【インタビュー】Dios、新章幕開けを告げるアルバム『&疾走』に精鋭たちの挑戦「3人で行くべき場所へ向かって」

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たなか(ex.ぼくのりりっくのぼうよみ)、YouTube登録者数240万人越えの世界的ギタリストIchika Nito、ぼくのりりっくのぼうよみ過去作も手掛けたほかボカロやオンラインゲーム界隈でも知られるトラックメイカー / シンガーソングライターのササノマリイの3人によるバンドがDiosだ。結成発表は2021年3月31日、同時に1stシングル「逃避行」を配信リリースした。そして、2022年6月リリースの1stアルバム『CASTLE』以降ツアーを重ね、新章開幕となるアルバムが9月6日にリリースされた『&疾走』となる。

◆Dios (ディオス) 画像 / 動画

アルバムタイトルの『&疾走』には“自分自身と向き合い、立ち止まりたい衝動に抗いながら走り抜ける”という想いが込められている。収録曲は新曲7曲を含む全10曲。自身初の試みとして、TAKU INOUEをはじめとしたサウンドクリエイターを迎えて制作されたサウンドは、メンバー個々の音楽的キャラクターが浮き彫りとなった結果、実にバラエティに富んだ仕上がりだ。つまり、3人本来が持つ力量の高さが遺憾なく発揮されたアルバムと言い換えることができる。

BARKSでは、改めてこのスーパーバンドの成り立ちを明らかにすると同時に、自ら「これまでとまったく違う姿を獲得しちまいました」と語るアルバム『&疾走』の本質に迫るべく、楽曲制作法、サウンド&プレイ、リリックのすべてに迫る10,000字越えのロングインタビューを行なった。


   ◆   ◆   ◆

■メンバー個々の強みを最大限に活かしたい
■今回はそういうところから始めました


──BARKSインタビュー初登場ということで、少し遡ってDios結成の経緯を振り返っていただけますか。たなかさんは、前職(ぼくのりりっくのぼうよみ)時代からササノさんと曲作りを行っていましたが、Ichikaさんとの出会いは?

たなか:Ichika (Nito)とは、共通の知人の飲み会みたいな場で初めて会って。なぜかギャルがいっぱいいて、僕ら2人だけずっと顔が死んでるっていう状況で(笑)。

Ichika:ギャルの中に陰キャが2人いる、みたいな。だから言葉交わさずとも、2人は心通じたという感じだったんです。

たなか:「オレら、浮いてるよな」みたいな(笑)。

Ichika:それが終わって、朝方にゲロまみれの渋谷を2人で歩きながら「今日の集まりは何だったんだろう?」「機会があったらまた遊ぼう」みたいな話をして。


▲たなか(Vo)

たなか:ただその時は、お互い音楽をやってるとかほとんど知らなくて。Ichikaがギターを背負っていたから“ギター弾くんだな”くらいの感じで。それが4年くらい前の話で、それから半年くらい経って、僕がTwitterで「アニソンをカバーするライブをやりたい」ってつぶやいたんです。そうしたら、Ichikaが「やりたい! ギター弾くよ」と言ってくれて、それがすげぇ嬉しくて。そのライブにササマリ(ササノ)が遊びに来てくれたんですよ。そうしたら、「オレも鍵盤やる」って。

ササノ:「やりたい」と言ったらメンバーに入れてくれて、2回目のライブから僕も参加しました。

たなか:その頃、ぼくりり(ぼくのりりっくのぼうよみ)とはまったく別の形で音楽をやりたいなと思っていたので、次はバンドでやれるとめっちゃいいなって。Ichikaのギターは、その時点でもう“Ichikaです”っていう感じでほぼ個性が強かったし、そこにアレンジメント的な意味でササマリが加わると面白くなりそうだと思って。それで3人でバンドを始めたんです。

──てっきり、お互いの存在を知ったうえで声をかけたのかと思っていました。

Ichika:いえ、全然。

たなか:ササマリとは一緒に曲を作ってましたけど、Ichikaに関しては全然知らなくて。後から“めっちゃすごい人なんだ”って(笑)。

──そういう偶然も、ある意味でバンドっぽい出会い方ですね。

たなか:そうですね。

Ichika:不思議な偶然ですよ。


▲Ichika Nito (G)

──その出会いから、2021年3月にデジタルシングル「逃避行」、2022年6月に1stアルバム『CASTLE』をリリースして、今回、2ndアルバム『&疾走』が完成しました。2ndアルバムはどのように制作を進めていったのですか?

