【ライヴレポート】LUNA SEA、30周年記念ツアーGRAND FINAL初日、「この絆が新しいシーンを作っている」

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LUNA SEAが1月8日および9日、さいたまスーパーアリーナで30周年記念ツアーのグランドファイナル公演となる<LUNA SEA 30th Anniversary Tour -CROSS THE UNIVERSE- GRAND FINAL>を開催した。グランドファイナルの初日となった8日のライヴの模様をレポートする。

◆LUNA SEA 画像

LUNA SEAの真骨頂と言えるオリジナルアルバム『CROSS』を携えての全国ツアー<CROSS THE UNIVERSE>はコロナ禍に見舞われ、延期や再延期など中断を余儀なくされたものの、“音楽を止めない”という信念のもと、5人は約2年にわたって各地を廻ってきた。数々の困難を乗り越えてきたが、ツアー終了後にはRYUICHIが声帯にできた静脈瘤(微小血管病変)を除去する手術を受けることを2021年末に発表。2022年1月31日と2月1日に大阪国際会議場メインホールで開催される振替公演後に、LUNA SEAはしばらく充電期間に突入する。


RYUICHIの声が万全ではない状況での2Days公演──これだけでも相当な覚悟がいることだったと思うが、不動の5人でファンと共に30周年を迎えたLUNA SEAの揺るぎないバンド魂に、会場に足を運んだ人たちは心を震わせたのではないだろうか。充電期間に区切りがないことを不安に思っていた人もいたかもしれないが、この5人は必ずステージに帰ってくる。目の前で繰り広げられたのは、そう確信させてくれるアクトだった。

初日の開演は17時。場内にハンドクラップが響きわたる中、ドラマティックな照明とSEが時を告げ、メンバーが姿を現すと、みんな頭上で拍手。オープニングはアルバム『CROSS』の幕開けのナンバー「LUCA」だ。RYUICHIはサングラス、INORANと真矢は髪をバッサリ切っている。まばゆい光に身体ごと包み込まれるような優しくも力強いヴォーカルと演奏。それぞれの衣装は5人の想いが込められた正装のようにも見えた。続く期待を裏切らない「Déjàvu」では上手のSUGIZOと下手のINORANがポジションをチェンジし、スロープへ。Jも上手へと動き、シンガロングになる箇所でRYUICHIが「心の声で!」と叫んだ。曲が終わるとその心の声に応えるようにJがベースを鳴らし、耳に手を当てるアクション。


「さいたま! 元気ですか? この日を迎えることができたね。約2年前に始まった僕らのツアーは1年足らずでアッという間に駆け抜ける予定だったんですけど、新型コロナウイルスの感染拡大もあって延期、さらに延期が続いて、今日の奇跡の夜のためにこれだけ時間をかけてきたのかなという気がします。来てくれたみなさんもいろいろな心配があっても、強い心で日々、今日のために生きてきたと思うんだよね。要は我慢してきた。そうでしょ? 僕ら、コンサートをやる側にももちろん責任もあるし、覚悟もしなきゃいけない。でも、LUNA SEAのメンバーであるみんなにも、そういう想いがあったと思います。本当に来てくれてどうもありがとう!」──RYUICHI

RYUICHIの発する言葉に何度も拍手が起こる。想いはひとつだ。ライヴは2部構成。1部は『CROSS』からのナンバーを中心に据えたセットリストである。赤く染まるステージから放たれたのは骨太で厚みのあるサウンド、うねるグルーヴが身体を揺らす「You’re knocking at my door」。RYUICHIとINORANのダブルヴォーカル、SUGIZOの絡みつくような妖艶なギターソロ。クラシックロックの要素と真矢の電子ドラムe/MERGEとのマッチングが絶妙だ。ドラマティックな「PHILIA」は、Jがステージ上部に配置されたピアノを弾くシーンもハイライトとなるメロディックなプログレッシブロック。静と動を行き来するように次々と表情を変えていく難易度の高い楽曲をシャウトからファルセットと様々な声色で歌うRYUICHI。あらためてLUNA SEAの曲を昇華できるのはRYUICHI以外にありえないと強く思う。拍手はいつまでも鳴り止まない。


