L'Arc-en-Ciel、東京ドーム2Daysで結成30周年イヤーフィナーレ

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L'Arc-en-Cielが5月21日(土)と22日(日)の2日間、東京・東京ドームで<30th L'Anniversary LIVE>を開催した。同公演のオフィシャルレポートをお届けする。

◆<30th L'Anniversary LIVE>画像

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5月21日(土)、22日(日)の2DaysにわたりL'Arc-en-Cielが東京ドームで<30th L'Anniversary LIVE>を開催、全国から10万人のファンが詰めかけた。2021年5月、結成30周年の記念日当日とその前日に行われた<30th L'Anniversary Starting Live “L'APPY BIRTHDAY!”>を起点とし、9月からは<30th L'Anniversary TOUR>を実施。この東京ドーム公演を終着点とした1年間、新型コロナウイルス感染症対策を厳重に施しつつ、観客、メンバー、スタッフの安全に配慮しながらライヴ活動を推し進めてきた。そのフィナーレはL'Arc-en-Cielの魅力を存分に味わえる最高の内容だった。

進化した新公式キャラクター、ルシエルちゃんが開演前にステージに登場。お披露目の後、定刻を15分ほど過ぎて場内は暗転。横長の巨大スクリーンには「1991.05.30」というL'Arc-en-Cielの“生年月日”が出現、日付は高速で現在へと移行。2021年におこなってきたライヴとは全く違った新たなオープニングである。スクリーンには、作品のリリースやライヴ日程など30年の史実を刻むタイポグラフィー、ジャケット写真やミュージック ビデオのコラージュが怒涛の勢いで映し出された。L'Arc-en-Cielの名が大きく映し出されると、1曲目の「ミライ」がスタート。hyde(Vo)、ken(G)、tetsuya(B)、yukihiro(Dr)の姿がLEDヴィジョン越しに透けて見えた。《今虹がかかり》という歌詞のタイミングで、東京ドームに新たに導入され話題となった常設LEDヴィジョンには大きな虹が弧を描き、照明も七色で広大な会場を輝かせた。飛沫感染防止のため禁じられている声援に代えて、ファンは、公式グッズのバットマラカスライトを手に、光を七色に切り替え、音を鳴らして想いを届ける。30周年記念シングル第一弾での幕開けは、暗闇に希望の光を灯そうとする、強い意志の表れのように感じられた。

続いて「READY STEADY GO」が始まると、ここでメンバーの顔が初めて大写しになり、観客は全身に喜びを溢れさせる。「New World」では、様々な言語で書かれた「愛している」の文字が折り重なるようにしてスクリーンに充満。今回のライヴは全体を通して、様々な手法で文字、言葉を活かした演出が強い印象を残すこととなる。


「<30th L'Anniversary LIVE>へようこそ! L'Arc-en-Cielです」とhydeが第一声。「30周年の最後に辿り着いたこの場所、東京! まだかわいい口は(マスクで)見えませんが、ハミングしたり、体中を使って楽しんでください」と呼び掛けて、「一緒に楽園へ行きましょう。どこにあるか知ってる? ここにあるんだよ!」のシャウトから「SEVENTH HEAVEN」へ。メタリックなフィギュアがダンスする映像と極彩色の照明が、ゴージャスな祝祭空間を演出。「Lies and Truth」は歌と演奏が小気味よく絡み合い、生き生きとしたエネルギーを放出していた。

静寂の後、ストリングスのイントロが流れ始めると、ヨーロッパの深い森を彷徨うような映像をバックに、「叙情詩」を約10年ぶりに披露。木漏れ日や樹々の揺らめきといった自然界の美と、誰かを想い慕う人間の心の機微、それら全てを音楽に昇華するL'Arc-en-Cielの真骨頂を体感できる、至宝の1曲だった。「L'Arc-en-Ciel、三十路になりました」という、一連の30周年公演で発し続けてきた挨拶の後、艶めかしく「X X X」を披露。続く「fate」は、北極圏の針葉樹林を思わせる映像と共にパフォーマンス。更に、荘厳なオルガンのイントロが鳴ると、それが「finale」だと察知したファンは大拍手。フルサイズでの披露は約22年ぶりとなるレア曲であり、ホラー映画の主題歌に起用されたダークバラード。赤とピンク、液体と水泡が混ざり合うような幻想的なイメージ映像を背に、ミステリアスに歌い奏でた。

