【インタビュー】神はサイコロを振らない、1stアルバムに渾身の全20曲「4人全員が魂を削って作った色とりどりな曲たち」

神はサイコロを振らないが3月2日、自身初のフルアルバム『事象の地平線』をリリースした。収録は全20曲、CD2枚組といった破格の大ボリューム。2020年7月のメジャーデビュー作「泡沫花火」から「タイムファクター」までの配信シングル9曲に、配信限定EP『文化的特異点』収録曲を加えた既発14曲は、ドラマや映画主題歌、CMタイアップソング、著名アーティストとのコラボ楽曲など、それだけで十分バラエティに富んで現時点での集大成を表すもの。しかし、さらに制作された新曲6曲が全20曲をひとつの物語として形成してしまった力量こそ、注目に値する。ストーリー、それを彩るサウンドとプレイのマッチングも絶妙だ。
◆神はサイコロを振らない 画像 / 動画
柳田周作(Vo)曰く、「この宇宙には光ですら到達できない領域があり、ここより先の情報を僕ら人類は知ることができない。その境界を“事象の地平線”と呼ぶ。まだ誰も到達したことのない領域にはどんな色があって、どんな音が流れているのか。創り手として、表現者としてスタンダードを崩しながら未知の世界へ足を踏み入れてみたい」というアルバムタイトルが示すとおり、4人のバンドサウンドは境界線を越えた未開の地へ。一方で、神サイサウンドが確立された作品だと言い換えることもできるだろう。
BARKSでは、アルバムのコンセプト、レコーディング秘話、予定されているライブとツアーについて、柳田周作、吉田喜一(G)、桐木岳貢(B)、黒川亮介(Dr)の4人にじっくりと語ってもらった。
◆ ◆ ◆
■どの曲とも長い時間向き合った
■だから1曲1曲が力強い
──「タイムファクター」の取材時に「フルアルバムって興味あります?」という質問をしたら、ちょっと歯切れが悪かったので“あれ?”と思っていたんですけど、原因が分かりました。あの時まさに制作している最中だったし情報解禁前だったから、シンプルに答えづらかったんですね。
一同:そうなんです、すみません(笑)。

▲柳田周作(Vo)
──いや、こちらこそすみませんでした(笑)。実際にリリースしようという話が浮上したのはいつ頃だったんですか?
柳田:去年の夏くらいですかね。でもその時はまだ全体像が見えてなくて。神サイは陰と陽で言えば陰なので、「すげーダークなアルバム作ってみる?」という話も最初はあったんです。一方で、よくよく考えてみたら僕ら、「泡沫花火」をメジャー初リリースして以降「タイムファクター」まで、14曲リリースしてきまして。一球入魂の単曲配信リリースが続いていたから、フィジカルリリースが『エーテルの正体』収録の4曲だけだということがちょっと引っかかっていたんです。
──他の曲もCDでリリースしたかったと。
柳田:はい。CDリリースしていなかった曲も僕らからしたら、かわいいかわいい子供のような、大切な曲たちばかりだから。というわけで“すげーダークなアルバム”というよりも、既存曲が14曲あったので、6曲新しく録って、キリよく20曲にしたら面白いアルバムになるんじゃないか?ということでこの形になりました。確か1つのCDに入りきるのが……何分だったっけ?
吉田:74分と79分の2つの規格があった気がする。
柳田:でもこのアルバムはトータルで84分あるんです。だからCD2枚組になったんですけど、そもそも1stで20曲入り2CDのフルアルバムを出しているバンドもなかなかいないので、「おもろいことをやりたい」「イレギュラーであり続けたい」と言い続けている神サイらしいなと思います。
──20曲入りということで聴き始める前にちょっと覚悟したんですけど、意外とするっと聴くことができました。
柳田:そうなんですよね。僕らもマスタリングの日に通して聴いたら、びっくりするくらい一瞬で。
──そして1曲1曲の熱量がすごく高いという。
桐木:俺らの場合、これまで単曲配信してきた楽曲があったから、“短期集中でアルバムを作る”みたいな感じではなくて。どの曲にも長い時間をかけて向き合ってきたので、1曲1曲が力強いんじゃないかと思います。
──その通りだと思います。メジャーデビュー以降の神サイの歩みが詰まっている、ドキュメンタリー性の高い作品になりましたね。
桐木:こうして振り返ると、コラボシリーズ(「初恋」「愛のけだもの」)や、伊澤一葉さんと作った「プラトニック・ラブ」は印象深いですね。通して聴いた時、4曲目の「初恋」からガラッと空気が変わるのがすごくいい。それに僕らとしても、他のアーティストの方々とコラボしたことで、いろいろな刺激を取り入れられていったことが、やっぱり一番成長に繋がったんじゃないかと。成長している瞬間って“一番楽しい!”と思える瞬間でもあるので、こういう刺激的な経験をもっと重ねていけたら、神サイはもっとよくなっていくのかなと思います。
黒川:うん。やっぱり通して聴くと、“この時はああだったな”という思い出が1曲1曲から蘇ってきますね。それは聴いてくれている人も同じだと思うんです。“この曲を聴いていた時、自分にはこういうことがあったな“って自分の思い出を重ねて聴いてもらえたら嬉しいですね。あと、このアルバムって、ジャンルが幅広いじゃないですか。だから“音楽って自由でいいな”と改めて感じて。
──この自由を獲得するまでが大変だったのでは?
黒川:そうですね。逃亡してやろうかなと思うこともありましたけど(笑)、逃げずに向き合ったからこそ、この作品ができたし。
──「逃亡してやろうかな」という言葉に対して、みなさんの反応が“笑う”ではなくて“深く頷く”という(笑)。レコーディングの凄まじさを感じさせるんですが。
吉田:どちらかというと、苦い思い出のほうが多いんですよ。マスタリングを聴いている時も、“うわ、この曲マジで大変だったな”と走馬灯のように蘇ってきたし(笑)。だけど、“この曲に合うように”と考えながら努力した片鱗が見て取れるし、そうしてレベルアップできたことこそ、自分的にはよかったと思えるポイントで。だから、確かにアルバムとしてまとまった作品ではあるんですけど……。
──質量が大きいですよね。
吉田:そう。すっごい密度。ギターひとつに関しても、しっかりこだわって、いろいろなことをやっているので。そういうところも聴いてほしいなと思います。
──たとえば、「僕だけが失敗作みたいで」のメインリフはジャズマスターならではのささくれ立ったトーンが歌詞の心情とマッチしていて。
吉田:まさにジャズマスターならではの音ですね。そういうサウンドやプレイ、アレンジを綿密に組み立てて作り上げたのが今回のアルバムです。
桐木:うん。自分たちの作品を聴き返す時って、どうしてもいい感じに聴こえちゃうものなんですよ。だけど今回、“なるべく客観的に”って意識しながら聴いてみたら、それでも“めちゃくちゃいいな”と思えて。
柳田:だから、僕らは神サイのメンバーとして活動しているけど、ちゃんと神サイのファンなんだとも思えたよね。聴きながら、“すげーいい曲だな”と思えた曲ばかりで。
桐木:そうそう。そこでちゃんと自信が持てたし、大々的に「神サイ、カッコいいぞ」と言えるトリガーのようなアルバムになったんじゃないかなと思っています。
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