【インタビュー】竹原ピストル、弾き語りならではのあたたかく親密な空気感に浸る最新ライブアルバム『One for the show』

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■手にギターが弾けた、上手に歌えた、拍手をもらえた、わーい!
■みたいなことが嬉しいから、ちゃんと音楽をやろうと思うようになった


――このライブアルバムの録音で、日本を2周した時は、ライブハウスにもいろいろ制限がありましたし、そういう意味での変化はありましたか。

竹原:ありましたね。だけど、僕のライブは基本的にお客さんが「ウォー!」っていう感じにはならないので、そこに落差とか、寂しさや物足りなさを感じることは一回もなかったです。「自分のライブはもともとこうだったよな」と思いながら。とはいえ、コロナが明けたとされて、声出しもOKになって、お決まりの曲でお決まりの大合唱が起きたりすると、「これこれ!懐かしい」と思って、嬉しくなったりはするんですけど。

――このアルバムにも、拍手はたくさん入ってますね。歓声も時々、ちょこっと聞こえてくる。ちょっと話題を変えて、たとえば10年以上前、年間280本のライブとか、誘われればどこへでも行って歌うという時代と比べて、何か心境の変化はありますか。

竹原:そうだなぁ…自分の中で一つ執着するようになったのは、やっぱり音楽なので、音の良さですね。ありがたいことに、信頼できる専属のPAさんが毎回ついてくれて、完璧にアコギの音を拾ってくれるライブをここ何年か続けさせてもらってるんですけど、そこはずっとキープしたくなるというか、やる場所がどこに変わってもいいけれど音はちゃんとしていないと嫌だ、というところで選ぶようにはなりました。「納得いく音でやりたい」ということは、年間280本とかやっていて、誘われたらどこでも行くぜという時代とは、変わったところだと思います。たとえば来年からまたドサ周りをやりましょう、年間280本で場所を選ばずに誘われたら全部やりなさいと言われたら、やれます。やれるんですけど、その環境に戻る自信はあるんですけど、でも音の環境を過去に戻すことは嫌ですね。

――はい。それはよくわかります。

竹原:そこはすごく選ぶようになったというか、歌いに行きたいのはやまやまだけど、ちゃんとした音を出してくれるなら、というふうになりましたね。

――それって何かきっかけがあったんですか。

竹原:やっぱり、プロ中のプロのPAさんがついてくれたという経験じゃないですか。やっていて気持ち良いし、気持ち良い音が届けられている実感と共にやれるのはこんなに楽しいんだ、ということは、それまであんまり深く考えてなかったんですよ。「別にマイクなしでもいいですよ」って、ワーッとやったりしていて、それは一つのたくましさだとは思うけど、でもやっぱり…毒入りの話になっちゃうかもしれませんけど、素晴らしい音で出来る店Aと、もうちょっとちゃんとやろうぜという店Bがあるとして、チケット代が同じだと、「これで同じかよ」と思っちゃうので。そこはプロとして絶対守らなきゃいけない要素なんだという自覚が芽生えたというのが、変わったところだと思います。

――大事な話ですね。すごく大きな要素。

竹原:デカいです。

――その結果が、今回のアルバムの音の良さにも直結しているので、説得力があります。

竹原:まして、今、アコギをマイク録りで、ちゃんと出せる人(PA)はなかなかいないんですよ。アコギを弾く人は、永遠のテーマとしてあるんでしょうけど。僕は、過去のたくましさも尊いと思うんですけど、今は音の良さに執着するようになったかなと思います。


――とても興味深い話です。ほかに何か変わったこと、意識するようになったことはありますか。

竹原:変わったこと…うん、何かある気がしますね。たとえば、昔は歌のピッチを気にしたことがなかったんですよ。そんなことはどうだっていいんだ!っていう性格だったんですけど、今は「今、上手に歌えたんじゃないかな」と思うと、凄く嬉しいんですよ。超当たり前の話をしてますけど(笑)。「上手にギターが弾けた、上手に歌えた、拍手をもらえた、わーい!」みたいなことが嬉しいから、ちゃんと音楽をやろうと思うようになったんじゃないですかね。そう、特に野狐禅を解散して一人で回り始めた頃は、「ここからの俺の方がすげぇから、見とけよこの野郎」みたいな殺気立ち方でしたし、ギラギラしていたし、とにかく気持ちが先にあって、ドーン!みたいなライブが多かった気がするんですけど、今は「こんな歌をこんなふうに楽しく歌えばみんなも楽しんでくれるかな?」とか、考え方がゆるくなったし、ライブはやればやるほど楽しくなりますね。年々楽しいですよ。「自分はこうだ」って勝手に決め込まなくなったし、なんでも歌ってやるぜという自由さがありますね。不自由にしてたのは自分自身なんですけど、今は曲を書くことも歌うことも、年々楽しいです。だから、「やっと上手に歌えるようになった」でいいんじゃないですか(笑)。

