【インタビュー】アイナ・ジ・エンド、BiSHとソロの尽きない挑戦が導いた『ジャニス』「演じるとかじゃない、一心同体で行くしかない」

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BiSHのアイナ・ジ・エンドが8月23⽇、25⽇、26⽇の3日間、東京国際フォーラムホールAで上演されるブロードウェイミュージカル『ジャニス』でジャニス・ジョプリン役を務めることが発表となった。『ジャニス』の概要や、ミュージカル初出演にして初主演への意気込みは、同時公開したオフィシャルインタビューでご紹介したとおり。主役抜擢に関しては総合プロデューサーである⻲⽥誠治からの熱烈オファーがあって実現したものだ。

◆アイナ・ジ・エンド 画像

BARKSオリジナルインタビューでは、BiSHの現在はもとより、自身が作詞作曲も手掛けるソロ活動、感情移入しすぎて「今は、“憑依!“みたいになっちゃっている」というジャニス・ジョプリンについて、じっくりと語ってもらった。以前のSUGIZO対談では「この人のポテンシャルは無限大だなと思った」と言わしめるなど、各方面から評価の高いアイナ・ジ・エンドのヴォーカルスタイルが浮かび上がったインタビューをお届けしたい。

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■みんなの共鳴が伝わってくれば安心
■生きていていいのかなって思える

──2023年をもってBiSHが解散することを2021年12月24日に発表しました。2022年に入って、12ヶ月連続シングルリリースを続けながら、ライブも精力的に行なっています。解散が決まっていることもあり、活動のひとつずつが宝物のように感じる瞬間の連続だと思うんです。7年の活動を経た今もなお、BiSHの強味や魅力を感じることも多いですか?

アイナ:ありますね。BiSHって結局、ただの女の子の集まりなんです。ほんとに、ただの女の子(笑)。例えば、全員が爆裂にスタイルがいいとか、何かがめちゃくちゃできる人達でもなくて。だからこそ、ガムシャラにやることで、清掃員の人達が共感してくれるというか。もしメンバー6人ともスタイル抜群で容姿端麗で、“息していれば明るい明日は来るんだし”とか言ってても、そんなに響かない気がして(笑)。BiSHにいろんな誉め言葉を言ってくださる方もいるんですけど、いやいや、違うんですって。ただの女の子の集まりで、一生懸命にやっているだけなんです、と思っています。今回の<COLONiZED TOUR>中も、それをすごく感じていて。それが強味なのかなと思ったりしますね、私は。


──今現在もアイナさん自身、BiSHに魅力を感じているわけですよね。解散を決めたとき、アイナさんはどんな気持ちだったんですか?

アイナ:2019年あたりに解散するっていう話が決まって、正直、私はその時期が一番辛かった。たぶんずっと受け止められなかったんです、解散ということを。自分にとってBiSHが生きがいすぎて。そのBiSHがなくなる未来は想像つかないし、解散が決まっているのに、それを発表してなかった時期に“これからもヨロシク”とか言うのは、嘘を言っているみたいで。だからライブのMC中も泣きそうになっちゃたりしてたんです。だけど、お客さんからしたら意味が分からないじゃないですか、私がステージ上で泣いていたって。一生懸命に学校や仕事を頑張って、お金を貯めて、ライブにせっかく来てくれたんだから、涙より歌をちゃんと聴きたいだろうなって。だから、ライブ中に私はすごく耐えていて…。それから日に日に解散を受け止められるようになって、“ステージに立つ=しっかり歌うこと”だって分かって、“泣くんじゃない”と。それで、ようやく泣かなくなってきたところで、去年12月の解散宣言を迎えたんです。“やっとこれから清掃員に嘘をつかなくていいんだ、今後は全部、正直に言えるんだ”って。そういう安心がちょっとありました。

──情緒不安定な2〜3年を過ごしていたわけですか…。

アイナ:でも、コロナ禍で1年近く清掃員の前でライブできなかった時期があったので、3年よりも短い期間だったんですけど。確かに情緒不安定でした。

──その期間にアイナさんはソロ活動もスタートさせました。2021年にアイナ・ジ・エンドとしてソロ活動を本格化したことで、ご自身の気持ちに新たなものが芽生えたり、別の視界が切り開かれた感じもありました?

