【インタビュー】今最も注目して欲しい激熱ベーシスト、清(きよし)

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清(きよし)というソロアーティストをご存知だろうか。作曲・作詞・編曲・演奏・歌唱といったサウンド面のみならず、デザインや映像など作品に関わるすべてを自身でプロデュースする女性ベーシストである。

2022年、<B'z LIVE-GYM 2022 -Highway X->にて全国12ヵ所30公演のステージで、弩級のベースプレイを繰り広げていたベーシストが清だった。グイグイとうねるようにドライブする8ビートから、バンドサウンドの合間を縫って歌うようなメロディプレイ、そして切れ味鋭く空をシュレッドするようなスラップまで、自在な色彩でB'zバンドの土台を支えていた清のベースサウンドは有無を言わさぬ説得力を放ち続けた。小柄ながらも目を引くアクションと地に足の付いたフレージングはただただ圧巻で、興奮の坩堝と化していた会場の音空間においても、その清の存在感は抜きん出ていた。

幼少期にピアノを習い、15歳でベースを手にし、ソロアーティストとしての活動を重ねながら、マーティ・フリードマンや森重樹一(ZIGGY)、林田健司などのツアーやレコーディングでサポートワークを行なってきた彼女だが、2022年はB'zの全国ツアーで、より多くのオーディエンスにその存在を知らしめることとなった。

ギタークラフト校講師という異色の経歴をも持つ清という人物は、いったいどんなアーティストなのか。彼女に直撃取材を行った。


──2022年はB'zのツアーで全国を回っていましたが、どういうきっかけでサポートをすることに?

清:きっかけは、ご連絡をいただいたことですね。スタッフの方から「清にコンタクトを取りたい」という連絡が回ってきて、やりとりさせていただいてて決定という感じでした。最初はツアーなのかイベント1本とかなのか、内容もよく分かっていなかったんですけど(笑)。YouTubeとかで見つけていただいたそうで、ツアーに参加していただけませんかっていうことで、私も自分の演奏とかをお送りして見ていただいて、判断していただきました。


──サポートという活動は、清さんにとってどういうものですか?

清:やっぱり自分の好きな演奏とか好きな音楽、自分の得意なプレースタイル…今回だったらロックですけど、そうだったらやっぱ嬉しいですよね。

──メンバーと初めて音を合わせてみたときのことは覚えていますか?

清:もう鮮明に覚えてます。スタジオの第1音目で「ロックだ」って思いました。ロックの現場だなぁって。

──ほう。

清:私にとってもすごく大きな現場なので、「どんな現場なんだろう」「これまで数々のロックの現場もやらせていただいたけど、それとは違ってめちゃくちゃ厳しくてストイックで音符とかもおたまじゃくし1個ずれたらこの世から消されるのかな、音楽業界から消されるのかなみたいな現場だったらどうしよう」とか思ったりして(笑)。

──そんなはずないでしょ(笑)。

清:あるはずないんですけど(笑)、でも、すっごい厳しい現場だったらどうしよう…オーケストラみたいな楽譜通り、みたいな。でもそうじゃなくて「ロックの現場だ」って思いました。もう1曲目の1音目をガーンって弾いた時から、いつもの自分の演奏ができたっていうのをすごく覚えています。

──清さんがバンドメンバーの一員として音を出した時、周りは清さんをどう評価したんでしょうね。

清:いやー…どうでしょう、スタッフさんとかは「すごいかっこよかった」と言ってくださいましたけど、メンバーさんはどうだったんだろう。個人的には、すごく良い雰囲気でひとつのバンドとして演奏できたんじゃないかとは思ってるんですけど。


──バンドって、回数を重ねるたびにまとまっていきますよね。そのあたりの感触はいかがでしたか?