――竹原ピストル46歳、歌手に目覚める(笑)。今のお話、悩める若いシンガーがものすごい勇気をもらったと思いますよ。「まだまだこれからだ!」って。

竹原:僕もかつて、玉置浩二さんから「歌は50歳からだから。どんどん良くなるから」って言っていただいたことがあったんですよ。それを聞いてすごく心が軽くなったし、勇気をもらったし、それがちょっとわかりかけてきたというか、もっと行けるんじゃないの?という気持ちにはなってますね。

――そこは竹原ピストルのスタイルでいいんじゃないでしょうか。そしてベテランになってくると、第一線を退かれる方も出てきますけど、一生歌い続けたいですか。

竹原:歌い続けたいですね。

――たとえ声量とか音域が衰えたとしても。

竹原:うん。「これができないならこうやればいいや」で切り抜けてきたことって、これまでもいっぱいあるんで。さっきお話したみたいに、俺は一定のテンポでギターが弾けないから「じゃあ歌に合わせればいい」とか、小さい工夫もひっくるめてですけど、高いところが出なくなったらこの音域でやればいいとか、試行錯誤する自分はイメージしやすいので。あと、やっぱり好奇心というか、日々いろんなことを経験させてもらって、お芝居もそうですし、たとえば何かの賞を取ったとか、初めての経験をした時に、「俺ってこういう時にこういう心境になるんだ」って、新しい発見をするのが好きだったりして。だから、話が遠回りしちゃいましたけど、自分でもあきれるぐらい「売れたい」と思っているんですよ。とんでもねぇヒット曲を世に出して、ダーッと売れて、「良い歌でしょ? イエー!」ってなってみたいって、ずっとギラギラした気持ちを色あせずに持ってるんですよ。いつかそれを達成するのか、諦めるのかは知りませんけど、いつか「売れたい」という気持ちがゼロになった時、その先に自分が何を歌うのかが、楽しみでしょうがないんですよ。それは、歌い続けないとわかんないじゃないですか。そういうヘンテコな好奇心が、ずっとあるんですよね。


――はい。なるほど。

竹原:自分のことなのに、知らないことばっかりだなって思います。そう、知らないことばっかりでふと思い出したのは、とはいえ、時にはツアー中に「今日のライブは良かったんじゃねぇかな」って、1本丸々(録音を)聴き返すこともあるんですよ。でも、そうでもなかったりするんです。逆に今日はしくじった」と思って、どうしくじったのか、恥ずかしいけど聴いてみようと思ったその日のライブ音源が、良かったりする。結局、自分で自分のライブの出来なんか、ちっともコントロールできてやしないんです。そこがまた面白いと思うんですね。いつか一致する日が来るのかな?って、これも好奇心ですよね。「今日は良かった、聴いてみた、ほら良かった」ってなる日が来たら、その時どんな心境になるのか。たぶん、浮かれて酒飲むだけだと思いますけど(笑)。そういう好奇心があるんですね。

――続ける動機は好奇心。我々も含めて、違う職業の人にも響くものがあると思います。自分で自分のことはわからない。わからないから知りたいという好奇心が、足を前に進めていく。

竹原:楽しいですね、それが。

――最後にアルバムタイトルについて聞かせてください。『One for the show』。いいタイトルです。

竹原:いろいろ考えたんですけど、過去にこのタイトルでツアーを回ったこともあったんですよ。何かリリースしたわけじゃないけどただライブをやりたいだけさ、みたいな意味の『One for the show tour』というのをやっていて、結局その言葉が全部をくくれるんじゃないか?という感じですね。そして、パート2をいつか出したいなと思ってます。何年後になるか、また50曲入りかどうかわかんないですけど、これを第一弾にしようみたいな気持ちではあるんですけど。

――その時は『Two for the show』になるんですね、もしかすると。

竹原:おっしゃる通りです。まさにそのアイディアで、数字だけ増やしていこうという作戦です(笑)。でも20年に1作だと、平均寿命で考えると『Three』が最期になるんじゃないかと思うんですけど。

――何を言うんですか(笑)。これがシリーズ化したらすごいことになると思うので、ぜひ続けてください。そして今年はこのあと、11月から来年3月まで続く弾き語り全国ツアー<One for the show 2023~2024>が開幕。またツアーの日々が始まります。

竹原:ツアーが始まると、あっという間に日々が過ぎていくので。始まる前から「今年も終わりか」という心境になるんですけどね。とにかくいつも通り一生懸命、無我夢中で回ってこようと思います。

