【ライブレポート】Kroiがマハラージャンとみせたファンクのメタモルフォーゼ

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Kroiの対バンツアー<Dig the Deep>も大詰めである。この記事が公開されている頃には、全日程を終えているだろう。どんぐりず、韻シスト、ニガミ17才、CHAI、マハラージャン、在日ファンクら、様々なジャンルから実力派がこのツアーに参加した。本稿では1月8日に開催された、マハラージャンとの対バンライブの模様をお届けする。

◆ライブ写真

個人的には、今回のツアーの中で最も楽しみな組み合わせだった。日本テレビ系列で放送されている音楽番組『バズリズム02』において、“今年コレがバズるぞ!BEST10”にも選出されたというセンセーショナルな話題もあるが、何より両者は音楽ジャンルの溶け合い方が最も近いように思われた。インタビューを読んでもジャミロクワイやダフトパンクの名前が挙がっており、クラブミュージックからのリファレンスも多数見受けられる。余談だが筆者も週末はほぼ必ずどこかのクラブにいる人間なので、個人的な好みとしても高い関心があった。

結論から言うと、両バンドに対して「このレベルでバズる前なんですか……」という感想を持った。今よりさらにスケールアップした暁には、ハイエイタス・カイヨーテやディアンジェロの域まで到達してしまいそうな実力と雰囲気がある。多くの発見と感慨があった、素晴らしいライブだった。



まずはマハラージャンが登場。ターバンを頭に巻き、セットアップのスーツに身を包んだアイコニックな装いでステージへ姿を現わす。1曲目の「何の時間」からしてマハラージャンのカッティングが冴え渡る。というか、サポートメンバーも全員とんでもなく上手い。ビンテージのシンセサイザーが並んでいる様子は、サウンドだけでなく見た目も壮観である。バンドが醸し出すグルーヴ感と、スキルの高さは1曲目で重々理解できた。リスニング・ミュージックとしてだけマハラージャンの音楽を聴いていると分からない充実感がある。オール・イン・ワンのプロデューサーとしてひとりで活動していると、メディアで取り上げられるのは多くの場合その人だけだが、ライブになると新たな発見が度々ある。今回はまさにそういう体験だった。

冒頭で述べた“ジャンルの溶け合い方”の話をすると、筆者の個人的な解釈ではKroiもマハラージャンもオーセンティックなファンクではないと感じている。ファンクの方法論(例えばベースのスラッピングやギターのワウペダル)やリズム感は散見されるが、本来やりたいことはファンクの範囲外にまで及んでいるようだ。「僕のスピな人」や「eden」に顕著だが、前者はギターポップの爽快感の奥にフュージョンやプログレッシブ・ロックの影が見える。後者はインディーポップの質感をまといながらビートは結構重め。いずれもライブで強調されていた部分であり、もちろん編成によって異なるだろうが、あまりにも音像が豊かだった。


そうでありながら、最後には「セーラ☆ムン太郎」で“ダンス”に収束してゆく。この曲では彼のルーツとなったダフトパンクへの憧憬を加速させ、「Get Lucky」さながらのグルーヴィーな音像が展開された。思えばダフトパンクも特定のジャンルに準拠していなかったので、もはや“ジャンルレス”という形容は今取り立てて言うべきものではないかもしれない。『Random Access Memories』よろしく、現在はジャンルをいつでも置き換えられるのだから。



マハラージャンと比較すると、Kroiの音楽は大文字のファンクであるように思う。しかしやはり、彼らもまた『Random Access Memories』以降の世界を生きている。何せ「HORN」をリリースしたかと思えば、「pith」のような楽曲も発表するのである。例えばファースト・インプレッションが「pith」である場合、彼らに対してLinkin ParkやKorn、Limp Bizkitなどのミクスチャー勢、あるいは90年代のオルタナ勢の影響を感じるのではないだろうか。今回のライブでは1曲目がこの曲だったが、やはり生演奏においてもロック方面からの影響が垣間見える。2曲目の「Balmy Life」しかり、そもそもラップの仕方が現行USヒップホップにみられる三連符ではなく、当時のミクスチャー勢が積極的に取り入れていた“シームレスなラップ”である。ジャンルだけでなく時代の区分ももはや無いことからも、『Random Access Memories』的であると言えそうな気がする。