清:みなさんすごいミュージシャンばかりなので、ツアーの初日でもうすでにバンドぽかったと思うんですけど、回を重ねるごとにそれはあったと思います。ツアーの後半にB'zさんのアルバム『Highway X』が発売されて、それにツアーの最初のほうの映像がDVD特典で付いていたんですよ。リリースされたのが8月で収録されたのが5月のツアー初期の映像だったんですけど、それを見比べた時に、今のバンドのほうが「なんてかっこいいんだ」「8月の俺たち、めちゃくちゃかっこいい」と思いました。5月も5月でよかったんですけど、かなり進化してるなぁと思いましたね。バンドってこうやってまとまっていくんだってくらいメンバー全員が全然違った。すべての面で熱くなっていたし、音ももっと良くなってたし、バンド感が増していたことに気付きました。

──その違いは、我々一般リスナーには分からないような、プロレベルの話でしょうか。

清:いや、分かる方には分かるんじゃないですかね。DVDの特典映像を観た方がファイナルの配信映像を観られたら「バンド成長したな」と思っていただけるんじゃないかと、私は思うんですけど。

──世界トップレベルであるB'zの現場に瞬時に対応できるようなベーシストに至るまで、ベースのキャリアをどのように積んできたんですか?

清:ベース始めたのは15歳の時。中学卒業か高校入学くらいの時に1本目のベースを持ったんです。単純な理由なんですけど、ベーシストが一番かっこいいと思ったから。

──なぜベースだったんでしょう。


清:もともと音楽が好きで、J-Popも好きで、親が聴いてたCHAGE and ASKAとかそういう歌謡曲/J-Popみたいなものを聴いてたんだけど、ある日J-Rockというものに出会って、それこそB'zさんも聴いてました。その次に出会ったL'Arc~en~CielとかLUNA SEAとかにどハマりしたんですけど、なぜか私にはベースラインが一番聴こえてきたんですよね。「ベースかっこいい」と思って「ベースに関する仕事をするぞ」ってことでベースを手に入れました。

──中高校生の頃から将来は決まっていたみたいですね。

清:その時は、趣味でベースを家で弾けたらそれで楽しかったんですけど、それよりも構造のほうに興味を持ってインタビューとか読んだりして、弾くことよりも「楽器って深いなぁ」「この楽器を作ろう」「私は職人になろう」っていう方向に行きました。そこがちょっと私のおかしいとこなんですけど。

──うん、ちょっとおかしい(笑)。

清:その時点では、そんなにベースは弾けなかったです。趣味レベルで弾ければよかったので。それで学校にベース作りを学びに行き、そこのアシスタント講師になるまで進めたんです。でも、ある日、やっぱりベースって弾くほうが楽しいなっていうことに気付き。

──気付くの遅くないですか(笑)?

清:ほんとに遅いんですよ。でも、その学校に行ったことがすごく良くて。いわゆるギタークラフトスクールなんですけど、楽器作りたいって思うくらいの人たちだから、マニアックな人たちがいっぱい集まってて、ハードロック好きだプログレ好きだと、いろんな音楽を教えてもらったんですね。私はJ-Rockしか知らなかったけど、そこでの出会いがすごく大きくて、洋楽とかもそこで知って「うわ、スラップってなんや」とか「なんだこの弾き方は」とか。世界にベース・ヒーローがたくさんいるって知って、そこで憧れて「やっぱりプレイヤーを目指すか」となったんです。そこからです、本気で練習し始めたのは。

──中高生の時にベースをかっこいいと思ったのに、スラップも知らなかったんですね。

清:全然知らなかったですよ。ピックでゴリゴリ好きな曲を弾ければ幸せだったから。ここから初めてのバンドを組み、プロになりたいって意識が芽生えてきましたね。

──ベーシスト清の誕生ですね。


清:関西でのバンドを経て、ラクリマ・クリスティーのLEVINさんのバンドに誘っていただいて2009年に上京するんですけど、いろいろあって活動休止になり、LEVINさんのつながりでALvinoのサポートのお話を頂いたんです。それがいわゆるちゃんとしたプロの現場のサポートの始まりですね。そこから、ZIGGYの森重さんに声かけていただいたり、マーティ・フリードマンさんに声をかけていただいてアメリカとかに行くことになり。サポート活動をしながら2016年にソロアルバムを作りたいなってソロ活動を始めて今に至ります。

