【鼎談】千秋(DEZERT) × 暁(アルルカン) × 来夢(キズ)、<JACK IN THE BOX>を語る「最終的にはカッコよければ何でもよくない?」

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<DANGER CRUE 40th Anniversary「JACK IN THE BOX 2021」supported by MAVERICK DC GROUP>が、12月27日に東京・日本武道館で開催される。年末の武道館を賑わせ続けてきたMAVERICK DC GROUP恒例行事の根幹をなす同イベントの2021年のテーマは、“原点回帰をノスタルジックに。そして次世代へのエールを!”というもの。ラインナップには所属アーティストや関連アーティストが軒を連ね、MAVERICK DC GROUPの40周年を祝す。加えて今年の特色のひとつは、出演アーティストが豪華ゲストを招いてコラボを披露するというところにもある。

◆千秋(DEZERT) × 暁(アルルカン) × 来夢(キズ) 画像

MAVERICKレーベルの第一弾アーティストであり、先鋭的かつ刺激的な同グループの伝統を遺伝子レベルで継承しているアーティストがDEZERTだ。現在のV系シーンの中軸のひとつであることは紛れもなく、オリジナリティの高さという意味でも進境著しい。そのDEZERTがゲストとしてステージに招聘したのが、千秋曰く「この3バンドはライバルなんだろうなって思う」というアルルカンの暁とキズの来夢。3者を迎えた鼎談ではイベント当日の予感はもとより、3アーティストのリアルな関係性、そしてヴィジュアルシーンの現在が浮き彫りとなった。約1万字におよぶテキストはまず、先ごろ実施されたアルルカン主催イベント出演時のお互いの印象から。

   ◆   ◆   ◆

■キズはこのコロナ禍で一度
■解散しようと思った

──2021年12月27日に日本武道館で開催される<DANGER CRUE 40th Anniversary JACK IN THE BOX 2021 supported by MAVERICK DC GROUP>で、御三方は特別共演をされることになったそうですが、直近ですと11月14日にZepp Hanedaで行われたアルルカン主催イベント<束の世界-SONOSEKAI->にも、それぞれのバンドで出演されてましたよね。ここしばらくは大規模な対バンライヴ開催が難しくなっていたこともあり、観ている側としてもあの夜はとても貴重で素晴らしいものとして感じられたのですが、皆さんとしては、あの日、久々に同じステージに立ってみて、どのようなことを思われました?

暁:とにかく久しぶりやったし、あの規模感、あのボリューム感でのイベントに対しては、やっぱり飢えてたところがありましたね。しかも、7バンドが集まったとはいっても、へんにワイワイすることもなく、それぞれが “ここに何をしに来たか”っていうことをハッキリと意識してたと思うんですよ。キズにしても、DEZERTにしても、あの日あのステージに出てくれたバンド全てに、そこが共通していただろうし。それだけに本当だったら、みんなが演ってるのを舞台袖からじゃなく、真正面からめっちゃ観たかったです。


▲千秋(DEZERT)/<束の世界-SONOSEKAI->2021.11.14@Zepp Haneda

──暁さんとしては、DEZERTの生ライヴをご覧になったのは久々だったと思うのですけれど、観ていて何か感じられたことがありましたら教えてください。

暁:いや、トリ前がDEZERTでほんま良かったなと思いました。上手いっすよね、ああいう持って行き方とか、いろんなところが。

千秋:まぁ、そりゃあね(笑)。今回は自分たちのメッセージ性どうこうよりかは、トリのアルルカンにちゃんと繋げるのが最大の役割だと思ってたんで。

──MCで全出演バンドを的確にイジりつつ、自分たちのパフォーマンスも全うし、そのうえでアルルカンへしっかりとバトンを渡したあの手際は本当にさすがでしたよ。一方、キズのステージングについてはどんなことを感じられました?

暁:ある意味DEZERTとは対照的で、ちょっとしたワンマンみたいでしたよね。濃かったし、面白かった。イベントっていうことを意識し過ぎることなく、キズならではのものをガツン!と思い切りぶつけてきたな、っていう感じが凄くありました。

来夢:何も考えてなかったですからね(笑)。久々のイベントだったんで、純粋に“楽しもう!”くらいしか思ってなかったです。

千秋:キズのライヴはまだ2回しか観たことないから、本来の姿はまだよくわかんないんだけど、あの日出演したバンドの中で、一番自由に楽しそうにやってんなっていうのは俺も感じたね。

来夢:実際、本当に楽しかったですよ。楽屋とかで久しぶりにいろんな人たちに会えたのも嬉しかったし。ライヴやってても、 “バンドってやっぱり楽しいものだったんだな”っていうことを改めて思い出しました。

