【インタビュー】高野哲、50歳50公演のソロツアー中に語る「自分が書くものは、いつもラヴソングであって欲しい」

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■50本では収まりきりそうにない
■その先も続けていけばいいかな


──そうやって“素”の状態で書いたものが、すべてラヴソングだと感じたわけですか? とはいえ今回のアルバムは、ラヴソング集という性質のものではないですよね?

高野:違いますね。俺、ある時から「すべての音楽はラヴソングである」って言い出してるんですよ。ずいぶん前、15~16年前くらいからかな。岡山のペパーランドという大好きな老舗のライヴハウスがあって、血の繋がりはないけど俺が芸術の父みたいに感じてる方がそこにはいて。いつも温かく迎えてくださって、ライヴを終えて食事をしたりする時に、お薦めの本とか、いろいろ教えてくださるんですね。で、ある時に「哲さんの音楽は全部ラヴソング。すべて愛を歌っていると感じます」と言われて、それが俺としては嬉しくて、妙に印象に残っていて。そこで思ったのは、俺が作る歌がラヴソングというよりは“伝えたい何かがある”ってこと自体がラヴソングなんだよな、ということで。人に対して伝えたいものである、という時点でね。そんな想いがずっとどこかに残っていて、今回、自分が50歳になる時に“今後どうやって音楽を続けていくんだろう?”と考えた時に、この言葉を思い出したんです。そして、それをまず50歳記念のリキッドルームでの公演タイトルにして、そのままアルバム・タイトルにして、ツアー・タイトルにも掲げることにして。だから今回のアルバムがラヴソング集というよりは、俺が今後出していくものはすべてそうでありたいという希望でもあるんです。

──ラヴソングじゃないものを歌わなければならないような世の中になって欲しくない、という部分もあるんじゃないですか?

高野:ありますね。自分が書くものはラヴソングであって欲しいというか。それより大事なものってホントはないはずなのに、嫌な世の中だなって思わせるような出来事がいっぱいあるから、そういう歌も作ってしまう。そういう意味ではラヴソングって希望だと思うし、それこそ反戦歌みたいなものというのもラヴソングだと思うんです。俺の場合、一度そんなふうに思い込んでしまうと、ずっとそれを信じてしまうところあるんだけど(笑)。たとえばメタリカの「One」だって、こんなにも長く愛され続けてるのは、ラヴソングとして受け止められてる部分もあるからだと思う。中身のないパーティ・ソングと言われるようなものだって、それによってみんながハッピーになれるんだからラヴソングであるはず。べつに、すべての結論をそこに持っていきたいわけじゃないんだけど(笑)。


──ええ、わかります。ところで昨夜のライヴが今回のツアーの37本目となり、このあと終盤へと向かっていくわけですが、40本目の東京で一旦流れに区切りがつくことになるわけですよね?

高野:そうですね。名古屋と大阪に関してはこのツアーですでに何巡目かになるので、それこそカヴァーとか、このツアーでやってこなかったエクストラ的なことをやろうか、と。そして7月30日の渋谷に関しては、今現在のスタイルの集大成をやろうかなと考えてます。そして、そのあと8月にはアルバムを作ります。

──50本やりきらないうちにアルバム制作を挟むというのは、計画通りの展開なんですか?

高野:いいえ、全然。突発的に思い付いちゃって(笑)。この春、レコーディングが終わってから、またメロディがぽろぽろと出てきて、“ああ、まだ出来るな”と思って、とりあえずデモ的に録っておいたんですね。そしてある時、気付いたんです。今現在のライヴではソロの曲だけでは曲数的に足りないから各バンドの曲をやってるわけだけど、アルバムがもう1枚あれば全曲ソロで行けちゃうんだな、ということに。