暗闇に霧が掛かったようなステージに一人佇み、kenがギターソロを奏で始める。稲光と雨音の後、「MY HEART DRAWS A DREAM」のリフを爪弾くと、太陽の光が差し込んで曲へ突入。「TOKYO、ハミング!」(hyde)との呼び掛けに応じ、かつては合唱していたパートでファンはハミング。この時代に行われたツアー、ライヴの象徴として、将来振り返る一場面になるだろう。続いて、kenが独自のクイズを出し、ファンがバットマラカスライトの色で答えるという、これもまたコロナ禍の時代を象徴する新しいコミュニケーションの形を育んだ恒例MCコーナーの後、エンジン音を合図に「Driver’s High」へ。高速走行、ドリフトでスクリーンから飛び出しそうな車の映像も相まって、凄まじい疾走感に高揚。tetsuyaがkenに接近してプレイする場面も目を引いた。hydeは「TOKYO、ジャンプ!」とファンを煽り、自身も飛び跳ねながら歌唱。yukihiroはパワフルにドラムを叩き終えると、最後の一打は「Pretty girl」へと直結。スクリーンにはグラフィティーアート、ダンスする女性のシルエットが映し出される。tetsuyaのベースソロから「STAY AWAY」が始まると、不二家のペコちゃんが合成されたコラボレーション キャラクターが画面内で激しくダンス。ハチミツの海が広がるような映像と共に披露した「HONEY」では、颯爽と駆け抜けていくような、ロックバンドらしい熱いアンサンブルを聴かせた。

楽しさと開放感をもたらした後、ピアノイントロと共にステージには揺らめく炎が出現。体感温度が下がったように感じるほど、瞬時にムードが変わった。「いばらの涙」である。ドラマティックな歌唱と演奏は圧巻。業火に焼かれるように燃えていく茨の映像、ステージで噴出する火柱、鮮血のような照明、ファンが灯す光の海。全てが世界を赤く染めていく。直前までのお祭りムードは、もう思い出せないほど遠くへ消え去っていた。そのまま「Shout at the Devil」へと切り込むと、スクリーンには赤い目をした不気味なアニメーションが蠢く。hydeは手にした旗を激しく床に叩きつけながら熱唱。最後に幾度も爆ぜた火薬は爆撃音か銃砲のように聞こえ、重いメッセージを投げ掛けているように感じた。yukihiroは一人残り鬼気迫る形相でドラムを乱打。燃え尽きたように立ち上がり、ステージを去った。





色鮮やかな星々が浮かぶ宇宙がスクリーンに広がり、1999年リリースのアルバム『ark』のジャケットに描かれていた宇宙船がそこから飛び出したかのように、アリーナ上空に出現。やがてアリーナ後方に“着陸”するとスモークが噴出、メンバーがその下から姿を現したのは東京ドーム公演らしい壮大な仕掛けだった。円形のサブステージに上ると、「ark号に乗ってまいりました」とhyde。「1999年、ノストラダムスの大予言がありましたから、あの宇宙船で逃げようと思ってたんですけど(笑)。今年やっと完成しました」と解説。サブステージ1曲目の「Sell my Soul」も驚きの選曲で、コロナ禍でなければ大歓声が沸き起こっていたはずである。yukihiroのドラムセットの前にhyde、両隣にken、tetsuyaが近い距離感で座ってジャジーに歌い奏で、そんな4人の映像はメインの巨大スクリーンに赤いドレープカーテンに縁取られた仕様で映し出されていく。続いて、hydeがメンバーに次曲のイメージを尋ねるとkenは青、yukihiroは赤、tetsuyaは黄色、そして自身はセピア色だと答えた「LOST HEAVEN」にもオーディエンスは大歓喜。色のイメージは見事にバラバラな答えだったにもかかわらず、歌と演奏は呼吸が合っていてエモーショナル。L'Arc-en-Cielらしさを実感する場面でもあった。スマートフォンのライトを灯すようhydeがリクエストして一面が白い光に包まれると、「素敵な星空を是非ここで」とコメント。「コロナが収束するような雰囲気があるというのに、世の中は物騒な雰囲気になっておりますが……」と昨今の時世を憂いながら、祈りを捧げるように「星空」を届けた。あまりにも美しくドラマティックな歌唱と演奏であり、壮観な眺めだった。ark号が再び上空に現れ、メンバーはサブステージを去っていった。