やや前置きじみてしまったが、冒頭に書いたようにKroiのバンドとしてのスケールはすでに破格である。Kroiのファンクバンドたる凄みは「selva」と「Page」の間で披露したインターセッションにある。Sly & the Family StoneやTower of Power、あるいは冒頭で引き合いに出したディアンジェロのバンド・The Vanguardのように、彼らも“点”で合わせることができる。これはまさしくバンド的なアプローチで、一拍分の音を抜いてから寸分のズレもなく次の出音を合わせる仕方だ。2015年に<サマーソニック>で観たディアンジェロ、2016年にGREENROOMで観たハイエイタス・カイヨーテに匹敵するリッチな音楽体験だったように思う。大げさに聞こえるだろうか。しかし何度も書くが、彼らには確実にそのスケール感がある。


彼らのオリジナリティが最も現れていたのは、このライブにおいては「Juden」だったように感じる。この曲はフュージョンの要素を取り入れているが、基盤はファンクだ。ただしパーカッションや鳴りが多彩なシンセサイザーが特徴的で、“ファンク”としては歪(最大級の賛辞のつもり)に聴こえる。この曲が収録されているEP『nerd』では、比較的実機が使われていないことが明かされているが、ライブではそれすらも正確に再現されていた。打ち込みの音に慣れた耳には、彼らの演奏はより新鮮に聴こえる。それはドラムンベースをリファレンスに作られた「Rafflesia」も同じだ。


ダフトパンクがそうだったように、ファンクの祖であるジョージ・クリントンもまたジャンルを意識していなかったのではないだろうか。ファンカデリックしかりパーラメントしかり、リアルタイムで彼の音楽に接していた当時のオーディエンスは、ある種の奇妙さも感じていたと想像する。ファンクの祖は結果論であり、そこに至るまでのプロセスは実にアドベンチャーなものだった。Kroiの歪さもまた、その種類のものだと強く感じる。


しかもKroiは、その歪さを付帯させながらオーディエンスを置き去りにしない。その点に関してはマハラージャンにも共通する。彼らの音楽にはクラブミュージック的な人懐っこさがあり、“踊らせる”という機能性を持っている。「Network」や「HORN」のような王道4つ打ちに、体は抗えず反応してしまう。声は出さずに手拍子で応え続けていたオーディエンスも、この時ばかりは理性が負けそうだった(もちろん最後まで感染症対策のガイドラインは守り続けていたが)。


アンコールは「Fire Brain」。ミクスチャーの極致のような楽曲だ。リフレインしながらグルーヴを重ねていく方法論はファンク的であり、パンキッシュなロックの推進力も持つ。Limp Bizkitがファンクバンドだったら…?などビザールな妄想にふけってしまった。

“nerd”は“geek”と違い、ネガティブな「オタク」を意味する。頭は良いが社交性がなかったり、予測できない行動に及ぶ人を指す場合が多い。しかし、素晴らしい発明は得てしてそういった奇天烈な人物から生まれるものだ。nerdな若者だった頃のダフトパンクとジョージ・クリントンに思いをはせる。そんな一晩だった。

取材・文◎川崎ゆうき
写真◎Momo Angela

Kroi ライブ情報

<Kroi Live Tour 2022 “Survive”>
2022年4月23日(土) OPEN 17:00/START 18:00
大阪・心斎橋BIGCAT

2022年5月25日(水) OPEN 18:00/START 19:00
東京・Zepp DiverCity (TOKYO)

■TICKET
ADVANCE 5,200円 (+1DRINK)
https://w.pia.jp/t/kroi-t/

オフィシャル1次先行
受付期間:1月19日(水)23:59 まで
受付方法:抽選
受付枚数:1公演につきおひとりさま2枚まで

■注意事項/備考
※未就学児入場不可 ※電子チケットのみ/同行者情報取得

▼新型コロナウィルス感染症に関する注意事項
・新型コロナウィルス感染症の著しい状況悪化、または行政の指導、規定変更などにより公演開催が困難な場合は止むを得ず公演中止の判断をする場合がございます。
・当日の会場での検温結果によりご入場をお断りする場合がございます。
・体調不良、または濃厚接触者の可能性があり来場が困難となった場合、また運営側でご入場不可と判断させて頂いた場合でもチケットの払い戻しは行いません。

特設サイト:https://kroi.net/survive

マハラージャン ライブ情報

<レッツ・ターバン!>
2022年7月22日(金)
<東京公演>
LINE CUBE SHIBUYA (渋谷公会堂)
OPEN 18:00 / START 19:00 / 全席指定

<大阪公演>
2022年8月5日(金)
心斎橋BIGCAT 
OPEN 18:00 / START 19:00 / オールスタンディング

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