アイナ:めちゃめちゃありました。最初のソロツアー<THE END>のときはヤバかったです。興奮しすぎて、ずーっと眠れなかったです。リハーサルのときも、バンドメンバーが鳴らしてくれる音が、自分が曲を作っていたときに鳴らしたかったベースより100億倍カッコ良かったり。こんなふうに歪んだギターが鳴ったらいいなって頭で妄想していたものが、ゴジラの鳴き声のように想像以上に素敵に響いたり。楽しすぎて、音楽が。その中に自分が溺れていく感覚があったんです。BiSHでは自分の作った音楽をやるわけではないので。ソロでは、こんなに音の海が押し寄せてきて、その中で自由に踊れる。どんな衣装を着てもいいし、どんなメイクをしてもいいし、どんな発言をしてもいい、みたいな。すごく解き放たれた感じはしました。

──でもアイナさんがソロで綴っている歌詞は、人が必ず抱えているであろう闇や暗い部分にスポットを当てていると感じるんです。あまり表に出したくない自分の素と向き合う行為に近いんじゃないかと思ったんです。

アイナ:ああ、そうですよね。…なんか、以前そういう話をしましたっけ?


──2021年2月リリースの1stソロアルバム『THE END』取材のときに、歌詞の話とか、歌詞にまつわる友人との出来事とか、いろいろと。

アイナ:そうですよね。アルバム『THE END』は、それまで自分で曲を作ることに慣れていなかったんで、作っているときがずっと苦しくて。自然に、辛いって気持ちで書いちゃったんですよね。そうすると“辛い引き出し”からいっぱい出て来るんですよ。それを歌詞や曲に落とし込んでいったら浄化されていく感じになって。例えば私が“世界は美しい。みんな、生きていこう”みたいな歌を突然歌っても、誰にも響かないと思うんです。自分はこんなに気持ち悪い人間なんだっていうことを歌詞にしたためて、世に出すというか。自分を一回飲み込んで、“こんな自分でも生きていきたい”って言うほうが伝わるって思ったので。だから1stソロアルバムは絶望的なものに近い曲を生み出さなきゃいけないって、自然な流れで思っちゃいました。

──どん底に落ちたとき、上を見るしかない。絶望の中に見えるちょっとした光みたいな感覚ですか。

アイナ:そうですね。

──2ndソロアルバム『THE ZOMBIE』を2021年11月に発表しました。1stアルバムでは自分自身をとことん見つめた曲が多かったのに対して、2ndアルバムでは多くの人達が視界に入ってきたように感じたんですよ。

アイナ:確かに。でもどうなんだろう…。あと何年歌っていくか分からないけど、もしこの先、10年歌えて、何作品も出せるんだったら、“2ndアルバムはブレてたな”って言うと思う。でも、あと2作ぐらいしか出さずに終わるんだったら、“あの作品は見てくれる人達が増えたから、ああいう曲達ができたんだね”って思うだろうし。どんなアルバムになったのか、自分では今はまだ客観的に見れなくて。ソロの曲作りって、まだ分かっていないところがあるんですよね。

──ソロライブでご自身の綴った歌詞や曲を響かせたとき、ファンや観客の表情を見て、ソロの音楽を生み落として良かったなと安心することもありますか?

アイナ:あります。でも私は、そんなにカッコいい人間じゃないって、それはずーっと思っていることで。BiSHはただの女の子って発言もそこから来てるんです。自分は天才とかヒーローやヒロインでもない。だからこそ劣等感で必死に歌詞を書いたり。上を向きたいって気持ちも人一倍強くて、ガムシャラに曲も作るし。なので、人に認めてもらわないと意味がなくて、ライブでみんなが共鳴してくれるのが波動で伝わってくれば安心できるし。ただの安心とかじゃないかもしれない。生きていていいのかなって思えるぐらい、すっごい安心する。


──今回、ブロードウェイミュージカル作品『ジャニス』で、アイナさんがジャニス・ジョプリン役を務めることを知ったとき、ものすごくピッタリだと思ったんですよ。

アイナ:本当ですか!?

──ジャニスは幼少期に劣等感を抱えていて、でも自分が歌うことで生きる意味や自分の価値観も見つけて、自分らしく生きようとしていったわけですよね。でも一方で、常に孤独感を抱えていることもあったり。アイナさんもソロライブのときにMCで言っていたじゃないですか。BiSH加入前、歌うために上京したものの、歌で認められない日々を過ごしていて、孤独感と自暴自棄にさいなまれたこともあったって。夕方5時の学校のチャイムが鳴るまで、部屋で一人、寂しく過ごしていたんですよね。

アイナ:そうです、中野でね。

──中野の安いアパートで。心も気持ちも擦り切れまくった何年間かがあったわけですよ。

アイナ:うん…。

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