「当たり前の日常、それは俺たちにとっては音楽をやることであり、この5人で音を出しているところにみんなが来てくれる。そんなライヴツアーの日常が僕らにとってスタンダードだったので、コロナ禍になってさらに一夜一夜というもの、一期一会がとても大切なんだなと思いました。今までも手を抜くとか適当にやることができないメンバーだけど、想いを合わせられる場所、このライヴスペースに帰ってこられて嬉しいです。これからも、LUNA SEAというライヴツアーをずっとずっと続けていこうと思うので、ちょっとだけお休みするけど、しっかりついてきてください」──RYUICHI

RYUICHIがツアーを経た今の心境、充電期間についてこう触れた。「さいたまスーパーアリーナのみんなに送ります」と届けたのは前に進んでいく決意が音楽になって溢れ出していく「宇宙の詩〜Higher and Higher~」。天井とステージの左右に据えられたミラーボールの光が美しく輝き、LUNA SEAの宇宙に抱かれる至福の空間がどこまでも広がっていく。真矢の力強いビート、光と呼応するようなギターサウンドから飛翔するSUGIZOのソロ。そして、RYUICHIのヴォーカルとJのウィスパーボイスが刺激的で神秘的な「静寂」へ。『CROSS』からスケール感のある大曲が披露されていく。メロディックなJのベースも曲に奥行きを与え、エンディングのINORANのアルペジオまで張り詰めたテンションは途切れない。手を抜くことを知らないと言っていたが、そのRYUICHIのアティテュードを何より物語るのは歌だ。例え、声がかすれようとも全力で伝える不退転の覚悟がひしひしと伝わってきた。


「みんな最高です! どうもありがとう! マスクで覆われて、声も出せないけど、みんなの心の声はしっかり俺たち5人が受け止めて帰るからね。そしてツアーでいつも言ってましたが、コロナを収束させたらもう一回、ツアーを廻りましょう」──RYUICHI

その嬉しい宣言に拍手が贈られ、SUGIZOがハンドクラップ、Jが会場を見渡したアルバム『LUV』のオープニング曲「Hold You Down」では開放のベクトルに。RYUICHIをサポートするINORANのヴォーカルも際立ち、5人が持ち場を背負って凛と立った上で補い合うバンド然としたステージングから目が離せない。「集まってくれた全員に俺たち5人から次のナンバーを贈りたいと思います」と1部のラストナンバーは星空の演出の中、みんなが手を振る景色が広がった「THE BEYOND」。INORANがフルアコを奏で、主旋律を豊かに彩るSUGIZOのメロディックなフレーズ。豊かな音像が希望へと続く光の道を浮かび上がらせた。


20分の換気休憩を挟んで第2部がスタート。オープニングは場内のテンションをぶち上げる「JESUS」。会場から一斉に手が挙がり、Jが下手からセンターへと移動し、太いベースを刻む超クールな展開から、『CROSS』収録のアドレナリンが噴き出すアッパーチューン「Closer」へ。25年以上の月日の隔たりがある曲を立て続けに演奏しても全く違和感がないのがLUNA SEAのすごいところだ。進化し続けているのに軸がブレない。

「ホントに奇跡のようですね。SUGIちゃんは“音楽をアートを止めるな”って。Jは“コロナをぶっ飛ばす”って。INORANは何も語らなくてもみんなの想いがその視線からも分かるようになった。真矢くんは“いつも毎日を楽しむ。ポジティヴに生きる。それが早くトンネルを抜ける方法なんじゃないか”って。世の中には後ろ向きな意見もたくさんあるけど、ここに集まった全員で覚悟を持って、俺たちが先導してトンネルの出口まで行きましょう。そしてライヴはステージも客席も安全なんだってことをみんなにわかってもらいましょう」──RYUICHI


そんなメッセージから“君となら この嵐も乗り越えられるはずさ”と歌う「STORM」もピースがぴったりハマるような構成。間髪入れずに「TRUE BLUE」が放たれ、2部では歴代LUNA SEAのヒット曲が盛り込まれた。「さあ、レア曲の時間がやってまいりました」とRYUICHIがファン投票で1位と2位に選ばれた曲を2日間で演奏することを話した。初日に披露されたのは、終幕前ラストのオリジナルアルバム『LUNACY』(2000年)に収録されている「a Vision」だった。アグレッシヴなナンバーたちに続いて、さらに高速でハードな曲をぶち込んでくる構成もさすが攻めのLUNA SEA。まさにレア曲。リアルタイムアプローチで鳴らされ、SUGIZOとJが交互にシャウトする掛け合いも、今聴くと新鮮だ。熱量の高さは大御所の域に入ったロックバンドとはとても思えない。大きな拍手が送られ、メンバーも客席に拍手を送る。

