【インタビュー】JURASSIC JADE「停まらない列車から降りないから」、最新作『Nyx filia』リリース

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JURASSIC JADEが、前作『id – イド』以来、約2年振りのフルアルバム『Nyx filia』(ニュクス・フィリア)を2023年3月22日(水)にリリースする。バンドはコロナ禍で活動が制限される中でも楽曲制作を継続し、今作には練りに練り上げられたという10曲を収録。前作同様、コ・プロデューサーとしてDOOMのTakashi“CBGB”Fujitaを迎え、ヴォーカル・ワークに大きく貢献するとともに、ワンフレーズのコーラスでレコーディングへも参加。また前作から参加のWATANABE(Ba&Cho)も2曲(「Cave Sorrow」、「朝5時に戦争が始まる」)を提供し、バンドに新たな息吹を吹き込んでいる。今回BARKSでは、そんな今作を中心に別府“Veppy”伸朗がメンバー4人に聞いたインタビューを掲載する。

  ◆  ◆  ◆

■NOBの狂い咲き

── 前作『id』(2020年)から約2年という間隔でリリースしたのは驚きだったのでした。

NOB(Gt&Cho):リリース間隔が短かったのは、WATANABEが2曲作ってくれたからですよ。今までのスタイルだと俺がリフを作ってスタジオに持って行って皆で合わせて持って帰って練り直してまたスタジオに持って行っての繰り返しで、曲ができ上がるまで凄く時間が掛かっていた。WATANABEが曲を作ってきてくれたので、かなりその時間が短縮できたから。

WATANABE(Ba&Cho):自発的に勝手に持って行ったんですけど。

HIZUMI(Vo&Cho):最初持って来てくれたのが「朝5時に戦争が始まる」で、凄く気持ちの良い曲を持ってきてくれたから。勢いも感じたからイケイケどんどんって感じでお願いしちゃった。

▲HIZUMI

WATANABE:それで次に持っていったのが「Cave Sorrow」でした。

NOB:「Cave Sorrow」が9曲目で。それでもう1曲作って全部で10曲にしようと思ったんだ。

WATANABE:(それでできた曲が)「私だけにきこえる」です。

HIZUMI:あの曲のイントロ部はWATANABE作なんですよ。

NOB:俺のリフを聴いて、WATANABEが作ってくれてカッコよく仕上げてくれた。そういった WATANABEの貢献が今回のアルバムは多いです。WATANABEが掻き立ててくれた。それでまた新たに出したいものも出てきた面もある。

▲NOB

HIZUMI:(ライナーノーツを書いた)行川さんに投げかけた言葉を早く言いなさいよ。何でこんなに早く曲ができたのかって。

HAYA(Dr&Cho):「(NOBが)停まらない列車から降りないから」

HIZUMI:私はNOBの狂い咲きだと思っている。それにWATANABEの才能が乗っかったから、このスパンでこれだけクオリティの高い曲が揃ったんだと。全員が自己ベストを更新した気持ちでアルバムを作れたし。

── 前作が最高傑作との声が多かったですが、本作はそれを超えるインパクトある作品ですね。アルバムの曲の流れも歴史の集大成を感じさせるものでした。

WATANABE:HAYAのドラムがキレキレで、リズム録りではあっという間にレコーディングは終わったし。前作も凄いと思ったけど、本作はそれを超えたと思います。

HAYA;ほぼワンテイクだったしね。

▲HAYA

── 作品のタイトルが『Nyx filia』ですが、ギリシャ神話が由来なんですよね。

HIZUMI:本当ならラテン語表記にしたかったけど、文字化けしてしまう恐れがあったのでちょっと妥協した。

── Nyxはギリシャ神話原初の神で、夜の女神ですよね。「死」、「苦難」とかを象徴する神を産んだのですよね。

HIZUMI:「filia」は娘の意味で、NyxはEris(エリス)という争いの女神を産んでいるんです。

── 単に言葉の響きだと「フィリア」は古代ギリシャにおける4つの愛という意味もあって、それは深読みかもしれませんが、そう考えるとNyx=JURASSIC JADEとも捉えていました。

