【楽器人インタビュー】山葵(和楽器バンド)「これやっとけば大丈夫」みたいなセオリーはない

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和楽器バンドが擁する和楽器群の中で、日本古来の打楽器である和太鼓の音色はことさら大きなインパクトがある。カーンと空気を突き抜けるような打撃音から身体を震わせる重低音まで、その存在感は絶大だ。

◆山葵 ドラムセット画像

ドラムの音すらもかき乱してしまいそうな和太鼓との調和をはかりながら、ビートの屋台骨を司るドラマー・山葵は、和楽器バンドのリズム隊をどう捉えているのか。和楽器バンドにとって、ドラムと和太鼓の共存・共生はどのようなバランスで成り立っているのか。黒流(和太鼓)のインタビューと合わせて読んでほしい。(【楽器人インタビュー】黒流(和楽器バンド)「楽器が強すぎて、僕らは負けるほうが多かった」)

   ◆   ◆   ◆

──バンドの中に和太鼓が存在するということは、ドラマーにとってどういう意味を持ちますか?

山葵:和太鼓がいることで、どうしたらいいか困ったみたいな感覚はなくてですね、どちらかというとドラムと同じくらい…もしくはそれ以上の音量を出すような楽器とのコラボ…それをバンド内でやることが今までなかったので、最初から楽しんでここまで来た感じなんです。

──パワーが拮抗する音世界を楽しんできたわけだ。

山葵:スタジオに入ってセッションしながら、最初からお互いの駆け引きをどういうふうにしていくか話し合ったりもしました。少しずつ細かい構成は変わってきてはいるんですけど、お互いの楽器をリスペクトして、自分のカッコよさを出して、それが相乗効果として唯一無二のアンサンブル/グルーヴになるという作り方は、今も昔も変わっていない。なので、楽しんでここまで来ているっていうのが率直な感想ですね。

▲山葵

──和楽器バンドのアンサンブルの中で、ドラムと和太鼓の切り分け/役割分担というのは?

山葵:基本的にロックバンドなので、ドライブ感を出しリズムをキープする役割はドラムの方が比重が多いです。特にロックテイストが強めな楽曲はそういう傾向が強い。その場合、和太鼓はパーカッショナブルな役割でいることが多いです。逆に、ゆったりとした情緒あふれるバラードのような楽曲のときは、和太鼓がドン・カッ・カッみたいな和のグルーヴを作って、ドラムが最後に少しビートの要素を足してグルーヴを少し発展させるっていう形。和のバラードはどっちかっていうと、ドラムが和太鼓に乗っかるようなパターンが多いんです。楽曲によってグルーヴの組み立て方が変わってくるので、それぞれの楽器の役割や曲に対しての寄り添い方が少しずつ変わってくる感じですね。

──組み立て方には、いまも試行錯誤が?

山葵:和太鼓がやったことをそのままドラムがなぞることはないですけど、場合によってはニュアンスを僕が真似させてもらうというか採り入れさせてもらうこともあります。ライブではドラムと和太鼓のバトルをふたりだけでパフォーマンスするんですけど、最初はすごい衝撃を受けましたよ。和太鼓のスタイルは、一個の音を出すにしても、非常にパフォーマンスを大事にしている楽器なんですね。ドラムだったら単にダンッと叩くところを、太鼓は腕を大きく振り回し振り付けて場を見せるという所作があって、その演り方がすごく斬新っていうか、ドラムという洋楽器にはなかった価値観だった。だからバトルのときに同じ振り付けでやることもありますし、間を大事にしていることを学ばさせてもらいました。

──いわゆるツインドラムのようなあり方とは全く違うんですね。

山葵:ドラムと和太鼓が全く同じことをやる時はあんまりないんですけど、ドラムのパターンに対して和太鼓が部分的にブーストをかけることはよくあります。激しいロックの曲調だと、ドラムのツーバスに対して低音の太鼓を加えて、さらに低音に厚みを増すようなこととか。


──和太鼓が存在することで、ドラムセットへの変化というのは?

山葵:黒流さんがちょいちょい太鼓を増やしているんですよね(笑)。それだとバランスが悪くなるから、僕も地味にちょっとずつ増やしているんです。だから今のところ減らすことはないかな。

──そりゃスタッフが大変だ(笑)。

山葵:そうですね(笑)。もともと機材の量は多いほうでしたけど、最近ではサンプリング機材が必要な楽曲も増えてきたので、それをライブで対応するにはある程度の点数にはなってきますね。ドラは和楽器バンドで初めて置くようになったんですけど、ライブパフォーマンスとしてここぞってときに迫力を出すために採り入れたものです。

