【インタビュー】World's End Super Nova、1stアルバム『EHON』発売「めちゃめちゃ信頼できる曲たちで出発」

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■ ライヴをやらなくなったら、めっちゃ嫌なヤツになっちゃいそう(笑)

── では、新作についてお話を伺いますが、ベストアルバム的ということですが、普段のライヴで鳴らされてる曲が丸ごと詰め込まれてるという。

ツモト:そうですね。コンセプトは結構作っていくうちに変わってはいったんですけど、1stアルバムなんで名刺代わりとして、自分がめちゃめちゃ信頼できる曲たちで出発できれば、というイメージがありました。

── パッケージとしてひとつのライヴみたいな?

ツモト:結果的にそういう流れになりましたね。今になって俯瞰で聴いてみると、このまま40分のライヴでやってもいいんじゃないか、という内容になってます。

── 実際、1曲目の「惑星と流星群」はライヴでも1曲目にプレイされることが多いですよね。

ツモト:ライヴの導入曲としてやってますね。もともと、別の人の曲をSEとして流して登場するぐらいやったら、自分たちでSEみたいな曲を最初にやったらいいんじゃないか、っていうところから作ったんです。

── 弾き語り調で始まりつつ、ライヴをする意味を自分自身に言い聞かせるような曲です。

ツモト:ホントにそんな感じですね。やっていくうちにライヴへ没入していく為のツールになっていったというか。お客さんもそうなってくれたら、めちゃめちゃ嬉しいなと思ってます。

── オルタナティブな匂いと衝動感がある「ミッドナイトソングライティング」は、どうして曲を書いて歌うのか?という表現者の核心に迫る曲ですし、WESNの扉のような存在になると感じました。

ツモト:ホンマに自分の創作の手順というか、曲を書くときの説明書っていうイメージの曲です。どうやって広げて形にしていくのか、っていうのを歌ってるし、扉という表現がめちゃめちゃしっくりくるというか。僕の中で音楽は、頭の中や心の中にいる誰かに会いに行く為のツールになってることも多いので、まさに扉だな、と。

── 「ミッドナイトソングライティング」をモチーフにしたマンガも発表されていますよね。溢れ出る感情を曲にした後、時間と共に鮮度を失って歌う意味を見失いかけたとき、曲を聴いて泣いてるお客さんを見て、あなたたちが僕の代わりに泣いてくれてるんだ、と気づいたシーンが描かれてます。真理を射抜く視点だなとハッとさせられました。


ツモト:やっぱり、歌っていく中で変わっていくモノ、慣れていってしまうモノもあって。全部の歌詞の意味を加味しながらずっと歌えるわけじゃないんですよね。そんなとき、お客さんから「この歌詞が好きです」と言ってもらえたりすると気づき直せるというか、自分たちの曲のはずやのに、その人の感覚の方が芯を食ってる瞬間もあったりして。そうやって歌って生きていくんやな、っていう気持ちになったんです。

── 湧き上がったり、こぼれ落ちる感情を曲にして歌ったとして、それを昇華した後はどうするのか、というのは多くのアーティストが抱える命題ですよね。ただ、そこへはっきりとした答えを提示する人はこれまで会ったことがなくて。

ツモト:でも、僕がたまたまマンガを描けたっていうだけで、みんな同じことを思ってたんやろうな、というか。発表したとき、バンドマンも凄く反応してくれたんですよ。

── そこに気付けると、曲にしようと思うことの幅も広がりますよね。普遍的なことじゃなくても、瞬間的なことでも曲にする意味があるというか。

ツモト:そうですね。やっぱり、曲は聴いた人次第なんで。作り手って「いいモノにしなアカン」みたいな強迫観念があるんですけど、そんなのはエゴやなというか。



── 「未完傑作」はJ-POPにも通ずる優しいメロディーの曲ですが、想いを馳せ続ければずっと輝いていくということを歌われてますよね。

ツモト:この曲はバンドでいちばん仲の良いSPARK!!SOUND!!SHOW!!のヴォーカル、タナカユーキが東京へ上京するとなったときに作ったんです。めっちゃ応援したいし、めっちゃいいことやねんけど、むっちゃ寂しいみたいな感覚があって(笑)。だから、終わらなければまた会えるし、と僕にも彼にも言い聞かせてるというか。

── 物語を長い目で見たら浮き沈みは当然あるし、その瞬間の現状だけに左右されなくてもいい、という。

ツモト:ですね。ただ、その都度、右往左往はしちゃうんですけどね(笑)。

── 「夜の歌」はライヴハウスへ少しでも足が向くように、来れるタイミングで手にとって欲しいという気持ちを込めて、ライヴハウスに設置する形で無料配布した曲でもあります。


ツモト:ライヴハウスで歌う人たちの、表現する人たちの曲というか。コロナ禍になったときに作ったんで、消えそうな灯りがいっぱいあったんですよ。それをどうにか消えないように、小さくてもいいから続いて欲しいなと。

── やっぱり、WESNにとってライヴは欠かせない?

ツモト:やらないと心の循環がおかしなことになりそうですね。ライヴがあって、絵も描いてて、っていうサイクルが僕を僕としてたらしめてるというか。ライヴをやらなくなったら、めっちゃ嫌なヤツになっちゃいそうです(笑)。

── ハハハハ(笑)。いろんな曲がある中、「いつか最愛をあなたへ」はどう捉えていいのかわからないところもあって。単純にラブソングとはカテゴライズできないし、決意の曲なのかなと感じたり。


ツモト:あぁ、まさにそんな感じですね。今、一緒に暮らしてる方がいて、その人との生活を歌った曲なんですけど、以前、大失恋をしたときに「僕は無理なんだろうな、ひとりで死んでいくんだろうな」と思ってて。

── 話が飛躍しすぎてませんか?(笑)

ツモト:いや、それぐらい追いやられてたんですよ(笑)。そこからいろいろ経て、今の方と出会ったとき、こういう曲を歌えてもいいんじゃないか、と思えた瞬間があって。ただ、自分でも小狡いなと感じるのが「最愛をあなたへ」じゃなくて「いつか最愛をあなたへ」という曲なこと。まだ足りてないよ、と自分にも言ってるというか、これを最愛と呼ぶには以前のモノがまだ大きいから、ちゃんと越えれるようになってから最愛と呼べればいい、というか。自分に対しての戒めみたいな意味合いもありますね。

── 歌詞を読めば、2人は一緒にいるのに<光と影どちら共が2人を包んでいた>という描写があったり、まだ満ち足りてないんだなと解釈をしたんです。

ツモト:ホンマにそうというか、いつか全部をあげられたらな、って。

── いろんな感情が入り混じってますよね。サビに重なるビッグコーラスだったり、激情をぶちまけるように歌い上げたり、歪ませたギターをおもいっきりかき鳴らしたり、情緒が不安定と言ったら言い過ぎかもしれないですけど。

ツモト:メンヘラっぽいですよね(笑)。でも、この曲を書けたことが自分の中ではターニングポイントでもあって。今でも大事な曲ですし、ライヴで絶対にやる曲にもなってますし。今、いちばん歌いたいことがこの曲に詰まってるんじゃないかなという感じもしてるんです。

── そうなると、WESNの曲は人生だったり、その都度感じたことが反映されているんですね。

ツモト:基本的には実生活をできるだけ抽象的に歌ってるというか。身の回りに起きたこと、考えたことをいろんな解釈ができるように落とし込んでるイメージではありますね。

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