【インタビュー】かたこと、『Neutract』に本当の自分「人はいくつかの顔を持っている」

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再び活気を取り戻しつつあるライブハウスシーンの新たな息吹を感じさせるバンドにまたひとつ出会うことができた。それがメンバー全員2000年生まれという神奈川県湘南発の3ピースロックバンド、かたことだ。結成は2016年3月、メンバーがまだ中学3年の時だったという。その後、数々のバンドコンテストに参加する一方で、ライブハウスで活動を続けてきたという彼らはこれまで『UNITS』(2020年9月発表)、『Sherbet』(2021年7月発表)、『Neutract』(2023年5月発表)という3枚のミニアルバムをリリースしている。

◆かたこと 動画 / 画像

目下の最新作である『Neutract』ではキャッチーなメロディを持つポップソングと、影響を受けたバンドにUNISON SQUARE GARDEN、cinema staff、Base Ball Bearを挙げるバンドならではのテクニカルともエキセントリックとも言えるバンドアンサンブルの組み合わせというユニークな魅力がさらに際立った印象も。現在、その『Neutract』をひっさげ、全国をツアー中の3人にインタビュー。音楽性はもちろん、バンドに取り組む気持ちという意味でも、これから目指す飛躍に向け、ターニングポイントを迎えた長尾拓海(Vo, G)、純(B)、伊東拓人(Dr)の現在の心境を訊くことができた。


▲ミニアルバム『Neutract』

   ◆   ◆   ◆

■こんなにみんなに届く声ってない
■拓海の歌声ならどの一人称も歌える


──全国ツアーの真っ最中ですね。まずはその手応えから聞かせていただけますか?

長尾:ミニアルバムをリリースするたび、ツアーもやっているんですけど、3回目となる今回はこれまでと比べて、かなり手応えはありますね。物理的にも気持ち的にもお客さんと近い距離で、会話しながらライブができているという実感があるんですよ。

──気持ち的にも距離が縮まったのは、何かきっかけがあったんですか?

長尾:2021年7月に2枚目のミニアルバム『Sherbet』をリリースしてから2年を経て、僕らのライブのスタイルが変化したことが大きいと思います。以前は淡々と曲をやっていたんですけど、お客さんとのキャッチボールを大事にしていこうというふうに変わったんです。そういうライブのスタイルが段々、板に付いてきたタイミングでの今回の『Neutract』のリリースだったんです。

伊東:今回のツアーから、声出しがOKになったことも大きいんじゃない? しっかりシンガロングを返してもらえるパートを作ったんですよ。そうしたらお客さんも大きな声で返してくれて。心の距離が縮まったと思いました。

──純さんはいかがですか?

純:今回、難しい曲が増えた分、ハードルが上ったこともあって、逆にこれまでよりも手応えがあったというのはありますね。

──確かに。『Neutract』を聴いて、ライブ映えする曲が多いと思ったので、ツアーの手応えから聞かせてもらいましたが、その『Neutract』について聞かせてもらう前にBARKS初登場なので、かたことというバンドがどんなふうに始まったのか、簡単に振り返らせてください。なんでも、長尾さんと純さんが小学校の低学年の頃の同級生だったそうですね?

純:そうなんです。その後、小学4年の時に(長尾)拓海が引っ越して、一度離れ離れになるんですけど、それまでは普通に…。

長尾:ただの友達でした(笑)。それから時を経て、Twitterのアカウントを作ったら、“知り合いかも?”って純が出てきて、また繋がるみたいなことが中学生になってからあって。

純:気づいたらお互い音楽をやっていて。

──なんと。


▲長尾拓海(Vo, G)

長尾:純から「スタジオに入りませんか?」っていきなりダイレクトメッセージが来たんです。僕もちょうどメンバーを探していたので、タイミングがいいと思って、スタジオに入ったら、「一緒にバンドやりましょう」ってめちゃめちゃ敬語で言われました(笑)。

純:そうでしたね(笑)。

長尾:それで、ドラムを叩ける純の同級生にサポートで入ってもらって、バンドとしてとりあえず形になったのが、かたことのスタートです。

純:それが中学3年の時です。

──最初はコピーから始めたんですか?

