【ライヴレポート】LUNA SEA、30周年記念ツアーGRAND FINAL2日目、「必ず帰ってきます!」

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2020年2月にスタートしてから、コロナ禍の影響で度重なる延期を重ね、ついに実現したLUNA SEAの全国ツアー<30th Anniversary Tour -CROSS THE UNIVERSE->。2021年6月を皮切りに、再々延期となった大阪公演を除いて10都市20公演を駆け抜け、年を股いで1月8および9日に<GRAND FINAL>としてさいたまスーパーアリーナ公演が開催された。

◆LUNA SEA 画像

そんな中、RYUICHIが喉の不調を抱え、大阪公演後に声帯の手術を受けることを発表。バンドは充電期間に入ることとなっている。諦めずに進み続けてきた30周年の大団円であるとともに、充電期間前の関東圏最後のライヴ。LUNA SEAの歴史に新たな軌跡を残した2日目、1月9日のレポートをお送りする。


どこか緊張感が漂う会場に、開演予定時刻をすぎるといつものように手拍子が響きはじめる。場内BGMの音量が少し上がった時点でオーディエンスが立ち上がって待ちわびる中、暗転。荘厳なSEをバックに、LUNA SEAの5人がステージに現れた。

白いロングコート姿のRYUICHIが右手を掲げると同時に、「LUCA」がスタート。煌びやかなアルペジオと手拍子に彩られ、会場が眩しい光に満ちていく。続く「Déjàvu」でSUGIZO、J、INORANがステージ前方に飛び出してアグレッシヴなサウンドを叩きつけ、一瞬でLUNA SEAの“ホーム”としてさいたまスーパーアリーナを掌握してみせた。後半のコール&レスポンスが恒例の部分では、発声は禁止されているものの、拳を上げて応えるオーディンエンスの一体感がすさまじい。一方で、「おまえたちの声を聞かせてくれ! いくぞ!」と煽るRYUICHIの声には、本調子とは言えない不安定さも滲む。それでも手加減なしの全力で叫ぶ彼の姿に、今日のライヴに対する気合いが痛いほどに伝わってきた。


ツアーと同様、換気のための休憩を挟む2部構成のスタイルとなっており、第1部は最新アルバム『CROSS』を軸とした近年の楽曲中心のセットリストを展開。

Jの温かなベースのフレーズが牽引し、INORANが手拍子で乗る軽やかな「Pulse」、真矢の躍動的なドラムとSUGIZOらしい空間的な音像が映える「PHILIA」など、今のLUNA SEAだからこそのグルーヴが堪能できる楽曲が並ぶ。5人それぞれの個性とスキルが絡み合って生み出される深く豊かなグルーヴは、5月の<LUNA SEA 30th Anniversary CROSS THE UNIVERSE -THE DAWN->で聴いた時よりも、ツアーを通してますます磨き上げられていた。それは、ただ熟したというよりも、音の奥底から改めてロックバンドとしての攻撃性がふつふつと湧き上がってくるような進化。最初は新鮮だったJのピアノの音色も、「PHILIA」中盤のRYUICHIの絶叫も、より力強く生々しい響きに心を掴まれた。


さらに、「anagram」では、RYUICHIが喉の不調に抗い、マイクを握りしめて絶唱。即興でメロディをアレンジしながら声を振り絞って歌を届けるRYUICHIの表現力と、その想いに共鳴した4人のサウンドが圧巻だった。INORANとSUGIZOがRYUICHIの傍に駆け寄る場面もありつつ、RYUICHI本人は笑顔を見せて歌い続け、ダンサブルな「BLACK AND BLUE」を経て、「俺たち5人から愛を込めて」という言葉とともに「悲壮美」で第一部を終えた。

たしかに、今夜のLUNA SEAは決して100%の状態ではなかった。が、いつも完璧な5人が集まって完璧な演奏をしてきたから伝説のロックバンドなのではない。どんな逆境にあっても、5人が集まった瞬間、その瞬間にしかない最強の音を奏でてみせるのがLUNA SEAだ。逆境が過酷であればあるほど100%を越えていくし、特に常々それに挑んでいるのがRYUICHIというヴォーカリスト。結果的に一切の弱音も言い訳も口にすることなく、堂々と歌い切った彼の不屈のバイタリティに、むしろ引っ張られるようにして、どんどん会場全体にポジティヴなムードが充満していったと思う。


「この日を本当に楽しみに待っていたので、今日、自分たちが見たことのない景色を、しっかりと見に行きたいと思います」──RYUICHI

と自身が宣言していたとおり、30周年の歴史と絆で作り上げた、まさに今夜限りのライヴ。貴重なステージを目撃できていることを深く胸に刻んだ。


初期の楽曲を中心とした第2部は、アレンジバージョンの「月光」から、RYUICHIの「Jesus, Don’t you love me?」のコールによって「JESUS」でスリリングに幕を開けた。

間髪入れずSUGIZOのソリッドなリフが響いた「Closer」を挟み、「DESIRE」「SHINE」とキラーチューンをトップスピードで畳みかけていく。喉を気遣うどころかギアを上げていくRYUICHIの気迫、そのRYUICHIにコーラスで寄り添うINORANや、花道の両翼へと繰り出して煽るSUGIZOとJ、すべてを包み込む真矢のドラムの存在感など、ますます結束を強める5人の音を堪能した。