「楽しんでくれた? 30周年ツアーのラストにみんなの投票でこの曲が選ばれるってすごいことだよね。今夜、たくさんの愛をもらってます。俺たち5人から愛を込めて」──RYUICHI

照明は柔らかなピンクの光に変わり、普遍の名曲「I for You」が奏でられた。そこにいる“あなた”に贈られるような優しさ、願いを込めて。「ホントにもうちょっとだと思うからね。必ずトンネルの出口を共に出ましょう。今日と明日、5人の全てをみんなに届ける。そしてみんなの全てをしっかり受け止めて帰ります。盛り上がっていこうか!?」とRYUICHI。自身の不安もあるだろうに、RYUICHIの言葉はコロナ禍で不安定になったり、我慢をしたり、苦しんでいる人に向けられていた。もちろん、RYUICHIだけではない。5人全員の人としての器の大きさがLUNA SEAが奏でる音楽のスケール感と同期している。

終盤戦は、これを聴かないと終わらない「ROSIER」が熱狂へと導き、INORANがセンターでリフをストロークする「TONIGHT」へ。躍動感溢れるアクトが不変の輝きを放つ。そして本編が終了。SUGIZOはRYUICHIが脱ぎ捨てたジャケットを羽織り、生声で「ありがとう」と何度も叫んだ。会場を照らすスマホの光が宇宙空間を演出たのがアンコールだ。


「素晴らしい星空をありがとうございます。一人一人の光は日常的に灯すことができるけど、こうしてみんなで集まって灯したあかりって、すごいパワーだよね。感謝してます」──RYUICHI

星の光の海を漂っているような中、RYUICHIがアコギを奏でながら歌ったのは「Make a vow」。コロナ禍の中、リモートで急遽、発信されたナンバーだ。SUGIZOのギターソロが会場の景色に溶けていくように気持ちいい。メンバー紹介では、それぞれの想いが語られた。一部、割愛するが、なるべくその全て伝えたい。

「こういう世の中にみんな集まってくれて本当にどうもありがとう。2年という歳月の中、いろいろなことがあったけど、あった分、俺たちの絆は深くなったと強く信じてます。この会場にもいろいろな思い出があります。僕にとっては去年の年末は苦い思い出(コロナ感染)があるけれど、その思い出を超えるぐらいみんなの愛を感じて、みんなのことを強く強く愛してます。これからもこの5人とメンバーのみんなで、これ以上ないぐらい盛り上がって、突っ走っていこうね。さっきRYUちゃんも言っていたけど、出口のないトンネルはない。その出口に至るまで楽しんだ方が勝ちだと思うんだよね。悔いのないよう、1秒1秒、楽しんで生きていこうね」──真矢

「みんな、どうもありがとう! 2年間、真矢くんが言う通り、いろんなことが起きましたね。俺たちメンバーもイライラして“ライヴどうなるんだよ?”とか、“前に進んでいくためにどうしたらいいんだろう?”って考えたり、そんな中、立てていたプランが崩れていったり、みんなにすごく不安な想いもさせただろうし、でも、俺たち信じる気持ちを学んだような気がします。ツアー中にいろいろ話して、ライヴってホントに最高だなって思いました。実際、俺たち、ライヴしかないんです。小さなライヴハウスから30年経って、ここで演奏できて、みんながいてくれるから、この瞬間を迎えられたと思います。そして、今回のツアー、いちばん大変だったのはスタッフのみなさんだったと思います。RYUICHIがいろいろ発表したよね。最後まで彼が走り抜けられるようにみんなでパワーを送ってください。頼んだぜ!」──J

