【インタビュー】神はサイコロを振らない、日曜劇場『ラストマン』挿入歌に覚悟「たくさんの人に伝えようとすると逆に伝わらない」

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神はサイコロを振らないが4月30日、デジタルシングル「修羅の巷」を配信リリースした。同曲はTBS系 日曜劇場『ラストマン-全盲の捜査官-』に書き下ろした新曲だ。『ラストマン-全盲の捜査官-』は、福山雅治×大泉洋のW主演による痛快バディドラマ。福山演じる全盲の人たらしFBI捜査官と大泉演じる犯人逮捕のためには手段を選ばない孤高の刑事が凸凹バディを組んで難事件に挑むストーリーが描かれた。

◆神はサイコロを振らない 画像 / 動画

「逆境と孤独の中で必死にもがく一人の人間を表現しました」とは柳田周作(Vo)による同楽曲のコメントだが、メンバー4人での一発録りに挑戦したサウンドが、バンドならではの生のグルーヴや熱量を体現して、見事に物語の世界観を描ききった。その一方で、深く深く堕ちていく様を歌い上げる歌詞が深淵に触れるように痛切だ。

前述したように、一発録りに加え、亀田誠治プロデュースというトピックも話題だが、注目すべきは個々のプレイにある。“無様にいこうぜ”という歌詞に象徴される限界突破の精神が生んだサウンドは、彼らの新たなるロックアンセム。地⾯を⼀歩⼀歩踏み締めて歩く⼒強さを連想させるリズムセクション。同曲のテーマとなるギターリフは躍動感に溢れ、サビのフレーズは豊かな広がりを演出した。そして、その中核を貫くのが、ボーカルの主旋律と歌詞であり、立ち向かう勇気と力強さを鳴り響かせる。これらグランジ⾊の濃いロックチューンが日曜劇場のクライマックスで使用されることも痛快この上ない。

BARKSでは<Zepp Tour 2023「雪融けを願う飛行船」>から現在までの足取りを振り返るとともに、新曲「修羅の巷」制作秘話やサウンド&プレイ、そして既に発表されている今秋のアルバムリリースやホールツアーについてじっくりと話を訊いた。


   ◆   ◆   ◆

■自分の中の常識を壊すことは
■すごく大事だなと思いました


──BARKSでのインタビューは「キラキラ」リリース時以来ですが、“冬の大三角形”と題して3ヶ月連続リリースを行ったあとのツアー<Zepp Tour 2023「雪融けを願う飛行船」>はいかがでしたか?

黒川:いいツアーをまわれた実感があります。自分にとっては“限界突破”という感じのツアーでした。1ヶ所目からめちゃめちゃいいライブができて、出し切ったぶん、“これ以上無理かも”と思ったんですけど、その後の名古屋でも大阪でも北海道でも前公演を超えていくことができたんですよ。自分たちもお客さんもツアーファイナルに向けてどんどんボルテージが上がっていって、限界を超えていったような感じだったので、ずっと“どこまでいけるんだろう”と思いながらライブしてました。


──ツアーファイナルのZepp Haneda(TOKYO)では声出しも解禁されましたよね。

桐木:メンバーでつけた<雪融けを願う飛行船>というツアータイトルには、“このツアーをまわる頃には声出しができるようになったらいいよね”という願いも込められていたんですけど、ツアーが始まった頃には解禁できなかったから、「今回はダメだったね」「また次かな」という話をしていたんですよ。だけど、最後の最後に願いが叶って、ドラマのあるツアーだったなと。歓声がイヤモニを貫通して聞こえてきたのがすごく印象的でしたね。

吉田:本当にめちゃくちゃいいツアーでした。関わってくれるスタッフさんの人数も増えたんですけど、バンドはもちろん、チームで動けたという実感があって。ライブを通じてお客さんとコンタクトをとることはもちろん、バックヤードでもスタッフさん一人ひとりとコンタクトをとりながらやっていくことがすごく大事なんだなと実感したツアーでした。

柳田 :アルバムを引っさげたツアーではなかったので、セットリストの自由度が高かったんですよ。特にコンセプトがなかったので、今やりたい曲を選んでいって、楽曲の繋ぎや細かいアレンジとかも自由度高くやれました。そこに電飾系の演出を重ねることで、より大きなスケールのライブを見せられたんじゃないかという実感があって。将来あるかもしれないアリーナやドームでのライブを見据えたような、そこに向けてのジャブのようなツアーだった気がしています。ツアーが終わったあとっていつもは燃え尽き症候群になって、1週間は何もやれないという感じだったんですけど、今回は翌日からデスクに向かうくらい、ポジティヴなテンションだったんですよ。