続いては、ツアー全箇所で演奏されてきたレア曲の中からファンクラブのリクエストで選ばれた、いわば“レア曲中のレア曲”の時間。結果は、初日の「a Vision」に同じく、アルバム『LUNACY』からの「FEEL」だ。2000年という“終幕”直前ならではの刺激的なアレンジが、現在のLUNA SEAのグルーヴと化学反応を起こし、圧倒的なエネルギーを放っていた。メンバー同士が容赦なくぶつかり合う当時の空気感を敬遠するのではなく、ファン自ら当時の音を再評価して求めているのがおもしろい。ヘヴィロックやエレクトロサウンドなど海外ロックシーンの影響と、ソロ活動を経験して強まった5人の個性がしのぎを削るサウンドは、あの時代にしか生まれないもの。2000年代リバイバルという言葉も囁かれる今、ぜひとも『LUNACY』期の楽曲をもっと定番化してほしい、と願わずにはいられない。

そこから、いつもよりハスキーな声が艶やかな「I for You」、「ROSIER」の衰えない爆発力を浴び、本編ラストナンバー「BELIEVE」で熱狂は頂点へ。割れんばかりの拍手とともに、誰しもの心に熱い声援と大合唱が聞こえていたに違いない。


アンコールでは、オーディエンス一人一人が照らすスマホライトがメンバーを迎え入れた。SUGIZOは自らもライトを点灯し、RYUICHIが感慨深げに「めちゃくちゃ綺麗です。星空に浮かんでいる気分です」と感謝を述べる。そのまま、揺れる光の中で今年を象徴するバラード「Make a vow」をエモーショナルに披露し、ラストはフロント4人が真矢のドラム台に集まって曲を締めた。

曲の終わりから次のメンバー紹介に入るまで鳴り止まない盛大な拍手に、耳を傾けて会場を見つめていたRYUICHI。この時だけでなく、ライヴを通して、曲の終わりからMCは始まるまでの間に拍手が途絶えたことは一度もなかった。メンバーから何度も「みんなもLUNA SEAのメンバー」と言われていたとおり、“オーディエンス=SLAVEたち”もまたライヴを作り上げる大切なピース。本来であれば、合唱と声援でRYUICHIを支えたかっただろう想いを拍手に変えて、少しでも多く届けようとする愛情をメンバーも受け取ったはずだ。


メンバー紹介では、「本番中にみんなの笑顔を見て泣きそうになったり、そして、RYUちゃんがものすごい全身全霊で思いっきり表現してくれて……」と思わず涙ぐみつつ、「みんなに謝罪しなきゃいけないことがあります。昨日のアンコールでズボンのチャックがあいてました!」としっかり笑いをとった真矢。

Jは「いろんなこともあったけど、いろんな気づきもあった2年間だったと思います。俺たち、強くなったんじゃないかな」と語り、INORANは「このツアーが終わったら、ちょっと僕らは行ってくるからさ。一緒に充電して、また必ず会おう!」と宣言。

昨日誕生日だったデヴィッド・ボウイの「Ziggy Stardust」の一節を弾いてからマイク前に立ったSUGIZOは、「命ある限り、俺たちはLUNA SEAという旅を続けます。でも、明日誰かがいなくなるかもしれない。もっとも大切なことは、今この一瞬一瞬を全力で生きること。そして最後まで、お互いLUNA SEAでいましょう」とまっすぐ告げた。

SUGIZOに「唯一無二のヴォーカリスト!」と紹介されたRYUICHIは、「この景色を見るために、見続けるために、LUNA SEAの5人はこれからも歩いていくんだと思います。僕は、声帯のオペをおこなう予定になっています。でも、光しか見えてないんで。先にはもっともっと強い光があって、もっと遠くまで照らせる光があって」と前向きな心境を語り、「必ず帰ってきます!」と頼もしい言葉で締め括った。


「かかってこい!!」というRYUICHIの魂のシャウトで始まった「WISH」を経て、最後は、ツアーでも必ずラストに演奏されていた「so tender…」。SUGIZOの柔らかなヴァイオリンとINORANのアコギ、一歩ずつ地面を踏みしめるようなテンポのリズムが折り重なり、ここから拡がっていく未来を予感させる。手を振ってグルーヴに乗るオーディエンスと、見事なスキャットを響かせるRYUICHIが美しい光景を作り出し、万感のフィナーレを迎えた。

5人一体となって危機に立ち向かい、苦難の時代の中で目映い希望を描いてみせたLUNA SEA。まずは1月31日と2月1日の大阪公演が無事に開催されることを祈りつつ、充電期間を経たのち、彼らは間違いなくさらに強くなって戻ってくる──そう心から確信できる夜だった。

取材・文◎後藤寛子
撮影◎田辺佳子/岡田裕介/横山マサト

■<LUNA SEA 30th Anniversary Tour -CROSS THE UNIVERSE- GRAND FINAL>2022年1月9日(日)@さいたまスーパーアリーナ SETLIST

【第1部】
01. LUCA
02. Déjàvu
03. Pulse
04. PHILIA
05. 宇宙(そら)の詩(うた)~Higher and Higher~
06. anagram
07. BLACK AND BLUE
08. 悲壮美
【第2部】
01. JESUS
02. Closer
03. DESIRE
04. SHINE
05. FEEL
06. I for You
07. ROSIER
08. BELIEVE
【ENCORE】
01. Make a vow
02. WISH
03. so tender...

■<LUNA SEA 30th Anniversary Tour 20202021 -CROSS THE UNIVERSE->

※終了公演は割愛
2022年1月31日(月) 大阪国際会議場メインホール
open17:00 / start18:00
2022年2月01日(火) 大阪国際会議場メインホール
open17:00 / start18:00


◆<LUNA SEA 30th Anniversary Tour -CROSS THE UNIVERSE- GRAND FINAL>初日レポートへ
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