──そうやって1枚作ったことで引き出されてきたものが、次の流れに繋がっていく。

高野:まさにそういう流れですね。次回はいくつか違うことをやろうという考えもあるんです。アコギにこだわらずに音色を増やしてみようかな、とか。あとは今回すごく丁寧なミックスをしたので、もうちょっと今のライヴの荒々しさが残るようなラフな感じにしても面白いのかな、とか。だから、もしかすると2枚目のほうが洗練されてないというか、逆にちょっと荒々しい感触のあるものになるかもしれない。実際、もう楽曲のセレクトはほぼ終わってるんですけどね。だから8月に一気に作っていって、その後に最後の10本をやることになります。


──また性質の違うものになりそうですね、その10本は。

高野:そういうことになるでしょうね。でも、だからといってホントに頑なに2枚のアルバムだけにこだわるつもりはなくて。2枚目を作って、またさらに呼ばれるものがあると思うんです。どのバンドのレパートリーだろうと、あの曲をやりたいな、というのが出てくればどんどん取り入れていきたいし。だから昨日は全20曲やりましたけど、もうちょっと曲数が増えちゃうかもな、というのはあります。あと、ツアー自体についても、当初は50本目でちょうどいいところに着地しようと考えてたんだけど、ちょっと50本では収まりきりそうにない雰囲気になってきてたりもするんで、だったらその先も続けていけばいいかな、と思い始めていて。そんなふうに思えるぐらい、このツアーを始める前に感じてた気の重さみたいなものが解消されてるんです。だから、たとえば昨日のライヴは50本中の37本目だったから「37/50」みたいな表記になってますけど、それが「500/50」ぐらいになるまでやるのも悪くないのかな、と(笑)。

──つまり結果的には「50歳を迎えて50本をやった」ではなく、その節目にあたる年に「50本やるつもりで始めたらここまで広がった」ということになるかもしれない。

高野:そうですね。50歳になった記念に始めたソロ・ライヴをひとつの形として継続していく、ということでいいのかなと思い始めてます。

──この先どうなるか、楽しみにしています。ところで昨夜のライヴを通じて感じたことのひとつに、ツアー自体が“人との繋がりを再確認するプロセス”にもなっているのではないか、ということなんです。実際どうでしょうか?

高野:それはすごくある。新しい出会いも今回はすごく多かったし。「前から会わせたかった仲間がいる」と紹介されて、すごく仲良くなった人とか。お店の方しかいない環境でやったことですごく仲良くなれて、「また絶対来ますね」という話になったりとか。俺、これまでの人生では約束を破りまくって生きてきたので(笑)、この年になってからの約束はちゃんと果たしていきたいと思ってるんです。だから必ず戻って来なきゃいけない場所も増えたし、この先まだまだ楽しいことが待っていそうだな、と思えるんです。

取材・文◎増田勇一
撮影◎今井俊彦

■<高野哲単独行動ツアー50本!~all songs is lovesong~>

※終了した公演は割愛
7月22日(土) 大阪 ムジカジャポニカ 38/50
7月23日(日) 名古屋 Music Bar Perch 39/50
7月30日(日) 渋谷 PLEASURE PLEASURE 40/50
イープラス https://eplus.jp/sf/detail/0162890001

▼ツアー後半
■<高野哲単独行動ツアー50本!~all songs from Thunder Road~>
10月21日(土) 福岡 SQUARE GARDEN 42/50
10月22日(日) 熊本 Music bar ドミナント 43/50
11月11日(土) 下北沢 Flowers Loft FC会員限定 41.1/50
11月12日(日) 横浜 NAKED LOFT 44/50
11月18日(土) 千葉 LOOK 45/50
11月23日(木/祝) 名古屋 Music Bar Perch 46/50
11月25日(土) 札幌 VyPass. 47/50
11月26日(日) 札幌 音楽処 FC会員限定 41.2/50
12月02日(土) 盛岡 BeOneBox 48/50
12月07日(木) 京都 磔磔 49/50
12月08日(金) 大阪 梅田 Zeela 50/50
12月12日(火) 東京 南青山 MANDALA 51/50
※詳細は後日発表


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