──和太鼓に負けないためには、ドラは欠かせないかも。

山葵:そう、和太鼓が途中から大きな大太鼓を置きだしたんですよ。それに敵うのはもうドラしかねえじゃんって思って(笑)。冗談半分、本当半分です。

──まだまだ刺激もいっぱいで楽しそうですね。

山葵:一緒にやらせてもらうことで、かなり勉強になっているところがあるんです。僕は黒流さんをすごくリスペクトしていて、僕にないものいっぱい持っていてカッコいいと思っているので、パフォーマンスもずいぶん変わってきましたし、多分、黒流さんと一緒にやってなかったら、もう少し独りよがりな見せ方になってたかも知れない。


──和楽器バンドならではの境地なのかな。

山葵:黒流さんはエンターテイナーというか、お客さんに見られてることを意識した上でパフォーマンスをしていて、そこはすごく勉強させてもらったところです。同じステージの上に立ってるわけだから、それと比べられてしょぼいと思われたくないし、ふたりが対等に闘って良いパフォーマンスを見せたいから、僕はそこに食らいついていく。黒流さんは黒流さんで僕のプレイや姿勢を評価してくださるので、そこはお互いの相乗効果で高め合っていける良い関係なのかなと思ってます。

──理想的な関係ですね。

山葵:このバンドに出会ってなかったら、おそらく和の世界に触れてないので、和のリズムの作り方や間の取り方/見せ方、間の美しさを知らなかったと思います。今まで僕はすき間を埋めがちだったんですよね。手数も多くて、埋めないと不安になるみたいな。でも黒流さんを見て、間があることで華やかに見える場面が生まれることを勉強したんです。そこは今も勉強させてもらってます。

──和楽器とバンドを組みたいと思った時、ドラムが気を付けるべきポイントはありますか?

山葵:ドラムはそんなに大きく変わらないです。ある程度他のメンバーに影響されていくところはあると思うんですけど、どちらかというと和楽器隊の音作りが問題で、ただでさえ音のでかいドラムといくらでも音が増幅できる電子楽器との兼ね合いになってくるから、音作りは僕たちもなかなか上手くいかなかったです。音がぐしゃっとしてしまうんですね。試行錯誤して今のところにたどり着いているんですけど、そこは僕たちだけではなくて、スタッフさん/音響さん達の力もかなり大きい部分なんです。コミュニケーションをとりリハーサルを重ねながら、本番でもいろいろ試行錯誤しながらやってきたんで、「これやっとけば大丈夫」みたいなセオリーもない。そこはやりながら経験のなかで分かっていかなきゃいけない部分かな。

──簡単ではないのか…。

山葵:あと、とりあえず言えるのは、街にある一般的なリハスタだとしんどい。狭くて音が分離できないんです。15畳くらいのスタジオだと和太鼓とドラムだけで占拠されて、そこにギターとかベースがくると、和楽器はほぼかき消されて、音のバランスとか聞けたものじゃなくなっちゃうんです。練習するところもそうだし、パフォーマンスする場所も同じで、例えば200~300人のライブハウスの大きさだと、そこで良いパフォーマンスができるかっていうとなかなか難しい。とてもハイカロリーでハイリスクなんですよ。そこが一番問題なのかなと思います。


──普通のバンドとは障壁が違うんですね。

山葵:そもそもプレイヤーが少ないし練習もしづらいから、和楽器バンドってフォロワーが付きづらいバンドだなって思いますよ。

──とは言え、異端なものが合わさった時の化学反応は格別ですから、和楽器バンドの存在が、世界中の民族楽器へのアプローチを刺激するものとも思います。

山葵:尺八にしろ箏にしろ、中国から流れて来たうえで発展を遂げた楽器ですしね。国々の伝統楽器を現代音楽を混ぜて新しいサウンドが作られたらおもしろいし、もし和楽器バンドから影響を受けて「こういうところにたどり着いた」「二胡や箏でロックバンドやってみました」というのであれば、それはすごく光栄なことだなって思います。そういう存在になれるんだったらすごく嬉しいし、世界に対して自分たちの活動をアピールすることに関してもそう思います。

──和楽器バンドはいろんな楽器奏者に夢と希望を与えていると思いますよ。

山葵:やってみたら色々大変かも知れないけど、とにかく「こんなことやったことないよね」「聞いたことないよね」っていうのをやってみてほしいです。絶対おもしろいはずなんですよ。そのフィーリングを楽しんで欲しいなと思いますね。

──今回のツアーはどんなものになりそうですか?

