【インタビュー】Petit Brabancon、ミヤ(MUCC)が語る未知のサウンド構築「計算では生まれない危うさや激しさ、そういう純粋な音楽」

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Petit Brabanconが12月27日に開催されたイベント<DANGER CRUE 40th Anniversary「JACK IN THE BOX 2021」supported by MAVERICK DC GROUP>に出演、初めてステージ上にその姿を現した。日本武道館を震わせたのはサウンド的にもヴィジュアル的にもこちらの想像を遙かに超えた5人の前衛的なスタイルだ。吹き荒れるラウドでノイジーなサウンド、エキセントリックなプレイ、パワフルでエクストリームなステージ。圧倒されるほどの個性をわずか3曲でこれだけ印象づけられるアーティストもそう多くはないだろう。

◆Petit Brabancon (プチ・ブラバンソン) 動画 / 画像

演奏された「刻」「OBEY」「 渇き」は、これまでの京 (Vo / DIR EN GREY)およびyukihiro (Dr / L'Arc-en-Ciel)のインタビューで語られたとおり、ミヤ (G / MUCC)が作曲を手掛けたものだ。Petit Brabanconパーソナルインタビューの第三弾はミヤ。バンド参加の経緯やメンバーの印象、「お互いに初めてのチャレンジをしている」というサウンド構築法についてじっくりと語ってもらった。

前述の日本武道館ではステージ両翼にギタリストを配置。つまりツインギターであり、音源の定位同様にステージ向かって左側にミヤが位置するという新鮮さもあった。サウンドやスタイルについて「知らない世界を見れているっていう感じもするし。今後も見られるんじゃないかなっていう希望もある」と語るなど、Petit Brabanconというバンドの特異性と同時に、新たなミヤの素顔を知ることのできる貴重なインタビューをお届けしたい。

   ◆   ◆   ◆

■今、このバンドを結成したい理由
■その答えを曲で返したって感じです

──Petit Brabanconへの参加は、yukihiroさんから誘われたと聞いてます。

ミヤ:最初に声をかけてくれたのは京さんなんですよ。yukihiroさんとの話で僕の名前が出たらしく、“一緒にやろう”ってことで。MUCCの結成20周年記念の武道館公演(2017年12月27日<20TH ANNIVERSARY MUCC祭「えん7 FINAL」in 武道館>)にsukekiyoが出てくれた時に話を聞きました。それまで対バンもしたことなかったし、バンドとしてそんなに接点があったわけでもなかったんですけど、同じ境遇で同じ時期に海外ツアーをやってたことも結構あって。ドイツでライヴを観に行ったりとかしてたんですよ。そういうところでは結構、親近感はありました。

──京さんの音楽に関しては、それまでどういう感じで捉えていたんですか?

ミヤ:DIR EN GREYとsukekiyoでは全くベクトルが違うなぁ、音楽のベクトルが向いているところが違うけど、なんか面白い事やってんなぁっていう感じはありましたね。sukekiyoはうるさい曲をやらない、お客さんの声を発散させないライヴをやるっていうコンセプト。コロナが来る前からそのコンセプトでやってたから、“あぁ、すごい事やってるなぁ”と思ってました。


──なるほど。そこで“yukihiroさんと一緒にバンドやらないか”と声が掛かったと。その時、何を考えましたか?

ミヤ:yukihiroさんの事はもちろん、事務所が同じだからよく知ってるんですけど、それ以前に自分はZI:KILLの頃からすごくファンなので。京さんも同じように「ZI:KILLの頃からyukihiroさんが好きだ」っていう話を聞いた時はびっくりしました。

──京さんが言うには、「yukihiroさんのドラムで自分が歌う事が夢なんだ」みたいな。

ミヤ:うちらの世代はそうですよね。京さんもほぼ同じ世代で、1980年代や1990年代のヴィジュアル系で育ってるので、どうしてもファン目線になってしまう部分はあります。

──わかります。

ミヤ:けど、いざ音を出して一緒にやるっていうのは、また別の話だと思うんで。何が起こるか分からない、未知の世界だなとも思ったし。あと、京さんが何をもって俺を指名してくれたのかもいろいろ気になったりもしたんで、飲みに行ったり遊んだりとかして、話をして。やっぱり好きなもの、育ってきた環境とか、ガキの頃に聴いた音楽とか今まで聴いてきた好きな音楽が、割と共通している部分もある。ルーツに共通している部分もあったので、“あぁ、なるほど”っていう感じもあったし。

──なるほど。

ミヤ:ただ、同じではないので、そこはそれぞれの個性のぶつかり合いというか。音楽を作ったらそのギャップが逆に面白い味になるんじゃないかなっていうのは、思いましたね。


──最初に京さんから声が掛かった時に「こういう音楽をやろう」とか、そういう具体的な話はあったんですか?

