【インタビュー】“ノラ from 今夜、あの街から”、2つの物語を持つ初ソロ曲完成「歌うことが創造の原点」

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TVアニメ『名探偵コナン』エンディングテーマ「クウフク(starring VALSHE)」で注目を集めている音楽ユニット“今夜、あの街から”の中心人物にしてボカロ Pの“ノラ”が、自らボーカルを取った新曲「Chase Me」が7月8日より配信リリースされた。

◆ノラ from 今夜、あの街から 動画 / 画像

“ノラ from 今夜、あの街から”名義で発表された「Chase Me」は、TVアニメ『レベル 1 だけどユニークスキルで最強です』のオープニングテーマだ。アニメの世界観に寄り添うと同時に、“今夜、あの街から”のスピンオフ作品としても成立している。

今回のインタビューでは「Chase Me」の制作はもちろん、ノラの音楽的ルーツ、これまでの活動、“今夜、あの街から”の成り立ちなどについても聞いた。

   ◆   ◆   ◆

■可能性がめちゃくちゃ広がっている
■それが“今夜、あの街から”の魅力


──BARKSでは初めてのインタビューになります。

ノラ:よろしくお願いします。『名探偵コナン』のエンディングテーマ(「クウフク(starring VALSHE)」)のとき、VALSHEさんと一緒にインタビューを別で受けたことはあるものの、1人での取材は初めてで。緊張しますね(笑)。

──ぜひ、いろいろ聞かせてください。まず、音楽に興味を持ったきっかけを教えてもらえますか?

ノラ:中学生のときにカラオケに行きはじめたんですけど、とにかく歌うことが好きだったんです。高校では軽音楽部と合唱部に入っていて、そこでもたくさん歌って。そのうちに“歌ってみた”をニコ動に投稿し始めた後、自分の曲を作るようになったんです。自分の創作の原動力は歌を歌うこと。歌いたいから曲を作るという感覚は強いですね。


──順番に聞いていきたいのですが、カラオケではどんな曲を歌ってました?

ノラ:UVERworldさんとボーカロイド曲をひたすら歌ってました。ボーカロイドは小学校高学年の頃に聴き始めて。当時はまだニッチな感じだったんですけど、ちょっとしたコミュニティーというか、インターネットを見るのが好きな友達の間で流行っていたんですね。ハチさんの「マトリョシカ」、黒うさPさんの「千本桜」とか。

──歌い手の曲も聴いてました?

ノラ:そうですね。それこそ「クウフク」でご一緒させていただいたVALSHEさんもよく聴いていて。中学生の頃から好きな歌い手さんだったので、まさかコラボでご一緒できるとは思ってなかったです。これまで活動してきて嬉しかったことの一つですね。

──高校の軽音楽部でもボーカルですか?

ノラ:ピンボーカルでした。UVERworldは難易度が高いというか、シンセっぽい音が重要だったりするので、ギター、ベース、ドラムだけではなかなか再現できなくて。なので高校の頃は、RADWIMPSとかをカバーしてましたね。ちょうど「前前前世」がヒットしていて、文化祭でやったり。もちろんRADWIPMSもめちゃくちゃ難しかったんですけど(笑)。

──楽器はやってなかった?

ノラ:小学校のときにピアノを習ってました。親にやらされてたところもあって、練習も真面目にやらなかったし、あんまり弾けないんですけどね。あと父親がよく楽器を弾いてたので、ギターもちょっとやってました。今の制作スタイルはマウス(コンピュータ)だけなんですけど、楽器をやったことがあるからこそわかることもあるし、少しは役に立っているのかなと。当時はイヤだったけど(笑)、習っていてよかったなって今になって思いますね。

──ボーカロイドで曲を作るようになったのも高校の頃ですか?

ノラ:もうちょっと後かもしれないです。さっき言ったようにボカロの曲が好きだったし、自己流でボーカロイドを使った制作は練習してたんですけど、本格的に作り始めたのは20歳になった頃ですね。大学生になってバイトして機材とかもある程度揃えられるようになってから。それが2〜3年前かな。


──本格的に制作をはじめたきっかけは?