しばらくの静寂の後、スクリーンには「WAVE GAME」というタイトルとピクトグラムが表示。ウェーヴを開始する座席位置がブリンクし、文字と図によってファンは順路の指令を受けるのだが、瞬時に全てを理解して美しいウェーヴを成したことに驚いた。スタンドから始まって中央で折り曲がり、アリーナ最前列まで辿り着くと、それを合図に「FOREVER」がスタート。L'Arc-en-Cielの現在のバンドロゴが表示され、30周年第二弾シングルである最新曲を瑞々しくパフォーマンスした。間髪入れず始まったのは、1993年にリリースした1stアルバム『DUNE』から約18年ぶりに届けた「予感」。現在のロゴから、初期の書体に切り替えられたロゴ。愁いを帯びたメロディー、華のある展開、どこを切り取っても魅力の衰えない名曲。時空を行き来しながらオーディエンスの心を揺さぶって、同時期に生まれた1stシングル曲「Blurry Eyes」をMusic Clipのメリーゴーランドの映像と共に投下。曲間のブレイクでtetsuyaは、「アニバーサリー、今日と明日で終わっちゃうから寂しいよね?」と語り掛け、30周年についての考え方について、「僕たち“結成”30周年でやってたんですけど、“デビュー”30周年っていうの、どう?」と提案。hydeは「2年後ですか?」と応えた。「“いい”と思う人、赤!」とtetsuyaが問うと、もちろんファンはライトを赤一色に灯して賛同、「目標ができた」とtetsuyaはうれしそうに笑った。

観客がブルーに戻したライトの海の中で「Blurry Eyes」を終えると、「GOOD LUCK MY WAY」をエネルギッシュにパフォーマンス。スクリーンにはメンバーの、おそらくオフショットであろう姿も交えた過去の貴重映像が映し出されていく。様々な出来事に立ち向かいながら、走り続けてきた30年という歴史に自然と思いを馳せてしまう演出だった。「次、最後の曲です」と語り始めたhydeは、「今日一番のクライマックスは、ウェーヴが帰って来たところ。“かわいい、さすが!”と思った。本当にうれしかった」とファンを誇りに思っている様子。感染防止対策に努めながらのツアーだったことを振り返り、観客に改めて感謝を述べた後、メンバーが感染せずに完走できたことにも「よく頑張りました」と労い、メンバーは笑顔を見せた。「ここまでの30年、様々な困難があってね。戦ったり交わしたりしながら、山あり谷あり、皆がいてくれなかったらとてもじゃないけどできなかった。こんな綺麗な景色、辞めてたら見られなかった」と、継続の尊さについて想いを述べていく。「虹って言うのは、雨が止む時にできるでしょ?」との言葉から、最後は「虹」を披露。ヴィジョンには大きな虹が描き出されていて、七色に分けられた帯状の照明がステージから観客へと伸びていく。大きな虹の中に会場中の全員が溶け込んで一体化していくような、圧倒的な美しさだった。自撮り棒を手にInstagram LIVEをしながら、tetsuyaは端から端へと動き回ってファンに挨拶。「ありがとう! まった明日ね~!」と手を振ってステージを去った。虹の中で幕開け、虹の中で幕を閉じる。初日公演を振り返って、東京ドーム公演に彼らはそんなセットリストを選んだのだ、と気付いた。


