【インタビュー】神はサイコロを振らない、1stアルバムに渾身の全20曲「4人全員が魂を削って作った色とりどりな曲たち」
■「あなただけ」ができた時は
■今までのバンド人生で一番嬉しかった
──柳田さんはどんなアルバムになったと思いますか?
柳田:やっぱり、“超大作”ですかね。1stアルバムとしてこの作品を作れたのは、音楽家としてめっちゃ幸せなことだと思うし。……振り返ってみれば、神サイって丸1年リリースできなかった年もあったんですよ。バンドとしてどう動いていったらいいか分からず、迷っていた期間も経ての今なので。そんななかで今作では、コラボ曲を一緒に制作したn-bunaさん、アユニ・D (BiSH/PEDRO)さん、キタニタツヤさん、そして伊澤一葉さんやストリングスの美央さんと吉田翔平さんにも協力していただいて。船がどんどん大きくなっている感覚があるんです。こんなありがたい感覚で音楽を作れるなんて、嘘みたいですよね。未だにちょっと夢見心地なところがあるので、実はまだ気持ちが現状に追いつききれてない部分もあって。例えば、「徒夢の中で」とか、本当にすごすぎて“これ、本当に俺が作ったのかな?”と思ったくらい。
──確かに「徒夢の中で」は2021年6月に配信リリースされた時から、ちょっと異質な感じがありました。だけどリリースから時間が経って、このアルバムの流れの中で聴くと、“こういうことだったのか”と腑に落ちる部分もあって。
柳田:そうなんですよね。常に120%フルで出しきって音楽を作ってきたものの、周りに対する劣等感はずっと拭えなかったんですよ。活動し始めた頃の神サイは流行りの音楽性ではなかったから、ライブハウスで浮いていたし、当時はどうしたらいいのかも分からなかった。だけど、そういうことを全部ひっくるめて「徒夢の中で」のような曲が作れたんだと思うと、自信に繋がりました。でも、それでもやっぱりどこか卑屈な自分もいて。そういうジレンマが全部詰め込まれているのが「僕だけが失敗作みたいで」みたいな楽曲だったりするんです。
▲吉田喜一(G)
──「僕だけが失敗作みたいで」は、アルバムのラストを飾る曲として作ったんですか?
柳田:そうですね。そもそも20曲入りのフルアルバムを作るとなった時に、僕の中で結末はもう決まっていたんです。自分の中にある最も生々しい部分を壮大な形で落とし込んだ曲を最後に置こうと。だから「僕だけが失敗作みたいで」は最後の曲のつもりで作った曲だし、そのあとチームのみんなとも話して「この曲を最後にしましょう」と正式に決まりました。今回のアルバムは、新録曲含め、このフィナーレから逆算するように作っていったんですね。結末だけ先に決めて、じゃあここに向かってどうドラマを作っていこうか?という感じだったので、感覚としては小説や映画を作っているような感覚に近かったのかな。それこそ一球入魂で作った、4人全員が魂を削って作った、色とりどりな曲たちが揃っていたので、曲順は本当に一瞬で決まっちゃいました。
──なるほど。「僕だけが失敗作みたいで」の歌詞が柳田さんから上がってきた時、吉田さん、桐木さん、黒川さんはどういうふうに思いましたか? もともと柳田さんは内面を曝け出すように歌詞を書く人だから、こういうアウトプットが出てきたこと自体に、今になってものすごく驚くということはないかと思いますが。
黒川:僕は喋るのが苦手なんですけど、自分が思っていることを柳田が代弁してくれているように感じています。しかも、「僕だけが失敗作みたいで」はそのうえで肯定してくれている気がして。だから何て言ったらいいのか分からないですけど、“ありがとう”って思いますね。
桐木:感覚的な言い方になっちゃうんですけど、「僕だけが失敗作みたいで」は俺の中で、ぐちゃぐちゃになった時にポッと落ちた濃い一滴みたいなイメージです。
柳田:それは分かるかも。パッと出てくるというよりかは、絞りだしている感覚はあるから。
桐木:だからその分、いつもの柳田とギャップを感じて“本当にコイツが書いたのか?”みたいな感覚に陥るというか……(笑)。
柳田:ここに来てゴーストライター説(笑)? 7年一緒にいるのに疑われてる(笑)?
吉田:ははは。でも確かに、第三者目線で“どういう気持ちで歌詞を書いているんだろう?”と思うことはありますね。「僕だけが失敗作みたいで」はちょっと異次元っぽい世界観じゃないですか。レコーディング中にアレンジャーさんと、「『シン・エヴァンゲリオン』みたいだね」という話をしたのを今思い出したんですけど。
柳田:確かに! シンジくんやん、これ!
吉田:そう。神サイワールドとはちょっと違う気がするし、でもそれが柳田の中にあったというのが面白いなと思いました。
──このままアルバム初収録の新曲について聞きたいのですが、まず、「あなただけ」については前回のインタビューで柳田さんから、デモの時点ですごく手ごたえを感じていたこと、そして黒川さんと朝7時から乾杯して飲み始めたことを聞いていて。実際、その通りの名曲が来たなとリスナー目線でも感じました。
黒川:バンドをやっていて嬉しい瞬間ってたくさんあるんですけど、「あなただけ」ができた時は今までのバンド人生で一番嬉しかったです。自分は、柳田の書くメロディラインに対して「こうしたらいいんじゃない?」と茶々を入れることが多いんですけど、「あなただけ」は自分の意見に対して柳田がアプローチしてくれて、それで完成したところがあって。
──2人で試行錯誤して作った曲だから、なお嬉しかったと。
黒川:そうですね。“すごい曲できたな”と思うタイミングって、これまでにもいくつかあったけど、そこに自分が携われたなんてすごく幸せなことだと思いました。
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