【インタビュー】Dios、新章幕開けを告げるアルバム『&疾走』に精鋭たちの挑戦「3人で行くべき場所へ向かって」

2023.09.09 12:00

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■やっと僕らの正しい方程式が見えた
■このレールの上をもっと爆走したい

──ではトラックの制作について話を聞かせてください。Ichikaさんのギターはライン録音ですか? それともアンプを鳴らして?

Ichika:ライン録音です。ニューラル・ディーエスピーのアンプシミュレータープラグインCory Wong使いました。オーディオインターフェーズはアポジーJAM X。今回はツアー中に録音することも多かったんですが、JAM Xは小さくて音もいいから、そういう時にもすごく便利なんです。

──メインギターは?

Ichika:2年前に作ったアイバニーズの自分のシグネチャーモデルICHI10です。有難いことに世界中で売れているみたいで。このギターのこだわりポイントは、オリジナルで作ったピックアップのダイナミックレンジがとにかく広いところですね。アーティキュレーションの幅が広い。一音一音、ちゃんと弾き手の表現を如実に反映してくれて、細かいところまで汲み取ってくれるセンシティヴさが気に入っています。あとサウンドがとてもハイファイで、周波数的な天井がかなり高いので、トーンで調節しながらプレイしています。

──Ichikaさんの繊細かつレンジの広い表現をそのまま出力してくれるピックアップなんですね。他にはどのようなギターを?

Ichika:「&疾走」はアイバニーズのFRHで録りました。FRHは、クラシックギターのような音が出せるナイロンギターのエレキモデルです。あと最近、アイバニーズからもう1本新しいシグネチャーモデルICHI00を出したので、「自由」のカッティングや「アンダーグラウンド」のサビで弾きました。


▲Ibanez ICHI10 [Ichika Signature Model]


▲Roland JUNO-DS

──ササノさんはエイブルトンLiveでトラックを制作する際、基本的にソフトウェアで完結させているのですか?

ササノ:そうですね。最近メインで使っている音源は、ピアノだとスペクトラソニックKeyscapeをレイヤーして使っています。シンセ系は、スペクトラソニックのOmnisphereと、あとリーエフエックスnexusを少し使いました。

Ichika:「&疾走」のベース?

ササノ:そう。あれは、nexusとスペクトラソニックのTrilian。僕はイチから音を作るシンセよりも、オーディオのサンプリング波形を使うのが好きで。OmnisphereもTrilianも、大元はサンプリング波形ベースのソフト音源なので、それをこねくり回して音を作っていくのが好きなんです。たとえば、最近はリリースをカットしたピアノが流行ってますけど、最初から“リリースカットピアノ”として用意されている音色だと、すべての余韻が切れてしまうんです。でもピアノの余韻はとても大事で、僕は切りたいところだけ音が切れて、それ以外の余韻は残って欲しい。だから、まずリリースのあるピアノ音色を弾いて、それをオーディオ化(録音)してから、波形編集で余韻を切ったりするんです。

Ichika:ササマリは、よく僕のギターの波形をリバースしてフェードイン的に使ったり、“リリースカットギター”みたいなテイストに波形を切ったりするんです。あと、ギターの弦に指が触れた時の“パッ”っていうようなノイズも、ギターテイクのどこかからか持ってきて、それをサビの頭とかに薄っすら混ぜていることもあって。そういうアイデアは面白いなと思いますね。

──ちなみに、ササノさんがライブで使う鍵盤は?

ササノ:今はヤマハYC61を使っています。キーボード系の音がすごくいいし、パネルも操作しやすいんです。自宅での制作時にはローランドJUNO-DSをMIDIキーボードとして使っています。鍵盤タッチの軽さが気に入っています。

──たなかさんは、今回のアルバムで新しくチャレンジしたことを教えてください。

たなか:それがめちゃめちゃあって。歌詞の書き方を変えたんです。「自由」や「&疾走」が特にそうだったんですけど、僕は今まで、言葉によって誰かの暮らしをあまり変えたくないという気持ちが強かったんです。何気ないひと言が、誰かの人生の中でずっと尾を引くものになることって往々にしてあって。言葉って、ものすごく簡単に引き金を引ける銃弾みたいなところがあると常々思っているんです。そういう言葉の恐ろしさを感じているからこそ、他人の人生に干渉せずに、自分の内面を掘り下げる歌詞を書くことが多かったんです。

──なるほど。

たなか:でも今回は、外に向けて書くことも恐れずにやっていかなきゃいけないと思って、自分の思想を外側に出力しつつ、それをポップスの枠内に収めることを意識しました。みなさんに普通に聴いてもらえるポップスでありながら、そこに薄っすらと自分の思想を音に込めていく。それをやってみようと。そういう意味で、以前の歌詞とは方向性が大きく違いますね。

──前作よりも、外に向かおうとする音楽だという印象を受けたのですが、そういうご自身の変化があったのですね。

たなか:そうなったのはフェスに出たことも結構デカくて。ワンマンとは全然違う、僕らに1mmも興味がないお客さんたちの前で演奏させてもらうというのが、すごく刺激になったんです。