ミヤ:うーん(と考えて)……「激しいバンドをやりたい」とは言ってたと思います(笑)。

──いつも彼は激しい音楽をやってますけど。

ミヤ:ははは。その……「激しい」って言ってもいろいろあるんですけど。なんだろう……計算して作られた激しさじゃなくて、何かこう、渦巻いてる中で生まれてくる激しさみたいな。計算しようとしてもできない部分で生まれてくる危うさとか、そういう純粋な音楽がやりたいとイメージしてるんだと思いますけどね。

──ふむ。

ミヤ:で、yukihiroさんのドラミングって、時代によっていろいろスタイルの違いがあるんですけれど、ラウドなものとかエクストリームなものとはまた違うんですよ。かけ離れているというか、すごく個性的で。

──いわゆるヘヴィロック的なものって意外とやってないですよね。

ミヤ:どちらかというと、ちょっとパンク寄りだと思うんですよ、昔のドラミングって。そこで両者が合わさった時の感じ、っていうイメージはあったんだと思いますけどね、京さんの中には。ジャンルが違うものが合わさった時に生まれる、何かイビツな感じというか。

──yukihiroさんとはどういう話をされたんですか?

ミヤ:えーと……“どういうことやりたいの”っていうことを京さんとyukihiroさんと3人で話したんですよね。それ以外のメンバーが決まる前に3人で集まって。やっぱりその、「好きで聴いてきた音楽とか、自分がナチュラルに好きなものを反映していく音楽がやりたいね」っていう話はしました。ただ、具体的に“こういう感じで、こういう感じ”って言葉にはしなかったと思いますね。説明しすぎないほうがいいような空気になっていました、そこは。


──楽曲はミヤさんが中心になって書かれているわけですが、なにか事前に「こういう曲を」というリクエストはあったんですか?

ミヤ:いやもう全くなくて。俺が勝手に作りましたね、最初は。俺のイメージだけで6曲作ったんですけど、その中に今回リリースされた「渇き」があって。そこに京さんが歌を入れたのがデモになり、そこからyukihiroさんがドラムのデモを入れ、みたいな感じで。それ以降は、“こういうのがやりたい”みたいな感じの話をするようになりました。最初はもう完全に俺が好きに作ってみて、それが2018年……この前、デモのデータ見てたら2018って表示でした(笑)。

──この3人でやるならこういう感じ、っていう風にミヤさんが考えて作ったと。

ミヤ;そうですそうです。それがたぶん、ずれてなかったんで、そのまま続いたんだと思うんですよね。

──そこはどういうインスピレーションだったんですか?

ミヤ:うーん……yukihiroさんはいろいろプロジェクトやってきてるし、京さんがどういうバンドをやってきたかもある程度知ってるわけで。その流れの中で“今こういうバンドを結成したい”という理由って何だろうな、って思ったときに、その答えを曲で返したって感じですね。“みなさんがやりたいのはこういう曲ですよね”っていう感じで。

──ミヤさんがやりたいものというよりは、京さんやyukihiroさんが面白がってくれるような……。

ミヤ:俺が“こういうのをふたりにやってほしい”っていうのが強いです。例えばyukihiroさんに“こういうドラムのフレーズ叩きませんよね。叩いてください。叩いてみたら絶対カッコいいです”みたいな。

──なるほど。

ミヤ:“京さん、普段こういうメロディー歌わないですよね? 歌ってないですよね、DIR EN GREYでは。歌ったの聴いてみたいです!“みたいなところから始まって。

──それはMUCCでミヤさんがやってる事ともまた違うわけですね?

ミヤ:そうですね! 一緒にやる人が違うので。普段メロディーをイチから自分で作ってる人に対して、“このメロディーを歌ってください“っていうのは結構……向こうも構えると思うし、俺も気合いが入りますよね。

──京さんは「メロディーに関しては全部自分で作ってるから、人のメロディーを歌ったのは今回が初めてだ」と言ってましたね。

ミヤ:それが面白いポイントだと思うんですよね、今回の。俺も自分の作ったメロディーをアレンジされて歌われることってないんですよ。最初にこの曲のイメージを渡した時には自分が作ったメロディーで、それを京さんがそのまま歌う時もあるし、アレンジしてくる場合もある。すべてのメロディーを京さんが作る時もあるし、混ざってる曲もある。今回のシングル曲に関しては俺のメロディーをほとんどそのままなんですけど、他のストック曲は、もうごちゃまぜです。今までは自分のアレンジやメロディーに関して、他の人から意見が出たことがないけど、京さんは「こっちのメロディーのほうが歌いやすいから、こっちのメロディーに変えていい?」みたいな感じで気軽に訊いてきてくれるんで。“あぁ、なるほど、あぁ面白いなぁ”って。メロディーのクセってやっぱり人それぞれあって。京さんのメロディーに変えたら、やっぱりちょっと京さんぽくなるんですよ。でも、それがすべて正解ではない。俺のメロディーを京さんが歌う面白さもあるし、京さんが京さん自身のメロディーを歌う面白さもある。そこに明確な決まり事はなくて。

──だからこそ新たに一緒にやる意味があるわけですよね。

ミヤ:そうですね。お互いにやったことのないチャレンジをしている感じで、少なくとも俺は楽しいです。京さんも楽しんでくれていればいいんですけど、「結構大変だなぁ」と言ってました(笑)。

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