【インタビュー】EINSHTEIN「気持ちが広くなっているからこそシビアなことも受け入れられる」

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心地よさを誘うメロウなラップ、ひたむきな思いが伝わるラブソングなど、ヒップホップリスナーのみならずJ-POPリスナーまでもが共鳴する楽曲を生み出すアーティスト・EINSHTEIN。2013年の「第4回高校RAP選手権」で当時最年少でベスト4に輝き一躍注目を集め、2017年にリリースした『19’s MAP』収録の「1210 -I Need You-」は幅広い世代から長きにわたり愛され続けている。彼が2022年12月にリリースした2ndフルアルバム『Flower』は、過去最高に彼の人間性が濃く表れた作品に仕上がった。一体なぜこのような作品が生まれたのだろうか。『Flower』に至るまでの経緯を振り返りながら、現在の彼の姿を探る。

■恥ずかしいとかそういう気持ちは一旦横に置いて
■自分が落ちてることがわかってることをさらけ出そうと思った


――前作の1stフルアルバム『Letter』から最新作となる2ndフルアルバム『Flower』までの間に、EINSHTEINさんには様々なトピックがありました。まず1stフルアルバム『Letter』はEINSHTEINさんにとってどういう位置づけの作品になりましたか?

EINSHTEIN:2017年にリリースした『19’s MAP』が名刺代わりの1枚になったので、ガキくささをできるだけ消していければいいなと思って作ったアルバムです。『Letter』を作ったことでひとつ階段を上がれたし、同時に“もっといけるな”とも思ったんです。完成した当初は名盤ができたと思ったけど、完成からリリースまでの間に心境の変化があって、リリース直後に聴いたときに“ここに俺はもうおらんな。こういう歌は俺もう書かれへんな”と思って。もうそこで自分的には次に進んだ感覚がありました。というのも、僕の曲は全部実体験なんですよ。

――ラヴソングもですか?

EINSHTEIN:そうです。だから『Letter』では、ずっと書き続けていたとある女性への思いも完全に書き尽くしたイメージがあって。


▲『Letter』

――それはお別れしてしまったから、ということでしょうか。

EINSHTEIN:いや、別れた後もずっとその人への思いを書き続けてたんです。心に残っている思い出を頼りに書いてきていたんですけど、時間が経過するごとにどんどん記憶は薄れていくじゃないですか。歌手の人って打ち明けられない気持ちを曲にして消化していくところがあると思うので、僕の場合は大事な思い出はほとんど曲にしてきたから、その女性に対する思いがそれでなくなったんだろうなと。

――『Letter』を完成させたタイミングで、その女性への思いに区切りがついたということですね。

EINSHTEIN:だから『Letter』の後、なおさら新しい体験を求めるようになりましたね。それから1週間に5曲ぐらいのペースで、1バースくらいのデモを作っていくようになって……もう完全に日記ですよね。その日思ったこと、飲みに行って友達と話すなかで生まれたワードを元に作ってみたり。そのなかで生まれた曲を、2021年にデジタルリリースしていきました。

――2021年はリリースだけでなく、宅録の未発表曲が聴けるYouTubeチャンネルを設立なさいましたよね。かなり面白い試みだと思います。

EINSHTEIN:10代の頃からやりたかったことが、ようやく実現できました。リリースに向けて曲作りをするとなると、良くも悪くも“やっぱりラブソングは歌っといたほうがいいやろ”とか、“もうちょい綺麗な言葉遣いに直そうかな”みたいな意識がはたらくんです。それはミックスやマスタリングをすごい人たちにやってもらうんだから、ちゃんとしたものにしなきゃというプレッシャーもあったからだと思うんです。でも自分の家で普通のマイクで録音して発表するとなると、そういうプレッシャーがないんですよね。大阪弁もガンガン使って、自分の書いたままで歌って。音楽を始めた当初の、発表やリリースを考えずに曲を作ってた頃の感覚が蘇ってきました。


▲『Flower』

――そのシリーズの中から2ndフルアルバム『Flower』に収録されたのが「花」と「My Love」。どちらも趣向は違えども、強い思いを感じる楽曲です。特に「花」はアルバムのタイトルトラックでもありますが、どのような背景から生まれた曲なのでしょうか。

EINSHTEIN:ほんと歌詞のままですね。僕は25歳なんですけどデビューが早くて、初めてTVに出てから10年くらい経っているんです。やっぱりTVの影響力はでかくて、デビュー当初はほんとうなぎのぼりという言葉どおりの飛び級をして。でもそれがずっと続くわけもなく、周りや下にいた人たちがどんどん自分をごぼう抜きして、どんどん自分が落ちていくのを感じて。もう音楽やめよっかな、ぐらい落ち込んでた時期もあったんです。10代の時とかにすごくよくしてくれてた大人の人たちも冷たくなったりとか。





