【インタビュー】soLi、ただのインストゥルメンタルに終わらない。新しい要素が加わったアルバム『Rebellion』完成

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昨今は浜田麻里のツアーや作品に参加している多弦ギタリストのISAO、様々なフィールドで活躍するヴァイオリニストの星野沙織によって結成されたsoLi(読み:ソリ)が、3枚目のアルバム『Rebellion』を完成させた。

◆トレーラー映像

両者のプレイヤーとしての実力は多くのミュージシャンから絶大な称賛を集める高いレベルにあるが、インストゥルメンタル・ユニットであるsoLiは、二人のキャリアから期待されるテクニカルなパッセージを交えつつ、あくまでもメロディを前面に押し出した楽曲を主軸としている。また、的確な情景描写で魅了するサウンドスケープも持ち味だ。

『Rebellion』はどのような作品に仕上がったのか。各収録曲について、ISAOと星野に話を訊いた。

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◾️「Jumbo Jamboree」のようなスタイルは、これからのsoLiの活動に必要不可欠

──とにかく冒頭からインパクトのあるアルバムになりましたね。過去の2枚のアルバムを通じてsoLiを知っている人は、最初に1曲目の「Jumbo Jamboree」が流れ始めたとき、違うアーティストのアルバムを買ったのではないかと驚くと思いますよ。

ISAO:そうです、それが狙い(笑)。でも、多分、2曲目ぐらいから、いつものsoLiだなと思ってもらえると思いますよ(笑)。

──その「Jumbo Jamboree」はどんな構想のもとに作られたんですか?

ISAO:EDM系の音楽を何となしに聴く機会がわりとあったんですよ。たとえば、スティーヴ・アオキさんだったり、K-POPだったり、元々そっち系の音楽って、言い方は悪いですけど、僕は楽しく聴ければいいかなぐらいのジャンルだったんですけど、よく聴いてみると優れた楽曲が多い。そういった中で、こういうものを自分の作曲技法の中の一つに入れられるようになったらいいなと思ってたんですが、ちょっとやってみようと思って作ったものを沙織ちゃんに聴かせたら、彼女も実はこういう音楽も大好きで。じゃあ、このまま形にしようということで最後まで仕上げたのが「Jumbo Jamboree」なんですけど、実際にヴァイオリンも入れてみたら、これまた合うんですよね。

星野:今までのsoLiには全然なかったっていうのもあるんですけど、(対戦アクションゲームの)『スプラトゥーン』のフェスめいてる感じの曲だなと思ったんです。『スプラトゥーン』では、時々、フェスっていうイベントがゲーム内で起こるんですね。いつもフィールドはお昼の時間帯なんですけど、そのフェスの期間中は夜になって、お祭りになるんです。提灯や神輿が出て、みんながタオルを振り回したり、踊ったり、もう全員で楽しんでるんですね。あのフェスの雰囲気が「Jumbo Jamboree」にはすごくあるから、これをライブでやったときには、みんなでタオルを振り回しながら飛んだり、楽しんでもらえる曲になるだろうなって、ライブをどういうふうに作るかみたいなことまで想像できたんです。

──確かに楽しい雰囲気ですもんね。

ISAO:インストゥルメンタルのライブって、目の前で行われてるアートというか、楽器の技術的なことや音楽的なこと、雰囲気も含めて、みなさん椅子に座ったまま、結構、聴き入ることが多いジャンルだと思うんですよ。仮にかなりメタリックなサウンドだとしてもね。ボーカリストがいるわけではないので、たとえばコール&レスポンスを導こうとしても難しいじゃないですか。だから、そういうスタイルになっていくのは仕方がないと思うんですけど、スカパラ(東京スカパラダイスオーケストラ)とかはお客さんもノリノリじゃないですか。ロック系のインストゥルメンタルでも、そういう状況が作れるとしたら、こういう楽曲だと思うんですよね。その辺を意識して作曲を進めていったんですけど、この楽曲を鳴らしたとき、純粋に楽しめるんですよ。「ここが難しいんだよね」とか、そういうのがまったくない。そういう空気感って、お客さんにも伝わると思うんですね。

──テクニカルな面が排除されているわけではありませんが、明らかに軽快に進んでいきますし、聴き入るというよりも、とにかくリズムを体感させますし。

ISAO:まさに。おっしゃる通りでございます。

星野:だから、この曲を聴いて、グッズでタオルを作るのもいいかもねって言い出したぐらいなんですよ(笑)。

ISAO:たとえば、ジャズ系ですけど、僕はパット・マルティーノがすごく好きで、ブルーノートとかに観に行ってたんですよ。ただ、楽曲によるところもありますけど、やっぱり世界的なミュージシャンとかの演奏をちゃんと観てるときって、拳を上げたりとかにはならないですよね。soLiはロックではあるんですけど、技巧などの部分に注目されがちなので、お客さんもそっち系に近い楽しみ方になってると思うんですよ。だからこそ、ガラッと景色を変えられる楽曲もあっていいなと。

──思わずじっくり観てしまうほど惹き付けつつ、soLiの場合は、テクニカルな面を前面に押し出すというより、どちらかといえばメロディを聴かせる楽曲だと思うんです。その点では、多くのインストバンドとはまたちょっと違うかなとは思うんですけどね。

