【インタビュー】Suspended 4th、走攻守揃った1stフルアルバムに死角なし「生のライブではなにかが起こる」

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Suspended 4thが7月20日、PIZZA OF DEATH RECORDSより自身初のフルアルバム『TRAVEL THE GALAXY』をリリースした。録り下ろしの新曲や配信シングルはもちろん、以前からライブで披露されていた楽曲の初音源化や過去作品の再録バージョンに加え、ディープ・パープル代表曲のインストカバーなど、収録された全14曲はまさしく集大成と呼べる仕上がりだ。さらにDISC 2の『Parallel The Galaxy』にはアルバム収録曲のインスト音源が曲順を逆に収録され、4人の高い演奏力をじっくりと堪能できる。

◆Suspended 4th 動画 / 画像

メンバー個々の技量の高さと、彼らが持つ旋律の豊かさのバランスが絶妙に調和した作品が『TRAVEL THE GALAXY』だ。言い換えれば、スリリングな即興ジャムセッションが放つ膨大なエネルギーも、身体が思わず反応してしまうキャッチーさもポピュラリティも混在しているという意味で、まるで死角なし。事実、先ごろ出演した<SATANIC CARNIVAL 2022><京都大作戦2022>のステージの爆発力は圧巻だった。Suspended 4thの現在モードは確実に外側へ向いて、客席を引きずり込むパワーに溢れている。

BARKSではメンバー全員に『TRAVEL THE GALAXY』に封じ込められたサウンド&プレイの聴きどころについて、じっくりと話を聞いた。メンバー曰く「え、その音に気付きました?」「こういう話って楽しいです」と漏らしたインタビューは音の詳細に迫るものだが、そこから浮かび上がったのは、Kazuki Washiyama (G, Vo)、Seiya Sawada (G)、Hiromu Fukuda (B)、Dennis Lwabu (Dr)の人間的キャラクターでもあった。ぜひとも音源を聴きながら、彼らの飽くなきこだわりに触れてほしい。

   ◆   ◆   ◆

■各々が一番カッコいいと思うフレーズを弾いてる
■ただそれだけのこと。それこそがサスフォー

──1stフルアルバム『Travel The Galaxy』の制作に入る前は、どんなことを考えていましたか?

Washiyama:テーマみたいなものは特になくて。今の自分たちがやれることをアルバムに収録しようと思っていました。

──では、アルバムのキーになった1曲はありましたか?

Washiyama:アルバム収録曲を決めて並べてみたときに、“もうひと押ししたい”と個人的に思ったので、PIZZA OF DEATHスタッフに「少し時間をください」とお願いして。そこから出来た曲が1曲目に収録した「トラベル・ザ・ギャラクシー」だったんです。今の自分たちを象徴するような曲で、アルバム制作の最後にそういう曲が作れてよかったと思います。


▲Kazuki Washiyama (G, Vo)


▲Seiya Sawada (G)

──出揃った曲に満足して“今回はこれでいい”と思わなかったことが、いい結果を生みましたね。アルバム『Travel The Galaxy』にはSuspended 4thの特色が色濃く出ていると思うんです。というのも、テクニカルなバンドにありがちな変拍子や凝った展開、長いソロなどを前面に押し出すのではなくて、キャッチーな楽曲にハイレベルなプレイを随所に盛り込んでいるから、カッコいい瞬間の連続になっています。

Washiyama:本当はすごく長いソロもやりたいし、変拍子もやりたいんですよ。でも、それだと聴いてくれている人が疲れてしまうし、今のシーンに合ってない。そういうこともあって抑制している感じです。まぁ、今後はそういうことを急にやり出すフェイズがあるかもしれないですし。

Sawada:今でもライブではソロを伸ばしたりしているので。本来8小節のギターソロが、その場のノリで64小節になったり。

──ノリで64小節!

Washiyama:元々インプロヴィゼーションが好きなバンドですからね。ライブのときにジャムができる余地を持たせた曲が『Travel The Galaxy』には入っています。

──その辺りは'70年代のハードロックバンドに通じるものがありますね。それに『Travel The Galaxy』は音楽的な幅広さを見せていることも印象的です。

Sawada:僕らはいろいろなことをやりたいバンドだし、収録曲はバラエティに富んでいながら、どれも気に入っているんですよ。


▲Hiromu Fukuda (B)


▲Dennis Lwabu (Dr)

──では、収録曲から各々の思い入れの深い曲を敢えてピックアップするなら?