たなか:確固たるコンセプトがあってと言うよりは、みんなで作り上げていった部分が大きくて。『CASTLE』制作時は、僕が“CASTLE=城”というコンセプトを掲げて、プレゼンみたいにスライドを作って“こういう曲を入れて。1曲目はこう、2曲目はああで”って説明をしながら作っていったんです。でも、今回はメンバーそれぞれの強みを最大限に活かした作品にしたいというところから始めました。ですから、10曲の制作時期もバラバラで、かなり昔のデモから形にしていった曲もあります。そうやって収録曲がある程度固まった段階で「タイトルはどうしよう?」とみんなで考えた時に、ササマリが『&疾走』と案を出してくれて。

ササノ:リリースツアーのタイトルも併せて、アルバム仮タイトルを考えようとなった時、最初にIchikaが“大脱走”と案を出して、そこで「めっちゃいいね」となったんです。ただ収録曲が出揃ってきた時に、曲の方向性とはちょっと違うかもという話になって、そこで僕が思い付いたのが“疾走”でした。ただ、それだけではちょっと寂しい。僕の中で、目につくタイトルにしたいという気持ちがあって。“何だこれは?”というタイトルがいいなと思っていたので、『&疾走』を提案しました。

──先に収録曲の「&疾走」があって、それをアルバムタイトルにしたのかと思っていました。

ササノ:それが逆で。アルバムタイトルに意味付けをするために、後からタイトル曲を作ったんです。そこで歌われている通り、ただ走っている状態ではなく、行くべき場所へ向かって3人で疾走していることを表現するのに「&疾走」はどうかなって思ったんですよ。


▲ササノマリイ (Key)

──なるほど。音楽的には、どのようなテーマを持って制作に取り組みましたか?

Ichika:前作よりも3人の個性を削ぎ落とさない作品にしょうと思って。いびつになってもいいから、善し悪しまで含めて、3人の個性をすべて曲に落とし込んで、アルバムを作っていこうという意識でした。

──だからなのか、3人の個性が前作以上に色濃く出ながらも、3人のコラボレーションではなく、ちゃんとDiosサウンドに仕上がっている点がとても絶妙だなと感じました。

Ichika:そこはたぶん、初めて外部のトラックメーカーさんやアレンジャーさんに参加していただいたおかげで、3人の個性をきれいにまとめることができたんだと思います。それらの曲が、「自由」「アンダーグラウンド」「&疾走」「ラブレス」「王」ですね。

──サウンドプロデューサーにTAKU INOUEさんを迎えたきっかけは?

Ichika:今回の作品から関わってくださったクリエイティヴディレクターさんがTAKU INOUEさんのマネージメントもされていて。僕らはTAKU INOUEさんのファンでしたから紹介していただいて、まず「ラブレス」の制作から手伝っていただきました。

── TAKU INOUEさんに加えて、「アンダーグラウンド」の編曲で川口大輔さん、「&疾走」の作曲でHironao Nagayamaさんもクレジットされていますね。

ササノ:「ラブレス」のオーケストラアレンジも川口さんにやっていただきましたね。



たなか:川口さんとは、僕は主に歌詞の表現を見てもらって、「どういう意図で書いてるの?」「もっとこうだよね」といった“校閲”的なアドバイスをいただきました。それによって、“僕らのことを何も知らない人が聴いたら、こういう風に感じるのかも”といった視点を増やせたことはすごくよかったですね。あとトラックメイクの点でも、ササマリは随分と気が楽になったというか。今までは3人だけで完パケまで作り上げていて、特にササマリは“これで完成です”というラインを引く立場だったから、以前は自分のアイデアを追加しにくかったと思うんですよ。

Ichika:言ってしまえば、責任を背負い込まずに他の人に託すことができたから、純粋にアイデアを持ち寄ることができて。

たなか:そういう意味で、川口さん、Nagayamaさん、INOUEさんというDios以外の人に手伝ってもらえたことで、よりDiosらしい音楽が作れたという逆説的な変換があったなと感じています。

──その点、ササノさんはいかがでしたか?

ササノ:これまでは、Ichikaと僕でデータをやり取りしながら曲を完成形まで詰めていたんです。でも今回は最終的な作業をお任せすることができたので、曲をまとめるという意識ではなく、逆に“自分の色を残そう”という気持ちにもなれて、ある意味で好き勝手にいろんなアイデアを出すことができました。

Ichika:今までって、自分たちでクオリティコントロールをやらなければいけなかったから、苦手なことは放り込まずに、得意なことしか詰め込んでいなかったんです。それが今回は、自分たちでまとめる必要がなかったから、新しいジャンルやスタイルにも挑戦できて。「&疾走」のEDMパートはササマリが作ってくれたんですけど、今まで、こういうのはあんまり作らなかったよね?

ササノ:そうだね。EDMを聴くのは好きなんだけど、自分で作ることはなかった。

Ichika:そうやって、今まで挑戦しなかったアイデアも取り込めたから、今回の制作で、Diosで使える新しい“色”をたくさん増やせたと思っています。

◆インタビュー【2】へ
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