──きっと、そうした感覚はオーディエンス側の誰もが感じていたことだったと思います。

暁:個人的には、もともと2020年6月に<アルルカンサーカス>開催を企画したところから始まっていて。それが中止になった後に、今度はもっとシンプルな形でのイベントとして<束の世界-SONOSEKAI->をやることにして、っていう流れがあったんです。実際に実現するまでかなり長く時間がかかったので、あの日は感慨や感動もひとしおでした。最近は徐々に規制緩和みたいな流れも出てきてますけど、相変わらず最終的なことは全て自分たちで決めなあかんし、まだまだ不安もなくならへん。だけど、きっとあの日はみんなに、“やっぱりイベントっていいよね”って感じてもらえたと思うし、 “ここからの未来を信じてもいいよね”っていう気持ちに少しでもなれるような場が作れたんだとしたら、僕としては凄く嬉しいです。


▲暁(アルルカン)/<束の世界-SONOSEKAI->2021.11.14@Zepp Haneda

千秋:そこは“ようやってくれました”とアルルカンに感謝してますよ、僕は。なかなかの規模やったし、出てたバンドもそれぞれ気を遣うバンドというかね(笑)。やや誤解を招く言い方になるかもしれないけど、音楽を本気で生業にしている音楽家たちが揃ってたじゃないですか。そうなってくると、今度は裏の面で当然出演交渉だったりの話も出てくるわけでね。そんな中でよく話をまとめて実現してくれたと思うし、正直“凄いな、これだけゴツいイベントって俺には出来ないな”とも思いました。あれを実現する労力は、相当だったと思いますもん。キズなんかは全然イベントやってないから、そのへんの感覚がわかんないだろうけど(笑)。

来夢:わかんないし、自分ではやる気がない(笑)。

千秋:やんないほうがラクだもん、絶対。

来夢:というか、あんなたくさんの人たちとは自分のほうから交われない。あんまり人と仲良く出来ないんですよ。ただ、数少ない友だちから呼ばれた時は出ますよ。この間のイベントも “暁が誘ってくれた。楽しそう”と思ったから出ただけの話ですね。

千秋:ちなみに、さっき「俺には出来ない」って言ったけどさ。あのアルルカンのイベントの日、ステージ裏で両バンドに共通してる制作スタッフといろいろ話をしてて、実は思ったことがあるんだよね。近年はイベントっていうと、俺らの周りだとMUCC先輩が旗を振ってくれることが多かったけど、昔でいう<OVER THE EDGE>的なお祭りイベントっていうの? ああいうものを、そろそろ俺ら世代が主導でやっていく時代になってきたのかなって。

暁:へぇー、千秋、そんなこと考えてたんだ。

千秋:もはやライバルだとか仲良いとか仲悪いとかはどうでも良くて、観てる側が楽しめるんだったら何でもいいし、単純にイベントとして面白いものをやっていくっていうことを今後は考えていきたい気がしてる。

来夢:確かに、そういう場はあってもいいのかも。

千秋:そこは来夢次第でしょ。まだ来夢は若い分、尖ってるから。

来夢:ウチには俺より尖ってるメンバーもいるしね。

千秋:俺と暁ちゃんは暦もそこそこ長くなってきて、それなりに丸くなってきたところがあるからね。あとはキズ次第や(笑)。


▲来夢(キズ)/<束の世界-SONOSEKAI->2021.11.14@Zepp Haneda

──ところで、御三方は2年半ほど前にもBARKSで鼎談されましたが、今日を迎えるまでにはそれぞれがコロナ禍を乗り越える必要があったわけですよね。2年半前と今現在を比較した時に、バンドや音楽に対しての考え方や価値観に変化はありますか?

来夢:キズは一度解散しようと思ったことがありました。

──えっ?! 突然の爆弾発言ですね。

来夢:ライヴが全然出来ないし、いざ再開するとなってもそんなに客が戻って来ねーだろうなと思ったり。凄くネガティヴモードになっちゃってた時期があったんですよ。いまだに僕は、そこはシビアに考えてて。コロナが終わったら客が帰ってくるだろうっていう甘い考えを持ってるヤツは、今後、全員終わっていくだろうなと思ってるんです。

──そうした話題は飲食業界などでも出ているようで、ある程度まで客足が戻ったとしても、以前のようなレベルにはならないという予測をしている方々が多いですね。エンタメ業界についても同様で、その見方は一理あるかしれません。

来夢:2年っていう時間は思ってる以上に大きいですからね。だから、キズも一旦は解散して、本当にコロナが明けたらまた何か新しく動き出すなり、キズとしてやりたくなったらその時は一緒にやればいいしって考えてたんですよ。

──だとしたら、そんなキズが一命を取り留めることになった背景には一体何があったのです?

来夢:ワンマンをやったことですね。それこそ規制もガンガンに設けた状態で試しにやってみたところ、それが意外と普通に楽しくて(笑)。別に規制とか関係ないなと感じられたんで。さんざん悩みましたけど、ギリギリのところで続ける方向に変わりました。

──それは何よりでした。

来夢:まぁでも、今の状況を甘く見てないっていうこと自体は、何も変わらないですからね。自分としては、ここから新しいバンドをやっていくような意気込みでいこうと思ってます。

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