Sawada:僕は「ANYONE」ですね。オールドロックな感じでストレートに始まるけど、Bメロで急にメジャースケールになって雰囲気が変わりつつ、強いサビがあるという流れがいい。それに歌詞にもやる気を感じるんですよ、“こいつらやる気だな”というのが猿にも伝わるんじゃないかな。楽曲としての成り立ちが「ANYONE」はすごくいい。

Washiyama:歌詞は今回、わかりやすく“俺たちやります”というものが多くて、特に「ANYONE」はそれをストレートに出しましたね。この曲はたしか、デモ自体が2年前くらいにあったから、作ったのは結構前で。2021年1月にデジタルシングルをリリースすることになって「もういい」と「ANYONE」を作ったんです。結果、デジタルシングルは「もういい」のほうを採用したんですけど、「ANYONE」は温めていたぶん、2年前のデモから展開の作り方とかを変えたりして。今のアルバムに入れるならこうだろうという感覚で作り直したことで、さらに良くなった曲ですね。

Fukuda:敢えて僕が1曲挙げるとしたら「Shaky」。僕は速い曲がとにかく好きなんですけど、特にこの曲は凄いことになっていて、自分でもライブで弾けるのかどうか(笑)。BPM125の16ビートだけど、体感はBPM250の8ビートという感じ。それくらい速い。演奏面でもイチオシです。今のリスナーが求めるスピード感はこういうものだと思うんですよ。だから、自分が好きな曲であると同時に、若い子に刺さる曲じゃないかなと思います。

Washiyama:「Shaky」も結構前に作ったデモから引っ張ってきた曲で、ぶっちゃけ僕はこれを「ライブでやりたいか?」と聞かれたら、あまりやりたくない。

Fukuda:しんどいから(笑)?

Washiyama:うん(笑)。速いし歌のキーが高い。Suspended 4thのジンクス的なものがあって。楽曲に対する意見やイメージが、僕と他の3人で“1対3”に割れることがあるんですよ。ところが、その“1対3”になる曲は、だいたいお客さんからの熱い支持を得ることが多い。「すごくカッコいい」とか「この歌詞はすごく刺さる」と言ってもらえるんです。なので、「Shaky」も“1対3”になったらライブでやるか、みたいに考えてたんだけど、そうなりそうだね。でも、「Shaky」はできるだけやりたくないんだよなー、まぁやりますけど(笑)。

Sawada:そうだね、もうこの曲でミュージックビデオも撮ってしまったので、背水の陣です(一同笑)。



Dennis:僕の思い入れのある曲は「ストラトキャスター・シーサイド '22」。“'22”という年号をつけた既存曲のリアレンジバージョンですが、昔の曲も最新の形で再録してリリースできるSuspended 4thの強味が表れた曲というか。ボジョレーヌーボーみたいな感覚というか。その年毎に味わいが変わりつつも定期的に示すことができるという発想ですよね。振り返って'●年の「ストラトキャスター・シーサイド」は豊作だったみたいな。つまり、原曲となる「ストラトキャスター・シーサイド」には昔の曲なのにクリエイティビティがあるんですよ。

Washiyama:うちのメンバーはみんなシンプルに楽器好きで、「ストラトキャスター・シーサイド '22」は、それをまさに体現しているんです。どういうことかというと、普通のバンドだったら曲を良くするために自分のやりたいフレーズを削いで、全員ができるだけ歌に寄せるアレンジを施すと思うんです。でも、Suspended 4thは全くそういうことがない。ボーカルの僕にとっては邪魔してくる感じだけど、彼らは邪魔しているとは思っていないから。自分が思う一番カッコいいと思うフレーズを弾いて、叩いている。ただそれだけのことで、それこそがSuspended 4thなんだなって。そういう中でも「ストラトキャスター・シーサイド '22」は、“自分のプレイを聴いてほしい”というメンバーそれぞれの意気込みを強く感じさせる曲ですよね。

──メンバー同士が信頼し合ったうえで火花を散らすような感覚はSuspended 4thの大きな魅力です。“'22”はどんなアレンジにしようと?

Dennis:今回は全然変えたよね。そもそも出だしがベースソロではなかったし。

Fukuda:ソロといえばソロだったけど、以前は“♪デケデケ デケデケ”だけ。

Dennis:ベースソロ始まりは、YouTube企画『YouTube Music Sessions』で「ストラトキャスター・シーサイド」を演奏したときからのアレンジで、そこから定番化したんじゃない?

Washiyama:そうだね。

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