緑黄色社会、「二次元とかAIとも違う──私たちと、みんなだからできるライブがある」

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緑黄色社会の全国ホールツアー<pink blue tour 2023>が7月16日、香川公演をもってツアーファイナルを迎えた。最新アルバム『pink blue』を携えて行われた<pink blue tour 2023>は、全国17会場・20公演すべてソールドアウト、トータル約42,000人を動員した自身最大規模のツアーとなった。前回の<Actor tour 2022>から約1年ぶりのホールツアーで、バンドとして/アーティストとしての飛躍的な進化を実証した緑黄色社会。以下、<pink blue tour 2023>の模様を、6月15日・東京国際フォーラム ホールAにて開催された東京公演のオフィシャルレポートを通して届ける。

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<pink blue tour 2023>では最大規模、約5,000人が詰めかけた東京国際フォーラム ホールA。舞台を覆う白幕に投影された「pink blue」の文字が会場の期待感を高める中、広大な空間に最初に鳴り渡ったのは、アルバムのオープニングを飾るナンバー「ピンクブルー」だった。80年代ニューウェーブ風のビート感をまといながら、長屋晴子(Vocal & Guitar)、小林壱誓(Guitar)、peppe(Keyboard)、穴見真吾(Bass)が繰り広げるのは、紛れもなく2023年最新鋭のポップの輝度と色彩感。歓喜あふれる5000人のオーディエンスが、冒頭からクラップの嵐を巻き起こしていく。

バンドメンバーとサポートドラマー=比田井修の5人は、「さもなくば誰がやる」から「Don!!」へ、とアルバム『pink blue』の楽曲を次々に畳み掛けていく。モータウンビートとロックンロールが渾然一体となったような「Don!!」では、サビの《Don!!》のフレーズを会場一丸となってコールする。3年以上に及ぶコロナ禍を経て、ようやく観客も一緒に声を出してライブを楽しめることの開放感が、この日の国際フォーラムには終始満ちあふれていた。



「東京、元気あるか! 3年分の声、聞かせてくれますか?」という長屋の呼びかけに応えて、「あのころ見た光」のイントロでは割れんばかりの大合唱が大空間に響き、「めっちゃ聞こえた。ありがとう!」と長屋が満面の笑顔を見せる。最高の場面だ。

「<pink blue tour 2023>へようこそ! この3年間、みんな我慢してきたんじゃないかなって思います。すごい溜まってるでしょ? その我慢を今日、このライブで出しちゃって! とにかく自由に、超楽しいライブにしよう!」

そんな長屋の言葉通り、「これからのこと、それからのこと」で再び熱いクラップを呼び起こしていく。『pink blue』収録のピアノバラード「ジブンセイフク」の歌の訴求力。ミステリアスな楽曲「LITMUS」をさらにドラマチックに高める熱唱……。メジャーデビュー前から圧倒的な輝きを放っていた長屋の歌唱力は、楽曲ごとに色鮮やかな情感と表現を実現しているし、長屋/小林/peppe/穴見の音楽的探究心が、観客も巻き込みながらエモーショナルに咲き誇っていく図はまさに、『pink blue』という名盤を作り上げた今の緑黄色社会だからこそ描き出せるライブの絶景だ。





そのままライブアンセム「Mela!」に流れ込むと、会場のダンスとクラップの波は、2階バルコニー席が大きく揺れるほどに熱を帯びていく。昨年行われた自身初の日本武道館ワンマンライブや<Actor tour 2022>など、ここ最近のライブでは終盤に演奏されることの多かった「Mela!」を、今回はセットリスト中盤に配置し、最新のクライマックスの形を提示してみせたことも、今回のツアーの大きな特徴と言える。

MCのコーナーではメンバーからの「今日が緑黄色社会の初めてのワンマンライブだよっていう人!」(peppe)、「東京以外出身の人! 東京出身の人!」(穴見)という問いかけに、観客が元気よく挙手で応える。客席を年齢ごとに4つのグループに分け、小林の合図で「pink」「blue」「tour」「2023」のコールを熱く響かせるオーディエンスには、思わず小林も「すごいじゃん!」と驚きの声を上げたほどだ。





「あうん」で見せたポップの切れ味。観る者の心をかき乱した「うそつき」の美しいセンチメント。未踏の地への冒険精神が、ダイナミックなサウンドスケープとして立ち昇った「Starry Drama」……。『pink blue』の多彩な創造性を、「大人ごっこ」「Shout Baby」といった既発曲群と織り合わせながら、刻一刻と会場のテンションを高めていく緑黄色社会。「東京! まだ声出し足りないんじゃないの? まだまだいけるかな?」という長屋のコールに導かれて、「始まりの歌」では場内を真っ白に照らし出したライトの中、会場一丸のシンガロングが鳴り渡り、ライブの喜びそのものの景色を編み上げていった。

「どう、ライブ? ライブってすごいでしょう? こんなにも、心が動いて、熱くなる。二次元とかAIとも違う──私たちと、みんなだからできるライブがある」



歌声とクラップが「キャラクター」でさらに高まり、ラストの「Slow dance」へ──という場面で、長屋はそんなふうに客席に語りかけていた。歓声もシンガロングもないライブを展開してきた時期も、この瞬間を夢見て新たな楽曲を作り続けてきた緑黄色社会。困難を踏み越えてきた4人のポップの強さが、本編最後を飾った「Slow dance」のアップリフティングな歌と音像を通して、5,000人の観客を揺さぶり、包み込んでいった。「<pink blue tour 2023>、一緒にライブしてくれてありがとう!」。長屋の喜びの言葉を残して、メンバーは舞台を去っていった。

アンコール改め《BONUS STAGE》の冒頭、恒例の「しんご先生 a.k.a. SHINGO TEACHER」による物販グッズ紹介でも、思わず小林が「しんご先生、サクラ雇ったな! あんなに盛り上がるわけないもん(笑)」と突っ込むほどの熱気に満ちていたこの日のステージ。まだ声出しOKでなかった昨年の日本武道館公演に際して「一緒に歌いたいなと思って作った」という楽曲「時のいたずら」の、《歌を歌えば 君が笑う/君が笑えば 僕が歌う》のフレーズが、会場の歌声とともに響いていた。最後は小林の「ぶち上がれ!」の絶叫とともに「sabotage」で圧巻の大団円! 「ライブ楽しかった? またライブしようね!」という長屋の言葉が、この日のライブの爽快感を何より明快に象徴していた。



フジテレビ系月9ドラマ『真夏のシンデレラ』の書き下ろし主題歌「サマータイムシンデレラ」&挿入歌「マジックアワー」も現在オンエア中の緑黄色社会。ツアー中に迎えたバンド結成記念日・7月4日には、神奈川・横浜アリーナ/愛知・日本ガイシホール/大阪・大阪城ホールを巡る自身初のアリーナツアー<リョクシャ化計画2023-2024>の開催も発表。まだまだ続く快進撃の先に、どんなポップの新次元が広がっているのか、今から楽しみで仕方がない。

文:高橋智樹
撮影:AZUSA TAKADA

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<SET LIST>

緑黄色社会 全国ホールツアー<pink blue tour 2023>
2023年6月15日(木)東京国際フォーラム ホールA
01.ピンクブルー
02.さもなくば誰がやる
03.Don!!
04.あのころ見た光
05.これからのこと、それからのこと
06.ジブンセイフク
07.LITMUS
08.Mela!
09.あうん
10.うそつき
11.大人ごっこ
12.Starry Drama
13.Shout Baby
14.始まりの歌
15.キャラクター
16.Slow dance
[BONUS STAGE]
01.時のいたずら
02.sabotage

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