──錚々たるアーティストから声をかけられていますけど、どんなベーシストであれば声がかかるんでしょう。

清:本気でベースを始めて初めてのバンドを組んだ時から、私自身はプレイスタイルは何も変わっていないんです。ガワは変わりましたけど(笑)。もうちょっと少年っぽかったというか。だから私のことをすごく知ってるスタッフは、私の最初のバンドからB'zさんで弾かせていただいたものまで全部見ていて「どこで弾いても変わらんな」って言うんですよね。ほぼ変わってない。ありがたいことに、自分のスタイルのまま、特に自分を制限したり無理したりすることがない現場ばかりでやらせていただいていますね。

──清さんのプレイを見て、「こういうプレイが欲しい」と思ったわけか。

清:そう…なんですかね、私みたいなのを求めてくださったのかな。

──「私はこういうベーシスト」と言葉で説明すると?

清:ベースで一番影響を受けたのは、1990年代から2000年代のちょっとヘヴィでファンキーでミクスチャー/ラウド・ロックのベースヒーローみたいな…それこそレッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーとかプライマス(レス・クレイプール)とかフィッシュボーンとか、その辺の人たちのベースが自分のルーツにはなっています。それと同時にJ-Popもすごく好きなので、メロディーを支えるような本当にシンプルなベース。洋楽で言うとポリスとかレディオヘッドみたいなUKモノも好き。洋楽のゴリゴリの部分とすごくシンプルでメロディアスな歌を支えるっていう部分がミックスされたのが自分のプレイスタイルかなぁと思ってます。どっちも同じくらい好きですね。

──ベーシストとしての資質を高めるという点で、ギタークラフトのキャリアは役に立っているのでしょうか。

清:どうだろうな。簡単な調整なら自分でできるっていうのはいいですよね。大きな現場だとテックさんとかも優秀なんですけど、ほんの1ミリでも弾き心地が気になっちゃったりするときに、テックさんを呼ぶまでもなく、キュキュッと直せちゃう。プレイとどう結びつくかはわからないですね。完全に別物…ですかねぇ。

──優れたクラフトマンは優れたプレイヤーなわけではないとは聞きますけれど。

清:そうですよね、レオ・フェンダーだってギターが弾けなかったとか。ラジオか何かから製作を始めたんですよね。

──それにしても、作りたいものと弾きたいと思ったものが同じで良かったですね。

清:ほんとですね、よかったです。


──中高生くらいの女子がベースを演りたいと思ったとき、どこから手を付ければいいですか?

清:アドバイスなんてできる分際ではないですが…とにかく好きな曲を弾きまくることですかね。それが一番楽しいし身になると思います。私もさんざんいろんなベースプレイヤーのいろんなとこを研究してコピーして真似してきましたから。

──遠回りも悪いことじゃない、みたいなところもありますか?

清:そうですね、それはすごく思います。遠回りしたもんなーと思いますもん。ベースを本気で練習し始めるまでも遠回りしましたけど、やっぱり楽器に対する考え方がちょっと他の方とは違う感じもするし。

──もっともっと追求したい点は?

清:上京した当時から自分のベースには自信はあったんですけど、とにかく経験が足りなかったんです。私は「元○○」のような大きなバンドを演っていたわけでもないですし、全国ツアーもしたことなかったし、プロのレコーディングの現場も経験したこともない、大阪のどこの馬の骨とも知れないベーシストだった。誰しも最初はそうだと思うんですけどね。だから本当にとにかく経験が欲しくて、もう最初は時間もお金もいらないからいろんな現場をやってました。本当にもう、自分が今どこにいるかわからないくらい。その中でつらいとも感じたことはなかったですし、その経験がすごく力になってる。というか、タフなベーシストになりました。もっともっと経験が欲しいです。


──現在はWarwick Streamer Stage IIがメインベースですが、これまでのベース遍歴は?

