【インタビュー】ドラマストア、珠玉の楽曲群がイマジネーションを刺激する2ndアルバム『LAST DAY(S) LAST』

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2014年9月に大阪でバンドを結成して以降、「君を主人公にする音楽」をコンセプトに活動を重ねているドラマストア。2ndアルバム『LAST DAY(S) LAST』(読み:ラスト・デイズ・ラスト)は、各々の楽曲の中に豊かな物語が広がっている。印象的な一節、イマジネーションを刺激する表現を満載しながら、リスナーの胸の内に様々な世界を浮かび上がらせるのが、この作品の大きな魅力だ。制作エピソード、楽曲に込めた想いなどについて、メンバーたちに語ってもらった。

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■経験してきたことが全部このアルバムに出たと思います。
■曲調、テンポ感、アレンジ、曲の並びとか、いろんな面で完璧やなと。


──良いことも悪いことも全部ひっくるめて受け止めながら一生懸命生きている姿が様々な角度から描かれているアルバムだという印象がしました。どんな1枚にしたいと思っていました?

長谷川:「もう、今言ってくださったことで終わってもいいな」っていうくらい「せやな」と思いました。

──では、インタビューはこれにて終了ということで。

全員:(爆笑)。

長谷川:このアルバム、コロナ禍で影響を受けたことは、かなり出ているんだと思います。あと、今までと較べて「やらなければいけないこと」と「やりたいと思うこと」の按配が「やりたい」の方に比重が重くなったのかもしれないです。肩の力を抜いて書けた曲が多かったので。

鳥山:肩の力が抜けたというのは、でかいと思います。「こういうものにしたいなあ」っていうより、「こうなっていったなあ」っていう感覚というか。どんどん肩肘を張らなくなっていくものなのかもしれないですね。やりたいことがいっぱいあって、それをやっていったら自然と洗練されていくというか。今までにやったことの良い部分だけ残っていく感覚がありました。

髙橋:今までを踏まえて「もっとこうしたい」っていうことに取り組むことができたんです。それが満足できる結果に繋がったのかなと思います。

▲『LAST DAY(S) LAST』初回限定盤

──アレンジ力が高いバンドだというのも、今作を聴いて感じました。

髙橋:今回、メンバー同士でパソコンでやり取りするようになったり、家に持ち帰ってじっくり各々で考える時間が増えたんです。それが今おっしゃったことに繋がったのかなと。

松本:経験してきたことが全部このアルバムに出たと思います。僕らは「アルバム1枚の中でいろんな振り幅の楽曲を作る」という裏コンセプトみたいなことが毎回あるんですけど、今回のアルバムはそれもちゃんとクリアできました。曲調、テンポ感、アレンジ、曲の並びとか、いろんな面で完璧やなと思っています。

──例えば「無色透明」は、2コーラス目に入ってからドラムのビートが変化して曲全体が一際躍動感を帯びるじゃないですか。こういうアレンジも絶妙です。

松本:ありがとうございます。「無色透明」は、一番苦労しました。

長谷川:そうだったね。

松本:「2番はこれで行くんで」って他のメンバーの意見を聞かないくらいだったんです。2番以降でやりたいことをやったから、逆に「一番はどういう感じにしたらいいんやろう?」っていうのを、じっくりと考えました。最終的には満足できるものになりましたけど、この形になるまでに時間がかかりました。

──「無色透明」の歌詞は、どのような想いを込めました?

長谷川:コロナ禍の中でライブやいろいろな仕事がなくなることが多くて、突然休みになったりしたんです。僕はそういう時の過ごし方がわからなくなるタイプなんですよ。何かに忙殺されている方が活き活きするタイプなので。だから「自由って最大の不自由だな」って思いながら書いたのが、この曲です。でも、僕はあんまり実体験を歌詞に書かないタイプなんですけど。

──物語を書く感覚で曲を作っているということですか?

長谷川:そういうことが多いですね。でも、今作は実体験が反映された量が多いかもしれないです。

鳥山:今回は全体的に洗練されてきている印象もします。「海くんならそう行くよね?」って、メロディの動きに迷いがないですから。この印象、合っていますか?

長谷川:合っていると思う。

髙橋:今回のアルバムはサウンド面で言うとポップやけど、各々がどこかしらに持っている「バンドマン」っていうのが出ている気がします。それが躍動感や勢いにも繋がっているのかもしれないですね。

──「ダ・ヴィンチ・ブルー」も爽やかな聴き心地ですけど、力強い躍動感が伝わってくる曲です。

長谷川:「ダ・ヴィンチ・ブルー」は大人になってからわかる「あの時、青春やったな」っていう振り返り方をテーマにして書きました。10代が感じる青さとは全然違う青さを描けたらいいなあって思っていましたね。「何歳になっても青春って始め直せるんだな」っていうのも描きたかったことです。

──タイトルがキャッチーですね。「ダ・ヴィンチ・ブルー」って具体的に「あの色!」っていうのが明確にあるわけではないですけど、なんだかとても想像力をくすぐられる言葉の組み合わせです。