長尾:僕はコピーから始めるんだろうなと思っていたんですけど、人づてに『Music Revolution中学生大会』というバンドコンテストがあると聞いて、それに「出よう」という話になったんです。そうしたら純が「オリジナル曲で出る」って言い出して、「曲は誰が作るんだ?」って話になったら、「お願いします」って(笑)。 

純:いや、拓海はもともと曲を作っていたんですよ。

長尾:なんとなくでしたけどね。その曲を仕上げて、みんなで練習して、コンテストに臨んだんです。

──オーディエンス賞と優秀賞を受賞したそうですね。

長尾:それで、「俺たち、やれるじゃん!」ってなって、本格的にバンドをやっていこうってなったんです。

──その時、自分たちはどんなバンドをやりたいと考えていたんですか?

長尾:まだ技術的にできることも限られていたので、どんなバンドにしようかっていう選択肢はそんなになかったですね。自分らができることをとりあえずやっていました。

純:どんなふうになりたいかなんて全然考えてなかったです。

長尾:“バンドって楽しい!”ってことだけしか考えてなかったです。

純:ただ、拓海も僕も学校の中では全然輝いていなかったので(笑)、そんな自分たちが輝ける場所なのかもしれないっていう希望はありました。


──そこからバンドの方向性が決まって、現在のかたことに繋がる曲をやり始めたのは、どのタイミングだったのでしょうか?

長尾:高校1年の夏の終わりぐらいに(伊東)拓人が加わるんですけど、そこで地盤がひとつ固まって、そこからいろいろな曲を作り始める中で、『未確認フェスティバル』に毎年エントリーするようになるんです。高校1年と2年はファイナルステージまで進めず、“高校3年こそ、絶対ファイナルステージまで行きたい”と思って、今の自分たちにできる最大限のことって何だろう?って考えながら作った曲が「最果てから」で。2020年9月にリリースした1stミニアルバム『UNITS』に入っているんですけど、その曲のお陰でたぶん『未確認フェスティバル』もファイナルステージまで進めたと思うし、そこで、“かたことってこういうバンドだよね”っていう共通認識がある程度できたような気がします。

──ところで、伊東さんはどういう経緯で加わったんですか?

伊東:2人とは違って、湘南出身でもないし、同級生でもないんですけど、僕も学校では目立つタイプではなくて、ひたすらドラムを叩いている動画をYouTubeに上げていたんです。それを純が見つけて、「同い年のドラムが上手いやつがいる」って拓海に紹介してくれて、会ったんだよね。…違うか、その前にDMくれたんだ。

長尾:かたことは全部DMからなんですよ(笑)。

伊東:めちゃめちゃ敬語のね(笑)。それでライブを観に行ったんです。まだ前任ドラマーがいた時だったんですけど、純は今よりもトガッていて、同い年でそれだけの雰囲気を纏っていてすごいと思ったし、拓海は年相応の見た目で(笑)。幼いと言うか、あどけない少年がギターを持って立っているという感じだったんですけど、曲と歌声は本格的というか…これ、褒めすぎ?

長尾:いくら褒めてもいいんだよ(笑)。

伊東:中性的な声に特徴があって、“こんなにみんなに届く声ってないんじゃないかな”と思いました。

純:拓海の歌声なら“僕”でも“私”でも“俺”でも、どの一人称でも歌えるからすごいと思います。

伊東:最初はサポートからスタートしたんですけど、正式に加入したいと思いました。

──伊東さんが加わって、バンドはどんなふうに変わりましたか?

純:かたこととしての正式ドラマーは、拓人が初めてなんですよ。“これでメンバーが揃ったぞ”って気持ちもあったし、シンプルに当時からドラムがめちゃめちゃ上手だったので、できる曲の幅が格段広がりました。

伊東:俺のお陰でね(笑)。

長尾:当時から骨太なドラムを叩いていたんです。その頃は重たい系の音楽をやっていたんだっけ? かたことはポップスのバンドですけど、そこにしっかりとしたドラムが加わったことをきっかけに「パワフルになったね」っていうのは、いろいろな人から言われました。

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