──そうだったんですね。

柳田:ツアーの余韻が残るなか、燃え尽きることなく走り続けられたのは貴重な経験だったので、そういう意味でもいいツアーだったなと。この「修羅の巷」もZeppツアーが終わってすぐに作り始めました。


▲柳田周作(Vo)

──そういえば柳田さん、今はプライベートスタジオで曲作りしているんでしたっけ。

柳田:そうなんですよ。今までは木造のボロアパートで夜な夜な歌入れとかをしていたんですけど、去年5月くらいにスタジオを借りたので、そこでずっと制作をしています。今年1月にリリースした「夜間飛行」はセルフプロデュースだったので、アレンジとかもそのスタジオでやりました。今のスタジオは夜中でも結構な音量を出してもOKなんですよ。だから時間を気にせず、すごくのびのびと曲作りができていて。昔は近所迷惑にならないように小っちゃい音で曲を作ることが多かったんですけど、今はそういうのを気にする必要がないので、大音量で鳴らしたりすることもできて。“こっちのギター、もうちょっとRchに振ろうかな”と音の定位をあらかじめ考えながら、ミックスを目掛けて考えられるようになったのはデカいですね。あとは、作りたいと思った時に作れる環境なので、シンプルに球数が増えました。スタジオにはあえて時計を置いていないんですよ。遮光カーテンもつけて、今何時か分からないようにしているんですけど、そうするとずっと集中できて、すごく仕事しやすい。友達と遊びに行くことはだいぶ減りましたけど、そのぶん、クリエイティヴな日々を送っています。

──ここから新曲の話に移りますが、「修羅の巷」はドラマ『ラストマンー全盲の捜査官ー』の挿入歌として書き下ろした曲だそうですね。リリース日の4月30日に先駆けて、4月23日のドラマの初回放送内で楽曲が解禁されました。

桐木:実際にドラマで流れているのを聴いた時はマッチングも良かったので安堵しましたね。

黒川:最初に話を聞いた時は「えっ、日曜劇場? もしかしてドッキリですか?」と言ってたんですよ(笑)。昔から見ていた俳優さんが出演する作品の中で自分たちの楽曲が流れているのを実際に聴いた時は、すごく不思議な気持ちになりましたね。

吉田:「修羅の巷」が流れたのがストーリーの中盤だったんですけど、めっちゃ面白いドラマなので、つい見入っちゃって……自分たちの曲が流れることをちょっと失念していたので、かなりびっくりしました(笑)。


▲吉田喜一(G)

──あの日曜劇場の挿入歌ということで、お話があった時は驚いたのでは?

柳田:そうですね。日曜劇場には歴史がありますから、もはや手放しに“嬉しい!”という感じではなく、“ちゃんと覚悟をもって作らなければ”と思いました。しかも主演が福山雅治さんで、大泉洋さんとバディを組まれるドラマということで、最初は、自分たちの楽曲が挿入歌として流れているイメージも湧きませんでした。

──そこからどんな道のりを経て、完成に至ったんですか?

柳田:様々なやり取りがあったので、全部は覚えてないですね……。たくさんデモを作ったので、最初の1ヶ月だけでver.14くらいまで行ったんですよ。とにかく作っては、「こういうのはどうですか?」と提出をしまくっては聴いてもらう日々だったので、編曲・サウンドプロデュースの亀田誠治さんとは毎日のようにやりとりしていました。だからどういう経緯でこうなっていったのかは正直覚えてないんですけど。

──「修羅の巷」も完成に至るまでに、様々なアレンジが存在していたという?

柳田:サビのメロディと歌詞、コード進行をまるっと変えたタイミングがあったのは覚えてます。今までは一度気に入ったメロディができたら、それを維持しながら作っていくパターンがほとんどだったんですけど、そうじゃなくて、コード進行ごと全部ぶっ壊して、ゼロからまた構築していこうと。そうしたら実際にもっといいサビが生まれたので、自分の中の常識を壊すことはすごく大事だなと思いました。

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