取材・文:宮本英夫

リリース情報

『One for the show』
9月13日(水)リリース
■通常盤(CD3枚組)
VICL-65862~65864 / 価格\4,500(税別)
https://www.jvcmusic.co.jp/-/Linkall/VICL-65862.html
■VICTOR ONLINE STORE限定商品
価格\10,000(税別)
M:https://victor-store.jp/item/37754
LL:https://victor-store.jp/item/37755
<収録曲>(CD)
Disc1
1. ドサ回り数え歌
2. あ。っという間はあるさ
3. ハッピーエンド
4. 朧月。君よ、今宵も生き延びろ。
5. へっちゃらさ、ベイビー
6. 東京一年生
7. It's my life
8. 春夏秋冬
9. 笑顔でさよなら、跡形もなく。
10. 落陽
11. じゅうじか
12. よー、そこの若いの
13. 復興の花
14. I miss you...
15. ママさんそう言った~Hokkaido days~
16. 狼煙
17. シーグラス
18. ルート トゥ ルーツ
19. ぼくは限りない~One for the show~
Disc2
1. Amazing Grace
2. マスター、ポーグスかけてくれ
3. おーい!おーい!!
4. ゴミ箱から、ブルース
5. あっかんべ、だぜ故郷
6. カモメ
7. わたしのしごと
8. せいぜい胸を張ってやるさ。
9. Gimme the mic !!
10. なごり雪
11. たった二種類の金魚鉢
12. 全て身に覚えのある痛みだろう?
13. 今宵もかろうじて歌い切る
14. 御幸橋
15. オールドルーキー
16. 俺のアディダス~人としての志~
17. 悄気る街、舌打ちのように歌がある。
18. ファイト!
19. 便器に頭を突っ込んで
Disc3
1. Forever Young
2. 初詣
3. 今日は成人の日
4. LIVE IN 和歌山
5. ぐるぐる
6. なにもしないがしたい
7. カウント10
8. ギラギラなやつをまだ持ってる
9. 一等賞
10. 女の子
11. ぼくの夢でした
12. 月光の仮面
13. カラス
14. きーぷ、うぉーきんぐ!!
15. 最終電車は次の街へ、そしてまた次の街へ
16. Float Like a Butterfly, Sting Like a Bee !!
17. みんな~、やってるか!
18. 浅草キッド
19. アンチヒーロー(朗読)

<収録曲>(アナログ)
Disc1
A-1. ドサ回り数え歌
A-2. あ。っという間はあるさ
A-3. ハッピーエンド
A-4. 朧月。君よ、今宵も生き延びろ。
A-5. へっちゃらさ、ベイビー
A-6. 東京一年生
A-7. It's my life
B-1. 春夏秋冬
B-2. 笑顔でさよなら、跡形もなく。
B-3. 落陽
B-4. じゅうじか
B-5. よー、そこの若いの
B-6. 復興の花
B-7. I miss you...
Disc2
A-1. ママさんそう言った~Hokkaido days~
A-2. 狼煙
A-3. シーグラス
A-4. ルート トゥ ルーツ
A-5. ぼくは限りない~One for the show~
A-6. Amazing Grace
A-7. マスター、ポーグスかけてくれ
B-1. おーい!おーい!!
B-2. ゴミ箱から、ブルース
B-3. あっかんべ、だぜ故郷
B-4. カモメ
B-5. わたしのしごと
B-6. せいぜい胸を張ってやるさ。
B-7. Gimme the mic !!
Disk3
A-1. なごり雪
A-2. たった二種類の金魚鉢
A-3. 全て身に覚えのある痛みだろう?
A-4. 今宵もかろうじて歌い切る
A-5. 御幸橋
A-6. オールドルーキー
A-7. 俺のアディダス~人としての志~
B-1. 悄気る街、舌打ちのように歌がある。
B-2. ファイト!
B-3. 便器に頭を突っ込んで
B-4. Forever Young
B-5. 初詣
B-6. 今日は成人の日
B-7. LIVE IN 和歌山
Disk4
A-1. ぐるぐる
A-2. なにもしないがしたい
A-3. カウント10
A-4. ギラギラなやつをまだ持ってる
A-5. 一等賞
A-6. 女の子
A-7. ぼくの夢でした
A-8. 月光の仮面
B-1. カラス
B-2. きーぷ、うぉーきんぐ!!
B-3. 最終電車は次の街へ、そしてまた次の街へ
B-4. Float Like a Butterfly, Sting Like a Bee !!
B-5. みんな~、やってるか!
B-6. 浅草キッド
B-7. アンチヒーロー(朗読)