清:最初に持ったのはL'Arc~en~CielのTETSUYAさんのモデル。シグネチャーを買えればよかったんですけれどそんなお金はなかったので、フォレストのすごい廉価版。それでしばらく練習してました。練習っていうか趣味ですけどね。4弦をピックでゴリゴリ弾くっていう感じ。それですぐに楽器を作るほうに興味がいってしまったので、ジャズベとかを手に入れたのかな。それも全然高価なものではなくて…そのくらいですね、それで楽器の学校に行って楽器の構造を勉強したんですけど、それこそKornみたいなのが出てきた時期で、5弦ベースかっこいいと思って。

──5弦のどこがカッコいいと思ったんですか?

清:音が低い。

──直球な感想(笑)。

清:もちろんレッチリのフリーとかの4弦ベースも好きだったんですけど、とにかくゴリゴリのミクスチャーラウドロックにどハマりしたので、より低い音が出るこれはなんだと。で、ベースを本気で始めるには5弦しかないってことで、いきなりWarwickの一番高いベースを買っちゃったんです。大金持って手が震えて楽器屋に行きました。本気の練習を始めたのがそこからですね。だから初めから5弦なんですよね。

──数多ある高価なハイエンドベースの中から、Warwickを選んだのはどうしてですか?

清:ミクスチャーラウドロックシーンで311のP-Nutっていうベーシストがめちゃくちゃ好きだったから。今でも大好きなんですけども、彼と同じものを手に入れたら彼になれると思って。彼がメインにしてるのがWarwickのStreamer Stage IIっていうモデルで、とにかくそれが欲しくて、アンプとキャビネットも全部彼と同じものを買いました。

──彼と同じような音、しました?

清:最初全然しなかったです(笑)。偽物買っちゃったと思ったくらい音が違って「なんだこれは、全然違うじゃないか」と。彼の音はずっしりしていて、ほんとに気持ちいいベースの音が出てるんですけど、私はペコペコで、5弦ベースなのに「なんだこの軽い音は」って。全然弾けないし、全然良い音鳴らないし、みたいな。

──楽器あるあるだ。そこから一歩ずつ今の音に近付いていったんですね。

清:ここに来れてよかったです、もうほんとに。ポコポコの音だと感じたベースがまだまだ現役で、レコーディングとかでは今でも一番メインとして使ってるんですよね。

──いまではロック系ベーシストとしてはWarwickの日本人初のエンドーサーですが、Warwickはどうですか?

清:Warwickは良いです。やっぱり好きですね。それ以外の5弦ベースの経験もほとんどないので、もうこれしか弾けない身体になってしまいました。5弦は、メーカーによってネックの幅が広かったり狭かったり4弦よりも個体差が大きいので、私はもう完全にWarwick派になっちゃいましたね。


Warwick Streamer Stage II (Kiyoshi Custom-Built)

──2023年の活躍も楽しみにしています。

清:2022年はとにかく最高の1年でした。想像してなかったまさかみたいなびっくりすることが起こると嬉しいですよね。2016年かな、宮藤官九郎さんの映画に出演したんですけども(註:2016年6月公開、宮藤官九郎監督・脚本の映画『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』にベーシスト"鬼姫"役で出演)、その時も、まさかの想像の斜め上からオファーが来たので、未知の世界ですごいワクワクしたんですよね。それと同じようなことが2022年は起こって「マジで?なんで私」みたいな、本当ワクワクした大冒険という感じでした。2016年に始めたソロの活動もミュージシャンとして積み重ねてきたので、B'zさんの楽曲に出会えて、プレイヤーとして深く追求分析できたのもすごく楽しかった。もちろん小さい頃から知ってましたけど、それとは違う形で関わって深く知れたというか、たくさん学ばせていただきましたね。

──今年はどんな年になりそうですか?

清:B'zのおふたりを見て思ったのは、継続ってものすごく大変なことだということ。コンスタントに作品を生み出してライブも定期的にされててすごいなぁと思いました。おふたりみたいにはなれないんですけど、自分の作品を自分のペースで生み出しながらライブをして、またこんな冒険のような出会いがあればいいなと思います。自分の作品を作ることも好きなんですけど、誰かの作品の手伝いとか、その中の一部にある役割として参加するのも大好きなので、そういう出会いがあればぜひ参加したいです。

取材・文◎烏丸哲也(JMN統括編集長)


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