星野:そういう認識はありがたいですね。

ISAO:そう感じてもらえたら作戦成功ですね(笑)。でも、「凄い!」「巧い!」みたいな声はもちろんあるんですけど、確かにsoLiの世界観に一発でハマっちゃったという人がいるのは、もしかしたら、そういう楽曲の雰囲気があるのかなとは思いますね。

──見方を変えると、一緒にメロディを歌えそうな感じがあるんです。その意味では、この「Jumbo Jamboree」などは、ライブに新鮮さをもたらしそうですね。

ISAO:そうですね。soLiのライブでは、ファーストやセカンドのラストの曲とかを最後に並べて終わることが多かったですけど、演奏が終わったときに、それまで息を止めて観ていたお客さんがふと解放されたような空気感も伝わってくるんですよ。だから、少し遅れて拍手が起こる。ただ、たとえばその後に、「じゃあ、最後にみんなで楽しんで帰りましょう」みたいな感じで「Jumbo Jamboree」をやったら、ライブがハッピーに終われるんじゃないかなって。

──もちろん、必ず最後に演奏する楽曲ということではないにせよ、明らかに雰囲気は変えられるでしょうからね。

ISAO:そう。だから、この「Jumbo Jamboree」のようなスタイルは、これからのsoLiの活動に必要不可欠ですし、それがやっと今回、形にできたかなと思うんですね。

──曲作りの一つのきっかけになったのはEDMだったとはいえ、イントロには驚愕させられつつ、全体像としては、意外にもそういった色を意識することなく聴けるんですよね。

ISAO:ギターとヴァイオリンが鳴り始めれば、多分、聴いてる方々も安心はすると思うんです。

星野:そこでまたIKUOさんの素晴らしいベースが入ってくるんですよ。

──そうそう。このベースがいいグルーヴ感を醸し出すんですよね。

ISAO:そうなんですよ。もう唯一無二ですよね。曲を作り始めて、Aメロとかを手掛けているときに、これは絶対にIKUOさんに弾いてもらうべき曲でしょと思ったんですよ。IKUOさんのスタイル的にも、これぐらいのBPM感と、こういうビートっていうのは、すごく映えるだろうなって。実際のレコーディングでも、ニュアンスとしては思っていた通りのテイクが返ってくるんですけど、僕がデモに打ち込んでなかったこともたくさん入れてくれたりして、今回もやっぱりプラスαがあるんですよね。



──その曲が求めているものを的確に弾く手腕には感嘆しますよね。2曲目の「Sky」もISAOくんの作曲ですが、こちらは一転して疾走チューンですね。

ISAO:そう、完全にヘヴィメタルですね。以前、「Burning Blood」という曲もありましたけど、よりヘヴィメタルな楽曲を作ってみようと思ったんですね。ファーストの頃とかは、メタルの中にヴァイオリンを入れるっていうことが、若干自分の中でイメージできてなかったんですよ。速いツーバスがドコドコと鳴っているメタル系のサウンドにヴァイオリンを入れる……やっているバンドもいるとは思うんですけど、インストゥルメンタルである場合、どうあるべきなのかと。ただ、沙織ちゃんとここ5年ぐらい一緒にやってきて、これならサウンド的にすごく合うんじゃないかといった感じがだんだんわかってきたんですね。たとえば、リフだってヴァイオリンで弾いてもいいわけで。となると、細かいスタッカート気味の音価の狭いものなども(ヴァイオリンが)すごく映えるかなと思ったりとか。そういった経緯で作ってみたんですね。

──タイトルの“Sky”とは、どのような意味なんでしょう?

ISAO:空ですね。

──それはそうですが(笑)、いろんな空があるじゃないですか。たとえば、“Red Sky”というものもあり得ますよね。

ISAO:イメージとしてはガンダムなんですよ。漢字で書くとしたら、空ではなく宇宙って表記なんです。だから、どっちかというと宇宙規模のバトルみたいな光景ですね。

──ええ。戦っている画は浮かんできます。

ISAO:まさに。レコーディングでは、沙織ちゃんにすごく負担かけたなと思う。

星野:すごく速い、音が細かい、すごく飛ぶ……難しいの権化みたいな(笑)。

ISAO:サビ以外はすごく大変そうね。

星野:サビの最後とかもすごい跳躍があるので、「うわー!?」ってなるときがあるんですけど、メタルと言いつつ、ISAOさん節的な、ちょっとひねた楽曲になってるんですね。1回目よりも2回目、3回目と聴いていくたびに、どんどん好きになっていく、ある種、滋味深い面もあって。ちょっと珍味っぽいですよね。ただの激辛とかじゃなくて、奥のほうに何かある。山椒ともう一つ何か入っていそうだな、辛かった、痛かったけどまた食べに行かなきゃみたいな(笑)。演奏してみても、そういう邪悪な魅力がありますよね。

ISAO:この楽曲も、サビメロでいわゆるクラシカルな感じでストレートにいってしまうと、普通によくある感じの音楽になっちゃうと思うんですけど、サビのところに自分の好きなジャズ/フュージョンのテイストを入れたり、フラット5をメロディに詰め込んだりしたことにより、ちょっとアンニュイな感じに仕上がったんじゃないかなとは思います。


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