ライブ・イベント情報

<弾き語り全国ツアー “One for the show 2023~2024”>
11/6(月) 北海道 札幌cube garden 開場18:00/開演18:30
11/7(火) 北海道 旭川 CASINO DRIVE 開場18:00/開演18:30
11/9(木) 北海道 小樽 GOLD STONE 開場18:00/開演18:30
11/16(木) 埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心VJ-3 開場18:30/開演19:00
11/17(金) 群馬県 前橋DYVER 開場18:30/開演19:00
11/20(月) 神奈川県 Yokohama mint hall 開場18:30/開演19:00
11/21(火) 山梨県 甲府CONVICTION 開場18:30/開演19:00
11/28(火) 千葉県 柏PALOOZA 開場18:30/開演19:00
11/29(水) 東京都 duo MUSIC EXCHANGE 開場18:30/開演19:00
12/1(金) 三重県 四日市CLUB ROOTS 開場18:30/開演19:00
12/2(土) 岐阜県 柳ヶ瀬ants 開場17:30/開演18:00
12/4(月) 愛知県 名古屋CLUB UPSET 開場18:30/開演19:00
12/5(火) 静岡県 静岡SUNASH 開場18:30/開演19:00
12/11(月) 茨城県 club SONIC mito 開場18:30/開演19:00
12/12(火) 栃木県 HEAVEN'S ROCK UTSUNOMIYA VJ-2 開場18:30/開演19:00
12/18(月) 大分県 DRUM Be-0 開場18:30/開演19:00
12/19(火) 宮崎県 LAZARUS 開場18:30/開演19:00
12/21(木) 鹿児島県 CAPARVO HALL 開場18:30/開演19:00
12/22(金) 熊本県 B.9 V1 開場18:30/開演19:00
12/24(日) 長崎県 DRUM Be-7 開場17:30/開演18:00
12/25(月) 佐賀県 GEILS 開場18:30/開演19:00
12/27(水) 福岡県 DRUM LOGOS 開場18:30/開演19:00
12/28(木) 沖縄県 桜坂セントラル 開場18:30/開演19:00
1/17(水) 徳島県 club GRINDHOUSE 開場18:30/開演19:00
1/18(木) 高知県 CARAVAN SARY 開場18:30/開演19:00
1/20(土) 香川県 高松festhalle 開場17:30/開演18:00
1/21(日)  愛媛県 WstudioRED 開場17:30/開演18:00
2/11(日祝) 滋賀県 U☆STONE 開場17:30/開演18:00
2/13(火) 兵庫県 THE LIVE HOUSE CHICKEN GEORGE 開場18:30/開演19:00
2/14(水) 奈良県 奈良NEVER LAND 開場18:30/開演19:00
2/16(金) 和歌山県 和歌山OLDTIME 開場18:30/開演19:00
2/17(土) 京都府 京都FANJ 開場17:30/開演18:00
2/19(月) 大阪府 BIGCAT  開場18:15/開演19:00
2/23(金祝) 石川県 金沢AZ 開場16:30/開演17:00
2/24(土) 長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX 開場16:30/開演17:00
2/26(月) 新潟県 NIIGATA LOTS 開場18:30/開演19:00
2/27(火) 富山県 富山SOUL POWER 開場18:30/開演19:00
2/29(木) 福井県 福井HALL BEE 開場18:30/開演19:00
3/3(日) 島根県 出雲APOLLO 開場17:30/開演18:00
3/4(月) 鳥取県 米子AZTiC laughs 開場18:30/開演19:00
3/6(水) 岡山県 岡山CRAZYMAMA KINGDOM 開場18:30/開演19:00
3/8(金) 広島県 広島クラブクアトロ 開場18:15/開演19:00
3/9(土) 山口県 周南RISING HALL 開場17:15/開演18:00
3/11(月) 広島県 ライブ楽座 開場18:30/開演19:00
3/24(日) 青森県 青森Quarter 開場17:30/開演18:00
3/25(月) 岩手県 盛岡CLUB CHANGE WAVE 開場18:30/開演19:00
3/27(水) 秋田県 秋田Club SWINDLE 開場18:30/開演19:00
3/28(木) 山形県 山形ミュージック昭和セッション 開場18:30/開演19:00
3/30(土) 宮城県 仙台誰も知らない劇場 開場17:30/開演18:00
3/31(日) 福島県 福島Out Line 開場17:30/開演18:00

※3/30 仙台公演のみ、全席指定席になります。
※小学生以上の方はチケットが必要となります。
※未就学児のご入場は、同行の保護者の方の座席の範囲内で、周りのお客様のご迷惑にならないようにご覧ください。

チケット代:全自由席\4,000(税込、整理番号付き、ドリンク別)
イープラス:https://eplus.jp/pistol-23-24/

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