【インタビュー】kobore、表現したいと思うことを純粋に詰め込んだメジャー3rdアルバム『HUG』

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koboreが、前作から1年ぶりにメジャー3rdアルバム『HUG』を完成させた。音楽性の幅を広げた挑戦の1枚『Purple』を経て産み落とされた本作には、ライブハウスの熱狂がありありと目に浮かんでくるファストチューンや、アレンジャーを起用してピアノやストリングスを導入したミディアム、ゲストボーカルにカネヨリマサルのちとせみなを招いたフィーチャリング曲など、全12曲を収録。今、自分達が良いと思うもの、表現したいと思うことを純粋に詰め込んだ1枚について、佐藤 赳と田中そらに話を訊いた。
(写真左より:Ba.田中そら、Gt.Vo 佐藤 赳、Gt.Cho 安藤太一、Dr. 伊藤克起)

■コロナぶっ倒しに行くのに
■しっとり歌い上げている場合じゃねえな(笑)


──前作『Purple』は挑戦といいますか、音楽性の幅を広げた作品でしたけども、そこから本作『HUG』に至るまでの1年間を振り返ってみていかがでしょうか。

佐藤 赳(以下、佐藤):まあでも、『Purple』と『HUG』は結構別物かなと思っていて。いつもその場で感じたものを表現していくスタイルなので、『Purple』をリリースした時の<VIOLET TOUR>も良い経験になったかなって。観に来てくれる人がどう思うかというよりは、自分達がその中でできることをどう探すかみたいな感覚になれたので。コロナ禍じゃないときって、こっちがバーッ!ってやっちゃえば、みんなウェー!ってなってたけど、やっぱりそうはいかなくなっていて。バンドとして自分達がどうしていきたいか、どうしていくかを結構考えたというか。「コロナのせいで」というよりは、「コロナのおかげで」って思えるようなことをバンドで増やして行きたいなという考えにはなりましたね。今はまた全然違いますけど。

田中そら(以下、田中):おっしゃったように、『Purple』は挑戦がいっぱい含まれたアルバムだったんですけど、これからのkoboreの音楽の幅を広げていく上で重要な1枚だったと思います。ただ、koboreを結成してから、ミニアルバム合わせて6、7枚ぐらい出してるんですけど、今までとはちょっと違う感じの受け止め方をされたような気がしているんです。新しい感じがするとか、いつものkoboreっぽくないとか。でも、『Purple』を出してツアーを廻っていくうちに、いろいろなところに行けると思ったし、『Purple』がなければ『HUG』もできなかったなって、今は思います。そういう意味では、koboreの分岐点として、良い方向に進めているんだなと思いたい1年でした。

──分岐点や周りのレスポンスのお話がありましたけど、佐藤さんはその辺りをどう受け止めていましたか?

佐藤:僕は周りのレスポンスとか結構どうでもいいタイプで。自分達が良いと思って出しているものが良いと思ってもらえればそれでいいと思うし、別に嫌いとかは人それぞれだからしょうがないことなので。それよりも自分たちが良いものを発信出来たかどうかだから。

──あくまでも今自分達がやりたいことをその都度やっていくという。

田中:そうですね。自分達の好奇心とか、やりたいことを優先しています。


──今作の『HUG』について、こういう作品にできたらいいなと考えていたことはありましたか? 改めてライブの画が見える曲が多いですし、「TONIGHT」に始まり「この夜を抱きしめて」で終わる構成は、まさにそういう感じがありますけども。

佐藤:いや、まったく何も考えていなくて。

田中:コンセプトみたいなものはなかったです。

佐藤:お互い楽曲を制作するようになって、とにかく良い曲をぶち込んでいった感じですね。その中でやりたいことがあれば随時話し合っていく感じでした。

──そこは田中さんも同じく?

田中:koboreとしてのスタンスは変えていないんですけど、個人的な癖で、バランスを取りたくなるんですよ。『Purple』が挑戦のアルバムだとしたら、その前の『風景になって』はいつものkoboreが詰まった作品だったと個人的には思っているんですけど、その2作を足して2で割ったぐらいのバランスになったらいいなと、個人的に思いながら曲を作っていました。だから、ライブ映えするような曲と、ライブが想像できない曲がちょっとずつ混ざっているんじゃないかな。

──「TONIGHT」に始まり「この夜を抱きしめて」で終わる構成に関しては、曲がある程度揃ってきてから考えたんですか?

佐藤:曲順については、「TONIGHT」が一曲目であれば、それ以外は全部みんなで決めていいよって。それぐらい「TONIGHT」は絶対に1曲目がよかった。というか、1曲目みたいな曲が書きたいなと思って作ったんですよ。曲を渡したときにその話は特にしてなかったですけど。で、もちろんいいよって言ってくれて、他はメンバーが決めたんですけど、「この夜を抱きしめて」が最後になるっていうのはなんとなくわかっていました。たぶん、こいつら最後の曲にするだろうなって。

──「TONIGHT」は、ライブをしていく日々の中で改めて感じたことを書いたんですか?