長谷川:「感じたあの青春の青の色は、ダ・ヴィンチでも書き表せないよ」みたいな曲にしたいというのは決めていたんです。タイトルで悩むことが多いんですけど、これはタイトル先行でしたね、

──歌声も、とても心地よく迫ってくる曲です。

長谷川:今回、個人的に「歌うって超楽しいな」って感じたんです。だからできるだけ楽器を弾きたくなくなりましたし、「曲書きたい」「歌詞書きたい」「歌いたい」っていう想いが一番にありました。

──歌を支える楽器隊が、すごく頼もしいですよ。

髙橋:ベースラインも完全に海くんを意識しながら考えていますからね。

鳥山:「歌を絶対に邪魔しない」って思っていた時期を経て、「ちょっと邪魔するくらいの方が良いのかな?」っていうくらいになってきている気がします。

長谷川:このアルバムで書きたいことが書けたのも、メンバーがそういうことをしながらすごく任せてくれたのが大きいんだと思います。

──どの曲の歌詞に関しても、「なるほど」と思わされるフレーズが盛りだくさんですね。例えば「ALONE」の《最低から始まる物語は名作になりたがる》とか、すごく印象に残ります。

長谷川:その歌詞は僕が今まで書いてきた中でも……。

松本:会心の出来やな?

長谷川:それ、今、俺が言おうとしていたのに。

松本:言いたくなって(笑)。そこ、俺もめっちゃ好きやから。

長谷川:僕、その一節を歌う時は、めちゃくちゃどや顔をしていますね。今まで書いてきた中でもかなり上位の一節やと思います。

──どんな意味を込めています?

長谷川:ツイッターとかのSNSって、語弊があるかもしれないですけど不幸アピールというか、悲劇のヒロイン症候群みたいなところがあると思うんです。もちろんほんまに悲しい状況のこともありますけど、エピソードをちょっと盛って、「かわいそうに見えた方が得なんじゃないか?」っていう感情もあるんじゃないかなと。「それは自分自身の動き方次第で変わっていくんじゃないの?」と感じることもありますし。

──なるほど。歌うのが楽しいと先ほどおっしゃっていましたが、歌詞を書くのも好きですよね?

長谷川:好きですね。他のアーティストさんの曲の歌詞も書きたいと思うくらいですから。僕はフィクションで書く割合の方が多くて、映像視点なんですよね。

──小説や漫画とか、よく読むんですか?

長谷川:はい。ラブコメが一番嫌いです(笑)。好きなのは湊かなえさん。ハッピーエンドでもバッドエンドでもないところが新しいんですよね。湊さんは読んだ後にすっきりしないミステリーの先駆者ですから。

──ソングライターとしての長谷川さんに最も影響を与えているのは、そういう要素ですか?

長谷川:はい。それがめっちゃくちゃ大きいです。小説、漫画、アニメ、ドラマ、映画とか、サイコ的なサスペンスは大好きなので。でも、今のところ自分が作る曲の中で誰かが死ぬというのはない(笑)。そういうMVは、いつか撮ってみたいですけど。どんでん返しとか、「そうやったんや?」っていう伏線回収みたいなことが好きなので、曲でもそういうことをやりたいんですよね。世の中全体が歌詞離れしている感じがあるからこそ、歌詞のそういうところには執着していきたいです。

髙橋:歌詞の強さはドラマストアの売りと言って間違いないですね。歌詞を深夜に送ってくることとかもあるやん?

長谷川:送るのは深夜しかないかも。

髙橋:送られてきた歌詞を布団の上とかで見た時に、「これを今から曲として作っていくんやな」っていう気持ちになります。

──リスナーから歌詞に関する反応を頂くことも多いですよね?

長谷川:はい。深読みしていただけるのは嬉しいんですけど、僕がツイートで誤字をしても、「これには何か意味がある」って言われたりして。

鳥山:「それは単なる誤字です」と?

長谷川:そうなんです(笑)。


──「月と旅人」の《遥か遠くを目指すフリして とりあえず明日へ向かうのが 僕らしくあることなんじゃない?》とか、リスナーからの反応が結構あるんじゃないですか?

長谷川:そうですね。そこは、僕がそのまんま表れている感じがあります。「3日坊主でもやらないよりも良くない?」って思うんです。1年先まで続くような冒険も旅ですけど、今日は頑張ったけど明日のことはわからないのも旅。そういう肩の力を抜いた曲が「月と旅人」です。

──歌詞は日本語を大切にしながら綴られている印象で、サウンドに和的な情緒のようなものがあるのもドラマストアの特徴だと思います。

長谷川:僕はバンドが好きでバンドを始めた人間ではなくて、シンガーに惹かれて音楽が好きになったんです。だから「プロの作家が作った楽曲」に影響を受けているんですよね。そういうのが作る曲に反映されているのかもしれないです。

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