HIZUMI:あら、深いわね(笑)。私の中では「Nyx filia」は『AFTER KILLING MAM』(1997年)と対峙するものになっている。

── Erisという意味でフォーカスすると、ずっとJURASSIC JADEは戦争をテーマにするものが多くて、特に初期の『GORE』(1989年)や『誰かが殺した日々 (Never Forget Those Days)』(1991年)はストレートな表現も多くて。テーマ的にはその辺りと対になっていると思いました。

HIZUMI:あの頃書いたものは世代で言えば私の娘が書いている様なものなのですよ。1世代上になって、AFTER KILLING MAMで母親を手にかけた私はNyxの娘になって、そこに仮託するものがあるんです。物語はそこに辿り着いた感じですね。5月に大阪でイベントを組んでくれているのですが、その主催者の方がイベント・タイトルを<ニュクスの娘>(2023年5月13日 南堀江SOCORE FACTORY)にしていただいて、それも良いなと思っていて。

── 「A Small World」で怪しく始まって、気が付いたら「暗い部屋の黒い猫 (Black cats in the dark room)」で速くなっていて。

NOB:若い世代の人って音楽を聴く時に、頭の部分を聴いてつまらなかったらもう聴かないってことを耳にしていて。ギター・ソロとかも飛ばして聴いているとかも耳にしていたし。

HIZUMI:イントロもないって話だし。

NOB:だからあえてやったかもしれない。へそ曲がりだから、ああいったイントロで静かに「ヤって」やろうと(笑)。自分の中で曲構成としては繋がっていて意味もあるけど、テーマは後付けかな。


── 「A Small World」の歌詞最後に「In The End」とあって、それが象徴的にも感じたのですが。

HIZUMI:実に小さな世界なんですよ。悲惨なことも含めて地球上でありとあらゆること、凄いことが起こっているけど、実は小さなコップの中での嵐でしかない様な…。悲しいじゃないですか。

WATANABE:投げかけですね。

▲WATANABE

NOB:一つ一つ色々なことや諍いが起きていてそれぞれ集中しているのに、それは小さい世界だって言うのが彼女らしいなって思って。

── 「黒い猫」や「メタ支配者」をどう捉えるか何を意味しているのかを色々と考えてしまって。最後に「生きているもの 腐っていくもの 骨になるもの」もそうですし。曲を聴いて歌詞を読むほど謎が深まって。

HIZUMI:沼ですよ、深いんですよ。悩んでくれたらありがたい曲です。「皆さんの暗い部屋の中に黒い猫はいますか?」とかね。

── 黒い猫の解釈も色々あるじゃないですか。黒猫って不吉な象徴でもあれば、「黒猫のタンゴ」なら可愛い存在でもあるし。

HIZUMI:それこそ現代詩じゃない。WATANABEに歌詞を見せたら「今度はシャノワールですか」って言われて、フランス語で歌わなくちゃって思って(笑)。そんなWATANABEさんはどうでしょう?

WATANABE:鬱を患った人が、鬱状態にある時に心の中に黒い犬を飼っていると表現するんですよ。そのままだと面白くないから、黒猫に変換したのかなって。それも解釈の一つで、正解はいくつもあると思う。聴いた人がストーリーをそれぞれ組み立てていったら良いと思います。

HIZUMI:せっかくだから言うと、「決意さえすれば黒い部屋の中の黒い猫を捕まえることができる。例えそこに黒猫がいなくても」って、でっち上げることができるって意味でもあるわけ。

NOB:ますます分からん(笑)。

HIZUMI:政治犯をでっち上げる例にイメージもある。心の中にある黒猫でもいいし、精神的妄想でもいいし。いかようにも捉えてください(笑)。


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