【インタビュー第二弾】渋谷すばる、音楽家としての自身を語る「映像と音はセットだなって思う」

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映画『ひみつのなっちゃん。』が全国映画館で公開中だ。複雑な想いを抱えながら生きる3人のドラァグクイーンの心情を赤裸々に描いたハートフルヒューマンコメディは、“自由に生きることの大切さ”を教えてくれるとても感慨深い作品だ。同映画の主題歌を務める渋谷すばる書き下ろしの新曲「ないしょダンス」が1月11日にリリースされた。先ごろ公開したインタビュー第一弾で渋谷は、主題歌「ないしょダンス」制作について「この映画にロックンロールってすごく合う気がする」と語っていた。

◆渋谷すばる 画像 / 動画

そしてインタビュー第二弾となる今回は、自身の音楽との向き合い方について訊いた。配信をはじめとするリリース形態論からスタートしたトークは、渋谷すばるにとって“タイアップ楽曲”を作る意味とは? “純粋に渋谷すばる自身”として音楽に向き合うときとの違いとは?などが赤裸々に語られている。ライヴ論についてもおよんだロングインタビューが指し示したものは、この先の渋谷すばる像だった。



   ◆   ◆   ◆

■本当に一つのチャレンジだった
■1曲1曲を大事に届けたい

──1月11日に映画『ひみつのなっちゃん。』の主題歌として書き下ろされた「ないしょダンス」がリリースされましたが、今作も配信リリースということですよね。渋谷さんは今作に至るまでも、昨年9月から4ヶ月連続配信リリースの第1弾として「7月5日」、10月には第2弾「ぼーにんげん」、11月には第3弾「これ」、12月には第4弾「Stir」をリリースされていますが、“配信で1曲ずつリリースする”というところへのこだわりはあるんですか?

渋谷:もちろん、アルバムっていう考え方が嫌とか、そういうことではないんです。でも、なかなか今って、アルバムから聴いてみようっていう流れでもないんじゃないかな?って思ったところもあって。もっと気軽に、ふと流れてきて気になった楽曲を“あ、いいなこの曲、ちょっと聴いてみようかな”って感覚で、聴いてもらえたらいいのかなって思ったんですよね。今の便利な時代を全部肯定してるわけじゃないんだけど、いいところはどんどん使っていったほうがいいんじゃないかな?って考えたんです。盤だと作るのに時間も手間もかかるから、出来立てホヤホヤをすぐにリリースするっていうタイム感じゃなかなか出せないでしょ。だから、熱の高い時期にどんどん出していってみようかなって思ったんです。これまでにやってないことでもあったので、自分にとっての一つの挑戦でもあったというか。


──アルバムはまたアルバムとしてちゃんと形にしたいという想いもあるっていうことですよね?

渋谷:そう。またそれはいろいろと、ジャケットにもこだわりを持たせたいし、盤は盤の良さもあると思っているから、本当に一つのチャレンジという意味だったという感じですね。ちょっと違ったリリースの仕方というか、アプローチの仕方というか。1曲1曲を大事に届けたいというやり方でしたね。

──最近なかなか“シングル”という考え方がなくなってきてますからね。昔はシングルを数枚リリースした先にアルバムがあるという流れでもあったし、シングルも3曲は入ってましたからね。カップリング集なんてのも楽しみだったりしましたし。

渋谷:たしかに。いろいろと時代と共に変化してきてるなって思うよね。今回4ヶ月連続配信リリースという経験を経て、自分の中でいろいろと勉強になったこともあったし、音楽の出し方とか流れというところでもすごく勉強になった。俺はアナログ盤で音楽を聴くのも好きやから、出来ることなら全曲をアナログで出したいくらいなんやけど、またそういうのは別の話だと思うからね。“CDが売れない”って言われている時代に、大切に聴いてもらえるようなリリースの仕方があったらいいなって今も考えてるんですよね。

──今はTikTokとかでサビ部分しか知らない曲とか、誰が歌っているのか分からない曲ってありますからね。アーティストの中には、“バズりたくない”と言ってる人も多くて。その気持ち、少し分かる気がするんです。

渋谷:その気持ち、俺も少し分かる気がする。たくさんの人に聴いてもらえるという意味では嬉しいことなのかもしれないけど、作り手としては、もっと大切に聴いてもらいたいなって思うんじゃないかな。聴き方は聴く人の自由ではあるんやけどね。


──そうですね。“タイアップ曲”ということについてお聞きしていきたいのですが、今回、1月11日にリリースされた「ないしょダンス」は、俳優の滝藤賢一さんが映画初主演を務める『ひみつのなっちゃん。』(2023年1月13日全国公開。岐阜・名古屋は1月6日から先行上映)の主題歌として作られた楽曲だったそうですね。

渋谷:はい。映画の主題歌というのは初めてだったので、お話をいただいたときはすごく嬉しかったし、ビックリしました。何を求めてもらってるのかな?って考えましたし。でも、台本をいただいて、読んで。なんか、すごく求められてる感じが分かった気がしたというか。“オネエ”仲間である“なっちゃん”の突然の死をキッカケに、バージン(滝藤賢一)、モリリン(渡部秀)、ズブ子(前野朋哉)の3人のドラァグクイーンが、お葬式に参列するために、なっちゃんの地元である岐阜県・郡上八幡へと向かうロードムービーという、ほっこりとしたストーリー性から、軽快なロックンロールを思い付いたんです。“生き方”についての反骨心と、いろんな人達との関係性の温かさが台本を読ませていただいたときに、すごく伝わってきたんです。シーンごとの情景が頭にハッキリと見えたのもありましたし、監督とお話しして、この映画の舞台になっている監督の故郷である郡上八幡を、監督がすごく愛しているんだなっていうことが伝わってきたことも、すごく大きくて。最後に元気になってくれるような曲を作れたらいいなって思ったんです。

──映画の主題歌としては「ないしょダンス」が初になりますが、2021年には、JRA(日本中央競馬会)春のG1『天皇賞 (春)』のタイアップソング「塊」を作詞作曲されていますよね。これは“物語”ではないものへのタイアップソングということだったと思いますが、そういう場合、どういう視点から広げていく感じですか?

渋谷:「塊」を書かせてもらったときは、『天皇賞 (春)』ということで、いろいろと資料をもらって、競馬場での景色を頭の中で想像したんです。頑張って走る馬の姿や、その馬に乗って一緒に走る騎士の想いとか、その日に勝負をかけて集まってきた人達の盛り上がってる感じとか、そこに存在する欲望とか情熱とか、広い場所や広い空や、その場の情景を頭に描いたところから広げていったんです。そんなことを想いながら書いたんです、「塊」は。今思うと、馬だったと思うんだけど、黒い塊みたいなものが、すごい勢いでぶつかり合ってる感じを頭の中でイメージしたんです。その熱を曲にしようって思ったんですよね。


──渋谷さんの中で、曲は景色と繋がりが深いんですね。

渋谷:そう。全部景色があるかも。景色が浮かんできて、そこから音が生まれていく感じかも。映像と音はセットだなって思う。

──歌詞もですか?

渋谷:いや、歌詞はまた違う。歌詞はまた景色というより、そこにあるいろいろな想いや感情を重ねていく感じというか。競馬のタイアップのときは映画と違って、そこに台本で描かれた物語はないけど、やっぱりそこにはドラマがあるなぁと思いながら書いたかな。でも、「塊」の歌詞は形にするのがすごく難しかった記憶がありますね。

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