを叩いていれば、それだけで幸せ」とか「ドラムが俺の人生のすべて」っていう人が結構いたんですけど、僕は良くも悪くも広く浅くなんです。それに、“いわゆる職人気質は、苦労するのかな”と思うようになったきっかけもあったんですね。Psycho le Cémuのデビュー当時、解散するバンドも少なくなかったんです。第一線を走っていたけど解散してしまったバンドのドラマーの方とお話する機会があって、その時に「今、ヒマでさー」とおっしゃってて。「え、こんな有名ドラマーが時間を持て余してるってどういうこと!? プロ中のプロだぜ?」と思ったんですね。

──ドラムだけに特化することに不安を覚えたと?

YURAサマ:それに当時、Sweet Heart (Psycho le Cémuの所属事務所)の人から「YURAサマは、もっとドラムを練習しなさい」って言われて、系列事務所の大先輩だったLUNA SEAの真矢さんに教えていただいたんです。そこで真矢さんから、「いやいや、YURAサマはちゃんと叩けてるよ」と言っていただいたんですね、ありがたいことに。その話が広まると、それまで僕のことを下手だって言っていた人たちが急に手のひらを返して「YURAサマはドラム上手いから」って(笑)。僕自身“ドラムが上手くなりたい”と思って練習してたんですけど、“上手いとか下手とかの評価ってなんなん?”って、練習するごとに不安と苛立ちを感じちゃったんですよね。


▲マキシシングル「I need」

──そもそものキャラクターと積んできた経験が、YURAサマを形作ったわけですか。2002年のPsycho le Cémuデビュー時は“歌って踊れるドラマー”として話題でしたし、Psycho le Cémuの活動休止前後の2005年にボーカルダンスユニットDacco始動、その後、2008年には自身がメインコンポーザーのBrother結成、2013年にはTHE BEETHOVENにドラマーとして加入したほか、2014年にPsycho le Cémuが本格的に活動再開するなど、現在もこれらのユニットやバンド活動を並行しています。活動の場を増やしていった理由は?

YURAサマ:いろいろやりたがり屋なのはもともとの性格なんでしょうけど、なんでしょうね? Lida (Psycho le Cému)と自主制作でDaccoをスタートさせて、そこから自分の生き方や考え方が変わったというのが大きいのかもしれません。それまでPsycho le Cémuでは、より高みを目指して頑張って、“我が!我が!”っていうスタイルを通してきたんです。若気の至りというか、若さゆえの勢いもあったと思うんですけど。Daccoを始めてからは、高みを目指すことよりも、“この楽しい時間を長く過ごしたいな。楽しいことならなんでもやりたいな”っていう気持ちが強くなって。そこからいろんなミュージシャンと仲良くするようになったんですね。

──それまでは誰とでも仲良くするタイプじゃなかった?

YURAサマ:他のミュージシャンの方は眼中になかったんですね(笑)。あと僕、自分のポテンシャルをよく勘違いするんです。“なんでもできるでしょ、僕”とか“踊れますよ! 歌えますよ!”っていうところからスタートしちゃう。自分のことを疑ってないんです……自分でも怖いんですけど(笑)。

──ただ、これだけコンセプトが違うバンドやユニットをやっていると、頭の中でゴチャゴチャになりませんか?

YURAサマ:ひとくちに“バンド”と言っても、Psycho le Cému、Dacco、Brother、THE BEETHOVENでは、自分の役割が違うし、メンバーによってバンドの空気感も違う、曲やライブの作り方も違うんです。だから、曲が覚えられないとかはありますけど、ごちゃごちゃになるとか頭の切り替えが大変とかはないんです。僕自身は変わらないですしね。“今日はあの人に会えるな”っていう気持ちで楽しんでいる感じ。そういうスタンスで活動してきたら、今、こんなふうになってるっていう感じですね。

◆インタビュー【2】へ
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