佐藤:なんか、ライブハウスってすごい不思議だなっていう感覚を歌詞にしたくて書いた曲で。ライブハウスって、自分の中では家でビールを飲んでいるのと変わらない感覚なんですよ。でも、そこに音楽があることによって、なんかちょっと違うものを体感できるっていうだけなのに、なぜこんなに最高な夜を更新し続けられるんだろうってことを書きたくて。あとは、ライブハウスに対する皮肉じゃないですけど、「結局何もないけど、お前ら何が楽しいん?」みたいな。でも、なんか楽しいっていうか、なんかわかんないけど最高なんだよ、みたいな。そういう空間に対して歌った曲ですね。

──出だしが〈探していたものは ここにはきっと無いと思うけど〉という。

佐藤:めっちゃマイナス発言から始まるっていう(笑)。



──でも、それは好きだからこその言葉でもあると思いますし、そこに続く〈また探そうと思えるような そんな光を僕にくれるんだ〉という、この4行にすべてを詰め込んでいるところにグっときました。

佐藤:結構バー!って弾けるような曲ですけど、歌詞に対して「わかる」って思ってもらえたら嬉しいですね。「(テンポが)速いのがいいんですよー!」ってことではなく(笑)。

──速くてこの歌詞だからいいっていう。

佐藤:1stぐらいからこういう速いアプローチも自信を持ってできるようになってきて。ツービートってやりにくいとか思ったりするんですけど、僕はあんまりそういうの関係なくて。やりたいものがたまたまツービートだったっていう感じをうまく押し出せればなって思っていました。

田中:ライブを見据えて作っていたとは思うんですけど、この曲をもらったのは去年の10月ぐらいで、今みたいにライブハウスの規制がほぼなくなることはまだわからなかったんですよ。

佐藤;確かに。

田中:だから、狙ってないにしても完璧なタイミングだなって、今となっては思いますね。

佐藤:俺としては、このアルバムでコロナを終わらせたかったんですよ。だから、そらが曲を作っていなかったら、結構やばいライブアルバムみたいな感じになっていたと思います。なんか、ライブを彷彿とさせる曲しか作れなくなっちゃってたんですよね。これ持ってったらやべえってなるだろうなと思ったから渡さなかった曲もあるし。でも、そこはバランサーがいるし、いてくれてよかった部分がめちゃくちゃあるんですよ。

──それこそ今やりたい曲を作っていたら、自然とそういう曲ばかり作っていたと。

佐藤:そうです。コロナぶっ倒しに行くのに、しっとり歌い上げている場合じゃねえなって(笑)。

──「リバイブレーション」も、まさにそういうところから出てきたんですか?

佐藤:本当そうですね。とにかく最高な空間になるような感じにしようと思って。



──「ひとりにしないでよね」もそうですよね。ダンスミュージックっぽいアプローチでもあって。

佐藤:酒持って「最高だなー!」って聴いてほしいです。全曲そうなんですけど。なんていうか、「今まで本当にすみません、いっぱいルールとか設けちゃって」みたいな。「でも、もう大丈夫なんで」っていうのを表現したくて。『HUG』っていうタイトルにはそういう意味合いもあったりとか。

──ああ。ハグって相手に近づかないとできないですもんね。

佐藤:まあ、いろいろな意味があるんですけど。俺としてはそういう感じで曲を作っていましたが、そこにそらのエッセンスがたくさん盛り込まれて、通してすごく良いアルバムができたかなって思います。

──田中さんはバランスを取りながら曲を作っていたとのことでしたけど、その中でも「うざ。」みたいなアップテンポもやりたかったんですか?

田中:メンバーにプレゼンする曲をまとめて数曲持っていったんですけど、その中でも、バラード、ミドル、歌モノ、ちょっと速い曲みたいにバランスを取った結果ですね。特に速いのをやりたかったわけでもなかったんですけど、結果的にハマったかなって感じです。

──なるほど。インパクトのあるタイトルですね。

田中:歌詞を書いていて、これは「うざ。」だなと思って。僕は人の反応が気になるタイプなんで、サブスクで先行配信したときにすぐエゴサしたんですけど、僕が思っていることとみんなが真逆すぎて。「なんで『うざ。』なのかわかんないけど、なんかいい」みたいな意見が多かったですよ。えっ、わかんない?って。

佐藤:いや、わかんねえだろ(笑)。

田中:なんで? めっちゃウザくない?

佐藤:最初は「UZ」っていうタイトルだったんですよ。で、“うざ”っていう。

田中:なんか、思っている感じにはやっぱりならないなって思いましたね。

佐藤:それぞれの解釈があるからね。

田中:そうそう。それも逆に面白いなと思ったんですけど、ひとりぐらい同じ解釈の人がいてくれてもいいのにって。ちょっと変えたくなってきてますもん、このタイトル。

──(笑)。変えるとしたら何にします?

田中:「UZ」ですよ。特に意味がない感じで。

──佐藤さんはウザい歌詞だなって思いました?

佐藤:でもまあ、タイトルが「うざ。」だから、歌詞の中でウザい要素を探すじゃないですか。なんか、へばりつく感じとか、ちょっとメンヘラチックな感じがちょっとうぜえなって。女々しい感じとか、自分のモヤモヤしたものすらも自分でわかっていない感じとか……なんかどんどんウザくなってくるんですよね、この曲。最初はメロディが良いな、ギターのリフも好きだなみたいな感じだけど、歌詞に入っていくと、何なんこいつ……みたいな。

──確かに、メロディーとリフの良さで中和されてる感じありますね(笑)。

佐藤:そうそう。だんだん絶対にこいつと絡みたくねえなっていう感覚になってくるんですよ。

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