山葵:コロナ禍ですからできるだけの対策をとりながらも、エンターテインメントを止めずに提供することを続けたいと思っています。特に今回は、全国の地方都市を回ったりして久々に行くところや初めて行くところもあるので、少しでも「来て良かった」「色々大変だけど、また明日からも頑張ろう」って思ってもらえるようなパフォーマンスを届けられたらなと思います。

取材・文◎烏丸哲也(JMN統括編集長)
楽器撮影◎堀 清英



■<和楽器バンド 8th Anniversary Japan Tour ∞ - Infinity ->

2021年
8月27日(金)神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホール
17:45 / 18:30 [問]ディスクガレージ 050-5533-0888

8月28日(土)神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホール
16:15 / 17:00[問]ディスクガレージ 050-5533-0888

9月4日(土)石川・本多の森ホール
16:00 / 17:00[問]FOB金沢 076-232-2424

9月5日(日)長野・ホクト文化ホール 大ホール
16:00 / 17:00[問]FOB新潟 025-229-5000

9月10日(金)東京・中野サンプラザホール
18:00 / 18:30[問]ディスクガレージ 050-5533-0888

9月12日(日)岐阜・長良川国際会議場 メインホール
16:30 / 17:00[問]ズームエンタープライズ 052-290-0909

9月19日(日)神奈川・相模女子大学グリーンホール
16:30 / 17:00[問]ディスクガレージ 050-5533-0888

9月20日(月・祝)千葉・森のホール21 大ホール
16:30 / 17:00[問]ディスクガレージ 050-5533-0888

9月23日(木・祝)福島・いわき芸術文化交流館アリオス 大ホール
16:30 / 17:30 福島中央テレビ 024-924-1100

9月24日(金)宮城・仙台サンプラザホール
17:30 / 18:30[問]tbc東北放送 022-714-1022

9月26日(日)盛岡・盛岡市民文化ホール 大ホール
16:00 / 17:00[問]岩手めんこいテレビ 019-656-3300

9月30日(木)大阪・オリックス劇場
17:30 / 18:30[問]グリーンズコーポレーション 06-6882-1224

10月2日(土)愛知・名古屋国際会議場 センチュリーホール
16:15 / 17:00[問]ズームエンタープライズ 052-290-0909

10月3日(日)愛知・名古屋国際会議場 センチュリーホール
15:15 / 16:00[問]ズームエンタープライズ 052-290-0909

10月7日(木)広島・ふくやま芸術文化ホール リーデンローズ
17:30 / 18:30[問]キャンディー・プロモーション 082-249-8334

10月8日(金)兵庫・神戸国際会館 こくさいホール
17:30 / 18:30グリーンズコーポレーション 06-6882-1224

10月11日(月)京都・ロームシアター京都 メインホール
17:30 / 18:30[問]グリーンズコーポレーション06-6882-1224

10月12日(火)香川・サンポートホール高松
17:30 / 18:30[問]デューク高松 087-822-2520

10月16日(土)静岡・静岡市民文化会館 大ホール
16:15 / 17:00[問]ズームエンタープライズ 052-290-0909

10月17日(日)岡山・倉敷市民会館
16:00 / 17:00[問]キャンディー・プロモーション 082-249-8334

10月23日(土)山梨・YCC県民文化ホール
16:30 / 17:00[問]ディスクガレージ 050-5533-0888

10月24日(日)東京・TACHIKAWA STAGE GARDEN
16:30 / 17:00[問]ディスクガレージ 050-5533-0888

10月28日(木)大阪・梅田芸術劇場メインホール
17:30 / 18:30[問]グリーンズコーポレーション06-6882-1224

11月5日(金)熊本・市民会館シアーズホーム夢ホール (熊本市民会館)
17:30 / 18:30[問]BASE CAMP092-406-7737

11月7日(日)福岡・福岡サンパレス
16:00 / 17:00[問]BASE CAMP092-406-7737

11月13日(土)広島文化学園HBGホール
16:00 / 17:00[問]キャンディー・プロモーション 082-249-8334

11月14日(日)島根・島根県民会館
16:00 / 17:00[問]キャンディー・プロモーション 082-249-8334

11月20日(土)北海道・カナモトホール (札幌市民ホール)
16:00 / 17:00[問]ウエス 011-614-9999

11月23日(火・祝)新潟・新潟テルサ
16:00 / 17:00[問]FOB新潟 025-229-5000

11月28日(日)茨城・ザ・ヒロサワ・シティ会館 大ホール
16:30 / 17:00 [問]ディスクガレージ 050-5533-0888

【一般指定席/着席指定席】
チケット料金:前売¥10,000(消費税込み)/当日¥11,000(消費税込み)
席種詳細:※着席指定席は、小さなお子様、ご年配のお客様、ファミリー、その他ライブを着席してご覧になりたいという皆様の為にご用意させていただく「着席観覧」用のお席です。※ライブ中は必ず着席して頂きます様お願い致します。※ステージからの近さを保証する座席ではございません。
※予定枚数に達し次第、終了となります。

チケット購入リンク:https://wgb.lnk.to/Tour2021
ツアーに関する詳細は、和楽器バンド 公式サイト:https://wagakkiband.com/まで。
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