「SUGIZOに任せよう。今日はどうもありがとう」と言っていたINORANはRYUICHIに「それだけ?」と言われ、言葉を続けた。「いろんなことがあってツアーを2年間、廻って、ここまでたどり着けたのは奇跡かもしれないし、みなさんと出会えるのが奇跡かもしれないし、今日を含めてあと4本ライヴがありますが、これだけは言えます。ツアーが始まった時より僕ら5人だけじゃなくスタッフ含めてLUNA SEAという家が強くなった気がします」──INORAN

デヴィッド・ボウイTシャツを着て、「Ziggy Stardust」のイントロを弾いてみせたSUGIZOが続けた。「考えてみたら、さいたまスーパーアリーナでいろいろな経験をしていてさ、さいたま! ここは本当に故郷になったよ。しかもボウイ様の誕生日にここに立つことができて、すごく感謝しています。去年、この規模のアーティストがこの規模のツアーを決行した例がほとんどないみたいなんだよね。ライヴが、コンサートが、決して危険なものじゃないっていうことを俺たちはずっと証明してきました。シーンを誰かがリードして、やり方を築かないとアートがエンタメが死んでしまう。ここまで走ってきたLUNA SEAの底力とみんなの底力、この絆が新しいシーンを作っていると思います。ホントに感謝しています」──SUGIZO

最後はSUGIZOに魂で歌っていると紹介されたRYUICHI。「日常というものをどれだけ大切にしてこれたのかなって最近、よく考えます。いつの間にか、すげーバンドだって言われるようになったのは、全部みんなが作ってきたことだからね。俺たち、今はみなさんに心配かけてますけど、必ず復活してもっともっと高い景色を5人で見に行こうと思ってます。LUNA SEAを支えてくれるたくさんの人たちに感謝を。Jも言ったように俺たちにはライヴしかないから、ライヴでお見せしたいと思います。スタッフに熱い拍手を! こういう状況下、チケットを持っていたけど、勇気を持って人に迷惑をかけないようにとか、来られなかった人もいる。そんな仲間にも拍手しましょう」──RYUICHI


温かい拍手が送られ、「WISH」ではステージ上のメンバーと客席が手を伸ばし合う光景が感動的だった。ラストナンバーはSUGIZOがヴァイオリンを奏でINORANがアコギを弾いた「so tender…」。未来への余韻を残してライヴは幕を下ろした。声が出せない環境の中、全力の拍手で無言の歌と歓声を届けていたであろうファンは、さすがLUNA SEAが誇るメンバーたちだった。

エアーでみんなとひとつになった後、RYUICHIは「愛してるよ、バイバイ!」と絶叫。INORANは「スペシャルな時間をどうもありがとう! また会おうな」と呼びかけた。Jは「さいたま、どうもありがとう! グランドファイナル! 明日も一緒に燃えようぜ!」とステージを去った。最後に残ったSUGIZOは、スマホで客席との写真を撮り、センターで深々とお辞儀し、手を合わせ、感謝の想いを全身で表現した。

なお、最終日が終わった夜、LUNA SEAのオフィシャルTwitterには感謝の言葉とともに“5人はさらに輝きを増して必ず帰ってきます! そしてまた旅の続きを共に歩んでいきましょう! LUNA SEA promise to be back!!”という約束のメッセージがアップされた。

取材・文◎山本弘子
撮影◎田辺佳子/岡田裕介/横山マサト

■<LUNA SEA 30th Anniversary Tour -CROSS THE UNIVERSE- GRAND FINAL>2022年1月8日(土)@さいたまスーパーアリーナ SETLIST

【第1部】
01. LUCA
02. Déjàvu
03. You're knocking at my door
04. PHILIA
05. 宇宙(そら)の詩(うた)~Higher and Higher~
06. 静寂
07. Hold You Down
08. THE BEYOND
【第2部】
01. JESUS
02. Closer
03. STORM
04. TRUE BLUE
05. a Vision
06. I for You
07. ROSIER
08. TONIGHT
【ENCORE】
01. Make a vow
02. WISH
03. so tender...

■<LUNA SEA 30th Anniversary Tour 20202021 -CROSS THE UNIVERSE->

※終了公演は割愛
2022年1月31日(月) 大阪国際会議場メインホール
open17:00 / start18:00
2022年2月01日(火) 大阪国際会議場メインホール
open17:00 / start18:00


◆<LUNA SEA 30th Anniversary Tour -CROSS THE UNIVERSE- GRAND FINAL>2日目レポートへ
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