Ichika:フェス出演の経験を通して、Diosが作るべき音楽、そのタイプがいろいろとあるなと認識できましたね。例えば、『CASTLE』で作った曲はメロディとコードの響きの美しさを重視した内面に向かう音楽性で、一方フェスだったら、もっと音数が少なくて、リズムも躍動的な、みんなが踊れる曲のほうが向いていますよね。その2パターンだけでなく、今回の『&疾走』は3つ目のパターンになるし、各パターンをどういうパーセンテージで混ぜていくかという、設計図を描くヒントとなるような枠組みがちゃんと見えるようになりました。前までは、そこがフワッとしていたんですけど、今はどのパターンをどれくらいの加減で調合していけばいいのかを考えられるようになりましたね。

ササノ:僕は、フェスのような能動的に音楽を楽しむところから一番離れたところにいた人間なんです。部屋の隅っこで一人うずくまって、ヘッドホンで聴くという音楽の楽しみ方をしてきたので。それで気持ちいい音楽と、ライブやフェスのように不特定多数で聴いて楽しむ音楽の違いも掴めてきました。音のハネさせ方だとか、音楽の作り方もそうですし、じゃあみんなに楽しんでもらうために自分がライブでどうパフォーマンスをすればいいかということも、フェスへの出演を通して考えられるようになりました。

──10月から始まる国内ツアー、そして11月の中国ツアーで、そのパフォーマンスを観られることが楽しみです。今回のツアーはどのようなものにしたいと考えていますか?

たなか:ツアーの具体的な中身はこれから詰めていくところですが、エンタテインメントとして優れたものをお見せして、みなさんに楽しんでもらいつつ、そこから何かを感じ取ってもらえるツアーに出来たらいいなと思っています。

ササノ:先ほどのフェスの話もそうですが、僕ら自身がDiosでライブをすることの楽しさをわかり始めてきましたので、そこをみなさんに、今まで以上に楽しんでもらえたらなと思っています。それにしてもツアー日程、特に中国ツアーのスケジュールを見てビックリしました。

たなか:日程の密度がね。

ササノ:ヤバいよね(笑)。これはもう、やるしかないなっていう気持ちでいます。

Ichika:でもさ、9日間で6公演だから休憩は結構あるよね? 毎日やるわけじゃないし。

たなか:ものすごいスケジュールをこなしてるIchika基準だと、「この日程はキツいよね」って甘えたことが僕らは言えなくなる(笑)。頑張ります(笑)。

Ichika:僕はDiosの国内ツアー後、11月の頭に10日間ほどソロの中国ツアーがあって、そのすぐ後にDiosの中国ツアーに入るんですよ。だから僕にとっては、ソロとDiosの違いも含めて、ちょうどいい塩梅のスケジュールで。

たなか:じゃあソロツアーの時に、中国でDiosの宣伝しておいて(笑)。

──あはは。ツアーのお話もそうですし、今回お話を聞かせていただいて、『&疾走』は3人にとってものすごく手応えのある作品になったんだなと、充実感がひしひしと伝わってきました。

ササノ:そうですね。

たなか:やっと僕らの正しい方程式が見えたという感覚があるので、このレールの上をもっと爆走したいという気持ちが出てきています。

Ichika:そうだね。早くこのまま3rdアルバムを作りたいなっていう、今はそういう気持ちです。

取材・文◎布施雄一郎
撮影◎野村雄治
スタイリスト◎Yuki Tsuchida

【たなか:衣装】Distressed shirt ¥55,000 (Maison MIHARA YASUHIRO | Maison MIHARA YASUHIRO TOKYO) 03-5770-3291/Sneaker ¥46,200 (glamb | glamb Tokyo) 03-3746-9950
【Ichika Nito:衣装】Goths long shirt ¥33,000 (COTTON PAN | OVERRIVER) info@overriver.com
【ササノマリイ:衣装】Border cut and sewn ¥27,500 (BRÚ NA BÓINNE | BRÚ NA BÓINNE DAIKANYAMA) 03-5728-3766/Glasses ¥39,600 (KANEKO OPTICAL | OPTICIEN LOYD) 03-3423-0505/Shoes ¥38,500 (glamb | glamb Tokyo) 03-3746-9950

■アルバム『&疾走』

2023年9月6日(水)CDリリース
Dawn Dawn Dawn Records
配信URL:https://Dios.lnk.to/SPRINT
【通常盤(2CD)】DDDR-1004 3,300円(税込)
・Instrumental Ver. CD付き
【完全限定生産BOX盤(2CD)】DDDR-1005 6,600 円(税込)
・BOX仕様
・Instrumental Ver. CD付き
・オリジナルTシャツ(Lサイズ相当)
・ステッカー(ホログラム仕様)
▼収録曲
01. 自由 (※新曲)
02. アンダーグラウンド
03. &疾走 (※新曲)
04. 渦 (※新曲)
05. また来世 (※新曲)
06. 花束 (※新曲)
07. ラブレス
08. Struggle (※新曲)
09. 裏切りについて
10. 王 (※新曲)

■<Dios Tour 2023>

10月07日(土) 仙台 Rensa
10月08日(日) 札幌 PENNY LANE24
10月11日(水) 福岡 DRUM LOGOS
10月12日(木) 広島 LIVE VANQUISH
10月19日(木) 大阪 BIG CAT
10月20日(金) 名古屋 BOTTOM LINE
10月23日(月) 東京 Zepp DiverCity
https://linktr.ee/dios_tour2023

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