ノラ:高校のときから“歌ってみた”はアップしてたんですけど、そんなに反応があったわけでもないし、最初は遊びみたいな感じだったんです。でも、20歳くらいのときにバズったというか、1曲すごく聴かれたことがあって。カンザイキオリさんの「あの夏が飽和する。」のカバーだったんですけど、たくさんの人に聴いてもらって、いろんな意見があって。そういう初めての体験があって、“もっと自分を表現してみたい”というか、“100%自分”の世界を作りたいと思って、作曲を始めたんです。

──本格的に初めて間もない頃ですよね。

ノラ:はい。ちょうどコロナ禍にぶつかったんですよね。入学して1〜2年は普通に大学へ通ってたんですけど、3年生のときは緊急事態宣言で一切学校に行けなくなって、ずっと家にいたんです。時間はめちゃくちゃあるし、音楽制作に没頭できたんですよね。もちろんコロナ禍の時期は大変でしたけど、僕にとっては良い面もあったと言いますか。曲を作って、発表して、みんなが聴いてくれて、感想を受け取って…ということをずっと続けていたんです。なかには「この曲を聴いて救われた」と言ってくれる人がいたり。そのなかで“もっと曲を作りたい” “自分でも歌っていきたい”と改めて思ったんですよね。その時点で機材も一通り揃っていたし、制作、録音、ミックスまで自分でできる環境があったのも大きいです。

──DTMは独学で学んだ?

ノラ:基本的にはそうですね。一人で曲を作って、一人で打ち込むということをやりたくて、それこそ中学生の頃からインターネットで情報を集めてましたから。でも、DAWの使い方にしても何にしても、今ほど情報がなかったんですよ。周りにやっている人もいなかったし、ボカロPの存在もそこまで知られてなくて。なので、最初はすごく苦労した覚えがあります。調べても調べてもわからないことがあって、“どうしたらいんだろう?”って。少しずつ知識を付けて、機材を揃えて今に至るという感じですね。

──なるほど。ちなみに大学は音楽系ですか?

ノラ:いえ、文学部に通っていました。自分は活字があまり得意ではないんですけど、“作詞の役に立てばいいな”というのも文学部を選んだ理由の一つだったんですよ。インスト曲を作るのも好きだったんですけど、歌詞がぜんぜん書けなくて。ある程度、思うように書けるようになったのは最近かもしれないです。それが文学部で学んだおかげかどうかはわからないですけど。相変わらず活字は苦手なんで(笑)。

──ボカロPとして活動する一方、2021年6月に音楽ユニット“今夜、あの街から”を立ち上げました。「歌うことが創造の原点」というノラさんが、曲ごとに女性ゲストボーカルを招くユニットを始めたのはどうしてなんですか?

ノラ:確かに“歌いたい”という気持ちが最初にあったんですけど、同時に“面白いことをやりたい” “人と違うことをやりたい”という思いもあって。コラボすることで自分一人では作れないものを作れるし、いろんな方とご一緒することで生まれる化学反応にすごく興味があるんです。“メンバーを固定しない”というユニットは少ないと思うし、ボカロPらしいのかなと。

──“今夜、あの街から”名義でこれまでに7曲のコラボ曲をリリース。宮川愛李さん、珀さん、nuiさん、VALSHEさんなどをフィーチャーしてきましたが、手応えはどうですか?

ノラ:どの曲にも手応えがあって、一作ごとに最大のクオリティを出せていると思うし、アップデートできている感覚もありますね。歌ってくださる方によって全然違う曲を作る必要があるし、それ自体がコラボのメリットだと思うんですよ。いろんなジャンルにチャレンジできるし、普段はなかなか使わない楽器を使えたり、可能性がめちゃくちゃ広がっている気がしていて。それが“今夜、あの街から”の魅力だと思います。

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