――ミュージシャンに限らずありますよね。そういうこと。

EINSHTEIN:すっごい悔しくて、でもその思いを清算できる方法もなくて病んでたんです。歌にしないとだめだと頭では理解しつつ、そういう気持ちを僕の好きな人には聞かせたくなかったから、歌にできない時期が3年ぐらい続いて。それでようやく、恥ずかしいとかそういう気持ちは一旦横に置いて、自分の今の生活や、自分が落ちてるってわかってるってことをさらけ出そうと思ったんです。

――そのモードになれたのは、何かきっかけがあるのでしょうか。

EINSHTEIN:これといった出来事があったのではなく、3年間のなかでチリツモって感じですね。手のひら返しを受けたり、周りの人がどんどん爆売れして、それが何回も何回も毎日のように繰り返されて積み重なって、あるとき頭の中で爆発したって感じです。その瞬間に“こんな歌詞書いたらダサいやろ”とか“生活感出すぎやろ”みたいなストッパーが一気になくなって、スイスイ出てきたんです。

――ずっと心の中に抱えていた思いを曲として出せた後の心境はいかがでしたか?

EINSHTEIN:すごくすっきりしたし、キャパが広がったような感覚がありました。“こういうことを曲にするのカッコ悪いな、恥ずかしいなと思ってたけどいちいち気にしなくていい。自分が思ってるほど、みんな気にしてないな。もっと素直にぶっちゃけていってもいいんやな”と。俺は絶対いつか咲いてやる。コンクリートの裂け目からであっても絶対咲くぞ!みたいな雑草魂が曲になったのが「花」ですね。

――雑草魂に限らず、EINSHTEINさんは普段から花という存在を気に掛けているのかなとも思いましたが、いかがですか? 『Flower』の1曲目「カレン」に描かれている日常の風景の切り取り方がすごく繊細で優しいので。

EINSHTEIN:花、大好きなんです。特にひまわりがすごい好きで、小学校1年生ぐらいから、母の日には母親に絶対ひまわりをプレゼントしていて。

――わあ、そんな小さい頃から。

EINSHTEIN:東京と大阪だとなかなか会えないので、おばあちゃんの誕生日、母さんの誕生日、母の日みたいな特別な時に。毎年家族のお祝いには花を送っています。

――Twitterによりますと、2022年3月にはアルバムの制作に取り掛かってらっしゃっていました。その頃にはアルバムの大枠はできていたのでしょうか?

EINSHTEIN:その頃にはもう全曲完成していて、あとは編集作業だけでした。日記のように曲を作っていくぶん常にストックが200~300曲ぐらいあって、そこから入れたい曲を選んでいくのが僕のアルバムの作り方で。今回は“これはリード曲やろ”と思うものを片っ端から入れていきました。

――それでここまで振れ幅の大きな楽曲が揃うのも、EINSHTEINさんのアーティスト性が出ているような気がします。「UNROCK」と「飛行機雲」、どっちもやれる人なかなかいないですし。

EINSHTEIN:あははは、そうですね。確かに。

――ゆえに『Flower』はEINSHTEINさんのラップやヒップホップ、レゲエのセンスと、歌ものやJ-POPのセンスがどちらもフルに発揮されている印象がありました。

EINSHTEIN:ありがとうございます。もともと僕はバンドマンになってJ-POPシーンで活動していきたかったけど、メンバー探しに失敗してできなかったんです。それで中学校1、2年生でレゲエDeeJayを始めてレゲエを歌って、中2の終わりから兄の影響でヒップホップをやるようになって。そのすべてに自分という軸があると思っているんです。3つとも同じくらい大好きだしやりたい。だからそれらの要素が合わさった楽曲やアルバムになっちゃうんだと思いますね。好きなことをやっているだけなんです。

――ラブソングが多いのも、それと通ずるのでしょうか?

EINSHTEIN:それは僕自身がめっちゃ恋愛体質だからですね。小さい頃からすぐ人のことを好きになるんです(笑)。それで“この人と付き合ったらこんな感じなんかな”みたいに、頭の中でめっちゃ妄想するんです。根本的に女の人に対するリスペクトがすごく大きいんですよ。母子家庭で育っているので。

――なるほど。だからお母様やお祖母様の記念日にお花を贈るんですね。

EINSHTEIN:そうです。母や祖母へのリスペクトもあるし、育ってきた環境も影響して一般的に語られる男らしい男ではないし。あと女性ならではの姿も綺麗でかっこ良いと思うんですよね。強い思いを持っているからこそ、楽曲でのトピックが女の人になることが多いのかもしれない。ラブソングを聴くのも大好きなので、自分もそうなるんだと思います。

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