Day2も初日同様「ミライ」で幕開け。「Lies and Truth」まで勢いよく駆け抜けると、一瞬の静けさの後、重厚なストリングスサウンドが響き渡った。Day1の「叙情詩」に代わり披露されたのは「瞳の住人」である。美しくも複雑に乱高下する歌のメロディー、一音一音が奥行きたっぷりに響くサウンドに陶酔。初日より1時間早い開演で、かつ快晴だったため天井からは日光が差し込んでおり「まだ明るいですね、外は」とhyde。「だんだん大人の時間になってくるよ?」と語り、「X X X」の世界へと誘っていく。射すくめるような鋭い眼差しで曲が終わり、静寂の後に始まった「fate」の表現は、初日以上にも増して凄みに圧倒された。終わりの見えない争い、分からなくなっていく真実。時代に翻弄されながらも愛を貫く人物の想いが、原曲とは節回しを少し変えたエモーショナルな歌唱と、抑えきれないほどの昂りを感じさせる演奏から熱く迸っていく。美しくも壮絶なパフォーマンスの名残の中、続いて披露された「finale」は、より重厚でシリアスな表現になっているように感じた。初日以上に深い水底に沈むようなダークなパートがあってこそ、「MY HEART DRAWS A DREAM」で紡がれるkenのギターソロ、やがて浮上して浴びる眩い光のイメージは、その対比で一層鮮やかなものになっていた。優しいタッチで絵筆を置くような、ゆったりとした優しい歌声を響かせたhydeは、「TOKYO、ハミング!」とシャウト。yukihiroのキックが刻むリズムとピアノをガイドラインとして、ファンは控え目にハミング。イヤーモニターを外して耳を傾け、kenは顔をほころばせた。もっともっと!と煽るように手を動かすtetsuya。ハミングから得たパワーを声に注ぎ込んだかのように、伸びやかなフェイクを交えながらhydeは歌い終えた。

「Pretty girl」では持て余すように長い脚を台に乗せ、ノリに乗ったプレイを見せたken。「いばらの涙」では、tetsuyaのハイトーンコーラスが圧巻。黒いグローヴをしてマイクを握り締めて絶唱するhydeの両手は、祈りを捧げているかのように見えた。「Shout at the Devil」のラスト、高速で腕を大きく動かす渾身のプレイを見せたyukihiroは、まるで阿修羅の化身のよう。この2日間はメンバーが歌に、演奏に、曲の世界に深く没入する姿が多々見られる公演であり、それこそが実は、L'Arc-en-Cielというバンドが30年という長きにわたって第一線を走り続けているシンプルな理由ではないか?とも感じた。






ark号でサブステージに到着した4人。ファンがバットマラカスライトを切り替えて曲に合わせて色を選ぶのだが、「次の曲は何色か? この曲はもう、これしかないんじゃない?」とhyde。青系が2色あるということで「水色にしようか」とhydeは色をあらかじめ伝えると、透明な傘を開き「雨が降って来た」と手をかざす。オーディエンスのざわめきの中始まったのは「Singin’ in the Rain」。『HEART』(1998年)収録の人気曲だが、以来ライヴ披露の機会はほぼなかったレア曲である。ジャジーなフィーリングと艶やかなサウンド、洗練されたアンサンブル、柔らかな歌唱。「僕は雨が好きなんで。家にいると、とても心が洗われる。音も好き」と語ったhydeは、「この曲で(雨を)少しでも好きになってくれれば」と語った。「LOST HEAVEN」は、「歴史を感じるような歌詞の内容だったので」と述べ、このライヴに向けたファンによるリクエスト投票でも「比較的上位やったのと、この雰囲気に合うかなと思って選びました」とのこと。また、「星空」を披露する前のMCには、Day1よりも明確に「平和を願って」との言葉を加えていた。エレキとアコースティックのハイブリッドであるアコースタソニック ストラトキャスターでkenが爪弾く音色は、切なさと希望の両方を宿したような、繊細な奥深さ。4人は、ファンが灯す光の大海に浮かぶ小さな島のようなサブステージで、大きな夢を奏でていた。《目覚めたら変わっていると良いな 争いの終わった世界へと》──切なる願いを乗せた美しい音楽が、美しい光景とともに、いつまでも心に残り鳴り響いた。

「FOREVER」に至るWAVE GAMEでは、座席エリアごとのライトの色分け指示を、初日で学習したファンが的確に読み取ったのか、虹色にブロック分けされた状態での美しいウェーヴが実現。眩い光景が広がった。「予感」から「Blurry Eyes」へ入るところで珍しくyukihiroが演奏を間違え、何度も頭を下げて平謝りするレアな場面も。「今何があったの?」とhydeは驚き、メンバーもファンも楽しそうな笑顔。再度スタートし直すと、よりリラックスした明るいムードが会場を満たしていった。ブレイクではtetsuyaが、虹色のウェーヴを振り返って「さっき虹っぽくなってたよね? すごいね。“すっごい綺麗やな”って見惚れてたら、演奏間違えました(笑)」と告白。「皆さんご存じ?」と語り掛けると、L'Arc-en-Cielはフランス語で虹を意味すると説明しながら、「こういうことができるのも、L'Arc-en-Cielっていう名前があるからじゃない? つけてよかった」と命名者としての喜びを語った。「30年も愛され続けるバンドになれてうれしいなって。皆、一回しか言わへんから聞いて? L'Arc-en-Cielを好きになってくれてありがとう!」と叫んだ。


