【対談後編】龍ヶ崎リン × 水槽、新曲「ギヴミー」サウンドを語る「音でぶん殴り続けるなかで見せる一瞬の人間味」

■水槽さんのこだわりを感じられたぶん
■歌への気合いの入れ方が今までとは変わった

──龍ヶ崎さんと水槽さんの要素が拮抗するようなトラックがスリリングです。

龍ヶ崎リン：「何か気になることがあったら、遠慮しないで言ってください」と水槽さんが言ってくださったので、そこに甘えました。実は最初に上がってきたデモは、完成形の「ギヴミー」と比べると、悲相感溢れる感じだったんです。でも自分的には3rdシングルではもう少し皮肉や怒りを出せたら…と思ってて。

水槽：すごく遠慮がちに、「これもすごくいいんですけど…」とリテイクをオーダーしてくれました（笑）。やっぱり水槽を好いてくれているリンちゃんとしては、なるべくリテイクを出したくなかっただろうし、妥協なく、すごくいいものを作りたいとも思っていただろうから。自分もリンちゃんに一番喜んでいただけるものを作りたくて、「遠慮しないでください」とお願いしたんです。

龍ヶ崎リン：「この曲のここの音がすごく気に入ってるんです」とか「ここのベースがすごく好きです」と伝えると、「じゃあ、こんな感じの音はどう？」って楽曲を聴かせてくださったり。すごく寄り添ってくださったので納得できるものが作れました。同時に、水槽さんの楽曲制作へのこだわりを感じられたぶん、歌への気合いの入れ方が今までとは変わったというか。“ここまで熱意を持って曲を作ってくださるなら、自分も負けてられない。ちゃんとボーカルに落とし込まないと”という頭になれました。

水槽：アーティストさんと、ここまで直のやり取りをしながら制作したのは初めてだったので。自分がどんなふうに楽しんで作っているか、どんなところを気に入っているのかを伝えていって…余計かなとは思いつつだったんですけど。

龍ヶ崎リン：全然余計じゃないです！ めちゃくちゃうれしかったです。



──しっかりとお互いに意思疎通を取り、リスペクトを持っていたからこそ完成した音源であることを実感するお話でした。おふたりにとって「ギヴミー」とはどんな楽曲になりましたか？

龍ヶ崎リン：1stシングル「Twilight Stream」は自分の未来と現在について語っていて、2ndシングルの「追熟」は“つらいことも時間が経てば解決するよ”という吹っ切れた感じがあるんです。だけど、今回の「ギヴミー」はすごく利己的な考えで、もがき苦しんでいることを吹っ切っていく感じの楽曲で。なので、“こういうふうに思っていた時があった”と過去の自分を覗き込んで、“龍ヶ崎リンがここで生まれた”という原点を曲にできたという実感があります。今思い返すと、当時の自分の思いは未熟な考えだったなと感じる部分もあるんですけど、なかなか結果が出ない悔しさや、“誰かに負けたくない、もっと注目を浴びたい”という気持ちが原動力になって、VTuber活動を続けてこられたんですよね。

──サビ前にある“ギヴミー・ザ・フラッシュライト MORE AND MORE!”という歌詞は、龍ヶ崎さんのそういう気持ちが反映されているんですね。

水槽：そこは、“注目してほしい”という懇願と、“もっと撮れよ！”みたいな強気な気持ち。そのどちらも反映させられたらなと思って書きました。その後のセクションの“真似る劇作家さながらゲーテ もっと光をくれ持ち回り噛ませ犬”は、ゲーテの最期の言葉が「もっと光を！」だったと言われていることから引っ張ってきたんです。“注目されたいけど、こんな注目ならいらなかった”という複雑な気持ちも出したかったんですよね。

龍ヶ崎リン：はい。わかります。

水槽：水槽のカラーも尊重してもらえて、本当に自由に楽しく、楽曲制作させてもらいました。機会があったら「ギヴミー」をセルフカバーしたいというか。

龍ヶ崎リン：えっ！ 聴きたいです！

水槽：たぶん水槽の個性が出つつも、龍ヶ崎リンの曲だと思ってもらえるんじゃないかな。「ギヴミー」は水槽っぽいけど、水槽名義でリリースしたら確実に違和感があるんです。これはリンちゃんの曲で、リンちゃんの曲にしかあり得ないものを水槽のトラックで表現できたので、すごく気に入っていますね。


──では最後に、お互いにメッセージを送り合っていただけますか。

水槽：やっぱり楽曲提供って、自分にとって特別な意味を持っているんです。これまでは水槽の曲をいいと言ってもらえたとしても、“水槽の歌があるから水槽の作る曲をいいと感じてくれるのかな。水槽の歌があるから聴いてくれているんだろうな”と感じる瞬間があった。だから、“まだまだ作詞作曲を頑張らないと…”ってずっと思い続けてたんですよね。そういうなかで今回、「水槽の作る曲が好きだから楽曲提供してほしい」と言ってもらえたことは、自分にとってすごく光栄なことだったんです。

龍ヶ崎リン：うれしいです。ありがとうございます。

水槽：こんなにちゃんと曲も聴いていただいてて、制作にも真摯に向き合っていただいて、音にもすごくこだわりを持っていて。リンちゃんはすごく真面目に真っ直ぐクリエイティヴへ向き合ってくれたんです。その姿勢はすごくカッコいいし、作家としてもすごく助かるし、自分自身やる気が出たので、これからも貫いてほしいですね。もしかしたらこの先、リンちゃんが何かにつまづくことがあるかもしれない。それでもリンちゃんが今持っている、作品づくりへの情熱や真摯さを失わずにいれば、大丈夫だと思っています。応援しています。ぜひまたご一緒したいです。

龍ヶ崎リン：こちらこそぜひお願いします。一方的に観ているだけだった好きなアーティストさんに、自分の曲を作ってもらったこと。音楽を通して関わることができたことは、今後の活動のモチベーションになっていくと思いますし、本当に光栄です。今後もこの出会いを大切にしたいです。

取材・文◎沖さやこ




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