ファンの灯す光が輝く会場を見つめながら、hydeは「どうもありがとう、すごいいい眺めだね!」と感慨深そうで、「この光はただの光じゃなくてね、一つ一つがそれぞれいろんな背景があってね、ここまで辿りついた光なので、ただの光と違うんだよね。そこがまたこう、胸に刺さるというか、ここまで来てくれてね……うれしいなと思って。また遠くへ帰っていくんだろうと思うんですけど、それぞれの光がね。でもこうやって5万人が集まってるというのが、もう既に感動的でね、いい眺めです。本当にありがとう」と感無量な様子。「この30年、いろんな出来事がありまして。ここまで来るにはなかなか、奇跡的ないろんなものが重なってね、いろんな人に助けられて、皆努力しながら辿り着いた。そして皆がいたから、ここまで辿り着けたと思います」と平坦ではなかった道程を振り返った。

更には「辛い時に辞めてたら、悲しい記憶だけ、悔しい記憶だけ残るけど、乗り越えると、こういう素敵な景色が待ってたんだなと思ってね。それも皆がいてくれたから、支えてくれたからだなと思います。連れてきてくれてありがとうございます!」と挨拶。「この30周年、1年ライヴしてきましたが、世界的にもすごく大変な時に重なってしまって……僕らも皆も大変だったんですけど、虹っていうのは、雨が止む時にできるんですよ。最後に“虹”を聴いてください。どうもありがとうございました」との言葉から、曲がスタート。kenの奏でる、光が降り注ぐような慈しみ深いアルペジオ。地を踏みしめて真っ直ぐに歩き出すようなyukihiroの凛としたドラミング。hydeは涙ぐんで声を震わせているように思えたがしっかりと丁寧に歌い遂げ、tetsuyaのベースが温かく歌を包み込むように寄り添った。4人は最後向き合って音を止め、全曲の演奏が終了。「また会えるまで、皆元気で過ごしてください。次のライヴ、一緒に歌おうね!」と投げキッスを幾度も繰り返したhyde。一旦全員がステージから去り、再度戻って来たtetsuyaは初日同様スマートフォンで撮影しながら、最後「初めて言うけど……ホント、一回しか言わんからよく聴いてね? 皆! ラルクを好きになってくれてありがとう! まったねー!」と挨拶。一回しか言わない、と断りながらこの日だけでも2度熱く感謝を伝え、笑顔でステージを後にした。

振り返れば、8年ぶりのツアー<ARENA TOUR MMXX>がコロナ禍で中断、4公演が中止を余儀なくされる、大きな傷を負った2020年。2021年5月の幕張公演、9月からのツアーも、上述の通りコロナ禍の状況に左右されながら決行。2022年にこうしてフィナーレに辿り着くには、平坦ではない長い道程があった。コロナ禍に加え、hydeがMCで触れていたように世界情勢は悪化し、安らぎを見出しづらい時世となっている。そんな中で行なわれたこの東京ドーム公演は、ツアーで披露した楽曲群を中心としながらも意外な選曲を加え、演出も新たに、バンドの真髄をより堪能できる内容にアップデートしてファンに届けた。このライヴで胸を打たれたのは、L'Arc-en-Cielの描き出す美しい世界が、平和への希求と結びついていたこと。怒りの拳を突き上げるのではなく、連帯を直接的に呼び掛けるのでもなく、美しい光景を死守するというスタンスで人間の尊厳を保ち、無慈悲な暴力に抗おうとしているように見えた。その芸術的な祈りの捧げ方が有効であることは、L'Arc-en-Cielが30年以上にわたり求められ続け、世界中のファンの心の拠り所であり続けていることが証明している。この先の彼らがどのような一歩を踏み出していくのか、新たな報せを楽しみに待っていたい。

文◎大前多恵
写真◎Takayuki Okada/Toshikazu Oguruma/Hideaki Imamoto/Yuki Kawamoto/Hiroaki Ishikawa

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